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特養の優先入所|基準第7条第2項の努力義務と対象者の限定を読む

特別養護老人ホームの入所申込が、空きの数を大きく上回っている。申込書は届くけれど、誰から入所してもらうのか、どの順で声をかけるのか、説明を求められたら何を根拠に答えるのか。社会福祉法人の施設長や相談員の方なら、一度は悩んだことがあるはずです。

そのとき手元に出てくるのが、「入所指針」「入所判定委員会」「点数表」といった言葉です。ところが、これらは条文のどこに書かれているのでしょうか。「優先入所」と呼んでいる運用は、条文の何を根拠にしているのでしょうか。

この記事では、一次情報として次の条文を取得し、順にたどります。

  • 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(以下「介護老人福祉施設基準」)の第7条
  • 介護保険法の第8条第22項と第27項
  • 介護保険法施行規則の第17条の9と第17条の10
  • 要介護認定等に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等に関する省令(以下「認定省令」)の第1条第1項
  • 特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準(以下「特養基準」)の第13条

条文から決まることと、条文だけでは決まらないことは分けて書きます。条文に書かれていないことは書きません。

先に結論

  • 優先入所の根拠は、介護老人福祉施設基準第7条第2項です。入所申込者の数が、入所定員から入所者の数を差し引いた数を超えている場合に、「介護の必要の程度及び家族等の状況を勘案し」、必要性が高いと認められる入所申込者を優先的に入所させるよう努めなければならないと書かれています。
  • 条文が挙げている勘案事項は、「介護の必要の程度」と「家族等の状況」の2つです。「入所指針」「入所判定」「点数」「委員会」という語は、第7条には出てきません。
  • 入所できる人の範囲は、第7条とは別の条文で限定されています。介護保険法第8条第22項の括弧書きが、第27項の介護老人福祉施設にも及ぶ書き方になっており、施行規則第17条の9が要介護三から五、第17条の10が要介護一・二でやむを得ない事由があると認められる者(いわゆる特例入所)につながります。
  • 第17条の10は、「心身の状況、その置かれている環境その他の事情に照らして」と書くだけで、やむを得ない事由の具体的な考慮事項は省令に書かれていません。
  • 第7条には、優先入所のほかにも、入所時の情報把握(第3項)と、居宅で生活できるかの定期的な検討・協議・退所の援助(第4項から第7項)が並んでいます。
  • 老人福祉法の特別養護老人ホームについての基準である特養基準第13条には、優先入所にあたる項がありません。優先入所の項があるのは、介護老人福祉施設基準の側です。

第7条第2項を読む:優先入所の根拠は「努めなければならない」

まず、優先入所の根拠になっている条文を見ます。介護老人福祉施設基準第7条の見出しは「入退所」で、第2項は次のとおりです。

指定介護老人福祉施設は、入所申込者の数が入所定員から入所者の数を差し引いた数を超えている場合には、介護の必要の程度及び家族等の状況を勘案し、指定介護福祉施設サービスを受ける必要性が高いと認められる入所申込者を優先的に入所させるよう努めなければならない。

出典は、介護老人福祉施設基準第7条第2項です。この1文を、要素に分けて読みます。

条件:申込者の数が「空きの数」を超えているとき

条文の冒頭は、「入所申込者の数が入所定員から入所者の数を差し引いた数を超えている場合には」です。入所定員から入所者の数を引いた数とは、空きの数にあたります。つまり、この規定が動くのは、申込者が空きの数より多いときです。

空きの数以下の申込者しかいない場合は、この項の条件に当たりません。優先の順番を決める必要が生じるのは、申込みが空きを超えたときだと、条文の文言からは読めます。

勘案する事項:「介護の必要の程度」と「家族等の状況」

次に、何を勘案するかです。条文は「介護の必要の程度及び家族等の状況を勘案し」と書いています。挙げられているのは、この2つです。

「介護の必要の程度」と「家族等の状況」のそれぞれが、具体的にどのような事情を指すのかは、第7条第2項には書かれていません。たとえば、要介護度の数字だけで見るのか、日常生活の様子まで見るのか、家族の就労や健康状態をどこまで見るのかは、この条文だけでは決まりません。

