運営指導が近づき、事業所のファイルを棚卸ししていると、ふと手が止まることがあります。生活介護や共同生活援助の利用者ごとのファイルには個別支援計画が並んでいるのに、短期入所のファイルには、それに当たるものが見当たらない。「これは作り忘れなのか、それとも最初から要らないのか」と、急に不安になる場面です。
短期入所は、利用者が入れ替わりで泊まるサービスです。同じ人が月に何度か利用することもあれば、年に一度きりの人もいます。生活介護のように「この人の1年間の支援をどう組み立てるか」を毎月考える形とは、日々の動き方が違います。だからこそ、現場では「計画は要るのか、要らないのか」の答えが割れやすく、先輩から後輩へ口頭で伝わったまま、根拠が確認されていないことも少なくありません。
この論点は、感覚で答えると必ずぶれます。答えを出せるのは、指定基準の条文だけです。短期入所は、平成18年厚生労働省令第171号「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」の第114条から第125条の6にまとまっています。この範囲を実際に読み、さらにその中の「準用」の一行がどの条を引いているかをたどると、「計画は求めていないが、記録は求めている」という構造が浮かび上がります。
この記事では、次の3点を整理します。
- 短期入所の章に、個別支援計画もサービス管理責任者も1回も出てこないこと。そして、他のサービスの計画作成の条と何が違うのか
- 第125条の準用リストが、短期入所の運営上の義務の一覧になっていること。とくに、サービスの提供の記録(第19条)と記録の整備(第42条)が準用されていること
- 併設事業所・空床利用型事業所・単独型事業所の3つの形で、人員と設備の基準が変わること
なお、この記事は指定基準の条文だけを根拠にしています。報酬や加算、利用日数の数え方、自治体ごとの運用や様式は扱いません。扱わない範囲は、最後の節に正直に書きました。
まず結論:計画の作成を求める条はなく、記録を求める条がある
先に答えを示します。
- 短期入所の章(第114条から第125条の6)を機械的に数えると、「個別支援計画」は0件、「サービス管理責任者」も0件
- 療養介護には「療養介護計画の作成等」という条(第58条)があり、サービス管理責任者に個別支援計画の作成を担当させると書かれている。短期入所の章には、これに当たる条がない
- 第125条(準用)は、短期入所に当てはめる条を列挙している。その列挙に、計画作成の条は含まれていない
- 一方、同じ列挙に第19条(サービスの提供の記録)と第42条(記録の整備)は含まれている
- したがって、指定基準の条文から読み取れるのは「短期入所では、個別支援計画の作成を義務づける条は見当たらない。しかし、提供のたびの記録と、5年間の記録保存は義務である」ということ
- ただし「計画が要らない」は「何も要らない」ではない。第125条は32か条を準用しており、重要事項の説明・同意、緊急時の対応、業務継続計画、苦情解決、事故発生時の対応、会計の区分などの義務が、ひととおりかかる
つまり、実地指導や運営指導の準備で「短期入所の個別支援計画が無い」と心配するよりも、「準用されている条を一つずつ、書類で説明できるか」を確認するほうが、条文に沿った準備になります。順に、条文で確認していきます。
短期入所の章に「個別支援計画」という語は一度も出てこない
章の範囲と、数えた結果
短期入所の基準は、指定基準の第114条から始まり、第125条の6で終わります。中身を大まかに並べると、次のとおりです。
| 条 | 見出し(条文の括弧書き) | 内容 |
|---|---|---|
| 第114条 | (見出しなし) | 事業が行うべきこと |
| 第115条 | 従業者の員数 | 人員の基準 |
| 第116条 | 準用 | 第51条の準用 |
| 第117条 | 設備及び備品等 | 設備の基準 |
| 第118条 | 指定短期入所の開始及び終了 | 対象者と、提供後の援助 |
| 第119条 | 入退所の記録の記載等 | 受給者証への記載など |
| 第120条 | 利用者負担額等の受領 | 費用の受領と領収証 |
| 第121条 | 指定短期入所の取扱方針 | 提供の基本姿勢 |
| 第122条 | サービスの提供 | 入浴・食事などの提供 |
| 第123条 | 運営規程 | 定める事項 |
| 第124条 | 定員の遵守 | 同時に受け入れられる人数の上限 |
| 第125条 | 準用 | 他の章の32か条の準用 |
| 第125条の2から第125条の6 | 共生型短期入所・基準該当短期入所など | 特例の基準と準用 |
この範囲の条文の全文を確認し、「サービス管理責任者」と「個別支援計画」の語を機械的に検索しました。結果は、どちらも0件です。他の章で見かける「〇〇計画の作成等」という見出しの条も、この範囲にはありません。
第114条は、短期入所の事業が何をするものなのかを、次のように書いています。
短期入所に係る指定障害福祉サービス(以下この章において「指定短期入所」という。)の事業は、利用者の身体その他の状況及びその置かれている環境に応じて入浴、排せつ及び食事の介護その他の必要な保護を適切かつ効果的に行うものでなければならない。
ここで書かれているのは、「入浴、排せつ及び食事の介護その他の必要な保護」を、「利用者の身体その他の状況及びその置かれている環境に応じて」「適切かつ効果的に」行うことです。継続的な計画を立てて達成していく、という書きぶりではありません。その利用の場面で必要な保護を、その人の状況に合わせて行うというのが、短期入所の基本の置き方です。
療養介護の第58条と並べてみる
「計画の作成を求める条」がどういう形をしているのかを知っておくと、短期入所に無いことの意味が分かりやすくなります。今回の一次情報の抜粋に原文がある、療養介護の第58条を見てみます。第1項は次のとおりです。
指定療養介護事業所の管理者は、サービス管理責任者に指定療養介護に係る個別支援計画(以下この章において「療養介護計画」という。)の作成に関する業務を担当させるものとする。
ここには、計画の作成に必要な要素が、はっきり出ています。
- 管理者が、サービス管理責任者に作成の業務を担当させること
- 作成するものが「個別支援計画」であり、その章では「療養介護計画」と呼ぶと定義していること
この条は第1項にとどまらず、第11項まで続きます。抜粋にある内容を、項ごとに整理すると次のとおりです。
| 項 | 求めていること(要点) |
|---|---|
| 第1項 | 管理者が、サービス管理責任者に計画作成の業務を担当させる |
| 第2項 | アセスメント(利用者の能力・環境・日常生活全般の状況等の評価を通じた、希望する生活や課題の把握)と、支援内容の検討 |
| 第3項 | 意思決定に困難を抱える場合の、意思・選好・判断能力等の丁寧な把握 |
| 第4項 | アセスメントは利用者に面接して行う |
| 第5項 | アセスメントと検討の結果に基づく、計画の原案の作成 |
