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社会福祉法人の拠点区分|サービス区分との違いと決め方の根拠条文

「拠点区分」と「サービス区分」の違いを説明できても、「なぜそう区分するのか」を条文レベルで説明できる方は少ないのではないでしょうか。決算のたびに拠点区分ごと、サービス区分ごとに同じような集計を作り直している法人担当者の方にとって、この区分の設計は毎年の作業量を左右する重要なテーマです。

本記事では、社会福祉法人会計基準(平成28年厚生労働省令第79号)の条文と、その運用を定めた通知(局長通知・課長通知)、指導監査ガイドラインの記載に基づき、拠点区分・サービス区分・事業区分の違いと、それぞれの決め方の根拠を整理します。結論を先取りすると、区分は「細かく切るほど正しい」ものではなく、「切った分だけ集計・相殺消去・明細書の作業が増える」設計判断です。

拠点区分・サービス区分・事業区分は何が違うのか

社会福祉法人の会計区分には、大きい方から順に次の3つの階層があります。

区分単位のイメージ主な根拠
事業区分社会福祉事業・公益事業・収益事業という事業の種類会計基準省令第10条第1項、社会福祉法第26条
拠点区分一体として運営される施設・事業所・事務所会計基準省令第10条第1項、局長通知・課長通知
サービス区分拠点の中で実施する個々の事業(介護保険サービスなど)会計基準省令第10条第2項、局長通知・課長通知

事業区分は法人全体を「社会福祉事業」「公益事業」「収益事業」という3つの箱に分ける最も大きな括りです。拠点区分はその中で、実際に運営している施設・事業所単位の括りになります。サービス区分は、さらにその拠点の中で行っている個々の事業(介護保険の訪問介護、障害福祉サービスの生活介護など)を区分するものです。

この3層構造そのものは会計基準省令に定められていますが、「具体的にどう決めるか」まで条文を読み込むと、実は条文が定めていることは驚くほど少ないという事実に行き着きます。

会計基準省令が定めているのは第10条の2項だけ

社会福祉法人の会計区分に関する条文は、会計基準省令第10条にまとまっています。この条文自体は、次の2つの文で全てです。

社会福祉法人は、計算書類の作成に関して、事業区分及び拠点区分を設けなければならない。

拠点区分には、サービス区分(社会福祉法人がその行う事業の内容に応じて設ける区分をいう。以下同じ。)を設けなければならない。

条文が定めているのは「事業区分・拠点区分を設けなければならない」「拠点区分の中にサービス区分を設けなければならない」という義務だけです。事業区分の内訳が社会福祉事業・公益事業・収益事業の3種類であることや、拠点区分をどう切るかという具体的な定義は、この条文には一切書かれていません。

会計区分に関連する他の条文も見ておきます。第11条は内部取引の相殺消去を義務づけています。

社会福祉法人は、計算書類の作成に関して、内部取引の相殺消去をするものとする。

また、資金収支計算書・事業活動計算書・貸借対照表という計算書類は、いずれも「法人単位」「事業区分の情報を表示する内訳表」「拠点区分別の情報を表示する計算書」という3階層の様式で作ることが定められています。例えば資金収支計算書について、第17条は次のように定めています。

法人単位資金収支計算書は、法人全体について表示するものとする。

資金収支内訳表及び事業区分資金収支内訳表は、事業区分の情報を表示するものとする。

拠点区分資金収支計算書は、拠点区分別の情報を表示するものとする。

つまり、区分を1つ増やすと、法人単位・事業区分・拠点区分という各階層の計算書類にその区分の情報を反映させる必要が出てくるということです。会計基準省令は「区分を設ける義務」と「区分ごとに計算書類を作る様式」までを定めていますが、「どこで線を引くか」という実務的な判断は、この省令の外側にある通知に委ねられています。

