隣の市の総合事業の案内を読んだら、自分の市町村とは書類も期間も違っていた。複数の市町村で総合事業の指定を受けている法人の方なら、そんな経験があるのではないでしょうか。
総合事業は、調べるほど分かりにくくなる制度です。自治体のページには「任意事業」「一般介護予防事業」「訪問型サービス」「通所型サービス」といった呼び方が並びます。ところが、この記事で読む介護保険法の条文(第115条の45から第115条の45の11まで)と、施行規則の条文には、これらの語は出てきません。条文に出てくるのは「第一号事業」「第一号訪問事業」「第一号通所事業」といった語です。同じ制度を指す名前が2系統あることが、迷う原因の1つです。
もう1つの原因は、どこまでが全国共通の法令で、どこからが市町村の決めることなのかが、案内を読むだけでは見えにくいことです。検索すると、自分の市町村のやり方を説明したページは見つかります。しかし、「法令自身が市町村に委ねている箇所はここ」と切り分けたものは多くありません。
この記事は、次の条文の原文だけを根拠に、その切り分けをします。
- 介護保険法 第115条の45、第115条の45の2〜第115条の45の11、第115条の47、第8条の2、第70条の2
- 介護保険法施行規則 第140条の62の2〜第140条の62の6、第140条の63〜第140条の63の7
扱うのは次の点です。
- 総合事業の中身は、条文ではどう区切られているのか
- 第一号事業は何種類あり、誰が対象なのか
- 指定は誰が、何を単位に行うのか
- 指定の有効期間は、法律で決まっているのか
- 基準・単価・利用料・提出書類のうち、市町村が決めるのはどこか
- 指定を受けたあとに、条文が置いている仕組みは何か
なお、市町村ごとの単価、サービスの類型の呼び名、加算、サービスコード、日割りの扱いは、この記事の根拠にした条文には書かれていないため扱いません。これらは、お住まいの市町村の要綱や案内で確認してください。
まず結論:法令が「市町村が定める」と書いている箇所は8つ
先に答えを示します。第一号事業の指定を受けた事業者が確認しておきたい箇所のうち、条文が市町村に委ねていると読める箇所を並べました。
| 確認したいこと | 条文 | 市町村に委ねられている内容 |
|---|---|---|
| 指定の有効期間 | 法第115条の45の6第1項、施行規則第140条の63の7 | 有効期間は「市町村が定める期間」 |
| 指定の基準 | 法第115条の45の5第2項、施行規則第140条の63の6 | 基準は「市町村が定める基準」 |
| 申請書に書く事項 | 施行規則第140条の63の5第1項ただし書 | 第四号から第十二号までは、市町村長が記載を要しないと認めれば書かなくてよい |
| 申請書の最後の項目 | 同条第1項第十二号 | 「その他市町村が指定に関し必要と認める事項」 |
| 第一号事業支給費の額 | 施行規則第140条の63の2 | 国の基準を土台に、市町村が別に定められる構造 |
| 利用者から受け取る利用料 | 施行規則第140条の63第1項 | 利用料に関する事項は市町村が定める |
| 変更の届出が要る事項 | 施行規則第140条の62の3第2項第四号 | 「指定をした市町村長が届出を要しないと認める事項」は除かれる |
| 要介護認定後も総合事業を使い続ける人 | 施行規則第140条の62の4第三号 | 「市町村が必要と認める者に限る」 |
結論として、指定の有効期間は、法律に年数が書かれていません。 市町村が定める期間です。複数の市町村で指定を受けている法人は、市町村ごとに、有効期間・基準・提出書類を確かめる必要があります。
ここからは、この結論を条文に沿って確かめます。
総合事業の中身は、第115条の45の3つの項で層が違う
第1項は「行うものとする」、第3項は「行うことができる」
地域支援事業の根拠は、介護保険法第115条の45です。この条は、事業を3つの項に分けています。
- 第1項:市町村は、地域支援事業として「介護予防・日常生活支援総合事業」を行うものとする。条文は、この事業の中身を第一号(第一号事業)と第二号に分けている