| 第6項 | 計画作成に係る会議の開催と、原案への意見聴取 |
| 第7項 | 原案の説明と、文書による利用者の同意 |
| 第8項 | 計画を利用者と指定特定相談支援事業者等に交付する |
| 第9項 | モニタリングと、少なくとも六月に一回以上の計画の見直し |
| 第10項 | モニタリングの方法(定期的な面接、結果の記録) |
| 第11項 | 計画の変更にも、第2項から第8項までを準用 |
たとえば第9項は、次のように書いています。
サービス管理責任者は、療養介護計画の作成後、療養介護計画の実施状況の把握(利用者についての継続的なアセスメントを含む。以下「モニタリング」という。)を行うとともに、少なくとも六月に一回以上、療養介護計画の見直しを行い、必要に応じて療養介護計画の変更を行うものとする。
アセスメント、会議、同意、交付、モニタリング、見直し。個別支援計画に付いて回る一連の流れは、すべてこの「計画作成の条」に書かれています。逆にいうと、こうした流れが事業所に義務として課されるのは、それを書いた条が、そのサービスに置かれているからです。
短期入所の章には、この第58条に当たる条が置かれていません。第125条の準用リストを見ても、後で確認するとおり、計画作成の条は含まれていません。ですから、少なくとも指定基準の条文の上では、短期入所に、アセスメントから見直しまでの一連の流れを義務づける規定は見当たらないということになります。
なお、この記事で原文を確認できたのは、療養介護の第58条までです。他のサービスの計画作成の条は、この記事では確認していません。
取扱方針の書きぶりも違う
もう一つ、見比べておきたい条があります。「取扱方針」です。療養介護の第57条第1項は、次のように書いています。
指定療養介護事業者は、次条第一項に規定する療養介護計画に基づき、利用者の心身の状況等に応じて、その者の支援を適切に行うとともに、指定療養介護の提供が漫然かつ画一的なものとならないよう配慮しなければならない。
「次条第一項に規定する療養介護計画に基づき」とあります。次条とは第58条のことです。つまり療養介護では、取扱方針の段階から、支援は計画に基づいて行うものとされています。
これに対して、短期入所の第121条第1項は、次のとおりです。
指定短期入所は、利用者の身体その他の状況及びその置かれている環境に応じ適切に提供されなければならない。
ここには「計画に基づき」という言葉がありません。基準になっているのは、利用者の身体その他の状況と、その置かれている環境です。第114条と同じ軸で書かれています。
| 比べる点 | 療養介護(第57条・第58条) | 短期入所(第114条・第121条) |
|---|---|---|
| 支援の拠りどころ | 療養介護計画に基づく | 利用者の身体その他の状況及びその置かれている環境に応じる |
| 計画作成の条 | あり(第58条) | この章にはない |
| サービス管理責任者 | 計画作成の業務を担当 | この章には出てこない(0件) |
| 準用リストでの扱い | 第57条・第58条とも短期入所には準用されていない | ― |
この表の最後の行は、次の章で確認する第125条のリストから読み取れることです。
第125条の準用リストが、短期入所の義務の一覧になっている
第125条の本文
短期入所にどの規定が当てはまるのかを知るうえで、いちばん大切な条が第125条です。第1文は次のとおりです。
第九条、第十一条から第十七条まで、第十九条、第二十条、第二十二条、第二十三条、第二十八条、第二十九条、第三十三条の二、第三十五条の二から第四十二条まで、第六十条、第六十六条、第六十八条、第七十条、第七十四条、第八十七条及び第九十条から第九十二条までの規定は、指定短期入所の事業について準用する。
短期入所の章は、自分の章の中に運営上のルールをすべて書いているわけではありません。第9条以降の、居宅介護・療養介護・生活介護などの章にある条のうち、必要なものを番号で指定して当てはめているのです。
そのため、「短期入所の運営上の義務は何か」を知るには、第114条から第124条までを読むだけでは足りません。第125条が指している条を、実際に開いて読む必要があります。この手間を省くと、たとえば苦情解決や業務継続計画のように、短期入所の章には一言も書かれていない義務を、見落とすことになります。
第2文は、読み替えです。
この場合において、第九条第一項中「第三十一条」とあるのは「第百二十三条」と、第二十条第二項中「次条第一項」とあるのは「第百二十条第一項」と、第二十三条第二項中「第二十一条第二項」とあるのは「第百二十条第二項」と、第九十二条第一項中「前条」とあるのは「第百二十五条において準用する前条」と読み替えるものとする。
読み替えは4か所です。
| 準用される条 | 元の文言 | 読み替え後 | ねらい |
|---|---|---|---|
| 第9条第1項 | 第三十一条 | 第百二十三条 | 説明する運営規程を、短期入所の運営規程(第123条)にする |
| 第20条第2項 | 次条第一項 | 第百二十条第一項 | 金銭の支払を求められる例外の参照先を、短期入所の第120条第1項にする |
| 第23条第2項 | 第二十一条第二項 | 第百二十条第二項 | 法定代理受領を行わない場合の参照先を、短期入所の第120条第2項にする |
| 第92条第1項 | 前条 | 第百二十五条において準用する前条 | 協力医療機関の条(第91条)を、準用を経由して指す |
読み替えの対象になっている4か所以外は、条文の文言のまま当てはまります。文言が「指定居宅介護事業者」となっていても、短期入所の事業者に当てはめて読む、ということです。
準用される条を分類する
抜粋に原文を収めた、準用される32か条を、内容ごとに整理します。条文は居宅介護・療養介護・生活介護の事業者向けの書きぶりですが、要点は次のとおりです。
利用の開始まわりの手続
| 条 | 見出し | 要点 |
|---|---|---|
| 第9条 | 内容及び手続の説明及び同意 | 運営規程の概要、従業者の勤務体制などの重要事項を記した文書を交付して説明し、提供の開始について同意を得る(読み替えで、運営規程は第123条のもの) |
| 第11条 | 提供拒否の禁止 | 正当な理由なく提供を拒まない |
| 第12条 | 連絡調整に対する協力 | 市町村や相談支援事業を行う者が行う連絡調整に、できる限り協力する |
| 第13条 | サービス提供困難時の対応 | 自ら提供することが困難な場合は、他の事業者の紹介など必要な措置を速やかに講じる |
| 第14条 | 受給資格の確認 | 提示された受給者証で、支給決定の有無、有効期間、支給量等を確かめる |
| 第15条 | 介護給付費の支給の申請に係る援助 | 支給決定を受けていない人の申請や、有効期間終了に伴う申請への援助 |
| 第16条 | 心身の状況等の把握 | 心身の状況、環境、他のサービスの利用状況等の把握に努める |
