決算が近づくと、「附属明細書は全部で何種類あって、どれを作ればよいのか」「拠点区分資金収支明細書と拠点区分事業活動明細書は、両方作らないといけないのか」「作った附属明細書は、誰が見られるのか」と手が止まることはないでしょうか。
この記事では、令和8年11月6日に取得した社会福祉法・社会福祉法施行規則・社会福祉法人会計基準(いずれもe-Gov法令検索)と、厚生労働省の法令等データベースに掲載された会計処理等に関する運用上の取扱いに書かれている範囲だけを使って、附属明細書の作る単位、省略できる場合、作った後の扱いを整理します。社会福祉法人会計基準は以下「会計基準」、運用上の取扱いは「取扱い」と書きます。
取扱いは、平成28年3月31日の通知として厚生労働省の法令等データベースに掲載されているものを確認しました。その後の改正がこの掲載版に反映されているかは確認できていません。決算で使う前に、所轄庁や顧問の会計士・税理士に、最新の版を確かめてください。
附属明細書の様式(別紙3)の中身は、今回読んだ範囲には入っていません。この記事は、様式の書き方ではなく、どの附属明細書をどの単位で作るか、という構造の整理に絞ります。
この記事で整理するのは、次の5点です。
- 附属明細書を作る根拠は、法と会計基準のどこに書かれているか
- 会計基準第30条第1項の19種類が、法人全体で作るものと拠点区分ごとに作るものにどう分かれるか
- 省略できる場合は、条文と取扱いのどこに書かれているか
- 計算書類の附属明細書と、事業報告の附属明細書は何が違うか
- 作った後の監査、保存、備置き、閲覧、届出、公表で、附属明細書がどう扱われるか
条文から言えることと言えないことは分けて書きます。「弊社の読み方です」と書いたところは、条文から決まらない部分の整理です。
先に結論
- 社会福祉法人は、毎会計年度終了後3月以内に、計算書類・事業報告とあわせて、それぞれの附属明細書を作成します(法第45条の27第2項)。
- 計算書類の附属明細書は、会計基準第30条第1項が19種類を列挙しています。第1号から第7号は法人全体、第8号から第19号は拠点区分ごとに作成します。
- 取扱い25は、法人全体で作るものについて「附属明細書の中で拠点区分ごとの内訳を示す」としています。拠点区分で作るものについては「法人全体で作成する必要はない」としています。
- 省略できる場合は2つあります。1つは、取扱い25の柱書きの「該当する事由がない場合」です。もう1つは、25(2)ウの、拠点区分資金収支明細書と拠点区分事業活動明細書のどちらを作るかの整理です。
- 25(2)ウは、介護保険サービス・障害福祉サービスの拠点は事業活動明細書、教育・保育給付費・措置費の拠点は資金収支明細書を作るとしています。サービス区分が1つの拠点区分は、両方を省略できます。
- 計算書類の附属明細書と、事業報告の附属明細書は別物です。前者は会計基準第30条、後者は社会福祉法施行規則第2条の25第3項が定めています。
- 附属明細書は、監事の監査(法第45条の28)の対象で、作成から10年間の保存(法第45条の27第4項)の対象です。備置きと閲覧(法第45条の32)、所轄庁への届出(法第59条)にも、条文の文言で入ります。
- 施行規則第10条第3項が公表の対象として挙げている書類は、「計算書類」と役員等名簿などです。附属明細書は、その列挙に挙がっていません。
附属明細書の根拠:法第45条の27第2項と会計基準第1条・第30条
法第45条の27第2項:作成の期限は「毎会計年度終了後三月以内」
作成の根拠は、社会福祉法第45条の27第2項です。
社会福祉法人は、毎会計年度終了後三月以内に、厚生労働省令で定めるところにより、各会計年度に係る計算書類(貸借対照表及び収支計算書をいう。以下この款において同じ。)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。
読み取れることは次の3つです。
- 期限は毎会計年度終了後3月以内
- 計算書類(貸借対照表と収支計算書)と事業報告の両方に、附属明細書がある
- 作り方は厚生労働省令で定めるとされている