- 第2項:市町村は、総合事業のほか、第一号から第七号までの事業を行うものとする
- 第3項:総合事業と第2項の事業のほかに、市町村が行うことができる事業
第3項の書き方は、次のとおりです。
市町村は、介護予防・日常生活支援総合事業及び前項各号に掲げる事業のほか、厚生労働省令で定めるところにより、地域支援事業として、次に掲げる事業を行うことができる。
第1項・第2項は「行うものとする」、第3項は「行うことができる」と、書き分けられています。自治体の案内に出てくる呼び名が、どの項のどの事業に当たるのかは、案内ごとに確かめる必要があります。
自治体の案内の呼び名は、条文の語ではない
この記事の根拠にした条文には、「任意事業」「一般介護予防事業」「訪問型サービス」「通所型サービス」という語は出てきません。条文に出てくるのは、次の語です。
- 第一号事業(第一号訪問事業、第一号通所事業、第一号生活支援事業、第一号介護予防支援事業)
- 居宅要支援被保険者等
- 指定事業者
- 第一号事業支給費
法第115条の45の2第1項は、厚生労働大臣が、市町村の総合事業の適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を公表するものとしています。自治体の案内に出てくる呼び方が、国のどの文書や市町村のどの要綱に由来するのかは、この記事の根拠にした条文からは分かりません。そのため、どの文書の用語かは断定せず、「条文の語ではない」という点だけを押さえておくことにします。
第一号事業は4つ:条文の語で整理する
イからニまでの4つ
第115条の45第1項第一号は、第一号事業を4つ挙げています。第一号訪問事業を定めたイは、次のとおりです。
居宅要支援被保険者等の介護予防を目的として、当該居宅要支援被保険者等の居宅において、厚生労働省令で定める基準に従って、厚生労働省令で定める期間にわたり日常生活上の支援を行う事業(以下この項において「第一号訪問事業」という。)
4つを、省令に何が委ねられているかも含めて整理すると、次のとおりです。
| 号 | 事業 | 内容(要点) | 省令に委ねられている点 |
|---|---|---|---|
| イ | 第一号訪問事業 | 居宅において日常生活上の支援を行う | 基準、期間 |
| ロ | 第一号通所事業 | 厚生労働省令で定める施設において、日常生活上の支援又は機能訓練を行う | 施設、基準、期間 |
| ハ | 第一号生活支援事業 | 第一号訪問事業・第一号通所事業などと一体的に行われる場合に効果があると認められる、地域における自立した日常生活の支援として厚生労働省令で定めるものを行う | 基準、支援の内容 |
| ニ | 第一号介護予防支援事業 | 心身の状況や環境に応じ、本人の選択に基づき、適切な事業が包括的かつ効率的に提供されるよう必要な援助を行う | 基準 |
省令の中身:基準・期間・施設
委任先の省令の条文を見ます。
- 基準:施行規則第140条の62の3第2項が、イからニまでの基準を定めています。従事者の清潔の保持及び健康状態の管理のための対策、利用者の秘密を漏らさないための措置、事故が発生した場合に講ずる措置と実施方法を定めていること、などです
- 期間:施行規則第140条の62の5が定めています。計画で利用期間を定めた場合は、その利用期間と、計画を定めた日から居宅要支援被保険者等でなくなる日までの期間のいずれか短い期間。それ以外の場合は、第一号介護予防支援事業による支援を受けた日から居宅要支援被保険者等でなくなる日までの期間です
- 施設:施行規則第140条の62の6が、第一号通所事業を実施するために必要な広さを有する施設と定めています
2つの「期間」を取り違えない
ここで注意したいのが、「期間」という語が2種類あることです。
- サービスを行う期間(法第115条の45第1項第一号イ・ロの「厚生労働省令で定める期間」。施行規則第140条の62の5):利用者ごとの、サービスを行う期間
