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障害者雇用納付金|法定雇用率は本則になく、100人以下は附則の話

職員数が増えてきた法人の本部では、「うちは100人を超えたので、障害者雇用納付金の申告が必要になる」という話が出ます。このとき、会話のなかに2つの言葉がよく登場します。「法定雇用率」と「100人以下は納付金がかからない」 です。

ところが、どちらも条文の言い方とは少し違います。障害者の雇用の促進等に関する法律(以下「法」)の本則を2026年10月17日にe-Govから取得して数えると、次のとおりです(附則は含みません)。

探した語法の本則
法定雇用率0回
報奨金0回(附則第4条にだけ出てきます)

「法定雇用率」は通称で、条文の言葉ではありません。 条文にあるのは「障害者雇用率」(第43条)と「基準雇用率」(第54条第3項) の2つです。また、100人以下の事業主が納付金の対象から外れているのは、本則ではなく附則第4条の暫定措置で、条文の言葉は「当分の間」です。

この記事では、この2点を条文で確かめたうえで、法人本部が毎月の記録として何を持っておくとよいかまで整理します。納付金の単価や雇用率の数値は、条文には書かれていません。この記事でも数字は扱いません。

「法定雇用率」ではなく、条文は2つの率を使い分けている

条文のなかで「法定雇用」という語が出てくるのは、率ではなく人数の側です。第43条第1項は、事業主に次の義務を課しています。

その雇用する対象障害者である労働者の数が、その雇用する労働者の数に障害者雇用率を乗じて得た数(その数に一人未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。第四十六条第一項において「法定雇用障害者数」という。)以上であるようにしなければならない。

「法定雇用障害者数」は、労働者の数に障害者雇用率を乗じて得た数(端数は切り捨て)に付けられた名前です。率ではありません。そして、その率である障害者雇用率は第43条第2項が定めており、「少なくとも五年ごと」に政令で定めるとされています。

一方、納付金の額を計算する側には、別の語が出てきます。第54条第3項です。

前二項の基準雇用率は、労働者の総数に対する対象障害者である労働者の総数の割合を基準として設定するものとし、少なくとも五年ごとに、当該割合の推移を勘案して政令で定める。

2つの率は、条文の上では次のように役割が分かれています。

語条使われる場面
障害者雇用率第43条事業主が雇う対象障害者の数が足りているかを見る(雇用義務の側)
基準雇用率第54条第3項納付金の額を計算する(納付金の側)。第50条第2項の単位調整額の説明にも出てきます

2つは別の条で、別々に政令へ委ねられています。 設定の仕方(労働者の総数に対する対象障害者である労働者の総数の割合を基準にする、少なくとも五年ごとに政令で定める)は似た書き方ですが、条文は同じものとして扱っていません。実際の率の数値は政令の側にあるので、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下「機構」)や厚生労働省の最新の案内で確認してください。

なお、第37条第1項は、事業主の責務を次のように置いています。

全て事業主は、対象障害者の雇用に関し、社会連帯の理念に基づき、適当な雇用の場を与える共同の責務を有するものであつて、進んで対象障害者の雇入れに努めなければならない。

納付金は、この責務を果たす事業主と果たしていない事業主の間の経済的負担を調整する仕組みです。第49条第1項の柱書に、その目的が書かれています。

厚生労働大臣は、対象障害者の雇用に伴う経済的負担の調整並びにその雇用の促進及び継続を図るため、次に掲げる業務(以下「納付金関係業務」という。)を行う。

第2項で、この業務は機構に行わせるとされています(「全部又は一部を機構に行わせるものとする」)。

納付金の額は、調整基礎額と基準雇用率でできている

納付金を納める義務は、第53条第2項にあります。

事業主は、納付金を納付する義務を負う。

額の計算は第54条第1項です。

事業主が納付すべき納付金の額は、各年度につき、調整基礎額に、当該年度に属する各月ごとにその初日におけるその雇用する労働者の数に基準雇用率を乗じて得た数(その数に一人未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。)の合計数を乗じて得た額とする。

条文の構造を分けると、次の3つの部品になります。

  • 月ごとの初日:各月の1日の時点の労働者の数を使う
  • 基準雇用率を乗じて、1人未満の端数を切り捨てた数:月ごとに出して、年度分を合計する
  • 調整基礎額:その合計数に乗じる金額。第2項が「政令で定める金額」と定めている

調整基礎額の第2項は、末尾が次のように結ばれています。

の額の平均額を基準として、政令で定める金額とする。

この前に、対象障害者を雇用するために通常必要とされる一月当たりの特別費用についての長い定義が置かれています。金額そのものは条文にはありません。

そして、対象障害者を雇用している事業主は、この額がそのまま納付金になるわけではありません。 第55条第1項は、雇用している分を差し引く形になっています。この条には条見出しが付いていないので、見出しで探すと見つかりません。