結論:「努めなければならない」という書き方

結論部分は、「必要性が高いと認められる入所申込者を優先的に入所させるよう努めなければならない」です。

「優先的に入所させなければならない」ではなく、「優先的に入所させるよう努めなければならない」と書かれています。条文の文言は、優先入所の実施そのものを義務づける形ではなく、そのように努めることを求める形です。

なお、同じ第7条の第4項は「定期的に検討しなければならない」、第5項は「協議しなければならない」と書いています。優先入所の第2項が「努めなければならない」であるのに対し、これらは「しなければならない」です。同じ条の中で書き分けられていることは、条文の文言どおりに確かめられます。この書き分けが実務上どういう意味を持つかは、条文だけでは決まりません。

「入所指針」「入所判定」「点数」は条文にあるのか

ここで、冒頭に挙げた言葉に戻ります。取得した第7条の全文を確かめたところ、「入所指針」「入所判定」「点数」「委員会」という語は、第7条のどの項にも出てきませんでした。

条文が書いているのは、次の点までです。

  • 申込者が空きの数を超えるときは、
  • 介護の必要の程度と家族等の状況を勘案して、
  • 必要性が高いと認められる申込者を優先的に入所させるよう努める

どの項目を何点とするのか、誰がどの場で判定するのか、といった具体的な仕組みは、第7条には書かれていません。実務では、そうした名前の運用が語られることがありますが、この記事で確かめた条文には出てきません。自治体や法人ごとに定めた基準や運用があるかどうかも、この記事では確かめていません。

法人として確認しておきたいのは、自分たちが使っている入所の基準(点数表など)の根拠が、どの文書に書かれているかです。第7条第2項は「勘案する事項」の枠を示しているだけなので、枠の中身を埋めている文書が別にあるはずです。その文書の所在と版を押さえておくと、問合せを受けたときに説明しやすくなります。

誰が入所の対象か:条文をたどる

優先入所の話に入る前に、そもそも特別養護老人ホームに入所できる人が誰なのかが、法令でどう限定されているかを見ておきます。この限定は、介護老人福祉施設基準ではなく、介護保険法とその施行規則にあります。条文は4つ連なっています。

第8条第27項:介護老人福祉施設の定義

介護保険法第8条第27項は、「介護老人福祉施設」を定義しています。前半は次のとおりです。

当該特別養護老人ホームに入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行うことを目的とする施設

出典は、介護保険法第8条第27項です。この定義の主語になっている特別養護老人ホームには、括弧書きで「入所定員が三十人以上であるものに限る」という条件が付いています。入所定員が二十九人以下のものは、第22項の「地域密着型介護老人福祉施設」の側に定義されています。この記事が主に扱うのは、入所定員が三十人以上の介護老人福祉施設です。地域密着型介護老人福祉施設の運営基準の条文は、この記事では確かめていません。

注目したいのは、第27項に出てくる「要介護者」です。この語は、普通に読むと要介護状態にある人全般を指しそうです。ところが、そうは読めない書き方になっています。

第8条第22項の括弧書き:「同じ。」が第27項にも及ぶ

第22項は、地域密着型介護老人福祉施設の定義です。その中に、入所する要介護者を限定する括弧書きがあります。

(厚生労働省令で定める要介護状態区分に該当する状態である者その他居宅において日常生活を営むことが困難な者として厚生労働省令で定めるものに限る。以下この項及び第二十七項において同じ。)

出典は、介護保険法第8条第22項です。この括弧書きには、2つのことが書かれています。

  • 入所する要介護者は、「厚生労働省令で定める要介護状態区分に該当する状態である者」または「その他居宅において日常生活を営むことが困難な者として厚生労働省令で定めるもの」に限られる
  • 「以下この項及び第二十七項において同じ。」とあるので、この限定された意味の「要介護者」は、第27項でも使われる

