決算書をそろえる時期になると、「事業活動計算書は、どこから読み始めればよいのか」「サービス活動増減差額と経常増減差額と当期活動増減差額は、何が違うのか」「国庫補助金等特別積立金取崩額は、なぜ費用の中に入っているのか」といった疑問が出てきます。理事会や監事への説明のとき、事業活動計算書の最後の数字だけを示して、途中の段の意味を聞かれて言葉に詰まった経験がある方もいらっしゃると思います。
事業活動計算書のつくり方は、社会福祉法人会計基準(平成28年厚生労働省令第79号。以下「基準」)の第19条から第24条に書かれています。そのうえで、計算書類の種類と作成を省略できる場合(第7条の2)、純資産の部の区分(第26条)が、読むときの周辺の条文になります。
令和8年11月5日にe-Gov法令検索から取得した条文が根拠です。この記事では、次の3点を条文に沿って整理します。
- 事業活動計算書は、どんな部に区分され、各段の差額はどの順で求められるのか
- 国庫補助金等特別積立金取崩額、基本金、積立金は、どの部のどこに出てくるのか
- どんな種類の事業活動計算書を作り、どんな場合に作成を省略できるのか
資金収支計算書との違いは、資金収支計算書と事業活動計算書の違いの記事で整理しています。この記事では、事業活動計算書そのものの読み方に絞ります。条文から言えることと言えないことは分けて書きます。
先に結論
- 事業活動計算書は、「当該会計年度における全ての純資産の増減の内容を明瞭に表示する」ものです(基準第19条第1項)。
- 区分は4つの部です。サービス活動増減の部、サービス活動外増減の部、特別増減の部、繰越活動増減差額の部の順に並びます(第21条第1項)。
- 差額は上から順に積み上がります。サービス活動増減差額に、サービス活動外増減差額を加えて経常増減差額、そこに特別増減差額を加えて当期活動増減差額、さらに繰越の加減を行って次期繰越活動増減差額になります(第22条)。
- 国庫補助金等特別積立金取崩額は、サービス活動費用の中で減価償却費等の控除項目として入ります。固定資産の売却損・処分損を記載する場合は、特別費用の控除項目としても入ります(第22条第1項、第4項)。
- 基本金の組入額と国庫補助金等特別積立金の積立額は特別増減の部に、基本金取崩額とその他の積立金の積立額・取崩額は繰越活動増減差額の部に出てきます(第22条第4項、第6項)。
- 種類は、法人単位事業活動計算書、事業活動内訳表、事業区分事業活動内訳表、拠点区分事業活動計算書の4つです(第7条の2第1項第二号ロ、第23条)。
- 事業区分が社会福祉事業のみの場合などには、一部の作成を省略できます(第7条の2第2項)。
- 勘定科目は別表第二のとおりとされています(第24条)。別表第二の本文は、この記事の一次情報には入っていません。
事業活動計算書は何を表す書類か:第19条・第20条
純資産の増減を表す
第19条第1項は、次のとおりです。
事業活動計算書は、当該会計年度における全ての純資産の増減の内容を明瞭に表示するものでなければならない。
読み取れることは次の3つです。
- 期間は、当該会計年度。一時点の状態を表す貸借対照表と違い、1年間の動きを表す書類
- 範囲は、全ての純資産の増減。収益と費用だけでなく、基本金や積立金の動きも純資産の増減として含まれる
- 求められているのは、明瞭に表示すること
第20条第1項は、計算の方法を次のように定めています。
事業活動計算は、当該会計年度における純資産の増減に基づいて行うものとする。
基準でいう計算書類は、貸借対照表と収支計算書です(第1条第1項)。そのうち収支計算書として、第7条の2第1項第二号が資金収支計算書と事業活動計算書の2つを挙げています。事業活動計算書は、「純資産の増減」を表示する側の書類にあたります。
区分ごとの配分
第20条第2項は、複数の区分に共通する収益と費用の扱いを定めています。
事業活動計算を行うに当たっては、事業区分、拠点区分又はサービス区分ごとに、複数の区分に共通する収益及び費用を合理的な基準に基づいて当該区分に配分するものとする。