拠点区分の決め方――原則は「予算管理の単位」

拠点区分の具体的な決め方は、局長通知「社会福祉法人会計基準の運用上の取扱いについて」に置かれています。

拠点区分は、原則として、予算管理の単位とし、一体として運営される施設、事業所又は事務所をもって1つの拠点区分とする。具体的な区分については、法令上の事業種別、事業内容及び実施する事業の会計管理の実態を勘案して区分を設定するものとする。

ここで押さえておきたいのは、拠点区分の起点が「一体として運営される施設・事業所・事務所」という組織の実態であり、かつ「原則として予算管理の単位」とされている点です。つまり拠点区分は、単に施設の名称や場所で分けるものではなく、その拠点の予算がどう管理されているかという実務と結びついた単位です。

課長通知「社会福祉法人会計基準の運用上の留意事項について」では、この考え方をさらに具体化しています。

拠点区分は、一体として運営される施設、事業所又は事務所をもって1つの拠点区分とする。

公益事業(社会福祉事業と一体的に実施されているものを除く)若しくは収益事業を実施している場合、これらは別の拠点区分とするものとする。

さらに、次の施設については、施設ごとに独立した拠点区分とすることが明示されています。

次の施設の会計は、それぞれの施設ごと(同一種類の施設を複数経営する場合は、それぞれの施設ごと)に独立した拠点区分とするものとする。
(ア)生活保護法第38条第1項に定める保護施設
(イ)身体障害者福祉法第5条第1項に定める社会参加支援施設
(ウ)老人福祉法第20条の4に定める養護老人ホーム
(エ)老人福祉法第20条の5に定める特別養護老人ホーム
(オ)老人福祉法第20条の6に定める軽費老人ホーム
(カ)老人福祉法第29条第1項に定める有料老人ホーム
(キ)売春防止法第36条に定める婦人保護施設
(ク)児童福祉法第7条第1項に定める児童福祉施設
(ケ)母子及び父子並びに寡婦福祉法第39条第1項に定める母子・父子福祉施設

拠点区分ごとに予算と会計帳簿を編成する

「原則として予算管理の単位」という位置づけは、予算編成のルールとも整合しています。課長通知は、収支予算と会計帳簿について次のように定めています。

法人は、事業計画をもとに資金収支予算書を作成するものとし、資金収支予算書は拠点区分ごとに収入支出予算を編成することとする。

会計帳簿は、原則として、拠点区分ごとに仕訳日記帳及び総勘定元帳を作成し、備え置くものとする。

拠点区分は計算書類上の区分であるだけでなく、予算編成と会計帳簿の単位そのものです。拠点区分を切るかどうかは、その施設・事業所を独立した予算管理の単位として運営しているかどうかという実態を反映させる判断になります。

サービス区分の決め方――法令が要請するものだけを区分する

拠点区分と対照的なのが、サービス区分の位置づけです。局長通知は次のように定めています。

サービス区分は、その拠点で実施する複数の事業について法令等の要請により会計を区分して把握すべきものとされているものについて区分を設定するものとする。例えば、以下のようなものがある。

(1)指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準その他介護保険事業の運営に関する基準における会計の区分

(2)障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準における会計の区分

(3)子ども・子育て支援法に基づく特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業並びに特定子ども・子育て支援施設等の運営に関する基準における会計の区分

また、その他の事業については、法人の定款に定める事業ごとに区分するものとする。サービス区分を設定する場合には、拠点区分資金収支明細書(別紙3(⑩))及び拠点区分事業活動明細書(別紙3(⑪))を作成するものとし、またサービス区分を予算管理の単位とすることができるものとする。

課長通知の該当箇所も、この考え方を裏付けています。

サービス区分については、拠点区分において実施する複数の事業について、法令等の要請によりそれぞれの事業ごとの事業活動状況又は資金収支状況の把握が必要な場合に設定する。

介護保険サービス、障害福祉サービス、特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業については、運用上の取り扱い第3に規定する指定サービス基準等において当該事業の会計とその他の事業の会計を区分すべきことが定められている事業をサービス区分とする。他の事業については、法人の定款に定める事業ごとに区分するものとする。