| 第17条 | 事業者等との連携等 | 市町村や他のサービス提供者との密接な連携に努める。提供終了時の適切な援助 |
費用・請求・通知まわり
| 条 | 見出し | 要点 |
|---|---|---|
| 第20条 | 金銭の支払の範囲等 | 金銭の支払を求められるのは、使途が直接利用者の便益を向上させるものなどに限られる。求める際は書面で明らかにし、説明して同意を得る |
| 第22条 | 利用者負担額に係る管理 | 依頼を受けたときの、利用者負担額合計額の算定・報告・通知 |
| 第23条 | 介護給付費の額に係る通知等 | 法定代理受領した給付費の額の通知。法定代理受領を行わない場合のサービス提供証明書の交付 |
| 第29条 | 市町村への通知 | 不正な受給があった、またはしようとしたときの、意見を付した通知 |
| 第41条 | 会計の区分 | 事業所ごとの経理の区分と、他の事業の会計との区分 |
記録
| 条 | 見出し | 要点 |
|---|---|---|
| 第19条 | サービスの提供の記録 | 提供日、内容その他必要な事項を、提供の都度記録する。利用者側から確認を受ける |
| 第42条 | 記録の整備 | 従業者・設備・備品・会計の諸記録の整備。提供に関する諸記録は提供日から5年間保存 |
安全・危機管理・衛生
| 条 | 見出し | 要点 |
|---|---|---|
| 第28条 | 緊急時等の対応 | 病状の急変時などに、速やかに医療機関への連絡等の措置を講じる |
| 第33条の2 | 業務継続計画の策定等 | 感染症や非常災害時の、業務継続のための計画の策定、周知、研修・訓練、見直し |
| 第35条の2 | 身体拘束等の禁止 | 緊急やむを得ない場合を除く禁止。行う場合の記録。適正化のための委員会・指針・研修 |
| 第40条 | 事故発生時の対応 | 都道府県・市町村・家族等への連絡と必要な措置。事故の状況と処置の記録。賠償すべき場合の速やかな損害賠償 |
| 第70条 | 非常災害対策 | 設備、具体的計画、通報・連絡体制、定期的な避難・救出訓練 |
| 第87条 | 健康管理 | 利用者の健康状況への注意と、健康保持の措置 |
| 第90条 | 衛生管理等 | 設備・飲用水の衛生管理。感染症・食中毒の予防のための委員会・指針・研修・訓練 |
| 第91条 | 協力医療機関 | 病状の急変等に備え、あらかじめ協力医療機関を定める |
苦情・情報・倫理
| 条 | 見出し | 要点 |
|---|---|---|
| 第36条 | 秘密保持等 | 業務上知り得た秘密の保持。他の事業者等へ情報提供する際の、あらかじめの文書による同意 |
| 第37条 | 情報の提供等 | 事業内容の情報提供に努める。広告を虚偽・誇大にしない |
| 第38条 | 利益供与等の禁止 | 紹介の対償としての金品の供与・収受の禁止 |
| 第39条 | 苦情解決 | 窓口の設置などの措置。苦情の内容等の記録。市町村・都道府県等の調査や指導・助言への対応。運営適正化委員会の調査・あっせんへの協力 |
運営体制
| 条 | 見出し | 要点 |
|---|---|---|
| 第60条 | 相談及び援助 | 利用者の心身の状況、環境等の的確な把握に努め、相談に応じ、助言その他の援助を行う |
| 第66条 | 管理者の責務 | 従業者・業務の一元的な管理。従業者に規定を守らせるための指揮命令 |
| 第68条 | 勤務体制の確保等 | 事業所ごとの勤務体制の設定。研修の機会の確保。職場における言動により就業環境が害されることを防止する措置 |
| 第74条 | 地域との連携等 | 地域住民やその活動との連携・協力、地域との交流に努める |
| 第92条 | 掲示 | 運営規程の概要、勤務体制、協力医療機関などの重要事項の掲示(書面の備え付けと閲覧でも代えられる) |
このうち、第60条・第66条・第68条・第70条・第74条は療養介護の章の条、第87条・第90条から第92条は生活介護の章の条として書かれています。短期入所の運営基準は、複数のサービスの条を組み合わせて作られているわけです。
重要事項の説明文書(第9条)や掲示(第92条)に何を書くのかは、重要事項説明書の記事で整理しています。苦情解決の体制づくり(第39条)は社会福祉法人の苦情解決、感染症対策(第90条)は介護と障がい福祉の衛生管理と感染症対策の記事も参考になります。
計画作成の条は、この列挙に入っていない
先ほどの分類表を、療養介護の章の条番号に注目してもう一度見てみます。準用されている療養介護の章の条は、第60条(相談及び援助)、第66条(管理者の責務)、第68条(勤務体制の確保等)、第70条(非常災害対策)、第74条(地域との連携等)です。
一方、第57条(取扱方針)と第58条(療養介護計画の作成等)は、第125条の列挙に含まれていません。療養介護の章から短期入所に取り入れる条を選ぶ際に、計画作成に関わる条は選ばれなかったのです。
条文の作りを、整理して並べると次のようになります。
- 短期入所の章の中に、計画作成の条は置かれていない(0件の確認)
- 他の章の条を借りてくる第125条の列挙にも、計画作成の条は含まれていない
- 短期入所の取扱方針(第121条)は、計画に基づくとは書いていない
この3点がそろっているので、「短期入所の個別支援計画の作成義務は、指定基準の条文からは読み取れない」と整理できます。ただし、この記事では通知や報酬告示、自治体の運用は確認していません。そのため、指定基準の外側で何かが求められているかどうかは、この記事だけでは判断できません。指定権者に確認してください。
「計画が無い」のではなく、「計画という形をとらない」
ここで、誤解しやすい点を一つ補足します。計画作成の条が無いことは、「短期入所では利用者の状況を考えなくてよい」という意味ではありません。第121条第1項が「利用者の身体その他の状況及びその置かれている環境に応じ適切に提供されなければならない」と書いているとおり、状況に応じた提供そのものは、義務です。
要するに、条文が求めているのは、支援の中身を「計画」という決まった様式でまとめることではなく、目の前の利用者の状況に合わせて提供し、その提供を記録に残すことです。この区別が、次の章以降の中心になります。
準用されている第19条が求めているのは何か
計画の代わりに、短期入所で書類の中心になるのが、第19条の「サービスの提供の記録」です。第1項は次のとおりです。
指定居宅介護事業者は、指定居宅介護を提供した際は、当該指定居宅介護の提供日、内容その他必要な事項を、指定居宅介護の提供の都度記録しなければならない。
第2項が、記録に際しての手続を定めています。
指定居宅介護事業者は、前項の規定による記録に際しては、支給決定障害者等から指定居宅介護を提供したことについて確認を受けなければならない。
条文は「指定居宅介護」と書かれていますが、第125条によって短期入所に準用されます。当てはめると、次のようになります。
| 要素 | 条文が書いていること | 実務で押さえること |
|---|---|---|