ここで押さえたいのは、事業活動計算が事業区分・拠点区分・サービス区分の3つの単位で行われる前提になっていることです。「合理的な基準」が具体的に何を指すかは、第20条の文言からは決まりません。拠点区分とサービス区分の考え方は、拠点区分とサービス区分の記事で整理しています。
4つの部:第21条
第21条第1項は、事業活動計算書の区分を次のように定めています。
事業活動計算書は、次に掲げる部に区分するものとする。
挙げられているのは、次の4つです。
| 順 | 部の名前 | 条文 |
|---|---|---|
| 1 | サービス活動増減の部 | 第21条第1項第一号 |
| 2 | サービス活動外増減の部 | 第21条第1項第二号 |
| 3 | 特別増減の部 | 第21条第1項第三号 |
| 4 | 繰越活動増減差額の部 | 第21条第1項第四号 |
第22条は、この4つの部に何を記載し、各部でどんな差額を出すかを定めています。次の章から、上の部から順に読んでいきます。
各段の差額を上から順に読む:第22条
サービス活動増減の部:サービス活動増減差額
第22条第1項の前半は、次のとおりです。
前条第一号に掲げる部には、サービス活動による収益及び費用を記載し、同号に掲げる部の収益から費用を控除した額をサービス活動増減差額として記載するものとする。
この部には、サービス活動による収益と費用を記載します。収益から費用を引いた額がサービス活動増減差額です。
後半には、読むときに見落としやすい定めがあります。
この場合において、サービス活動による費用には、減価償却費等の控除項目として国庫補助金等特別積立金取崩額を含めるものとする。
費用の合計から、国庫補助金等特別積立金取崩額が控除される形になる、という意味です。詳しくは後の「国庫補助金等特別積立金取崩額の位置」で整理します。
どの収益・費用が「サービス活動によるもの」にあたるかは、第22条第1項の文言だけでは決まりません。勘定科目は別表第二のとおりとされています(第24条)。
サービス活動外増減の部:サービス活動外増減差額
第22条第2項は、次のとおりです。
前条第二号に掲げる部には、受取利息配当金収益、支払利息、有価証券売却益、有価証券売却損その他サービス活動以外の原因による収益及び費用であって経常的に発生するものを記載し、同号に掲げる部の収益から費用を控除した額をサービス活動外増減差額として記載するものとする。
条文が例に挙げているのは、受取利息配当金収益、支払利息、有価証券売却益、有価証券売却損の4つです。「その他サービス活動以外の原因による収益及び費用であって経常的に発生するもの」という書き方なので、サービス活動以外の原因で、かつ経常的に発生するものが、この部に入ります。収益から費用を引いた額がサービス活動外増減差額です。
経常増減差額
第22条第3項は、次のとおりです。
事業活動計算書には、第一項のサービス活動増減差額に前項のサービス活動外増減差額を加算した額を経常増減差額として記載するものとする。
式にすると、次のとおりです。
- 経常増減差額 = サービス活動増減差額 + サービス活動外増減差額
経常増減差額は、4つの部のどれかに記載される金額ではなく、1つ目の部と2つ目の部の差額を足し合わせた段です。
特別増減の部:特別増減差額
第22条第4項の前半は、次のとおりです。
前条第三号に掲げる部には、第六条第一項の寄附金及び国庫補助金等の収益、基本金の組入額、国庫補助金等特別積立金の積立額、固定資産売却等に係る損益その他の臨時的な損益(金額が僅少なものを除く。)を記載し、同号に掲げる部の収益から費用を控除した額を特別増減差額として記載するものとする。
この部に記載するものは、条文に次のとおり挙がっています。
- 第6条第1項の寄附金及び国庫補助金等の収益
- 基本金の組入額
- 国庫補助金等特別積立金の積立額
- 固定資産売却等に係る損益
- その他の臨時的な損益(金額が僅少なものを除く)