つまり、第27項の介護老人福祉施設に入所する「要介護者」は、第22項の括弧書きで限定された意味で読むことになります。限定の中身は、いずれも厚生労働省令に委ねられています。その省令が、介護保険法施行規則の第17条の9と第17条の10です。

施行規則第17条の9:要介護三から五

介護保険法施行規則第17条の9の見出しは、「法第八条第二十二項の厚生労働省令で定める要介護状態区分」です。条文は次のとおりです。

法第八条第二十二項の厚生労働省令で定める要介護状態区分は、要介護認定等に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等に関する省令(平成十一年厚生省令第五十八号。以下「認定省令」という。)第一条第一項第三号から第五号までに掲げる要介護状態区分とする。

出典は、施行規則第17条の9です。ここで指されている認定省令第1条第1項の第三号から第五号が、要介護三、要介護四、要介護五にあたります。区分は、要介護認定等基準時間で定められています。表にまとめると、次のとおりです。

区分要介護認定等基準時間施行規則での位置づけ
要介護一三十二分以上五十分未満第17条の10の側
要介護二五十分以上七十分未満第17条の10の側
要介護三七十分以上九十分未満第17条の9
要介護四九十分以上百十分未満第17条の9
要介護五百十分以上第17条の9

表は要点だけを示したものです。認定省令の各号には、「当該状態に相当すると認められないものを除く」や「これに相当すると認められる状態」といった括弧書き・但し書きが付いています。区分の判定の細目は、認定省令の原文を確認してください。

施行規則第17条の10:要介護一・二とやむを得ない事由

もう1つの第17条の10の見出しは、「法第八条第二十二項の居宅において日常生活を営むことが困難な者として厚生労働省令で定めるもの」です。条文は次のとおりです。

法第八条第二十二項の居宅において日常生活を営むことが困難な者として厚生労働省令で定めるものは、認定省令第一条第一項第一号又は第二号に掲げる要介護状態区分に該当する者であって、その心身の状況、その置かれている環境その他の事情に照らして、居宅において日常生活を営むことが困難なことについてやむを得ない事由があると認められるものをいう。

出典は、施行規則第17条の10です。認定省令第1条第1項の第一号と第二号は、要介護一と要介護二です。つまり、要介護一・二の人であっても、その心身の状況、その置かれている環境その他の事情に照らして、居宅において日常生活を営むことが困難なことについてやむを得ない事由があると認められる場合は、入所の対象になりうる、という構造です。この場合が、いわゆる特例入所です。

ここで押さえておきたいのは、次の点です。

  • 条文が挙げているのは、「心身の状況」「その置かれている環境」「その他の事情」という3つの切り口までです。
  • 何をもって「やむを得ない事由があると認められる」とするのか、具体的な考慮事項は、省令には書かれていません。

したがって、特例入所の判断の具体的な基準は、この記事で確かめた条文からは決まりません。第17条の10を読む限り、判断の基準になる材料は「心身の状況」「環境」「その他の事情」の3つであり、これらをどのように見たかを、個々の申込者について説明できるようにしておくことが、法人にとっての課題になります。

4つの条文の関係を整理する

ここまでの流れを、1つの表にまとめます。

条文書かれていること
法第8条第27項介護老人福祉施設に入所する「要介護者」
法第8条第22項の括弧書き省令で定める区分・者に限る。第27項にも及ぶ
施行規則第17条の9認定省令の第三号から第五号(要介護三から五)
施行規則第17条の10第一号・第二号(要介護一・二)でやむを得ない事由があるもの

この表の見方は1つです。優先入所を定める介護老人福祉施設基準第7条第2項は、すでに入所の対象となる人たちの中で、誰を優先するかを定める規定です。入所の対象を限定している条文は、別にあります。優先順位の話と、対象かどうかの話は、条文の上では別の場所にあります。この2つを混ぜて「点数が高いから入所できる」と言い切ると、条文の構造とは合いません。