3つ目の「厚生労働省令」のうち、計算書類の附属明細書を定めているのが、次に見る会計基準です。事業報告の附属明細書を定めているのは、後の章で見る社会福祉法施行規則です。
会計基準第1条:附属明細書は計算書類とは別に挙がっている
会計基準第1条第1項は、法人が作成するものを次のように並べています。
社会福祉法人は、この省令で定めるところに従い、会計処理を行い、会計帳簿、計算書類(貸借対照表及び収支計算書をいう。以下同じ。)、その附属明細書及び財産目録を作成しなければならない。
「計算書類」は、括弧書きで貸借対照表と収支計算書と定義されています。附属明細書は「その附属明細書」として、計算書類の後ろに別に挙がっています。この区別は、あとの公表の話で効いてきます。
計算書類そのものの全体像は、計算書類の記事で整理しています。
会計基準第30条:19種類と、附属明細書の役割
会計基準第30条第1項は、作成する附属明細書を第一号から第十九号まで列挙しています。第2項は、附属明細書の役割を次のように定めています。
附属明細書は、当該会計年度における計算書類の内容を補足する重要な事項を表示しなければならない。
つまり、附属明細書は、計算書類の数字を補足する位置づけです。第4項は、様式を社会・援護局長が定めるとしています。様式の中身は、今回読んだ範囲には入っていません。
19種類の附属明細書は、作る単位で2つに分かれる
第30条第1項には、作る単位を分ける一文があります。
この場合において、第一号から第七号までに掲げる附属明細書にあっては法人全体について、第八号から第十九号までに掲げる附属明細書にあっては拠点区分ごとに作成するものとする。
この一文で、19種類は次の表のように分かれます。
| 号 | 明細書 | 作る単位 |
|---|---|---|
| 第1号 | 借入金明細書 | 法人全体 |
| 第2号 | 寄附金収益明細書 | 法人全体 |
| 第3号 | 補助金事業等収益明細書 | 法人全体 |
| 第4号 | 事業区分間及び拠点区分間繰入金明細書 | 法人全体 |
| 第5号 | 事業区分間及び拠点区分間貸付金(借入金)残高明細書 | 法人全体 |
| 第6号 | 基本金明細書 | 法人全体 |
| 第7号 | 国庫補助金等特別積立金明細書 | 法人全体 |
| 第8号 | 基本財産及びその他の固定資産(有形・無形固定資産)の明細書 | 拠点区分ごと |
| 第9号 | 引当金明細書 | 拠点区分ごと |
| 第10号 | 拠点区分資金収支明細書 | 拠点区分ごと |
| 第11号 | 拠点区分事業活動明細書 | 拠点区分ごと |
| 第12号 | 積立金・積立資産明細書 | 拠点区分ごと |
| 第13号 | サービス区分間繰入金明細書 | 拠点区分ごと |
| 第14号 | サービス区分間貸付金(借入金)残高明細書 | 拠点区分ごと |
| 第15号 | 就労支援事業別事業活動明細書 | 拠点区分ごと |
| 第16号 | 就労支援事業製造原価明細書 | 拠点区分ごと |
| 第17号 | 就労支援事業販管費明細書 | 拠点区分ごと |
| 第18号 | 就労支援事業明細書 | 拠点区分ごと |
| 第19号 | 授産事業費用明細書 | 拠点区分ごと |
第4号の「事業区分間及び拠点区分間繰入金明細書」の中身にあたる、拠点区分間の繰入金そのものの考え方は、拠点区分間の繰入金の記事で整理しています。第9号の引当金明細書の元になる賞与引当金の考え方は、賞与引当金の記事で同じ会計基準から整理しています。
取扱い25:法人全体で作るものは、中に拠点区分の内訳を示す
取扱い25は、会計基準第30条に規定する附属明細書の取扱いを定めています。法人全体で作る第1号から第7号について、次のように書いています。
以下の附属明細書は、法人全体で作成するものとし、附属明細書の中で拠点区分ごとの内訳を示すものとする。
つまり、法人全体で作る附属明細書は、法人全体を1枚にまとめるだけではなく、その中に拠点区分ごとの内訳を示すものです。拠点区分が複数ある法人では、第1号から第7号の各明細書に、拠点区分の内訳を載せることになります。内訳の具体的な書き方は、様式(別紙3)で決まるもので、今回読んだ範囲には入っていません。