サービス活動外増減の部が「経常的に発生するもの」を記載するのに対し、特別増減の部は「臨時的な損益」を記載します。経常的か臨時的かが、2つの部を分ける線になっている、と読めます。
なお、第6条の本文は、この記事の一次情報には入っていません。寄附金や国庫補助金等の内容は、第6条で確認してください。
後半は、国庫補助金等特別積立金を含む固定資産を売却・処分した場合の定めです。
この場合において、国庫補助金等特別積立金を含む固定資産の売却損又は処分損を記載する場合には、特別費用の控除項目として国庫補助金等特別積立金取崩額を含めるものとする。
当期活動増減差額
第22条第5項は、次のとおりです。
事業活動計算書には、第三項の経常増減差額に前項の特別増減差額を加算した額を当期活動増減差額として記載するものとする。
式にすると、次のとおりです。
- 当期活動増減差額 = 経常増減差額 + 特別増減差額
条文のうえでは、サービス活動増減差額、サービス活動外増減差額、特別増減差額の3つを足したものが当期活動増減差額です。その年度の活動だけで、純資産がどれだけ増えたか(減ったか)を示す段にあたります。
繰越活動増減差額の部:次期繰越活動増減差額
第22条第6項は、次のとおりです。
前条第四号に掲げる部には、前期繰越活動増減差額、基本金取崩額、その他の積立金積立額及びその他の積立金取崩額を記載し、前項の当期活動増減差額にこれらの額を加減した額を次期繰越活動増減差額として記載するものとする。
この部に記載するのは、次の4つです。
- 前期繰越活動増減差額
- 基本金取崩額
- その他の積立金積立額
- その他の積立金取崩額
そして、当期活動増減差額にこれらを加減した額が、次期繰越活動増減差額です。次期繰越活動増減差額は、貸借対照表の純資産の部の4つの区分のうちの1つとして出てきます(第26条第2項)。次の「貸借対照表とのつながり」で触れます。
4つの部と各段の差額の関係
ここまでを表にまとめます。
| 部・段 | 記載するもの | 条文 |
|---|---|---|
| サービス活動増減の部 | サービス活動の収益と費用 | 第22条第1項 |
| サービス活動外増減の部 | 経常的な、サービス活動以外の収益と費用 | 第22条第2項 |
| 特別増減の部 | 臨時的な損益、寄附金、基本金組入額など | 第22条第4項 |
| 繰越活動増減差額の部 | 前期繰越、基本金取崩額、積立金の積立・取崩 | 第22条第6項 |
差額の積み上がりは、次のとおりです。
| 差額 | 求め方 | 条文 |
|---|---|---|
| サービス活動増減差額 | サービス活動の収益から費用を控除 | 第22条第1項 |
| サービス活動外増減差額 | サービス活動外の収益から費用を控除 | 第22条第2項 |
| 経常増減差額 | 上の2つを加算 | 第22条第3項 |
| 特別増減差額 | 特別増減の部の収益から費用を控除 | 第22条第4項 |
| 当期活動増減差額 | 経常増減差額に特別増減差額を加算 | 第22条第5項 |
| 次期繰越活動増減差額 | 当期活動増減差額に繰越の各額を加減 | 第22条第6項 |
国庫補助金等特別積立金取崩額の位置
事業活動計算書を読み慣れていない方が最初に戸惑いやすいのが、国庫補助金等特別積立金取崩額です。条文での出てくる場所は2か所あります。
| 場所 | 条文の書き方 | 条文 |
|---|---|---|
| サービス活動費用 | 減価償却費等の控除項目として含める | 第22条第1項後半 |
| 特別費用 | 売却損・処分損の控除項目として含める | 第22条第4項後半 |
第1項の定めは、サービス活動による費用に、減価償却費等の控除項目として国庫補助金等特別積立金取崩額を含める、というものでした。控除項目なので、費用を増やすのではなく、減らす方向に働く項目として入る、と読めます。補助金で整備した固定資産の減価償却費が、そのまま法人の負担として費用に見えてしまうことを、取崩額で調整している、という位置づけです。これは条文の文言から導いた弊社の整理で、取崩額の計算方法そのものは、この記事の一次情報には入っていません。
