「サービス等利用計画」と「個別支援計画」。名前が似ているうえに、どちらも利用者の目標と支援内容を書く書類です。相談支援事業所とサービス事業所の両方を運営されている法人様ほど、どちらが上位なのか、どちらを先に作るのか、内容が食い違っていたらどうするのかという質問が出てきます。
自治体の手引きは支給決定の手続きを中心に書かれており、事業者向けの解説は記入例や様式の説明が中心です。この記事では様式や記入例は扱わず、2つの計画が条文上どう位置づけられ、どこで情報を受け渡すことになっているのかに絞って整理します。
まず押さえる:2つの計画は、別々の省令に書かれている
意外に知られていませんが、この2つの計画は同じ省令に並んで書かれているわけではありません。
| 計画 | 作る人 | 根拠となる省令 |
|---|---|---|
| サービス等利用計画 | 相談支援専門員(指定特定相談支援事業者) | 指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第28号) |
| 個別支援計画 | サービス管理責任者(指定障害福祉サービス事業者) | 指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号) |
事業所側の基準である省令第171号には、「サービス等利用計画」という言葉が1回も出てきません。同様に、相談支援側の基準に「個別支援計画」という言葉は出てきません。
つまり、2つの計画はそれぞれの省令の中で完結して規定されており、「上位・下位」という関係が条文で宣言されているわけではないのです。では連動はどう担保されているのか。答えは「交付」と「会議」です。
誰が作るのか、条文はこう決めている
まず、それぞれの作成担当者です。
指定特定相談支援事業所の管理者は、相談支援専門員に基本相談支援に関する業務及びサービス等利用計画の作成に関する業務を担当させるものとする。
(指定計画相談支援基準第15条第1項第1号)
一方、事業所側です。
指定療養介護事業所の管理者は、サービス管理責任者に指定療養介護に係る個別支援計画(以下この章において「療養介護計画」という。)の作成に関する業務を担当させるものとする。
(指定障害福祉サービス基準第58条第1項)
どちらも「管理者が担当させるものとする」という書き方です。計画を作るのは管理者ではなく、相談支援専門員とサービス管理責任者であることが条文で明示されています。
なお、省令第171号での「個別支援計画」の定義は第3条に置かれています。
指定障害福祉サービス事業者(第三章、第四章、第九章、第十章及び第十一章から第十六章までに掲げる事業を行うものに限る。)は、利用者の意向、適性、障害の特性その他の事情を踏まえた計画(以下「個別支援計画」という。)を作成し、これに基づき利用者に対して指定障害福祉サービスを提供するとともに、その効果について継続的な評価を実施することその他の措置を講ずることにより利用者に対して適切かつ効果的に指定障害福祉サービスを提供しなければならない。
(指定障害福祉サービス基準第3条第1項)
条文上、サービス種別ごとに「療養介護計画」「生活介護計画」などと呼び名が変わりますが、いずれも第3条でいう個別支援計画のことです。
作成順序は「サービス等利用計画が先」で条文上決まっている
順序は、支給決定の手続きの中に組み込まれています。
市町村は、支給要否決定を行うに当たって必要と認められる場合として主務省令で定める場合には、主務省令で定めるところにより、第二十条第一項の申請に係る障害者又は障害児の保護者に対し、第五十一条の十七第一項第一号に規定する指定特定相談支援事業者が作成するサービス等利用計画案の提出を求めるものとする。
(障害者総合支援法第22条第4項)
市町村は、前二項のサービス等利用計画案の提出があった場合には、第一項の主務省令で定める事項及び当該サービス等利用計画案を勘案して支給要否決定を行うものとする。
(障害者総合支援法第22条第6項)
サービス等利用計画「案」は、支給決定の前に作られ、市町村が支給の要否を決める材料になります。 サービスの量(支給量)が決まるのはそのあとですから、個別支援計画はさらに後になります。順に並べると次のとおりです。
| 順 | 何が起きるか | 誰が | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 1 | 支給決定の申請 | 利用者・保護者 | 総合支援法第20条第1項 |
| 2 | サービス等利用計画案の作成・同意・交付 | 相談支援専門員 | 計画相談支援基準第15条第2項第8号・第10号・第11号 |