- 指定の有効期間(法第115条の45の6第1項の「厚生労働省令で定める期間」。施行規則第140条の63の7):事業者の指定が効力を保つ期間
名前はどちらも「厚生労働省令で定める期間」ですが、別のものです。後者は、後の章で詳しく読みます。
対象は「居宅要支援被保険者等」
第一号事業の対象は、第115条の45第1項第一号の柱書にある「居宅要支援被保険者その他の厚生労働省令で定める被保険者」です。条文はこれを「居宅要支援被保険者等」と呼びます。要支援の人だけではありません。 「その他の厚生労働省令で定める被保険者」の中身は、施行規則第140条の62の4が定めています。柱書は次のとおりです。
法第百十五条の四十五第一項第一号の厚生労働省令で定める被保険者は、次のいずれかに該当する被保険者とする。
該当するのは、次の3つです。
- 居宅要支援被保険者
- 厚生労働大臣が定める基準に該当する第一号被保険者。要介護認定を受けた第一号被保険者については、要介護認定による介護給付に係る居宅サービス、地域密着型サービス及び施設サービスなどを受けた日から要介護認定の有効期間の満了の日までの期間が除かれています
- 居宅要介護被保険者であって、要介護認定を受ける日以前に前2号のいずれかに該当し、一定の事業のサービスを受けていたもののうち、要介護認定を受けた日以後も継続的にその事業のサービスを受けるもの。市町村が必要と認める者に限る
第3号の末尾に、「市町村が必要と認める者に限る」とあります。要介護認定を受けたあとも総合事業を使い続けられるかどうかには、市町村の判断が入るということです。第2号の「厚生労働大臣が定める基準」の具体的な中身は、この記事の根拠にした条文には書かれていません。
なお、第115条の45第1項の柱書には、住所地特例適用被保険者の扱いを定めた括弧書きがあり、被保険者の範囲が調整されています。括弧書きの読み解きは複雑なので、ここでは「そういう調整がある」という点にとどめます。
指定の仕組み:市町村長が、事業の種類と事業所ごとに行う
指定事業者と第一号事業支給費
第一号事業は、市町村が直接行うだけでなく、指定事業者に行わせることができます。第115条の45の3第1項は、居宅要支援被保険者等が、次の者の指定に係る事業所による第一号事業を利用した場合に、市町村が第一号事業支給費を支給する形をとると定めています。
当該市町村の長が指定する者(以下「指定事業者」という。)
つまり、指定を行うのは市町村長です。
費用の流れも条文に書かれています。第一号事業支給費の額は、第一号事業に要する費用の額を勘案して、厚生労働省令で定めるところにより算定する額とされています(第2項)。市町村は、利用者に代わって指定事業者へ支払うことができ(第3項)、支払があったときは、利用者に支給があったものとみなされます(第4項)。指定事業者から請求があったときは、市町村は厚生労働省令で定めるところにより審査したうえで支払います(第5項)。
指定の単位は「事業の種類」と「事業所」
指定は、第115条の45の5第1項が、次のように定めています。
当該事業の種類及び当該事業の種類に係る当該第一号事業を行う事業所ごとに行う。
指定は、事業の種類ごと、事業所ごとに行われます。第一号訪問事業と第一号通所事業の両方を行う事業所は、事業の種類ごとに指定を受けることになります。また、同じ法人の別の事業所は、事業所ごとの指定です。指定の有効期間も、後述のとおり、この単位で管理することになります。
申請書に書く事項と、市町村が認めれば省略できる事項
指定を受けようとする者が市町村長に出す申請書に書く事項は、施行規則第140条の63の5第1項の第一号から第十二号までに定められています。主なものは、事業所の名称及び所在地、申請者の名称・所在地・代表者、事業の開始の予定年月日、登記事項証明書又は条例等、建物の構造概要及び平面図、利用者の推定数、管理者の氏名、運営規程、苦情を処理するために講ずる措置の概要、従業者の勤務の体制及び勤務形態、誓約書です。第十二号は、その他市町村が指定に関し必要と認める事項です。
この条には、次のただし書があります。