入所に際しての情報把握:第7条第1項と第3項

優先入所の第2項だけでなく、第7条は入所に関する他の事項も定めています。まず第1項は、施設がサービスを提供する相手を次のように書いています。

指定介護老人福祉施設は、身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難な者に対し、指定介護福祉施設サービスを提供するものとする。

出典は、介護老人福祉施設基準第7条第1項です。「障害」は条文の表記のままです。「常時の介護を必要とし」、かつ「居宅においてこれを受けることが困難な者」というのが、サービスの提供対象の書き方です。

次に、入所の際の情報把握を定めた第3項です。

指定介護老人福祉施設は、入所申込者の入所に際しては、その者に係る居宅介護支援事業者に対する照会等により、その者の心身の状況、生活歴、病歴、指定居宅サービス等(法第八条第二十四項に規定する指定居宅サービス等をいう。以下同じ。)の利用状況等の把握に努めなければならない。

出典は、介護老人福祉施設基準第7条第3項です。読み取れる点は次のとおりです。

  • 把握の対象は、入所申込者の「心身の状況」「生活歴」「病歴」「指定居宅サービス等の利用状況等」です。
  • 把握の方法の例として、「その者に係る居宅介護支援事業者に対する照会等」が挙げられています。
  • これも「把握に努めなければならない」という書き方です。

第2項の優先入所の判断は、「介護の必要の程度及び家族等の状況」を勘案するものでした。一方、第3項の把握の対象には、生活歴・病歴・居宅サービスの利用状況が含まれています。第2項と第3項が条文の上でどうつながるのか(第3項で把握した内容を第2項の勘案に使うのか)は、条文には書かれていません。ただ、申込みを受けたときに居宅介護支援事業者へ照会して情報を集めるという流れは、第3項が明示しています。

入所の際に利用者へ説明する書面については、重要事項説明書の記事で別に整理しています。

入所後も続く検討:第7条第4項から第7項

第7条は、入所した後のことも書いています。優先入所と同じ条に並んでいるので、一緒に見ておきます。

第4項は、居宅で生活できるかどうかの定期的な検討を求めています。

指定介護老人福祉施設は、入所者の心身の状況、その置かれている環境等に照らし、その者が居宅において日常生活を営むことができるかどうかについて定期的に検討しなければならない。

出典は、介護老人福祉施設基準第7条第4項です。続く第5項は、その検討の進め方です。

前項の検討に当たっては、生活相談員、介護職員、看護職員、介護支援専門員等の従業者の間で協議しなければならない。

出典は、第7条第5項です。第6項と第7項は、居宅での生活ができると認められる入所者への援助と、退所の際の情報提供です。第6項は次のとおりです。

指定介護老人福祉施設は、その心身の状況、その置かれている環境等に照らし、居宅において日常生活を営むことができると認められる入所者に対し、その者及びその家族の希望、その者が退所後に置かれることとなる環境等を勘案し、その者の円滑な退所のために必要な援助を行わなければならない。

出典は、第7条第6項です。そして第7項は、次のとおりです。

指定介護老人福祉施設は、入所者の退所に際しては、居宅サービス計画の作成等の援助に資するため、居宅介護支援事業者に対する情報の提供に努めるほか、保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者との密接な連携に努めなければならない。

出典は、第7条第7項です。

第4項から第7項をまとめると、条文の文言から次のことが言えます。

項書かれていること
第4項居宅で生活できるかを定期的に検討する
第5項検討は、生活相談員・介護職員・看護職員・介護支援専門員等で協議する
第6項居宅で生活できると認められる入所者に、円滑な退所の援助を行う
第7項退所に際し、居宅介護支援事業者への情報提供と関係者との連携に努める

入所の話は、「入れること」だけで終わらず、入所後に居宅での生活の可能性を検討し続ける構造になっています。ここで注意したいのは、第4項の「定期的に」がどのくらいの間隔なのかは、条文に書かれていないことです。間隔や記録の様式は、この条文からは決まりません。