第4項の定めは、補助金等で整備した固定資産を売却・処分したときの損失の側です。特別費用のところで、同じく控除項目として取崩額が含まれます。
減価償却と国庫補助金等特別積立金取崩しの関係は、減価償却と国庫補助金等特別積立金取崩しの記事で整理しています。この記事では、事業活動計算書のどこに出てくるかまでにとどめます。
基本金や積立金は、どの部に出るか
第22条の定めを、「項目から場所を探す」順に並べ替えます。
| 項目 | 記載される部 | 条文 |
|---|---|---|
| 基本金の組入額 | 特別増減の部 | 第22条第4項 |
| 国庫補助金等特別積立金の積立額 | 特別増減の部 | 第22条第4項 |
| 国庫補助金等特別積立金取崩額 | 費用の控除項目として(2か所) | 第22条第1項・第4項 |
| 基本金取崩額 | 繰越活動増減差額の部 | 第22条第6項 |
| その他の積立金の積立額・取崩額 | 繰越活動増減差額の部 | 第22条第6項 |
ここで注意したい点が2つあります。
- 基本金の組入額は特別増減の部、基本金取崩額は繰越活動増減差額の部と、組入れと取崩しで出る部が違います。同じ基本金の動きでも、見る場所が分かれます。
- 第22条第4項は「収益から費用を控除した額を特別増減差額として記載する」と定めています。基本金組入額などが収益側か費用側かは、この文言からは決まりません。様式や科目で確認してください。
その他の積立金は、繰越活動増減差額の部で、積立額と取崩額の両方が出ます。積立額は次期繰越活動増減差額を減らす方向、取崩額は増やす方向に働く、と読めます(弊社の整理)。基本金の位置づけは、基本金の記事でも整理しています。
数値の流れを、架空の例で確かめる
条文の順に差額が積み上がる様子を、架空の数字で確かめます。金額は説明のための仮の数字で、実在の法人のものではありません。単位は千円とします。
| 段 | 架空の金額 | 求め方 |
|---|---|---|
| サービス活動増減差額 | 4,000 | 収益から費用を控除 |
| サービス活動外増減差額 | 300 | 収益から費用を控除 |
| 経常増減差額 | 4,300 | 4,000 + 300 |
| 特別増減差額 | -800 | 収益から費用を控除 |
| 当期活動増減差額 | 3,500 | 4,300 +(-800) |
| 前期繰越活動増減差額 | 20,000 | 前期から繰り越した額 |
| その他の積立金積立額 | -1,000 | 繰越の部で加減 |
| 次期繰越活動増減差額 | 22,500 | 3,500 + 20,000 +(-1,000) |
この例では、特別増減差額が-800(マイナス)なので、経常増減差額(4,300)より当期活動増減差額(3,500)が小さくなっています。つまり、どの段で数字が動いたのかを見れば、その年度の増減が、サービス活動そのものによるものか、サービス活動外か、臨時的なものか、積立金の動きか、が切り分けられます。実際の様式での符号の表示(マイナスの表し方など)は、この記事の一次情報には入っていないので、様式で確認してください。
企業の損益計算書との対応(読み手の理解を助ける整理)
企業会計の損益計算書に慣れた理事や監事に説明するとき、次のように対応づけると、段の意味がつかみやすくなります。条文に書かれた対応ではなく、弊社の整理です。
| 事業活動計算書の段 | 企業会計での近い位置づけ | 注意 |
|---|---|---|
| サービス活動増減差額 | 営業損益に近い | 本業の活動の段 |
| 経常増減差額 | 経常損益に近い | 利息など経常的なものを加える |
| 当期活動増減差額 | 当期純損益に近い | 臨時的な損益を加えた段 |
ただし、この対応は目安にとどまります。理由は2つです。