| 3 | 案を勘案して支給要否決定、受給者証の交付 | 市町村 | 総合支援法第22条第6項・第8項 |
| 4 | 支給決定を踏まえた案の変更とサービス担当者会議 | 相談支援専門員 | 計画相談支援基準第15条第2項第12号 |
| 5 | サービス等利用計画の同意・交付 | 相談支援専門員 | 同第13号・第14号 |
| 6 | 事業所との契約、アセスメント、個別支援計画の原案・会議・同意・交付 | サービス管理責任者 | 指定障害福祉サービス基準第58条第2項〜第8項 |
なお、サービス等利用計画案は必ず相談支援事業所が作るとは限りません。総合支援法第22条第5項は、主務省令で定める場合に「サービス等利用計画案に代えて主務省令で定めるサービス等利用計画案を提出することができる」と定めています。これが、いわゆるセルフプランの根拠です。セルフプランの場合、相談支援事業所が関与しないため、後述する「交付」による情報の受け渡しが働きません。 事業所側は、セルフプランの利用者について計画の全体像をどう把握するかを別に決めておく必要があります。
連動を担保しているのは「交付」。しかも双方向である
2つの計画の連動は、条文上「交付」で担保されています。しかも一方通行ではありません。
相談支援 → 事業所
相談支援専門員は、サービス等利用計画を作成した際には、当該サービス等利用計画を利用者等及び担当者に交付しなければならない。
(指定計画相談支援基準第15条第2項第14号)
ここでいう「担当者」は、同項第12号で「相談支援専門員がサービス等利用計画の作成のために利用者及び当該変更を行ったサービス等利用計画案に位置付けた福祉サービス等の担当者」と定義されています。つまりサービスを提供する事業所側の担当者です。
事業所 → 相談支援
サービス管理責任者は、療養介護計画を作成した際には、当該療養介護計画を利用者及び指定特定相談支援事業者等に交付しなければならない。
(指定障害福祉サービス基準第58条第8項)
個別支援計画を作ったら、相談支援事業所にも交付しなければならないと定められています。ホームヘルプの居宅介護計画や重度障害者等包括支援計画についても、同じく指定特定相談支援事業者等への交付が求められています。
現場でよく聞く「相談支援からサービス等利用計画をもらっていない」「事業所から個別支援計画が上がってこない」という状態は、どちらも省令上の交付義務が果たされていない状態です。運営指導で計画の写しを求められたときに出てこないのは、この交付が運用に組み込まれていないことが原因であることが多くあります。
会議は2つある。混同しない
もう1つ、連動の仕組みが「会議」です。ただし2つの計画で会議の性格が違います。
| サービス担当者会議 | 個別支援計画の作成に係る会議 | |
|---|---|---|
| 招集する人 | 相談支援専門員 | サービス管理責任者 |
| 招集される人 | 利用者と、計画に位置付けた福祉サービス等の担当者 | 利用者と、当該サービスの提供に当たる担当者等 |
| 目的 | 計画案の内容を説明し、担当者から専門的な見地からの意見を求める | 原案の内容について意見を求め、意向を改めて確認する |
| 根拠 | 計画相談支援基準第15条第2項第12号 | 指定障害福祉サービス基準第58条第6項 |
| テレビ電話 | 活用できる | 活用できる |
サービス担当者会議は、複数の事業所をまたいで開かれる会議です。 事業所側から見ると「呼ばれて出る会議」であり、ここで意見を言わないままサービス等利用計画が確定すると、あとから個別支援計画との齟齬が出ます。
一方、個別支援計画の会議は自事業所の中の会議です。両方とも条文上の義務であり、片方をもう片方で代用することはできません。
モニタリングの周期は、2つの計画で根拠が違う
見直しの頻度も、それぞれの省令に別々に書かれています。
サービス等利用計画のモニタリングは、「法第5条第24項に規定する主務省令で定める期間ごとに利用者の居宅等を訪問し、利用者等に面接するほか、その結果を記録しなければならない」(計画相談支援基準第15条第3項第2号)とされています。この期間は利用者の状況に応じて市町村が定めます。
個別支援計画のモニタリングは、「少なくとも六月に一回以上、療養介護計画の見直しを行い」(指定障害福祉サービス基準第58条第9項)と、省令に数値が書かれています。
周期がずれるのは制度上当然のことであり、そろえる必要はありません。ただし、片方の見直しで支援の方針が変わったのに、もう片方が古いままという状態は避けなければなりません。個別支援計画側の頻度と未作成減算の扱いについては、個別支援計画のモニタリング|頻度・記録・未作成減算を条文で整理で詳しく扱っています。