また、第4項から第7項は、優先入所の第2項とは別のことを定めています。申込者の優先順位の話と、入所者の居宅復帰の検討の話は、同じ第7条にあっても別の項です。

老人福祉法の基準(特養基準)との書き分け

ここまで読んできたのは、介護老人福祉施設基準です。実は、特別養護老人ホームには、もう1つ、「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」という基準があります。特養基準の第13条にも、見出しが「入退所」の条文があります。取得した第13条の第1項は、次のとおりです。

特別養護老人ホームは、入所予定者の入所に際しては、その者に係る居宅介護支援(介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第八条第二十四項に規定する居宅介護支援をいう。以下同じ。)を行う者に対する照会等により、その者の心身の状況、生活歴、病歴、指定居宅サービス等(同項に規定する指定居宅サービス等をいう。)の利用状況等の把握に努めなければならない。

出典は、特養基準第13条第1項です。第2項以降は、居宅で生活できるかの定期的な検討(第2項)、その検討での協議(第3項)、円滑な退所のための援助(第4項)、退所に際しての情報提供と連携(第5項)です。

介護老人福祉施設基準の第7条と並べると、次の対応が見えます。

内容介護老人福祉施設基準第7条特養基準第13条
入所時の情報把握第3項第1項
居宅復帰の定期的な検討第4項第2項
検討時の協議第5項第3項
退所の援助第6項第4項
退所時の情報提供・連携第7項第5項
優先入所の努力義務第2項該当する項なし

特養基準第13条には、優先入所にあたる項がありません。取得した第13条の全5項を確かめても、介護老人福祉施設基準第7条第2項に当たる規定は見当たりませんでした。優先入所の努力義務が書かれているのは、介護老人福祉施設基準の側です。

「特養の優先入所の根拠はどの基準か」と聞かれたら、介護老人福祉施設基準第7条第2項、と答えることになります。老人福祉法の特別養護老人ホームについての基準である特養基準第13条を探しても、優先入所の項は出てきません。

なお、この2つの基準が、実際の施設にどのように重なって適用されるのかは、この記事では確かめていません。ここで言えるのは、2つの基準の条文を並べたときに、優先入所の項があるのは前者だけだ、というところまでです。

社会福祉法人の実務への引き寄せ:説明できる形で残す

ここからは、条文の読みを踏まえた実務の提案です。提案であり、条文が求めているものではありません。条文が決めているのは「勘案する」「努める」までなので、その中身をどう説明できる形にするかは、法人ごとの設計になります。

申込みから入所までの記録

条文を読んで確認できるのは、次の流れです。

  • 申込みを受ける
  • 入所に際し、居宅介護支援事業者への照会等で、心身の状況・生活歴・病歴・居宅サービスの利用状況等の把握に努める(第7条第3項)
  • 申込者が空きの数を超えるときは、介護の必要の程度と家族等の状況を勘案して、必要性が高い申込者を優先するよう努める(第7条第2項)
  • 対象は、要介護三から五、または要介護一・二でやむを得ない事由があると認められる者(施行規則第17条の9・第17条の10)

この流れに沿って、次のようなことを記録しておくと、あとから説明しやすくなると考えられます。

  • 申込みの受付日と、申込者の要介護区分
  • 要介護一・二の申込者について、やむを得ない事由があると判断した場合は、「心身の状況」「置かれている環境」「その他の事情」のそれぞれをどう見たか
  • 居宅介護支援事業者へ照会した日と、把握した内容
  • 空きが出た時点の申込者の人数と、優先した理由(「介護の必要の程度」と「家族等の状況」のそれぞれをどう見たか)
  • 判定に使った基準の名前と版(法人や自治体が定めた基準を使っている場合)