| いつ記録するか | 提供の都度 | 月末にまとめて書く運用は、条文の書きぶりと合わない |
| 何を記録するか | 提供日、内容、その他必要な事項 | 「その他必要な事項」の中身は条文に書かれていない。事業所として何を必要とするかを決めておく |
| 誰の確認を受けるか | 支給決定障害者等 | 条文の文言は「支給決定障害者等」。事業所内で誰を指すのかを、運用として整理しておく |
| 何について確認を受けるか | 指定居宅介護(短期入所)を提供したこと | サービスを提供した事実についての確認 |
ここで、読み違えやすい点が2つあります。
1つ目は、「その他必要な事項」の中身が、条文には書かれていないこと。 提供日と内容は必須として書かれていますが、それ以外に何を記録するかは、事業所の判断に委ねられた書きぶりです。だからこそ、実地指導の場面では「なぜその項目を記録しているのか」を、自分たちで説明できる必要があります。
2つ目は、確認の方法が条文に書かれていないこと。 署名なのか押印なのか、月ごとの一覧に確認欄を設けるのか、といった方法は、条文からは分かりません。条文が求めているのは「確認を受けること」そのものです。方法は、自治体の指導や事業所の運用で決まる部分なので、この記事では書きません。
短期入所は、利用のたびに、入所の日と退所の日が決まっています。提供日や内容を、利用ごとに区切って記録する運用と、相性がよいサービスです。記録の書式を決めるときは、次のような観点で自己点検すると、条文との対応が明確になります。
- 提供日が、利用ごとに特定できるか
- 提供した内容が、入浴・排せつ・食事などの区分で確認できるか(第114条が「入浴、排せつ及び食事の介護その他の必要な保護」を挙げている)
- 支給決定障害者等の確認を、いつ、どの書類で受けたかが分かるか
- 記録が、後から第三者が読んで意味の通る文章になっているか
記録の整備:第42条と、ほかの条が求める記録
第42条は2つのことを求めている
第42条は、記録に関する総括的な条です。第1項は、次のとおりです。
指定居宅介護事業者は、従業者、設備、備品及び会計に関する諸記録を整備しておかなければならない。
第2項は、利用者にかかわる記録の保存期間を定めています。
指定居宅介護事業者は、利用者に対する指定居宅介護の提供に関する諸記録を整備し、当該指定居宅介護を提供した日から五年間保存しなければならない。
2つの項の役割を分けて読むと、次のようになります。
| 項 | 対象 | 求めていること |
|---|---|---|
| 第1項 | 従業者、設備、備品、会計に関する諸記録 | 整備しておくこと |
| 第2項 | 利用者に対する提供に関する諸記録 | 整備し、提供した日から五年間保存すること |
第2項の保存期間の起点は、「当該指定居宅介護を提供した日」です。短期入所では、利用ごとに提供日があります。そのため、書類を保存する際の数え方は、その利用の提供日からが原則の読み方になります。ここでいう「利用者に対する提供に関する諸記録」に具体的にどの書類が含まれるのかは、条文には列挙されていません。第19条の提供記録がその中心であることは読み取れますが、それ以外の書類は、指定権者に確認するのが安全です。
準用されている条が求める、そのほかの記録
記録を求める条は、第19条と第42条だけではありません。第125条が準用する条の中に、特定の場面での記録を求める条が、いくつか含まれています。
| 条 | 記録する場面 | 条文の書き方 |
|---|---|---|
| 第35条の2第2項 | やむを得ず身体拘束等を行うとき | 態様・時間、その際の利用者の心身の状況、緊急やむを得ない理由その他必要な事項を記録 |
| 第39条第2項 | 苦情を受け付けたとき | 苦情の内容等を記録 |
| 第40条第2項 | 事故が発生したとき | 事故の状況と、事故に際して採った処置を記録 |
| 第119条第1項 | 入所または退所するとき | 事業所の名称、入所・退所の年月日その他必要な事項を、受給者証に記載 |
それぞれの条文を引用します。身体拘束等については、次のとおりです。
指定居宅介護事業者は、やむを得ず身体拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由その他必要な事項を記録しなければならない。
苦情については、次のとおりです。
指定居宅介護事業者は、前項の苦情を受け付けた場合には、当該苦情の内容等を記録しなければならない。
事故については、次のとおりです。
指定居宅介護事業者は、前項の事故の状況及び事故に際して採った処置について、記録しなければならない。
3つの条に共通するのは、「何かが起きたとき」に記録が求められている点です。提供の都度の記録(第19条)は日常の記録、これらは出来事の記録と整理できます。
普段と違う出来事が起きたときに、何を、誰が、どの書式で残すかは、あらかじめ決めておくと迷いません。
受給者証への記載も、記録の一種
第119条は、短期入所の章の独自の規定です。第1項は、次のとおりです。
指定短期入所事業者は、入所又は退所に際しては、指定短期入所事業所の名称、入所又は退所の年月日その他の必要な事項(以下この章において「受給者証記載事項」という。)を、支給決定障害者等の受給者証に記載しなければならない。
事業所の書類に残すだけでなく、利用者側の受給者証にも記載するところが、短期入所の特徴です。第2項も見ておきます。
指定短期入所事業者は、自らの指定短期入所の提供により、支給決定障害者等が提供を受けた指定短期入所の量の総量が支給量に達した場合は、当該支給決定障害者等に係る受給者証の指定短期入所の提供に係る部分の写しを市町村に提出しなければならない。
支給量に達したときは、受給者証の該当部分の写しを市町村に提出します。この手続を確実に行うには、事業所として、入退所のたびに受給者証に記載した内容を控えておく必要があります。なお、支給量をどう数えるか、利用日数の上限がどうなっているかは、この記事の一次情報には含まれていません。
計画がなくても求められる「状況の把握」と「意思決定の支援」
「計画が無い」ことと、「利用者の状況を把握しなくてよい」ことは別です。準用と短期入所の章の条文には、状況の把握や意思決定の支援を求める規定が、いくつも入っています。
第16条:心身の状況等の把握
準用される第16条は、次のとおりです。
指定居宅介護事業者は、指定居宅介護の提供に当たっては、利用者の心身の状況、その置かれている環境、他の保健医療サービス又は福祉サービスの利用状況等の把握に努めなければならない。
書かれているのは「把握に努めなければならない」という努力義務の形です。把握する内容は、利用者の心身の状況、その置かれている環境、他のサービスの利用状況等です。第60条の「利用者の心身の状況、その置かれている環境等の的確な把握に努め」という規定も準用されており、把握の重要性は複数の条に現れています。