当該事業主が当該年度において対象障害者である労働者を雇用しており、かつ、同条第二項に規定する調整基礎額に当該年度に属する各月ごとの初日における当該事業主の雇用する対象障害者である労働者の数の合計数を乗じて得た額が同条第一項の規定により算定した額に達しないときは、当該事業主が納付すべき納付金の額は、同項の規定にかかわらず、その差額(第七十四条の二第四項及び第五項において「算定額」という。)に相当する金額とする。

第2項は、差し引いた結果が逆になる場合を定めています。

当該事業主については、同項の規定にかかわらず、納付金は、徴収しない。

この文は、第55条第2項の末尾の部分です。直前には、雇用する対象障害者である労働者の数に調整基礎額を掛けた額が、第54条第1項で算定した額以上であるとき、という条件が書かれています。

ここまでの流れを表にします。

条条見出し何を決めているか
第五十三条(障害者雇用納付金の徴収及び納付義務)機構が納付金を徴収し、事業主は納付する義務を負う
第五十四条(納付金の額等)調整基礎額に、月ごとの労働者の数と基準雇用率から出した数の合計を乗じる
第五十五条なし対象障害者を雇用している分を反映して、額を差額に調整する/雇用が上回るときは徴収しない
第五十六条(納付金の納付等)申告書の提出と納付の期限

調整金と納付金は、同じ計算の表と裏

雇用が基準を超えている事業主には、反対に調整金が支給されます。第49条第1項第一号と、第50条です。第50条第1項の冒頭は次のとおりです。

機構は、政令で定めるところにより、各年度(四月一日から翌年三月三十一日までをいう。以下同じ。)ごとに、

続けて、第54条第2項の調整基礎額に、各月の初日における対象障害者である労働者の数の合計数を乗じた額が、第54条第1項で算定した額を超える事業主に、その差額に相当する額を調整基礎額で除した数(超過数)に単位調整額を乗じた額を、調整金として支給する、という建て付けです。

同じ「調整基礎額」と「各月ごとの初日」を軸にして、足りない側は第55条で納付金、超える側は第50条で調整金に振り分けられます。 第53条第1項が、納付金を調整金や助成金の財源に充てると書いているのは、この表裏の関係を受けています。

「100人以下は納付金がかからない」の根拠は、附則第4条

ここからが、今回いちばん確かめておきたい点です。附則第4条(見出しは「雇用する労働者の数が百人以下である事業主に係る納付金及び報奨金等に関する暫定措置」)の第1項です。

その雇用する労働者の数が常時百人以下である事業主(特殊法人を除く。以下この条において同じ。)については、当分の間、第四十九条第一項第一号、第五十条並びに第三章第二節第二款及び第五節の規定は、適用しない。

読み取れることは次のとおりです。

  • 対象は、雇用する労働者の数が常時百人以下の事業主
  • 適用しないのは、第49条第1項第一号(調整金の支給)、第50条(調整金)、第三章第二節第二款、第五節
  • 期間は「当分の間」。期限の年月日は条文に書かれていません

注意したいのは、「100人以下」が本則の恒久的な規定ではなく、暫定措置として附則に置かれていることです。「当分の間」という言葉は、いつまで続くかを条文のなかで決めていません。100人を境にした扱いは、条文を読む限り、法の本体の建て付けではなく附則の特例の側にあります。

なお、第54条から第56条がどの款・節に入るかは、この記事では条文の範囲で確かめていません。納付金の額や申告の条の位置づけまで確認したいときは、e-Govで法の目次を開いて、款・節の区切りを見てください。

附則第4条には、もう1つの読みどころがあります。

「報奨金」は本則に0回で、附則にしかない

100人以下の事業主には、納付金の側の特例だけでなく、報奨金という別の仕組みが附則に置かれています。第2項です。

厚生労働大臣は、当分の間、その雇用する労働者の数が常時百人以下である事業主に対して次項の報奨金及び第四項の在宅就業障害者特例報奨金(以下「報奨金等」という。)を支給する業務を行うことができる。

構造を整理します。

項内容
第2項厚生労働大臣は、当分の間、報奨金等を支給する業務を行うことができる
第3項各年度ごとに、対象障害者である労働者の数の合計数が、厚生労働省令で定めるところの数を超える事業主(対象事業主)に報奨金を支給する
第4項在宅就業障害者との間で書面により在宅就業契約を締結し、業務の対価を支払った対象事業主に、在宅就業障害者特例報奨金を支給する
第7項第2項の業務は、全部又は一部を機構に行わせるものとする

第2項は「行うことができる」、第3項と第4項は「支給する」と書かれています。 本則の調整金(第50条)が「支給する」で書かれているのと、書き方は似ています。ただし、報奨金の基準となる数や金額は、いずれも厚生労働省令で定めるとされており、条文には金額も率も書かれていません。

さらに、第10項では、100人以下の事業主がいる場合の納付金の費用の読み替えが書かれています。

第五十三条第一項中「並びに同項各号に掲げる業務」とあるのは「、附則第四条第二項の報奨金等の支給に要する費用並びに第四十九条第一項各号に掲げる業務及び附則第四条第二項に規定する業務」と