ここで重要なのは、拠点区分とサービス区分の「できる規定」「べき規定」の違いです。拠点区分は「原則として予算管理の単位とする」という位置づけですが、サービス区分は「予算管理の単位とすることができる」という、できる規定にとどまっています。サービス区分は法人が自由に増やしてよいものではなく、介護保険・障害福祉サービス・子ども・子育て支援の各指定基準が「事業ごとに会計を区分すべき」と要請している事業について設定するのが原則であり、それ以外は定款に定める事業ごとに区分する、という2段構えの決め方になっています。

事業区分(社会福祉事業・公益事業・収益事業)との関係

会計基準省令第10条は「事業区分を設けなければならない」と定めていますが、事業区分の内訳が社会福祉事業・公益事業・収益事業の3種類であることは、社会福祉法本体(第26条など)に根拠があります。この点は、指導監査ガイドラインの記載からも確認できます。

公益事業については、その会計を社会福祉事業に関する会計から区分し、特別の会計として経理しなければならない(法第26条第2項)。

指導監査ガイドラインでは、この「特別の会計として経理」することの意味について、公益事業に係る事業区分を設定し、社会福祉事業や収益事業と区分して会計処理を行うことだと説明されています(会計省令第7条第2項第1号)。収益事業についても同様に、事業区分を設定して社会福祉事業・公益事業と区分することが求められています。

また、拠点区分の決め方に関する課長通知でも、次のように明記されていました。

公益事業(社会福祉事業と一体的に実施されているものを除く)若しくは収益事業を実施している場合、これらは別の拠点区分とするものとする。

つまり、事業区分は「社会福祉事業か、公益事業か、収益事業か」という法人全体の大きな括りを決め、その事業区分の違いは原則として拠点区分の違いにもつながる、という関係になっています。事業区分・拠点区分・サービス区分は独立した3つのルールではなく、上位の区分が下位の区分の切り方に影響する、入れ子構造になっているということです。

区分を切るほど増えるもの――内部取引の相殺消去と明細書

拠点区分やサービス区分を増やすと、法人内部でのお金や資産のやり取り(内部取引)を計算書類上で相殺消去する作業も増えます。局長通知は、内部取引を3つの階層に分けて定義しています。

社会福祉法人が有する事業区分間、拠点区分間において生ずる内部取引について、異なる事業区分間の取引を事業区分間取引とし、同一事業区分内の拠点区分間の取引を拠点区分間取引という。同一拠点区分内のサービス区分間の取引をサービス区分間取引という。

この3階層の内部取引は、それぞれ相殺消去する場所が異なります。

事業区分間取引により生じる内部取引高は、資金収支内訳表及び事業活動内訳表において相殺消去するものとする。当該社会福祉法人の事業区分間における内部貸借取引の残高は、貸借対照表内訳表において相殺消去するものとする。

また、拠点区分間取引により生じる内部取引高は、事業区分資金収支内訳表及び事業区分事業活動内訳表において相殺消去するものとする。当該社会福祉法人の拠点区分間における内部貸借取引の残高は、事業区分貸借対照表内訳表において相殺消去するものとする。

なお、サービス区分間取引により生じる内部取引高は、拠点区分資金収支明細書(別紙3(⑩))及び拠点区分事業活動明細書(別紙3(⑪))において相殺消去するものとする。

整理すると、次のような対応関係になります。

内部取引の種類相殺消去する計算書類
事業区分間取引資金収支内訳表・事業活動内訳表(貸借は貸借対照表内訳表)
拠点区分間取引事業区分資金収支内訳表・事業区分事業活動内訳表(貸借は事業区分貸借対照表内訳表)
サービス区分間取引拠点区分資金収支明細書・拠点区分事業活動明細書