ただし、第四号から第十二号までに掲げる事項の記載を要しないと当該市町村長が認めるときは、当該事項の記載を要しない。
第四号から第十二号までは、市町村長が認めれば省略できるとされています。しかも第十二号は、市町村が必要と認める事項です。「必要書類が市町村によって違う」ことの、法令上の根拠はここにあります。
更新のときの申請書も、同じ条に定めがあります(第2項)。第1項の各号(第三号と第十一号を除く)の事項に加えて、現に受けている指定の有効期間満了日と誓約書を記載します。ただし、市町村長が認める申請書又は書類については、出さなくてよいとされています。さらに第3項は、すでに市町村長に出している第四号から第十号までの事項に変更がないときは、市町村長がその記載や書類の提出を省略させることができると定めています。
指定の有効期間は全国一律ではない
この記事の中心になる箇所です。「総合事業 指定 更新」で調べる方の疑問は、ここに答えがあります。
法律には年数が書かれていない
総合事業の指定の更新を定めた、第115条の45の6第1項は、次のとおりです。
指定事業者の指定は、厚生労働省令で定める期間ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によって、その効力を失う。
何年ごと、とは書かれていません。 「厚生労働省令で定める期間」です。
省令は「市町村が定める期間」とする
その省令である、施行規則第140条の63の7は、次のように書いています。
法第百十五条の四十五の六第一項の厚生労働省令で定める期間は、法第百十五条の十一、第百十五条の二十一及び第百十五条の三十一の規定により読み替えて準用する法第七十条の二第一項に規定する期間を勘案して市町村が定める期間とする。
つまり、指定の有効期間は、市町村が定める期間です。市町村が定めるときは、法第70条の2第1項に規定する期間を「勘案」します。
参考:法第70条の2第1項は「六年ごと」
その法第70条の2第1項は、次のとおりです。
第四十一条第一項本文の指定は、六年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によって、その効力を失う。
ここには、確かに「六年ごと」と書かれています。ただし、施行規則第140条の63の7が引いているのは、第70条の2第1項そのものではなく、第115条の11、第115条の21及び第115条の31の規定により読み替えて準用する同項の期間です。この3つの条の中身は、この記事の根拠にした条文には含めていません。そのため、どの指定の期間を指しているのかは、ここでは断定しません。
押さえておきたい点は、次の3つです。
- 総合事業の指定の更新を定めた条文(第115条の45の6第1項)には、年数が書かれていない
- 省令は、他の条で定められた期間を勘案して、市町村が定めるとしている
- 勘案する、とは、そのまま同じにするという意味ではない。市町村がどんな長さにしているかは、条文からは分からない
複数の市町村で指定を受けている法人は、市町村ごとの有効期間を、市町村ごとの要綱や指定通知で確かめる必要があります。 「どの市町村も同じだろう」と考えて一括で管理すると、期限を取り違える可能性があります。通常の介護サービス・障がい福祉の指定更新の考え方は、介護・障がい福祉の指定更新|6年ごとの有効期間と失効の実務対応の記事で整理しています。
更新の申請をしたあとの扱い
更新については、第115条の45の6の第2項以降にも定めがあります。第2項は、更新の申請があった場合の扱いです。
その申請に対する処分がされないときは、従前の指定事業者の指定は、有効期間の満了後もその処分がされるまでの間は、なおその効力を有する。
更新の申請があったのに有効期間の満了の日までに処分がされないときは、処分がされるまでの間、従前の指定が効力を持ち続けます。ただし、これは「申請をしていること」が前提です。更新の申請をしなかった場合は、第1項のとおり、期間の経過によって指定が効力を失います。