第53条第1項は、納付金を何に充てるかを書いた条です。当分の間、報奨金等の支給に要する費用も、納付金を徴収する目的に加えて読む、という読み替えです。100人以下の事業主は納付金の対象から外れますが、その事業主向けの報奨金の費用は、納付金を納める側が負担する形で組み立てられている、と読めます。

法人本部が確かめておくこと

職員数が100人を超えると、附則第4条第1項の「常時百人以下」には当たらなくなります。この境目は、「何人を超えたらいつから」という数字の問題ではなく、毎月の人数をどう数えるかの問題です。条文は次のように求めています。

1. 数える単位は、月ごとの初日です。
第54条第1項は「各月ごとにその初日における」労働者の数を使います。第56条第1項の申告書にも、同じく各月ごとの初日の数が載ります。第50条も同じ軸です。

2. 労働者の範囲は「常時雇用する労働者」です。
第43条第1項に括弧書きで定義があります(「常時雇用する労働者(以下単に「労働者」という。)」)。短時間労働者を何人に数えるかは、第43条第8項が「厚生労働省令で定める数」に委ねています。常勤と非常勤の線引きは、就業規則の雇用区分と地続きです。 区分の整理は社会福祉法人の就業規則の記事でも扱っています。

3. 対象障害者の数も、月ごとに追えるようにします。
第43条第3項から第5項は、短時間労働者や重度の方を何人に数えるかを政令・厚生労働省令に委ねています。第43条第9項は、労働者が対象障害者かどうかの確認を、厚生労働省令で定める書類で行うとしています。

4. 事業所ごとの数も記録します。
第56条第3項は、申告書に付ける書類を次のように定めています。

第一項の申告書には、当該年度に属する各月ごとの初日における各事業所ごとの労働者の数及び対象障害者である労働者の数その他の厚生労働省令で定める事項を記載した書類を添付しなければならない。

つまり、「毎月1日時点の、事業所ごとの労働者数と対象障害者である労働者数」 が、申告のたびに書類として必要になります。年度が終わってから探すのではなく、毎月1日に1回、事業所別に記録しておくのが、条文に沿った実務の組み立て方です。

5. 期限は翌年度の初日から四十五日以内です。
申告書の提出は第56条第1項です。

事業主は、各年度ごとに、当該年度に係る納付金の額その他の厚生労働省令で定める事項を記載した申告書を翌年度の初日(当該年度の中途に事業を廃止した事業主にあつては、当該事業を廃止した日)から四十五日以内に機構に提出しなければならない。

納付も同じ期限です(第2項)。

事業主は、前項の申告に係る額の納付金を、同項の申告書の提出期限までに納付しなければならない。

提出しないときや記載に誤りがあるときは、機構が額を決めて納入の告知をする(第4項)という定めもあります。

なお、第43条第7項は、雇用する労働者の数が一定数以上の事業主に、毎年一回、対象障害者である労働者の雇用状況を厚生労働大臣に報告する義務を課しています。この「一定数」は厚生労働省令に委ねられており、条文に数字はありません。納付金の申告とは別の義務なので、混同しないようご注意ください。

この記事で書いていないこと

条文を読んだ範囲では、次のことは書かれていません。この記事でも書きません。

  • 納付金の単価(調整基礎額)や調整金・報奨金の金額:政令または厚生労働省令で定まります
  • 障害者雇用率・基準雇用率の数値:政令で定まります
  • 報奨金の基準となる数:厚生労働省令で定まります
  • 短時間労働者や重度の方の数え方の係数:政令・厚生労働省令で定まります
  • 附則第4条の暫定措置がいつまで続くか:条文は「当分の間」としか書いていません
  • 申告書の様式・提出方法:厚生労働省令と機構の案内で確認します
  • 個別の法人が納付金の対象になるかどうかの判断:本記事は条文の構造の整理です

まとめ

  • 「法定雇用率」は法の本則に0回の通称。条文の言葉は障害者雇用率(第43条)と基準雇用率(第54条第3項)で、雇用義務の側と納付金の額の計算の側で別々に政令へ委ねられている
  • 納付金の額は、調整基礎額に、各月の初日の労働者の数に基準雇用率を乗じた数(端数切り捨て)の合計を乗じる(第54条)。対象障害者を雇用している場合は第55条で差額に調整され、第55条には条見出しが付いていない
  • 調整金(第50条)と納付金は、同じ軸の表と裏
  • 100人以下の暫定措置は本則ではなく附則第4条で、条文の言葉は「当分の間」。報奨金は本則に0回で、附則にしかない
  • 法人本部の実務は、毎月1日時点の事業所ごとの労働者数と対象障害者である労働者数を記録しておくこと(第56条第3項)。申告書の提出と納付は翌年度の初日から四十五日以内

参考にした一次情報

いずれも2026年10月17日に取得した条文によります。本記事は条文の構造を整理したもので、個別の納付金の額や申告の要否を示すものではありません。政令・厚生労働省令の数値や申告の実際は、機構と厚生労働省の最新の案内をご確認ください。


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