取扱い25(2)ア:拠点区分で作るものは、法人全体で作らなくてよい
拠点区分で作る第8号から第19号については、取扱いは次のように書いています。
以下の附属明細書は拠点区分ごとに作成するものとし、法人全体で作成する必要はないものとする。
つまり、第8号から第19号は、拠点区分ごとに作れば足り、それを法人全体で合算した明細書を別に作る必要はありません。たとえば引当金明細書は、拠点区分ごとに作ります。
取扱いの一覧には、就労支援事業の明細書(第15号から第18号)について、別紙3に「(⑮―2)」のように枝番のついた「多機能型事業所等用」の様式も挙がっています。どの法人がどちらの様式を使うかは、今回読んだ範囲には書かれていません。
省略できる場合:「該当する事由がない場合」と、拠点区分の2つの明細書
第30条第3項:省略は社会・援護局長の定めによる
会計基準第30条第3項は、省略について次のように定めています。
社会福祉法人は、第一項の規定にかかわらず、厚生労働省社会・援護局長(次項及び第三十四条において「社会・援護局長」という。)が定めるところにより、同項各号に掲げる附属明細書の作成を省略することができる。
条文は、省略できるかどうかを、社会・援護局長の定めに委ねています。つまり、会計基準の本則だけを読んでも、どの附属明細書を省略できるかは決まりません。省略の条件は、定めの側を読む必要があります。
取扱い25は、題名に「会計基準省令第30条関係」と書かれており、附属明細書の取扱いを定めた項です。取扱い25が第30条第3項の「定め」にあたるのかを明記した文言は、今回読んだ範囲にはありません。ただ、省略について書かれているのは取扱い25ですので、以下ではこの項を読んでいきます。
取扱い25の柱書き:該当する事由がない場合は省略できる
取扱い25の柱書きは、次のとおりです。
会計基準省令第30条に規定する附属明細書は以下のものをいう。ただし、該当する事由がない場合は、当該附属明細書の作成は省略できるものとする。
読み取れることは、次の2つです。
- 省略できるのは、「該当する事由がない場合」
- 省略できるのは、その事由に対応する附属明細書(「当該附属明細書」)
「該当する事由」が具体的に何を指すかは、条文からは決まりません。弊社の読み方ですが、たとえば借入金がない法人の借入金明細書や、就労支援事業を行っていない法人の就労支援事業の明細書は、対応する事由がないので省略できる、という整理になりそうです。ただし、これは例として読んだものです。どの明細書をどの場合に省略してよいかは、所轄庁の指導や顧問の会計士・税理士に確かめてください。
25(2)ウ:拠点区分の資金収支明細書と事業活動明細書は、どちらかを作る
ここが、経理担当が実務で最も迷いやすい部分です。第10号の拠点区分資金収支明細書と、第11号の拠点区分事業活動明細書について、取扱い25(2)ウは、拠点の種類ごとに、作るものと省略できるものを定めています。
1つ目は、介護保険サービスと障害福祉サービスを実施する拠点です。
介護保険サービス及び障害福祉サービスを実施する拠点については、それぞれの事業ごとの事業活動状況を把握するため、拠点区分事業活動明細書(別紙3(⑪))を作成するものとし、拠点区分資金収支明細書(別紙3(⑩))の作成は省略することができる。
2つ目は、教育・保育給付費と措置費による事業を実施する拠点です。
子どものための教育・保育給付費、措置費による事業を実施する拠点は、それぞれの事業ごとの資金収支状況を把握する必要があるため、拠点区分資金収支明細書(別紙3(⑩))を作成するものとし、拠点区分事業活動明細書(別紙3(⑪))の作成は省略することができる。
3つ目は、それ以外の事業を実施する拠点です。
上記以外の事業を実施する拠点については、当該拠点で実施する事業の内容に応じて、拠点区分資金収支明細書及び拠点区分事業活動明細書のうちいずれか一方の明細書を作成するものとし、残る他方の明細書の作成は省略することができる。
4つ目は、サービス区分が1つの拠点区分です。