- 第19条のとおり、事業活動計算書は純資産の増減を表示する書類で、その中に基本金の組入額や積立金の動きも含まれる。企業の損益計算書にはない動きが入っている
- 法人税等の扱いなど、企業会計の損益計算書にある項目と1対1で対応するかどうかは、今回の一次情報の条文からは決まらない
「損益計算書との違い」という切り口では、繰越活動増減差額の部がある点が、条文のうえで最も分かりやすい違いです(第21条第1項第四号、第22条第6項)。損益計算書は当期の損益で終わりますが、事業活動計算書は次期繰越活動増減差額まで進み、貸借対照表の純資産の部につながります。
読む順番:上から4ステップ
条文の構造から、理事会や監事への説明で使いやすい読み順を整理します。条文から導いた弊社の整理です。
- サービス活動増減差額を見る。 サービス活動の収益から費用を引いた額。費用には国庫補助金等特別積立金取崩額の控除が含まれることを念頭に置く(第22条第1項)
- 経常増減差額を見る。 サービス活動外増減差額を足した段。利息などの経常的な動きを加えた後の額(第22条第3項)
- 当期活動増減差額を見る。 特別増減差額(寄附金、補助金等の収益、基本金組入額、固定資産の売却損益など)を足した段。その年度の動きの全体(第22条第5項)
- 次期繰越活動増減差額を見る。 前期繰越、基本金取崩額、その他の積立金の積立・取崩を加減した段。貸借対照表の純資産の部の1区分につながる(第22条第6項、第26条第2項)
増減の理由を説明するときは、どの段で動いたのかを先に示すと、聞き手が迷いません。たとえば、当期活動増減差額が前年度より小さいとき、サービス活動増減差額が原因なのか、特別増減差額が原因なのかで、説明がまったく変わります。
種類と様式:第7条の2・第23条
4つの種類
計算書類の種類は、第7条の2で定められています。事業活動計算書については、第1項第二号ロが次の4つを挙げています。
次に掲げる事業活動計算書(1)法人単位事業活動計算書(2)事業活動内訳表(3)事業区分事業活動内訳表(4)拠点区分事業活動計算書
第23条は、それぞれが何を表示するかを定めています。
法人単位事業活動計算書は、法人全体について表示するものとする。
事業活動内訳表及び事業区分事業活動内訳表は、事業区分の情報を表示するものとする。
拠点区分事業活動計算書は、拠点区分別の情報を表示するものとする。
整理すると、次のとおりです。
| 種類 | 表示する範囲 | 条文 |
|---|---|---|
| 法人単位事業活動計算書 | 法人全体 | 第23条第1項 |
| 事業活動内訳表 | 事業区分の情報 | 第23条第2項 |
| 事業区分事業活動内訳表 | 事業区分の情報 | 第23条第2項 |
| 拠点区分事業活動計算書 | 拠点区分別の情報 | 第23条第3項 |
事業活動内訳表と事業区分事業活動内訳表は、第2項が同じ文で定めています。2つの違い(どの単位で、どの事業区分を並べるか)は、第23条の文言からは決まりません。様式は第4項が定めています。
第一項から前項までの様式は、第二号第一様式から第四様式までのとおりとする。
条文は「第二号第一様式から第四様式まで」と書いており、4つの種類と様式の対応までは、条文の文言だけでは読み取れません。どの様式がどの種類にあたるか、様式の行の並びがどうなっているかは、様式そのものを確認してください。
作成を省略できる場合
第7条の2第2項は、一部の計算書類の作成を省略できる場合を定めています。
社会福祉法人は、次の各号に掲げる場合には、前項の規定にかかわらず、当該各号に定める計算書類の作成を省略することができる。
第一号は、次のとおりです。
事業区分が法第二条第一項に規定する社会福祉事業のみである場合前項第一号ロ並びに第二号イ(2)及びロ(2)
事業活動計算書に関わる部分を整理すると、次のとおりです。条文は「前項第二号ロ(2)」のように番号で指しているので、第1項の番号に照らして読みます。
| 場合 | 省略できる事業活動計算書 | 条文 |
|---|---|---|