ここで整理しておきたいのは、把握の結果を計画という書類にまとめることまでは、条文は求めていないということです。把握したことを、提供の記録や引き継ぎの書類にどう反映するかは、事業所の運用の問題です。
第121条:取扱方針
短期入所の取扱方針は、第121条の4項に分かれています。第1項はすでに引用しました。第2項は、次のとおりです。
指定短期入所事業者は、利用者が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、利用者の意思決定の支援に配慮しなければならない。
第3項は、従業者が懇切丁寧を旨とし、利用者またはその介護を行う者に、サービスの提供方法等を理解しやすいように説明することを求めています。第4項は、次のとおりです。
指定短期入所事業者は、その提供する指定短期入所の質の評価を行い、常にその改善を図らなければならない。
第4項の「質の評価を行い、常にその改善を図る」は、計画がなくても求められる義務です。計画のPDCAに頼らずに、事業所として質をどう評価し、改善するかの仕組みを持つ必要があります。どのような方法で評価するのかは、条文には書かれていません。
第122条:サービスの提供
第122条は、提供の中身を定めています。
指定短期入所の提供に当たっては、利用者の心身の状況に応じ、利用者の自立の支援と日常生活の充実に資するよう、適切な技術をもって行わなければならない。
ここでも軸になっているのは「利用者の心身の状況に応じ」です。そのほか、第122条は次のことを定めています。
- 適切な方法で、利用者を入浴させ、または清しきすること(第2項)
- 支給決定障害者等の負担により、事業所の従業者以外の者による保護を受けさせてはならないこと(第3項)
- 支給決定障害者等の依頼を受けた場合に食事を提供すること(第4項)
- 食事は、栄養、身体の状況及び嗜好を考慮し、適切な時間に提供すること(第5項)
第3項は、実務で気をつけたい規定です。
指定短期入所事業者は、その利用者に対して、支給決定障害者等の負担により、当該指定短期入所事業所の従業者以外の者による保護を受けさせてはならない。
事業所の従業者以外の人に、利用者への保護を、利用者側の負担で受けさせることを禁じています。外部の人に何かを依頼する運用を決めるときは、根拠として確認しておく条です。
第118条:対象者と、提供後の援助
第118条第1項は、短期入所の対象になる場面を書いています。
指定短期入所の事業を行う者(以下この章において「指定短期入所事業者」という。)は、介護を行う者の疾病その他の理由により居宅において介護を受けることが一時的に困難となった利用者を対象に、指定短期入所を提供するものとする。
「一時的に困難となった」という書きぶりから、短期入所が継続的な生活の場ではなく、一時的な利用の場として置かれていることが分かります。この位置づけが、計画作成の条が置かれていないこととどう関係するのかは、条文からは読み取れません。ただ、他のサービスと性格の違うサービスであることは、条文の書きぶりから確かめられます。
第2項は、提供の後についての規定です。
指定短期入所事業者は、他の指定障害福祉サービス事業者その他保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者との密接な連携により、指定短期入所の提供後においても提供前と同様に利用者が継続的に保健医療サービス又は福祉サービスを利用できるよう必要な援助に努めなければならない。
利用者が短期入所を終えたあとも、これまでと同じように他のサービスを使い続けられるように援助する、という趣旨です。「努めなければならない」という努力義務の形ですが、他のサービス事業者との連携の記録を、提供の記録に残しておくかどうかは、事業所が判断する部分です。
短期入所の章が独自に定めている運営ルール
準用されている条以外に、短期入所の章そのものが定めている運営ルールを整理しておきます。
第120条:費用の受領
第120条は、利用者から受け取れる費用の範囲を定めています。第3項は、利用者負担額などのほかに、次の費用の支払を受けることができるとしています。
| 号 | 費用 |
|---|---|
| 第1号 | 食事の提供に要する費用 |
| 第2号 | 光熱水費 |
| 第3号 | 日用品費 |
| 第4号 | 日常生活においても通常必要となるものに係る費用であって、支給決定障害者等に負担させることが適当と認められるもの |
第5項は、領収証の交付を求めています。第6項は、これらの費用のサービスの提供に当たっての手続です。
指定短期入所事業者は、第三項の費用に係るサービスの提供に当たっては、あらかじめ、支給決定障害者等に対し、当該サービスの内容及び費用について説明を行い、支給決定障害者等の同意を得なければならない。
「あらかじめ」説明し、同意を得ることが求められています。この同意の記録は、重要事項の説明・同意(第9条)と合わせて、利用開始前の書類として整理しておくと、確認がしやすくなります。費用の具体的な額の基準(別に定めるもの)は、この記事の一次情報には含まれていません。
第123条:運営規程
運営規程には、定めておくべき事項が決まっています。柱書は次のとおりです。
指定短期入所事業者は、次の各号(第百十五条第二項の規定の適用を受ける施設にあっては、第三号を除く。)に掲げる事業の運営についての重要事項に関する運営規程を定めておかなければならない。
各号の事項を整理すると、次の10項目です。
| 号 | 事項 |
|---|---|
| 一 | 事業の目的及び運営の方針 |
| 二 | 従業者の職種、員数及び職務の内容 |
| 三 | 利用定員(空床利用型事業所を設置する施設は除く) |
| 四 | 指定短期入所の内容並びに支給決定障害者等から受領する費用の種類及びその額 |
| 五 | サービス利用に当たっての留意事項 |
| 六 | 緊急時等における対応方法 |
| 七 | 非常災害対策 |
| 八 | 事業の主たる対象とする障害の種類を定めた場合には当該障害の種類 |
| 九 | 虐待の防止のための措置に関する事項 |
| 十 | その他運営に関する重要事項 |
第三号の利用定員は、柱書のかっこ書きで「第百十五条第二項の規定の適用を受ける施設にあっては、第三号を除く」とされています。第115条第2項は空床利用型事業所を定めた項ですから、空床利用型事業所の場合、運営規程に利用定員を定める必要はないという読み方になります。
運営規程は、第9条の重要事項説明の対象(読み替えで第123条の運営規程)であり、第92条の掲示の対象にもなっています。事業所の運営規程を変えたときは、これらの書類を一体で見直す必要があります。
第124条:定員の遵守
第124条は、受け入れる人数の上限を定めています。
指定短期入所事業者は、次に掲げる利用者の数以上の利用者に対して同時に指定短期入所を提供してはならない。
ただし書きが付いています。
ただし、災害、虐待その他のやむを得ない事情がある場合は、この限りでない。
上限になる人数は、事業所の形ごとに決まっています。詳しくは次の章で扱います。