また、サービス区分が1つの拠点区分は、拠点区分資金収支明細書(別紙3(⑩))及び拠点区分事業活動明細書(別紙3(⑪))の作成を省略できる。
ここまでを、表にまとめます。
| 拠点の種類 | 作るもの | 省略できるもの |
|---|---|---|
| 介護保険サービス・障害福祉サービス | 第11号 事業活動明細書 | 第10号 資金収支明細書 |
| 教育・保育給付費・措置費による事業 | 第10号 資金収支明細書 | 第11号 事業活動明細書 |
| 上記以外 | 事業内容に応じて、いずれか一方 | 残る他方 |
| サービス区分が1つの拠点区分 | どちらも作らなくてよい | 第10号・第11号の両方 |
この表で、拠点の種類は並列の選択肢ではなく、条文の順に読むものです。どの拠点が1〜3つ目のどれに当たるかを決めたうえで、さらに「サービス区分が1つか」を見る、という二段構えです。サービス区分が1つの拠点区分は、1〜3つ目のどれであっても、両方を省略できる、というのが条文の文言からの読み方です。
「それ以外」の拠点(3つ目)は、「当該拠点で実施する事業の内容に応じて」いずれか一方を作ります。どちらを選ぶかは、取扱いの文言からは決まりません。法人で方針を決め、後で説明できる形で残してください。
省略したら、注記(拠点区分用)に書く
25(2)ウの最後には、省略したときの扱いが書かれています。
上記に従い、拠点区分資金収支明細書(別紙3(⑩))又は拠点区分事業活動明細書(別紙3(⑪))を省略する場合には、計算書類に対する注記(拠点区分用)「4.拠点が作成する計算書類とサービス区分」にその旨を記載するものとする。
つまり、省略して終わりではなく、注記(拠点区分用)の「4.拠点が作成する計算書類とサービス区分」に、省略した旨を書くことが求められています。この注記の様式の中身は、今回読んだ範囲には入っていません。
固定資産の明細書と、就労支援事業の明細書の取扱い
25(2)イ:固定資産の明細書には、種類ごとの残高等を書く
第8号の基本財産及びその他の固定資産の明細書について、取扱い25(2)イは次のように書いています。
基本財産及びその他の固定資産(有形・無形固定資産)の明細書では、基本財産(有形固定資産)及びその他の固定資産(有形固定資産及び無形固定資産)の種類ごとの残高等を記載するものとする。
さらに、次の一文があります。
なお、有形固定資産及び無形固定資産以外に減価償却資産がある場合には、当該資産についても記載するものとする。
つまり、有形固定資産・無形固定資産のほかに減価償却資産がある法人は、その資産もこの明細書に載せます。「等」が何を指すか、どんな減価償却資産があり得るかは、今回読んだ範囲には書かれていません。
25(2)エ:就労支援事業の明細書の対象範囲
第15号から第18号の就労支援事業に関する明細書について、取扱い25(2)エは、まず対象となる事業の範囲を挙げています。
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第5条第13項に規定する就労移行支援
- 同法施行規則第6条第10項第1号に規定する就労継続支援A型
- 同法施行規則第6条第10項第2号に規定する就労継続支援B型
そのうえで、次の一文があります。
また、同法第5条第6項に基づく生活介護等において、生産活動を実施する場合については、就労支援事業に関する明細書を作成できるものとする。
つまり、生活介護等で生産活動を行っている場合は、就労支援事業に関する明細書を作成できるとされています。「作成できる」とあるので、作成が義務とは書かれていません。どの場合に作るのがよいかは、条文からは決まりません。
また、年間売上高が5,000万円以下で、製造業務と販売業務に係る費用を区分することが困難な場合には、第16号と第17号の作成に替えて第18号の就労支援事業明細書を作成すれば足りる、という定めもあります。ただし、これにはあわせて資金収支計算書・事業活動計算書の科目の読み替えも書かれています。その中身は、今回の記事では扱いません。