そのほか、条文に書かれていて見落とされやすいこと
- 短期入所は年間180日が目安。相談支援専門員は「利用者の心身の状況等を勘案して特に必要と認められる場合を除き、短期入所を利用する日数が年間百八十日を超えないようにしなければならない」(計画相談支援基準第15条第2項第9号)とされています
- 計画に載せるのは障害福祉サービスだけではない。「指定障害福祉サービス等又は指定地域相談支援以外の福祉サービス等、当該地域の住民による自発的な活動によるサービス等の利用も含めてサービス等利用計画上に位置付けるよう努めなければならない」(同第3号)
- アセスメントは居宅等を訪問して面接。相談支援専門員は「利用者の居宅等を訪問し、利用者及びその家族に面接しなければならない」(同第7号)。サービス管理責任者側も「利用者に面接して行わなければならない」(指定障害福祉サービス基準第58条第4項)とされており、どちらも書類だけでは足りません
- 事業所を変わるときの引き継ぎ。「指定特定相談支援事業者は、利用者等が他の指定特定相談支援事業者の利用を希望する場合その他利用者等から申出があった場合には、当該利用者等に対し、直近のサービス等利用計画及びその実施状況に関する書類を交付しなければならない」(計画相談支援基準第16条)
実務の打ち手は「交付の記録」を残すこと
2つの計画の連動が切れる原因は、担当者の意識ではなく交付が記録に残っていないことです。渡したつもり・もらったつもりが積み重なり、運営指導のときに証跡が出てきません。
決めておくとよいのは次の3つです。
- 交付を「日付つきの事実」として記録する
誰に・いつ・どの版を渡したか。利用者への交付と、相手方事業者への交付は別々に記録します。相談支援側・事業所側の双方で同じ形にしておくと突き合わせができます
- 版を管理する
計画は変更のたびに作り直されます。どの版が現在有効なのかが1か所で分かる状態にしておかないと、サービス担当者会議で古い版を前提に議論することになります
- セルフプランの利用者を別に把握する
相談支援事業所が関与しない以上、交付による受け渡しは働きません。セルフプランかどうかを利用者台帳の項目として持つことで、計画の全体像を確認する手順を分けられます
計画の作成日・同意日・交付日・交付先・次回見直し期限を1か所にまとめてしまえば、「期限が近い利用者」も「交付が済んでいない計画」も同じ画面で見られるようになります。事業所数が増えるほど、この形にしておく効果が大きくなります。
まとめ
- サービス等利用計画と個別支援計画は、根拠となる省令が別(計画相談支援基準と指定障害福祉サービス基準)。互いの省令に相手の計画名は出てこない
- 作るのは相談支援専門員とサービス管理責任者。条文上、管理者が「担当させるものとする」
- 順序はサービス等利用計画案 → 支給決定 → サービス等利用計画 → 個別支援計画。案は支給要否決定の材料になるため、必ず先に作られる
- 連動を担保しているのは交付で、しかも双方向の義務。相談支援専門員は担当者へ、サービス管理責任者は指定特定相談支援事業者等へ交付しなければならない
- 会議は2つあり、サービス担当者会議と個別支援計画の会議は別物。片方で代用できない
- モニタリングの周期は2つの計画で根拠が違う(相談支援側は市町村が定める期間、個別支援計画側は少なくとも6月に1回以上)。ずれるのは当然で、そろえる必要はない
- セルフプランの利用者は交付による受け渡しが働かないため、把握の手順を別に決めておく
参考(一次情報)
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)|e-Gov法令検索
- 指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第28号)|e-Gov法令検索
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)|e-Gov法令検索
※モニタリング期間の定め方、サービス等利用計画案の提出を求める場合の運用、セルフプランの取扱いは市町村ごとに異なります。実際の対応は、自事業所の所在市町村が公表している最新の手引きをご確認ください。本記事では様式・記入例は扱っていません。
2つの計画の期限と交付を1か所で見たい法人様へ
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