更新がされたときの新しい有効期間は、従前の有効期間の満了の日の翌日から起算します(第3項)。第4項は、前条(指定)の規定を、更新に準用すると定めています。
基準も単価も利用料も、市町村が定める部分がある
指定の基準
指定をするかどうかの判断基準は、第115条の45の5第2項です。
市町村長は、前項の申請があった場合において、申請者が、厚生労働省令で定める基準に従って適正に第一号事業を行うことができないと認められるときは、指定事業者の指定をしてはならない。
この「厚生労働省令で定める基準」を定めたのが、施行規則第140条の63の6です。
法第百十五条の四十五の五第二項に規定する厚生労働省令で定める基準は、市町村が定める基準であって、次のいずれかに該当するものとする。
省令が定めているのは、基準そのものではなく、「市町村が定める基準であって、次のいずれかに該当するもの」 という枠です。その枠は、2つに分かれています。
- 第一号:第一号事業(第一号生活支援事業を除く)に係る基準として、旧介護予防訪問介護・旧介護予防通所介護に係る基準その他厚生労働大臣が定める基準の例による基準、基準該当介護予防サービスに係る基準の例による基準、離島等に住所を有する場合のサービスの内容を勘案した基準のいずれか(イ・ロ・ハ)
- 第二号:第一号事業に係る基準として、サービスの内容等を勘案した基準(第一号に掲げるものを除く)
基準の中身は、市町村が決めるものです。この記事では、基準の具体的な中身は補いません。
第一号事業支給費の額
施行規則第140条の63の2は、第一号事業支給費の額を、3つに分けて定めています。どの基準に従う事業かによって、額の決め方が違います。
| 基準の区分(施行規則第140条の63の6) | 額の決め方(施行規則第140条の63の2) |
|---|---|
| 第一号イに規定する基準に従う事業 | 厚生労働大臣が定める基準により算定した費用の額(市町村が別に定める場合は、その額)に、条文所定の割合を乗じた額 |
| 第一号ロ又はハに規定する基準に基づく事業 | 厚生労働大臣が定める基準により算定した費用の額に、条文所定の割合を乗じた額を基準として、市町村が定める額 |
| 第二号に規定する基準に従う事業 | 市町村が定める基準により算定した費用の額に、市町村が定める割合を乗じた額(第一号介護予防支援事業・第一号訪問事業・第一号通所事業・第一号生活支援事業の別に条文あり) |
最初の区分で、市町村が別に定められる点は、次のように書かれています。
市町村が当該算定した費用の額を勘案して別に定める場合にあっては、その額とする。
国の基準が土台にあり、そのうえで市町村が別に定められる構造です。この表は、条文の構造を要約したものです。具体的な単価や割合は、この記事では扱いません。市町村の要綱で確認してください。
利用料
利用者から受け取る利用料は、施行規則第140条の63第1項が、次のように定めています。
法第百十五条の四十五第十項の規定による利用料に関する事項は、市町村が定める。
第2項は、市町村が利用料を定めるときは、事業の内容を勘案してふさわしい利用料となるよう定めると書いています。
指定を受けたあとに、条文が置いている仕組み
指定を受けたあとの仕組みも、第115条の45の7から第115条の45の10までと、施行規則に書かれています。
報告・立入検査(第115条の45の7)
市町村長は、第一号事業支給費の支給に関して必要があると認めるときは、指定事業者等に対して、次のことができます。
- 報告や帳簿書類の提出・提示を命じる
- 指定事業者や従業者に出頭を求める
- 職員に関係者へ質問させる
- 事業所・事務所などに立ち入り、設備や帳簿書類その他の物件を検査させる
条文が書いているのは、「必要があると認めるとき」に、これらを行えるという点です。検査の頻度や、どんな場合に行われるかは、この記事の根拠にした条文には書かれていません。
勧告・命令(第115条の45の8)