授産事業の明細書(第19号)や、就労支援事業の販売原価の計算式、製造原価明細書・販管費明細書の細かな取扱いも、取扱い25に書かれています。この記事では、名前に触れるだけにします。
計算書類の附属明細書と、事業報告の附属明細書は別物
附属明細書という言葉は、計算書類だけでなく、事業報告にもあります。法第45条の27第2項が、事業報告にも附属明細書があると書いていることは、先に見たとおりです。
事業報告の附属明細書は、社会福祉法施行規則第2条の25第3項が定めています。
事業報告の附属明細書は、事業報告の内容を補足する重要な事項をその内容としなければならない。
会計基準第30条第2項の「計算書類の内容を補足する重要な事項」と、施行規則第2条の25第3項の「事業報告の内容を補足する重要な事項」は、補足する対象が違います。
| 附属明細書 | 補足する対象 | 根拠 |
|---|---|---|
| 計算書類の附属明細書 | 計算書類の内容 | 会計基準第30条 |
| 事業報告の附属明細書 | 事業報告の内容 | 施行規則第2条の25第3項 |
会計基準第30条の19種類は、計算書類の附属明細書です。事業報告の附属明細書の中身が何を含むかは、今回読んだ範囲には書かれていません。事業報告そのものの内容は、事業報告の記事で整理しています。
あわせて、監査の担当者が違う点にも注意が要ります。会計監査人設置社会福祉法人では、計算書類とその附属明細書は監事及び会計監査人、事業報告とその附属明細書は監事が、監査を受けるとされています(法第45条の28第2項)。
作った後:監査、保存、備置き、閲覧、届出、公表
監事の監査:附属明細書も対象に入る(法第45条の28)
法第45条の28第1項は、次のように定めています。
前条第二項の計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、厚生労働省令で定めるところにより、監事の監査を受けなければならない。
条文の文言のとおり、計算書類と事業報告の附属明細書が、監事の監査の対象に入っています。第3項では、監査を受けた計算書類・事業報告・これらの附属明細書は、理事会の承認を受けなければならないとされています。つまり、附属明細書は、作成した後、監査と理事会の承認の流れに乗る書類です。監査の具体的な方法は、厚生労働省令で定めるとされていて、今回読んだ範囲には入っていません。
10年保存:計算書類を作成した時から(法第45条の27第4項)
保存期間は、法第45条の27第4項が定めています。
社会福祉法人は、計算書類を作成した時から十年間、当該計算書類及びその附属明細書を保存しなければならない。
起算点は計算書類を作成した時で、期間は10年間です。保存の対象は、計算書類と、その附属明細書です。事業報告の附属明細書がこの10年の保存の対象に入るかは、この項の文言からは決まりません。
備置き:主たる事務所5年、従たる事務所3年(法第45条の32第1項・第2項)
備置きは、法第45条の32が定めています。同条第1項は、「計算書類等」の範囲を、括弧書きで「各会計年度に係る計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書並びに監査報告」などと定義しています。つまり、附属明細書は、備置きの対象の「計算書類等」に入ります。
期間と場所は、次のとおりです。
| 備置き先 | 起算点 | 期間 |
|---|---|---|
| 主たる事務所 | 定時評議員会の日の2週間前の日 | 5年間 |
| 従たる事務所 | 定時評議員会の日の2週間前の日 | 3年間 |
従たる事務所には、計算書類等の「写し」を備え置きます。ただし、計算書類等が電磁的記録で作成されている場合に、厚生労働省令で定める措置をとっているときは、従たる事務所への備置きは要らないとされています(第2項ただし書き)。措置の中身は、今回読んだ範囲には入っていません。
閲覧:評議員・債権者と、何人もで範囲が違う(法第45条の32第3項・第4項)
閲覧の請求ができる人は、2つに分かれています。1つ目は、評議員と債権者です(第3項)。