これらは提案です。記録の様式や保存期間は、この記事で確かめた条文には書かれていません。

待機者の状況を更新し続ける

もう1つ、実務で手間がかかるのが、待機者の状況の更新です。第2項の「介護の必要の程度及び家族等の状況」は、時間とともに変わります。申込みから時間がたつと、要介護区分が変わったり、家族の状況が変わったり、すでに他の施設に入所していたりすることがあります。

どの時点の状況を見て優先したのかを後から説明できるようにするには、申込時点の情報だけでなく、状況を確認した日付と内容を残す必要があります。そのため、申込書の原本、待機者の一覧、状況を確認した記録がばらばらに管理されていると、「いつの情報で判断したのか」が分からなくなります。

入所申込の受付から待機者の状況までをまとめて管理できる、「社福BOX」の入所申込管理のような仕組みを使うと、受付日・状況の更新・判定の経過を1か所に残しやすくなります。ただし、仕組みを入れる前に、まず「何を記録するか」を法人として決めておくことが先です。決める中身は、上に挙げた記録の項目が出発点になります。

判定の経過を誰が説明できるか

最後に、説明できる人の問題です。優先入所の判断には、生活相談員、介護職員、看護職員、介護支援専門員など、複数の職種が関わります。第7条第5項は、居宅復帰の検討について、こうした従業者の間で協議することを求めています。入所の判断そのものについて、協議の場を設けることが条文で求められているかどうかは、第7条第2項には書かれていません。

ただ、実務として考えると、判定の経過を記録に残すと、担当者が替わったときにも説明を引き継げます。「誰が」「いつ」「どの資料を見て」判断したのかが記録されていれば、問合せを受けたときに、特定の個人の記憶に頼らずに答えられます。この点も提案です。

この記事で書いていないこと

最後に、一次情報として確かめた条文の範囲で「決まらない」ことを挙げます。

論点この記事で書かない理由
自治体ごとの入所指針の点数取得した条文には書かれていない
市町村への意見照会の日数取得した条文には書かれていない
地域密着型介護老人福祉施設の基準の条文条文を取得していない
入所判定委員会の構成取得した条文には書かれていない
「介護の必要の程度」「家族等の状況」の中身第7条第2項は2つの語を挙げるだけ
特例入所の具体的な考慮事項第17条の10は3つの切り口を挙げるだけ
居宅復帰の検討の「定期的」の間隔第7条第4項は間隔を書いていない
2つの基準が重なって適用される仕組みこの記事では確かめていない

自治体や法人が定めた入所の基準があるかどうかは、それぞれの文書で確認してください。この記事は、そうした文書の「枠」にあたる条文を読むことに絞っています。

まとめ

  • 優先入所の根拠は、介護老人福祉施設基準第7条第2項です。申込者の数が空きの数を超えるときに、介護の必要の程度と家族等の状況を勘案し、必要性が高い申込者を優先的に入所させるよう努めなければならないと書かれています。
  • 条文が挙げる勘案事項は、「介護の必要の程度」と「家族等の状況」の2つです。「入所指針」「入所判定」「点数」「委員会」という語は、第7条には出てきません。
  • 入所できる人の範囲は、介護保険法第8条第22項の括弧書きが第27項にも及ぶことで限定されています。施行規則第17条の9が要介護三から五、第17条の10が要介護一・二でやむを得ない事由があると認められる者です。特例入所の具体的な考慮事項は、省令に書かれていません。
  • 第7条には、入所時の情報把握(第3項)と、居宅復帰の定期的な検討・協議・退所の援助(第4項から第7項)も並んでいます。特養基準第13条には、優先入所にあたる項がありません。
  • 条文が決めているのは枠までです。申込みの受付、待機者の状況の更新、判定の経過を、誰が見ても説明できる形で残しておくことが、法人側の実務になります。記録の様式は条文に書かれていないので、法人で決めます。

参考にした一次情報


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阪本翔太

阪本翔太

奈良県の中小企業診断士 & ITストラテジスト。 公的機関や大学などで講師もしています。 地方でがんばる人をITで後押ししたい。

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