市町村長は、指定事業者が基準に従って第一号事業を行っていないと認めるときは、期限を定めて、基準に従って行うことを勧告できます(第1項)。期限内に従わなかったときは、その旨を公表できます(第2項)。正当な理由なく勧告に係る措置をとらなかったときは、期限を定めて命令でき(第3項)、命令したときは公示しなければなりません(第4項)。
指定の取消し等(第115条の45の9)
市町村長は、次のような場合に、指定を取り消し、又は期間を定めて指定の全部若しくは一部の効力を停止することができます。
- 基準に従って第一号事業を行うことができなくなったとき(第一号)
- 第一号事業支給費の請求に関し不正があったとき(第二号)
- 報告等の命令に従わず、又は虚偽の報告をしたとき(第三号)
- 出頭の求めに応じない、質問に答えない、検査を拒むなどしたとき(第四号)
- 不正の手段により指定を受けたとき(第五号)
- 国民の保健医療・福祉に関する法律で政令で定めるもの等に違反したとき(第六号)
- 地域支援事業又は居宅サービス等に関し不正又は著しく不当な行為をしたとき(第七号)
届出と、市町村が「要しない」と認める事項
指定事業者の届出については、施行規則第140条の62の3第2項に定めがあります。第四号は、指定事業者が、申請書に書いた事項の一部に変更があったときに、市町村長へ届け出ることを定めています。ここで、カッコ書きが重要です。
当該指定をした市町村長が届出を要しないと認める事項
これは、「(当該指定をした市町村長が届出を要しないと認める事項を除く。)」とあるカッコ書きの一部です。届出が要る事項の範囲にも、市町村長の判断が入ります。 このほか、休止した事業を再開したときの届出(第五号)、事業を廃止し又は休止しようとするときに、その日の一月前までに届け出ること(第六号)、廃止・休止の際に必要なサービスが継続的に提供されるよう連絡調整等の便宜を図ること(第七号)も定められています。これらの届出は、厚生労働大臣が定める様式で行います(第3項)。
通常の介護サービス・障がい福祉の変更届の期限や考え方は、介護・障がい福祉の変更届|10日以内の期限と廃止・休止の届出の記事で整理しています。総合事業の指定事業者は、この施行規則の条文が根拠になります。
審査・支払は国保連に委託できる
市町村は、第一号事業支給費の審査及び支払に関する事務を、連合会に委託することができます(法第115条の45の3第6項)。委託を受けた連合会は、市町村の同意を得て、事務の一部を、営利を目的としない法人で厚生労働省令で定める要件に該当するものに委託できます(同条第7項)。施行規則第140条の63の4は、その委託先を、必要な電子計算機を備え、事務を適正かつ確実に実施できると認める法人としています。請求の方法や国保連の運用の細かい点は、この記事の根拠にした条文からは分かりません。
複数の市町村で指定を受けている法人の備え方
ここまでが、条文から言えることです。ここから先は、条文が求めていることではなく、実務上の提案です。
複数の市町村で指定を受けていると、市町村ごとに、有効期間、提出書類、基準、単価、利用料が違いうることになります。しかも、指定は事業の種類ごと、事業所ごとなので、管理する単位が増えます。
管理台帳に持っておきたい項目
- 市町村名と、指定の根拠(指定通知の日付や番号)
- 事業所名と、事業の種類(第一号訪問事業・第一号通所事業など)ごとの指定
- 市町村ごとの指定の有効期間の満了日
- 更新の申請に必要な書類の一覧(市町村ごとに異なりうる)
- 市町村の要綱の確認日と、確認した資料の所在
確認する順番の提案
- 市町村の要綱・案内で、有効期間の長さを確認する。 法律に年数が書かれていないため、手元の指定通知か市町村の案内が根拠になります
- 更新申請に必要な書類を、市町村に確認する。 省略できる事項は、市町村長が認めるものだけです
- 変更の届出が要る事項の範囲を、市町村に確認する。 市町村長が届出を要しないと認める事項があるためです
- 電子申請や様式の有無を確認する。 届出の様式は、厚生労働大臣が定める様式によるとされています。電子申請の対応状況は、介護の電子申請届出システムとは|様式統一とGビズIDでの申請実務の記事で整理しています
この記事で書いていないこと