評議員及び債権者は、社会福祉法人の業務時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
請求の内容は、書面の閲覧、書面の謄本・抄本の交付、電磁的記録の表示の閲覧、電磁的方法による提供などです。ただし、債権者が交付などを請求するには、法人の定めた費用を支払う必要があります。
2つ目は、評議員と債権者を除く、何人もです(第4項)。
何人(評議員及び債権者を除く。)も、社会福祉法人の業務時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
こちらの請求は、書面の閲覧と、電磁的記録の表示の閲覧の2つです。第3項にある謄本・抄本の交付や、電磁的方法による提供の請求は、第4項には書かれていません。同項は、正当な理由がないのに拒んではならない、とも定めています。つまり、附属明細書を含む計算書類等は、評議員・債権者は交付なども請求でき、何人もは閲覧が請求できる、という二段の構造です。
所轄庁への届出:計算書類等が入る(法第59条)
届出は、法第59条第1項が定めています。
社会福祉法人は、毎会計年度終了後三月以内に、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる書類を所轄庁に届け出なければならない。
挙がっている書類の1つ目が、「第四十五条の三十二第一項に規定する計算書類等」です。先に見たとおり、その計算書類等の定義には附属明細書が入っているので、条文の文言をたどると、附属明細書も届出の書類に含まれる、という読み方になります。届出の方法や様式は厚生労働省令に委ねられていて、今回読んだ範囲には入っていません。
公表:施行規則第10条第3項の列挙に、附属明細書は挙がっていない
公表については、社会福祉法施行規則第10条第3項が、公表する書類を列挙しています。その第一号は、次のとおりです。
法第四十五条の二十七第二項に規定する計算書類
この第一号が指す「計算書類」は、法第45条の27第2項の括弧書きで、貸借対照表と収支計算書と定義されています。第二号は役員等名簿などです。つまり、この条文が公表の対象として列挙しているのは、計算書類と、役員等名簿などで、附属明細書はその列挙に挙がっていません。
ただし、これは条文の列挙に挙がっていない、という点までです。「附属明細書は公表しなくてよい」と言い切れるかどうかは、この条文だけでは決まりません。公表の運用は、所轄庁によって扱いが違う可能性もあります。公表の範囲は、所轄庁に確かめてください。
条文・取扱いから決まらないこと
| 論点 | 一次情報での扱い | 決め方 |
|---|---|---|
| 「該当する事由がない場合」の中身 | 具体例が書かれていない | 所轄庁や顧問の会計士・税理士に確認する |
| 取扱い25が第30条第3項の「定め」か | 題名は第30条関係とあるが、明記はない | 所轄庁に確認する |
| 「それ以外」の拠点で、どちらの明細書を作るか | 「事業の内容に応じて」とだけある | 法人で方針を決めて残す |
| 生活介護等で就労支援事業の明細書を作るか | 「作成できる」とだけある | 所轄庁や顧問の会計士・税理士に確認する |
| 附属明細書の公表の要否 | 施行規則第10条第3項の列挙に挙がっていない | 所轄庁に確認する |
| 様式(別紙3)の書き方 | 一次情報に入っていない | 最新の様式で確認する |
| 取扱いの最新の内容 | 平成28年の掲載版で、改正の反映は未確認 | 最新の版を確認する |
経理担当が、決算前にそろえておくこと
条文と取扱いの構造から、決算前にそろえておくとよい整理は次の5つです。条文から導いた弊社の整理で、個別の判断は顧問の会計士・税理士と所轄庁にご確認ください。
- 拠点区分とサービス区分を一覧にする。 拠点区分ごとに、サービス区分がいくつあるかを書き出す。サービス区分が1つの拠点区分は、第10号・第11号を省略できる
- 拠点ごとの事業の種類を決める。 介護保険サービス・障害福祉サービス、教育・保育給付費・措置費、それ以外のどれに当たるかで、第10号・第11号の作る側が決まる