事業所の3つの形で人員と設備の基準が変わる
3つの形の定義
短期入所の基準では、事業所を3つの形に分けています。定義は第115条にあります。1つ目は、施設と一体的に運営を行う「併設事業所」です。
法第五条第八項に規定する施設が指定短期入所の事業を行う事業所(以下この章において「指定短期入所事業所」という。)として当該施設と一体的に運営を行う事業所(以下この章において「併設事業所」という。)を設置する場合において、当該施設及び併設事業所に置くべき従業者の総数は、次の各号に掲げる場合に応じ、当該各号に定める数とする。
2つ目は、第2項の「空床利用型事業所」です。
法第五条第八項に規定する施設が、その施設の全部又は一部が利用者に利用されていない居室を利用して指定短期入所の事業を行う場合において、当該事業を行う事業所(以下この章において「空床利用型事業所」という。)に置くべき従業者の員数は、次の各号に掲げる場合に応じ、当該各号に定める数とする。
3つ目は、第3項の「単独型事業所」です。
併設事業所又は空床利用型事業所以外の指定短期入所事業所(以下この章において「単独型事業所」という。)に置くべき生活支援員の員数は、次の各号に掲げる場合に応じ、当該各号に定める数とする。
定義を整理すると、次のようになります。
| 形 | 条文上の位置づけ | 一言でいうと |
|---|---|---|
| 併設事業所 | 施設と一体的に運営を行う事業所 | 施設と一体で運営する、短期入所の事業所 |
| 空床利用型事業所 | 施設の利用されていない居室を利用して事業を行う事業所 | 施設の空いている居室を使う形 |
| 単独型事業所 | 併設事業所・空床利用型事業所以外の指定短期入所事業所 | 上の2つのどちらにも当たらない形 |
単独型は、「併設でも空床利用型でもないもの」という消去法で定義されています。ですから、自分の事業所がどの形なのかを判断するときは、まず併設事業所と空床利用型事業所の定義に当たるかを確認し、どちらにも当たらなければ単独型、という順序になります。
人員の基準
第115条の人員の基準は、形ごと、そして併設する施設の種類ごとに書かれていて、かなり込み入っています。ここでは、構造だけを表にします。
| 形 | 併設・設置先の施設 | 人員の基準の考え方 |
|---|---|---|
| 併設事業所 | 指定障害者支援施設などの入所施設等 | 施設の利用者数と併設事業所の利用者数の合計を施設の利用者数とみなし、施設として必要とされる数以上 |
| 併設事業所 | 宿泊型自立訓練・共同生活援助などの事業者 | 時間帯で分ける。同時にその本体サービスを提供する時間帯は、本体の利用者数と併設事業所の利用者数の合計で、生活支援員またはこれに準ずる従業者として必要な数以上。それ以外の時間帯は、その日の利用者数の区分で決める |
| 空床利用型事業所 | 入所施設等 | 施設の利用者数と空床利用型事業所の利用者数の合計を施設の利用者数とみなし、施設として必要とされる数以上 |
| 空床利用型事業所 | 宿泊型自立訓練・共同生活援助などの事業者(日中サービス支援型を除く) | 併設事業所と同様に、時間帯で分けて決める |
| 単独型事業所 | 指定生活介護事業所などで事業を行う場合 | 本体サービスの提供時間は、本体の利用者数と単独型事業所の利用者数の合計で、必要な数以上。それ以外の時間はその日の利用者数の区分で決める |
| 単独型事業所 | 指定生活介護事業所など以外で行う場合 | その日の利用者数の区分で決める |
共通して出てくる考え方は、次の2つです。
1つ目は、「合計を本体の利用者数とみなす」という考え方。 併設事業所・空床利用型事業所が入所施設等と一緒になっている場合は、短期入所の利用者数を本体施設の利用者数に足して、必要な人員を計算します。短期入所の利用者が増えれば、その分、本体として必要な人員も増える、ということです。
2つ目は、「その日の利用者数の区分」で決める考え方。 本体サービスを提供していない時間帯などは、その日の指定短期入所の利用者数が6人以下か、7人以上かで、必要な人員を決めます。条文の表現は、次のとおりです。
- 当該日の指定短期入所の利用者の数が六以下の場合は、一以上
- 当該日の指定短期入所の利用者の数が七以上の場合は、次の式
一に当該日の指定短期入所の利用者の数が六を超えて六又はその端数を増すごとに一を加えて得た数以上
7人以上の場合は、「1に、6を超えた人数について、6人またはその端数ごとに1を加えた数」以上です。条文どおりに数えると、たとえば7人から12人までは2以上、13人から18人までは3以上という読み方になります(条文の文言から数えた一例です)。
ここで大切なのは、人員の基準が日ごとの利用者数で決まるという点です。短期入所は、利用者が日によって増減します。そのため、勤務表を作るときは、その日の利用予定者数から必要人員を逆算する仕組みが必要です。
| 確認したいこと | 考え方 |
|---|---|
| 自事業所は3つの形のどれか | 併設・空床利用型の定義に当たるかを先に確認。どちらでもなければ単独型 |
| 併設・設置先の施設は何か | 入所施設等か、宿泊型自立訓練・共同生活援助などか、指定生活介護事業所などか |
| 利用者数の数え方 | 本体の利用者数との合計か、その日の短期入所の利用者数か |
| 必要な員数の計算に使う日 | 「当該日」=その日ごと |
条文には、生活支援員またはこれに準ずる従業者という書き方が出てきます。「これに準ずる従業者」に誰が含まれるのかは、この記事の一次情報からは読み取れません。
設備の基準
第117条は、設備の基準です。形によって、求められる設備が異なります。
| 形 | 設備の基準(条文の書きぶり) |
|---|---|
| 併設事業所 | 併設本体施設の効率的運営が可能で、その施設の利用者の支援に支障がないときは、本体施設の設備(居室を除く)を短期入所の事業に使える(第2項) |
| 空床利用型事業所 | 施設として必要とされる設備を有することで足りる(第3項) |
| 単独型事業所 | 居室、食堂、浴室、洗面所及び便所その他運営上必要な設備を設ける(第4項) |
空床利用型事業所について、条文は次のように書いています。
空床利用型事業所にあっては、当該施設として必要とされる設備を有することで足りるものとする。
単独型事業所については、次のとおりです。
単独型事業所は、居室、食堂、浴室、洗面所及び便所その他運営上必要な設備を設けなければならない。
単独型事業所の設備には、第5項で具体的な基準が定められています。
| 設備 | 基準 |
|---|---|
| 居室 | 一の居室の定員は4人以下。地階に設けない。利用者一人当たりの床面積は、収納設備等を除き8平方メートル以上。寝台またはこれに代わる設備を備える。ブザーまたはこれに代わる設備を設ける |
| 食堂 | 食事の提供に支障がない広さを有する。必要な備品を備える |
| 浴室 | 利用者の特性に応じたものであること |
| 洗面所 | 居室のある階ごとに設ける。利用者の特性に応じたものであること |