| 事業区分が社会福祉事業のみ | 事業活動内訳表 | 第2項第一号 |
| 拠点区分の数が一 | 事業活動内訳表と事業区分事業活動内訳表 | 第2項第二号 |
| 事業区分の中で拠点区分の数が一 | 事業区分事業活動内訳表 | 第2項第三号 |
第二号と第三号は、条文では次のように書かれています。
- 第二号:拠点区分の数が一である場合の定め。省略できる範囲に「第二号イ(2)及び(3)並びにロ(2)及び(3)」が含まれる
- 第三号:事業区分において拠点区分の数が一である場合の定め。省略できる範囲に「第二号イ(3)及びロ(3)」が含まれる
第1項第二号ロ(2)が事業活動内訳表、(3)が事業区分事業活動内訳表にあたるので、上の表のように読めます。いずれの場合も、法人単位事業活動計算書(ロ(1))と拠点区分事業活動計算書(ロ(4))は省略の対象に挙がっていません。
ただし、この条文は作成を「省略することができる」と定めているだけで、省略が必要という意味ではありません。省略するかどうかは、法人が拠点区分と事業区分をどう設けているかに左右されます。
勘定科目:別表第二
第24条第1項は、次のとおりです。
事業活動計算書に記載する勘定科目は、別表第二のとおりとする。
事業活動計算書の勘定科目は、別表第二で決まります。別表第二の本文は、この記事の一次情報には入っていません。そのため、次の点は、この記事では断定しません。
- どの勘定科目が、どの部(サービス活動、サービス活動外、特別)に入るか
- 科目の細かい名称や、表示の順序
実際の科目の振り分けは、別表第二と、運用上の取扱いを確認してください。
貸借対照表・資金収支計算書とのつながり
貸借対照表の純資産の部につながる
第26条第2項は、貸借対照表の純資産の部の区分を次のように定めています。
純資産の部は、基本金、国庫補助金等特別積立金、その他の積立金及び次期繰越活動増減差額に区分するものとする。
純資産の部の4つの区分のうち、次期繰越活動増減差額は、事業活動計算書の末尾の段(第22条第6項)と同じ名前です。名前が一致していることから、2つの書類が、この区分でつながっていると読めます。事業活動計算書の最後の段が、貸借対照表の純資産の部の1区分に対応する、という関係です。
また、第22条第6項が扱う基本金取崩額と、その他の積立金の積立額・取崩額も、貸借対照表の純資産の部の「基本金」「その他の積立金」の動きに関わると読めます。ただし、金額の一致を定めた条文は、この記事の一次情報には入っていません。個別の金額が合っているかどうかは、様式や通知で確認してください。
貸借対照表の区分や種類は、貸借対照表の記事で整理しています。
資金収支計算書との違い
資金収支計算書は、第13条が定める支払資金の増減を表す書類です。事業活動計算書は純資産の増減を表す書類です(第19条)。表す対象が違うので、同じ取引でも、2つの書類で出る場所が変わります。違いの具体的な整理は、資金収支計算書と事業活動計算書の違いの記事をご覧ください。
条文には書かれていないこと
実務で質問が多い点のうち、今回読んだ条文に書かれていないものを整理します。
| 論点 | 条文での扱い | 決め方 |
|---|---|---|
| 勘定科目の一覧 | 別表第二のとおり(本文は入っていない) | 別表第二で確認 |
| 様式の中身 | 第23条第4項は様式名のみ | 様式を直接確認 |
| 「合理的な基準」の中身 | 第20条第2項に具体例なし | 通知や所轄庁で確認 |
| 基本金組入額の収益・費用の別 | 第22条第4項は部の指定のみ | 様式で確認 |
| 取崩額の計算方法 | 控除項目として含める、までの定め | 通知や会計の専門家で確認 |
| 数値の符号の表示 | 条文に書かれていない | 様式で確認 |
| 損益計算書との1対1の対応 | 条文に書かれていない | 弊社の整理にとどまる |
| 経営分析の指標・目安 | 条文に書かれていない | 条文からは決まらない |