拠点区分間で資金を動かすときの実務については、拠点区分間の繰入金と資金移動で詳しく解説しています。

指導監査ではどこを見られるか

指導監査ガイドラインでは、公益事業・収益事業の会計が適切に区分され、社会福祉事業に支障を来していないかを確認する際の確認書類として、次のように定めています。

計算書類及びその附属明細書(特に「事業区分間及び拠点区分間繰入金明細書」)、事業報告、理事会及び評議員会の議事録

区分そのものの正しさだけでなく、区分間でどれだけの資金が動いているかが「事業区分間及び拠点区分間繰入金明細書」として確認対象になっている点は、区分の設計が監査の着眼点にも直結していることを示しています。

共通する費用・収入の配分基準は「継続適用」が原則

人件費や水道光熱費のように、複数の区分に共通してかかる費用はどう配分するのでしょうか。会計基準省令第14条第2項・第20条第2項は、資金収支計算・事業活動計算のいずれについても「合理的な基準に基づいて当該区分に配分するものとする」と定めています。この「合理的な基準」の内容を具体化しているのが局長通知です。

資金収支計算及び事業活動計算を行うに当たって、人件費、水道光熱費、減価償却費等、事業区分又は拠点区分又はサービス区分に共通する支出及び費用については、合理的な基準に基づいて配分することになるが、その配分基準は、支出及び費用の項目ごとに、その発生に最も密接に関連する量的基準(例えば、人数、時間、面積等による基準、又はこれらの2つ以上の要素を合わせた複合基準)を選択して適用する。

そして、選んだ基準は原則として変えられないことも明記されています。

一度選択した配分基準は、状況の変化等により当該基準を適用することが不合理であると認められるようになった場合を除き、継続的に適用するものとする。

つまり、拠点区分やサービス区分を増やすということは、その区分数だけ「発生に最も密接に関連する量的基準」を項目ごとに選び、かつその基準を継続的に使い続ける、という負担も同時に増やすということです。区分を後から見直したくなっても、配分基準の継続性が原則になっているため、簡単には変更できません。区分の設計は、決算のたびの作業量だけでなく、数年先までの運用しやすさにも関わってきます。

本部会計はどの区分に入れるか

理事会や評議員会の運営、法人役員の報酬など、特定の拠点区分・サービス区分に属さない法人本部の経費は、どう区分すればよいのでしょうか。課長通知は次のように定めています。

本部会計については、法人の自主的な決定により、拠点区分又はサービス区分とすることができるが、社会福祉法第125条第4号に規定される社会福祉連携推進法人への資金の貸付けを行う法人については、拠点区分とする。

法人本部に係る経費については、理事会、評議員会の運営に係る経費、法人役員の報酬等その他の拠点区分又はサービス区分に属さないものであって、法人本部の帰属とすることが妥当なものとする。

本部会計を拠点区分にするかサービス区分にするかは、原則として法人の自主的な決定に委ねられています。ただし、社会福祉連携推進法人へ資金を貸し付けている法人は、本部会計を拠点区分としなければならない、という例外が明記されている点は見落とされがちです。

まとめ:区分は「正しさ」ではなく「設計」で決める

社会福祉法人会計基準第10条が定めているのは、「事業区分・拠点区分を設ける」「拠点区分の中にサービス区分を設ける」という義務だけです。具体的な決め方――拠点区分は一体として運営される施設・事業所・事務所を単位に、原則として予算管理の単位とすること、サービス区分は法令等が会計の区分を要請している事業について設定すること――は、局長通知・課長通知という運用ルールに置かれています。

そして、区分を増やせば、その分だけ内部取引の相殺消去、明細書の作成、共通費用の配分基準の選択と継続適用という作業も増えます。拠点区分・サービス区分の見直しを検討するときは、「実態をより正確に表せるか」だけでなく、「その区分を維持する作業量に見合っているか」という設計の観点から判断することが欠かせません。


区分ごとに同じ集計を作り直す作業、負担になっていませんか

拠点区分・サービス区分が増えるほど、決算のたびに同じような資金収支表や内訳表を区分ごとに作り直す作業も増えていきます。区分の設計そのものから、区分をまたぐ集計作業の効率化まで、社会福祉法人の会計実務に伴走してご相談をお受けしています。

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