| 便所 | 居室のある階ごとに設ける。利用者の特性に応じたものであること |
設備の基準は、単独型事業所に手厚く書かれています。併設や空床利用型が、本体施設の設備を活用できるのに対し、単独型は自前で基準を満たす必要がある、という違いです。
定員の遵守も、3つの形で書き分けられている
第124条の各号は、形ごとに、超えてはならない人数を書き分けています。
| 形 | 超えてはならない人数 |
|---|---|
| 併設事業所 | 利用定員及び居室の定員を超えることとなる利用者の数 |
| 空床利用型事業所 | 当該施設の利用定員(共同生活援助の場合は、共同生活住居及びユニットの入居定員)及び居室の定員を超えることとなる利用者の数 |
| 単独型事業所 | 利用定員及び居室の定員を超えることとなる利用者の数 |
運営規程で利用定員を定める場合(空床利用型事業所を設置する施設を除く)でも、居室の定員でも、両方を超えないことが求められている点に注意が必要です。
共生型短期入所と基準該当短期入所の位置づけ
第125条の2以降は、特例の規定です。抜粋の範囲で、構造だけ整理します。
| 条 | 対象 | 内容 |
|---|---|---|
| 第125条の2 | 共生型短期入所の事業を行う、指定短期入所生活介護事業者・指定介護予防短期入所生活介護事業者 | 満たすべき基準(居室の面積、従業者の員数、技術的支援) |
| 第125条の3 | 共生型短期入所の事業を行う、指定小規模多機能型居宅介護事業者等 | 満たすべき基準(宿泊室の面積、従業者の員数、技術的支援) |
| 第125条の4 | 共生型短期入所 | 準用する条 |
| 第125条の5 | 基準該当短期入所(指定小規模多機能型居宅介護事業所等に関する特例) | 満たすべき基準 |
| 第125条の6 | 基準該当短期入所 | 第120条第2項から第6項までの準用 |
共生型短期入所とは、介護保険の短期入所生活介護などの事業所が、障がい福祉の短期入所を併せて行う形です。第125条の2の第1号は居室の面積についての基準で、条文は長いのですが、読み方は単純です。介護保険側の利用者と、共生型短期入所の利用者を合計した人数で居室の面積を割ったときに、10.65平方メートル以上あることを求めています。第2号は従業者の員数を、第3号は次のとおり技術的支援を求めています。
共生型短期入所の利用者に対して適切なサービスを提供するため、指定短期入所事業所その他の関係施設から必要な技術的支援を受けていること。
技術的支援は、指定短期入所事業所その他の関係施設から受けることが求められています。第125条の3(小規模多機能型居宅介護事業所等)にも、同じ技術的支援の要件があります。宿泊室の面積については、個室以外の宿泊室について「おおむね七・四三平方メートル以上」という基準が書かれています。
共生型短期入所には、どの条が準用されるのでしょうか。第125条の4は、次のとおりです。
第百十四条及び前節(第百二十四条及び第百二十五条を除く。)の規定は、共生型短期入所の事業について準用する。
この条の前半には、第125条と同じく第9条・第19条・第42条などの番号が並んでいます。第19条と第42条は、共生型短期入所にも準用されています。したがって、共生型短期入所でも、サービスの提供の記録と記録の整備は求められるという構造は変わりません。「前節」が指す範囲は、条文の位置関係から短期入所の基準の節を指すと読めますが、この記事ではこれ以上の解釈はしません。
基準該当短期入所の第125条の5は、指定小規模多機能型居宅介護事業者等が、その宿泊サービスを使って行う基準該当短期入所の基準です。宿泊サービスの利用定員が、通いサービスの利用定員の三分の一から九人(サテライト型は六人)までの範囲内とされています。第125条の6は、第120条の費用の受領に関する規定(第2項から第6項まで)を準用しています。
第百二十条第二項から第六項までの規定は、基準該当短期入所の事業について準用する。
共生型・基準該当の事業所は、通常の指定短期入所とは基準の組み立てが違います。自事業所がどれに当たるのかは、指定通知書などで確かめてください。
「計画がない」ことを、運営にどう落とし込むか
ここまでの条文の整理を踏まえて、実務でどう扱うかを考えます。この章は条文の読み取りに基づく、事業所運営の設計の考え方です。条文に書かれていない事項を義務として示すものではありません。
考え方1:計画の代わりに、「利用ごとの記録」を軸にする
計画作成の条が無い以上、短期入所の書類の中心は、第19条の提供記録になります。ここで整理すべきは、次の3点です。
- 利用ごとに、提供日と提供内容が特定できること
- 支給決定障害者等の確認を受けた記録が残っていること
- 5年間、提供日から数えて保存できること
3点目は、書類が電子であっても紙であっても同じです。保存の起点が「利用の提供日」であることから、利用ごとに、そしていつまで保存するかが分かる管理になっていると、廃棄の判断もしやすくなります。
考え方2:「計画がない」ことを、事業所の中で説明できるようにしておく
実地指導や運営指導の場面で、「短期入所には個別支援計画がありません」と伝えるだけでは、説明として弱くなります。説明の根拠を、条文の番号と一緒に整理しておくと、次のように説明できます。
- 短期入所の章(第114条から第125条の6)には、計画作成の条が置かれていない
- 第125条が準用する条にも、計画作成の条は含まれていない
- 取扱方針(第121条)は、利用者の状況に応じた提供を求めている
- その代わりに、提供の都度の記録(第19条)と記録の整備(第42条)を行っている
この4点を、書面にしておくと、担当者が替わっても説明が引き継げます。
ただし、繰り返しになりますが、この記事で確認しているのは指定基準の条文だけです。自治体が独自に求める書式や、報酬の算定に関わる書類があるかどうかは、この記事では分かりません。その確認は、指定権者への問い合わせが必要です。
考え方3:計画(業務継続計画)は別物
短期入所に「計画」の名前が付く書類が全く無いわけではありません。第33条の2の業務継続計画は、準用されています。
指定居宅介護事業者は、感染症や非常災害の発生時において、利用者に対する指定居宅介護の提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(以下「業務継続計画」という。)を策定し、当該業務継続計画に従い必要な措置を講じなければならない。
これは、利用者ごとの支援の計画ではなく、事業所として、感染症や非常災害のときにサービスを続けるための計画です。名前が似ているので混同されがちですが、別のものです。第33条の2は、策定だけでなく、従業者への周知、研修・訓練の定期的な実施、定期的な見直しまで求めています。策定の進め方は、介護と障がい福祉のBCPの記事で整理しています。
個別支援計画の話で不安になる前に、こちらの計画が策定され、研修・訓練の記録まで残っているかを先に確認するほうが、優先順位としては高いといえます。