- 19種類を1つの表にして、作る・省略するを決める。 法人全体で作るもの(第1号〜第7号)は、拠点区分の内訳を中に示す。省略する明細書は、事由がないことを説明できるようにしておく
- 省略したら、注記(拠点区分用)に書く。 第10号か第11号を省略した拠点は、「4.拠点が作成する計算書類とサービス区分」に記載する
- 作成後の流れを確かめる。 監事の監査、理事会の承認、定時評議員会の2週間前からの備置き、所轄庁への届出に、附属明細書が入っているかを確かめる
拠点が複数あると、附属明細書の元になる数字を、拠点ごとに集め直すことになりがちです。集計のたびに表を作り直していると、計算書類と附属明細書の数字がずれる原因になります。最初から、拠点区分・サービス区分ごとの数字を1つの台帳で持っておくと、決算のたびの手間が減ります。
この記事で書いていないこと
次のことは、今回確認した法・施行規則・会計基準と取扱いには書かれていません。この記事でも書きません。
- 様式(別紙3)の中身と書き方:一次情報に入っていません
- 「多機能型事業所等用」の様式を使う法人の範囲:書かれていません
- 事業報告の附属明細書に載せる事項の具体例:施行規則に「補足する重要な事項」とあるだけです
- 監査・届出・公表の具体的な方法:厚生労働省令に委ねられていて、今回は確認していません
- 従たる事務所への備置きを要さない措置の中身:厚生労働省令で定める措置で、今回は確認していません
- 取扱いの改正の反映状況:掲載版は確認しましたが、最新版かは未確認です
まとめ
- 附属明細書は、毎会計年度終了後3月以内に、計算書類・事業報告とあわせて作成する(法第45条の27第2項)
- 計算書類の附属明細書は、会計基準第30条第1項の19種類。第1号〜第7号は法人全体、第8号〜第19号は拠点区分ごとに作る
- 法人全体で作るものは、中に拠点区分の内訳を示す。拠点区分で作るものは、法人全体で作る必要はない(取扱い25(1)・(2)ア)
- 省略は、取扱い25の柱書きの「該当する事由がない場合」と、25(2)ウの拠点区分資金収支明細書・事業活動明細書の整理
- 介護保険サービス・障害福祉サービスの拠点は事業活動明細書、教育・保育給付費・措置費の拠点は資金収支明細書を作る。サービス区分が1つの拠点区分は両方を省略できる。省略したら注記(拠点区分用)の「4.」に記載する
- 計算書類の附属明細書(会計基準第30条)と、事業報告の附属明細書(施行規則第2条の25第3項)は別物
- 附属明細書は、監事の監査(法第45条の28)、10年保存(法第45条の27第4項)、備置き(主たる事務所5年・従たる事務所3年)、閲覧、届出の流れに入る
- 施行規則第10条第3項の公表の列挙に、附属明細書は挙がっていない。公表の範囲は所轄庁に確かめる
参考にした一次情報
- 社会福祉法人会計基準|e-Gov法令検索:第一条、第三十条
- 社会福祉法|e-Gov法令検索:第四十五条の二十七、第四十五条の二十八、第四十五条の三十二、第五十九条
- 社会福祉法施行規則|e-Gov法令検索:第二条の二十五、第十条
- 社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の取扱いについて|厚生労働省 法令等データベース:25 附属明細書について(会計基準省令第30条関係)
条文は2026年11月6日にe-Govから取得したものによります。取扱いは、同日に厚生労働省の法令等データベースから取得した、平成28年3月31日の通知の掲載版です。その後の改正がこの掲載版に反映されているかは確認していません。本記事は条文の構造を整理したもので、個別の法人の会計処理が適切かどうかを判断するものではありません。具体的な判断は、顧問の会計士・税理士や所轄庁にご確認ください。
拠点ごとの数字を、決算のたびに集め直していませんか
パレットテクノロジーズは、社会福祉法人様のデジタル化を「現地現物」で伴走支援しています。拠点区分・サービス区分ごとの数字を、決算前に同じ様式で集め、附属明細書の準備に使える状態に整えるところからご一緒します。ITに詳しい職員がいらっしゃらなくても大丈夫です。