通知や行政の解釈は、この記事では扱っていません。実際の運用では、そうした解釈が示されている場合があるので、個別の判断の前に、運用上の取扱い・留意事項の通知や所轄庁にご確認ください。
法人本部で整理しておくこと
条文の構造から、法人本部が手元でそろえておくとよい整理は次の5つです。条文から導いた弊社の整理で、個別の判断は所轄庁や会計の専門家にご確認ください。
- 作る事業活動計算書の種類を一覧にする。 法人単位・事業活動内訳表・事業区分・拠点区分のうち、自法人で作るもの、省略できるもの(第7条の2第2項)を整理する
- 各段の差額が、条文の順に積み上がっているかを見る。 サービス活動増減差額、経常増減差額、当期活動増減差額、次期繰越活動増減差額の順に、第22条の式どおりになっているか
- 特別増減の部と繰越活動増減差額の部の項目を、条文と照らす。 基本金組入額や積立金の動きが、第22条第4項と第6項のとおりの部に出ているか
- 国庫補助金等特別積立金取崩額の入り方を確かめる。 サービス活動費用の控除項目として入っているか(第22条第1項)
- 次期繰越活動増減差額が、貸借対照表の純資産の部の区分につながっているかを見る。 第26条第2項の区分と名前が合うか
拠点ごとの事業活動計算書を法人本部の手元にそろえておくと、この5つの確認が、拠点の数だけ繰り返す作業ではなく、一覧で見渡せる作業に変わります。
この記事で書いていないこと
次のことは、今回確認した条文には書かれていません。この記事でも書きません。
- 別表第二の勘定科目の一覧と、各科目が入る部:一次情報に本文が入っていません
- 様式(第二号第一様式から第四様式)の中身:一次情報に入っていません
- 基本金の組入額や積立金の記載が、収益側か費用側か:第22条の文言からは決まりません
- 国庫補助金等特別積立金取崩額の計算方法:条文には、含める位置しか書かれていません
- 第6条の本文(基本金・積立金に何を計上するか):一次情報に入っていません
- 経営分析の指標や数値の目安:条文に書かれていません
- 通知・留意事項・所轄庁ごとの運用:今回の一次情報に入っていません
まとめ
- 事業活動計算書は、当該会計年度における全ての純資産の増減の内容を明瞭に表示するもの(第19条)
- 区分は、サービス活動増減・サービス活動外増減・特別増減・繰越活動増減差額の4つの部(第21条)
- 差額は、サービス活動増減差額 → 経常増減差額 → 当期活動増減差額 → 次期繰越活動増減差額の順に積み上がる(第22条)
- 国庫補助金等特別積立金取崩額は、費用の控除項目として入る(第22条第1項、第4項)
- 基本金の組入額と国庫補助金等特別積立金の積立額は特別増減の部、基本金取崩額とその他の積立金の積立・取崩は繰越活動増減差額の部(第22条第4項、第6項)
- 種類は、法人単位、事業活動内訳表、事業区分、拠点区分の4つ(第7条の2、第23条)。拠点区分が1つの場合などは、一部の作成を省略できる
- 損益計算書との対応は、条文に書かれたものではなく、弊社の整理。繰越活動増減差額の部がある点が、いちばん分かりやすい違い
- 勘定科目(別表第二)、様式、取崩額の計算方法は、基準の本則からは決まらない。通知や所轄庁で確認する
参考にした一次情報
- 社会福祉法人会計基準|e-Gov法令検索:第一条、第二条、第七条の二、第十三条、第十九条から第二十四条、第二十六条
令和8年11月5日にe-Gov法令検索から取得した条文によります。本記事は条文の構造を整理したもので、個別の法人の事業活動計算書が基準に適合しているかどうかを判断するものではありません。具体的な判断は、所轄庁や会計の専門家にご確認ください。
拠点ごとの数字を、法人本部で見られる形にしませんか
パレットテクノロジーズは、社会福祉法人様のデジタル化を「現地現物」で伴走支援しています。拠点ごとの事業活動計算書と貸借対照表の数字を、法人本部で1つの台帳として見られる状態に整えるところからご一緒します。ITに詳しい職員がいらっしゃらなくても大丈夫です。