運営指導に向けた確認の順序(チェックリスト)
ここまでの内容を、事業所で使える確認の順序にまとめます。条文の順序ではなく、「先に決めておくと後が楽になる順」に並べました。
ステップ1:自事業所の位置づけを確認する
- [ ] 自事業所は、併設事業所・空床利用型事業所・単独型事業所のどれか(第115条の定義で確認したか)
- [ ] 共生型短期入所や基準該当短期入所に当たる場合、第125条の2以降の基準を確認したか
- [ ] 併設・設置先の施設の種類(入所施設等か、宿泊型自立訓練・共同生活援助などか、生活介護事業所などか)を把握しているか
ステップ2:人員・設備・定員を確認する
- [ ] その日の利用者数から、必要な員数を確認できる仕組みがあるか(第115条)
- [ ] 設備が、自事業所の形に応じた基準を満たしているか(第117条)
- [ ] 運営規程の利用定員(空床利用型事業所を設置する施設を除く)と居室の定員を超えていないか(第124条)
ステップ3:運営規程と説明の書類を確認する
- [ ] 運営規程に、第123条の10項目が入っているか(第三号は空床利用型の施設を除く)
- [ ] 重要事項を記した文書を交付して説明し、同意を得ているか(第9条)
- [ ] 食事・光熱水費・日用品費などを受け取る場合、あらかじめ説明して同意を得ているか(第120条第6項)
- [ ] 運営規程の概要などを見やすい場所に掲示しているか。または書面を備え付けて閲覧できるようにしているか(第92条)
ステップ4:提供の記録と保存を確認する
- [ ] 提供のたびに、提供日と内容を記録しているか(第19条第1項)
- [ ] 支給決定障害者等の確認を受けているか(第19条第2項)
- [ ] 入退所の際に、受給者証に必要な事項を記載しているか(第119条第1項)
- [ ] 支給量に達したときに、受給者証の写しを市町村に提出する手順があるか(第119条第2項)
- [ ] 利用者の提供に関する諸記録を、提供日から5年間保存しているか(第42条第2項)
- [ ] 従業者・設備・備品・会計の諸記録を整備しているか(第42条第1項)
ステップ5:出来事の記録と体制を確認する
- [ ] 病状の急変時の対応(医療機関への連絡等)が決まっているか(第28条)。協力医療機関を定めているか(第91条)
- [ ] 身体拘束等を行う場合の記録と、適正化の措置(委員会・指針・研修)があるか(第35条の2)
- [ ] 苦情の窓口と、苦情の記録があるか(第39条)
- [ ] 事故の連絡先と、事故の状況・処置の記録があるか(第40条)
- [ ] 業務継続計画が策定され、周知・研修・訓練・見直しの記録があるか(第33条の2)
- [ ] 感染症・食中毒の予防のための委員会・指針・研修・訓練があるか(第90条)
- [ ] 非常災害対策として、具体的計画、連絡体制、避難・救出訓練があるか(第70条)
- [ ] 事業所ごとの経理の区分ができているか(第41条)
ステップ6:計画に関する説明を準備する
- [ ] 「短期入所の章に計画作成の条が無いこと」「第125条の準用リストに計画作成の条が無いこと」を、条文の番号つきで説明できるか
- [ ] 自治体が独自に求める書式の有無を、指定権者に確認したか
運営指導の全体像や、当日に向けた準備は、障害福祉サービスの運営指導の記事で整理しています。あわせて確認してください。
この記事で書いていないこと
一次情報の範囲を守るために、この記事では次の点を扱っていません。指定基準(平成18年厚生労働省令第171号)の条文だけを根拠にしており、以下はこの記事の抜粋には含まれていないためです。
- 報酬の単位数、加算・減算の内容(送迎に関する加算などを含む)
- 利用日数の上限や、その数え方
- 受給者証の支給決定の基準(誰が短期入所を使えるかの判定)
- 医療型短期入所の診療報酬
- 自治体ごとの運用や様式(記録の書式、確認の方法、独自に求める書類など)
- 指定申請の手数料や、申請の手続
- 通知(解釈通知)やQ&Aの内容
- 療養介護以外のサービスにおける、計画作成の条の中身
- 第51条(第116条が準用)、および準用される各条のうち抜粋に原文を収めていない部分の内容
- 「利用者に対する提供に関する諸記録」(第42条第2項)に、具体的にどの書類が含まれるか
- 「その他必要な事項」(第19条第1項)の具体的な項目や、確認(同条第2項)の方法
- 「生活支援員に準ずる従業者」に含まれる職種
- 第117条第1項と、単独型事業所の関係の解釈
とくに、「個別支援計画の作成義務は条文から読み取れない」というこの記事の整理は、指定基準の範囲での話です。報酬の算定や自治体の指導の場面で、計画に類する書類が求められるかどうかは、この記事では確認していません。実際の運用は、指定権者(都道府県・指定都市・中核市など)に確認してください。
まとめ
- 短期入所の章(第114条から第125条の6)には、「個別支援計画」も「サービス管理責任者」も0件。療養介護の第58条のような、計画作成の条は置かれていない
- 第125条(準用)は32か条を指定しており、その中に計画作成の条は含まれていない。取扱方針(第121条)も、計画に基づくとは書いていない
- 計画は求められていないが、サービスの提供の記録(第19条)と記録の整備(第42条)は準用されている。提供のたびに記録し、支給決定障害者等の確認を受け、提供日から5年間保存する
- 計画がなくても、状況の把握(第16条・第60条)、状況に応じた提供(第121条第1項)、意思決定の支援(第121条第2項)、質の評価と改善(第121条第4項)は求められている
- 第125条の準用リストは、短期入所の義務の一覧。重要事項の説明・同意、緊急時対応、業務継続計画、身体拘束・苦情・事故の記録などがひととおりかかる
- 事業所の形は3つ。併設事業所(施設と一体的に運営)、空床利用型事業所(施設の空いた居室を利用)、単独型事業所(どちらでもないもの)。人員と設備の基準はこの形で変わる。人員は「その日の利用者数」で決まる
- 共生型短期入所でも、第19条と第42条は準用される
「短期入所に個別支援計画が無くて大丈夫か」という不安は、条文の番号で説明できる形にしておくと、落ち着いて対応できます。個別支援計画とサービス等利用計画の関係は、サービス等利用計画と個別支援計画の記事で整理しています。実地の指導に向けた全体像は、障害福祉サービスの運営指導の記事もあわせてお読みください。
参考(一次情報)
短期入所の記録と管理を、システム側で軽くしたい事業所様へ
短期入所は、利用者が入れ替わるぶん、提供の都度の記録、受給者証への記載、5年間の保存と、書類の管理が細かく積み上がるサービスです。パレットテクノロジーズは、社会福祉法人様のデジタル化を「現地現物」で伴走支援しています。利用ごとの提供記録、確認の記録、保存期限の管理などを、現場の運用に合わせて一か所にまとめるお手伝いをしています。ITに詳しい職員がいらっしゃらなくても大丈夫です。