この記事は、根拠にした条文の原文として確認できた範囲だけを書いています。次の点は、条文に含まれていないため扱っていません。
- 市町村ごとの単価、サービス類型の呼び名
- 処遇改善加算、サービスコード、日割りの扱い
- 所得に応じた第一号事業支給費の割合の調整(施行規則第140条の63の2第3項〜第5項。要約の表には入れていません)
- 「任意事業」「訪問型サービス」などの呼び名の由来
- 第一号事業の対象となる「厚生労働大臣が定める基準」の具体的な中身
- 国の指針の内容(第115条の45の2第1項は指針を公表すると定めているだけで、中身は条文にない)
- 政令で定められた事項(第115条の45の11が、地域支援事業の実施に必要な事項を政令に委ねているが、政令の中身は根拠に含めていない)
- 罰則
判断に迷うときは、指定を受けている市町村の担当窓口に確認してください。
まとめ
- 総合事業は、介護保険法第115条の45第1項に定められた介護予防・日常生活支援総合事業。第一号事業は、第一号訪問事業・第一号通所事業・第一号生活支援事業・第一号介護予防支援事業の4つ
- 自治体の案内にある「任意事業」「訪問型サービス」「通所型サービス」といった呼び名は、この記事の根拠にした条文の語ではない
- 対象は居宅要支援被保険者だけではなく、「居宅要支援被保険者等」。要介護認定後も使い続けられるかは、市町村が必要と認める者に限られる
- 指定は市町村長が、事業の種類ごと、事業所ごとに行う。申請書の第四号から第十二号までは、市町村長が認めれば省略できる
- 指定の有効期間は、法律に年数が書かれていない。 省令が「市町村が定める期間」とし、市町村が決める
- 指定基準、第一号事業支給費の額、利用料、届出が要る事項にも、市町村に委ねられた部分がある
- 複数の市町村で指定を受けている法人は、市町村ごと、事業所ごと、事業の種類ごとに、満了日と提出書類を台帳で管理するのが、期限の取り違えを防ぐ近道
総合事業は、全国共通の部分と、市町村が決める部分が重なった制度です。他の市町村の案内を読んで迷ったときは、まず「法令が市町村に委ねている箇所はどこか」に立ち返ると、違いを整理しやすくなります。
市町村ごとに分かれる指定と更新の期限を、法人全体で見渡せるようにしたい法人様へ
複数の市町村で指定を受けていると、有効期間、提出書類、単価といった情報が、担当者ごとの表計算ソフトに分かれてしまい、法人全体で見渡せない、というご相談をいただくことがあります。パレットテクノロジーズは、社会福祉法人様のデジタル化を「現地現物」で伴走支援しています。指定と更新の期限管理を、システム側で軽くするお手伝いをしています。ITに詳しい職員がいらっしゃらなくても大丈夫です。
参考にした一次情報
- 介護保険法(平成9年法律第123号)第115条の45(地域支援事業)・第115条の45の2(介護予防・日常生活支援総合事業の指針等)・第115条の45の3(指定事業者による第一号事業の実施)・第115条の45の5(指定事業者の指定)・第115条の45の6(指定の更新)・第115条の45の7(報告等)・第115条の45の8(勧告、命令等)・第115条の45の9(指定事業者の指定の取消し等)・第115条の45の10(市町村の連絡調整等)・第115条の45の11(政令への委任)・第70条の2(指定の更新)|e-Gov法令検索
- 介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号)第140条の62の3(法第115条の45第1項の厚生労働省令で定める基準)・第140条の62の4(厚生労働省令で定める被保険者)・第140条の62の5(厚生労働省令で定める期間)・第140条の62の6(厚生労働省令で定める施設)・第140条の63(利用料)・第140条の63の2(第一号事業支給費の額)・第140条の63の3・第140条の63の4(審査及び支払)・第140条の63の5(指定の申請等)・第140条の63の6(指定の基準)・第140条の63の7(指定の有効期間)|e-Gov法令検索