管理者が交代した、事業所を移転した、定員を増やした――。事業所を運営していれば、こうした変更は毎年のように起きます。そのたびに指定権者へ「変更届」を出すわけですが、何を変えたときに届出が要るのか、いつまでに出すのかを、根拠の条文まで確認したうえで運用している法人様は多くありません。
自治体のホームページには手続きの案内と様式が置かれていますが、そこに書かれているのは「その自治体の所轄する事業所の手続き」です。複数のサービス種別を持ち、都道府県と市町村の両方に届出先が分かれている法人にとっては、自治体ごとのページを横断して読み解く必要が出てきます。
この記事では、介護保険法・障害者総合支援法・児童福祉法に共通する変更届の条文構造を整理したうえで、次の3点を条文の原文に沿って確認します。
- 届出が必要な「事項」は、省令が号を指定して限定していること
- 定員を増やすときは、変更届ではなく「指定の変更の申請」になる場合があること
- 廃止・休止の届出は期限も届出事項も別で、障がい福祉側は介護保険側より重いこと
3つの法律に共通する「10日以内」
変更届の根拠は、指定の根拠となっている法律そのものに置かれています。介護保険法の指定居宅サービス事業者であれば、次の条文です。
指定居宅サービス事業者は、当該指定に係る事業所の名称及び所在地その他厚生労働省令で定める事項に変更があったとき、又は休止した当該指定居宅サービスの事業を再開したときは、厚生労働省令で定めるところにより、十日以内に、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
(介護保険法第75条第1項)
障害者総合支援法の指定障害福祉サービス事業者も、ほぼ同じ文言です。
指定障害福祉サービス事業者は、当該指定に係るサービス事業所の名称及び所在地その他主務省令で定める事項に変更があったとき、又は休止した当該指定障害福祉サービスの事業を再開したときは、主務省令で定めるところにより、十日以内に、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
(障害者総合支援法第46条第1項)
サービス種別ごとに条文が分かれているだけで、構造は共通しています。主なものを並べると次のとおりです。
| 根拠法 | 条文 | 対象 | 届出先 |
|---|---|---|---|
| 介護保険法 | 第75条 | 指定居宅サービス事業者 | 都道府県知事 |
| 介護保険法 | 第78条の5 | 指定地域密着型サービス事業者 | 市町村長 |
| 介護保険法 | 第82条 | 指定居宅介護支援事業者 | 市町村長 |
| 介護保険法 | 第115条の5 | 指定介護予防サービス事業者 | 都道府県知事 |
| 介護保険法 | 第115条の15 | 指定地域密着型介護予防サービス事業者 | 市町村長 |
| 介護保険法 | 第115条の25 | 指定介護予防支援事業者 | 市町村長 |
| 障害者総合支援法 | 第46条第1項 | 指定障害福祉サービス事業者 | 都道府県知事 |
| 障害者総合支援法 | 第46条第3項 | 指定障害者支援施設の設置者 | 都道府県知事 |
| 障害者総合支援法 | 第51条の25第1項 | 指定一般相談支援事業者 | 都道府県知事 |
| 障害者総合支援法 | 第51条の25第3項 | 指定特定相談支援事業者 | 市町村長 |
| 児童福祉法 | 第21条の5の20 | 指定障害児通所支援事業者 | 都道府県知事 |
| 児童福祉法 | 第24条の32 | 指定障害児相談支援事業者 | 市町村長 |
ここで押さえておきたいのは、同じ法人の中でも届出先が都道府県と市町村に分かれるという点です。地域密着型サービスと居宅介護支援は市町村長、居宅サービスは都道府県知事。障がい福祉でも、一般相談支援は都道府県、特定相談支援は市町村です。役員変更のように法人全体に関わる変更が起きたとき、提出先の数だけ同じ書類を作ることになります。
「休止した事業を再開したとき」も10日以内
条文をよく読むと、10日以内の届出は「変更があったとき」だけではありません。「又は休止した当該指定居宅サービスの事業を再開したとき」も同じ条文に含まれています。休止届を出したあと事業を再開した場合、再開したこと自体を10日以内に届け出る必要があります。これは休止の手続きから時間が空くため、抜けやすいところです。
届出が必要な「事項」は、省令が号を指定して限定している
法律の条文は「事業所の名称及び所在地その他厚生労働省令で定める事項」としか書いていません。では省令は何を定めているのか。ここが実務上いちばん誤解されている部分です。
介護保険法施行規則第131条は、サービスの種類ごとに、指定申請書の記載事項のうち「どの号が変更届の対象か」を名指しで列挙しています。たとえば訪問介護であれば「第114条第1項第1号、第2号及び第4号(当該指定に係る事業に関するものに限る。)から第7号までに掲げる事項」といった書き方です。
障害者総合支援法施行規則第34条の23も同じ構造で、居宅介護・重度訪問介護から共同生活援助まで14区分に分けて、対象となる号を指定しています。
つまり、指定申請のときに書いた事項がすべて変更届の対象になるわけではありません。逆に言えば、「これは届出が要るのか」と迷ったときは、自治体の案内ページを探す前に、指定申請書のどの欄に書いた情報なのかをたどるのが最短です。
なお障がい福祉側の条文には、次のただし書が置かれています。
ただし、第三十四条の七第一項第四号、第三十四条の八第一項第四号、第三十四条の九第一項第四号、第三十四条の十一第一項第四号、第三十四条の十二第一項第四号、第三十四条の十四第一項第四号、第三十四条の十五第一項第四号、第三十四条の十五の二第一項第四号、第三十四条の十六第一項第四号、第三十四条の十七第一項第四号、第三十四条の十八第一項第四号、第三十四条の十八の二第一項第四号、第三十四条の十八の三第一項第四号及び第三十四条の十九第一項第四号に掲げる事項を記載した申請書又は書類(登記事項証明書を除く。)については、都道府県知事が、インターネットを利用して当該事項を閲覧することができる場合は、この限りでない。
(障害者総合支援法施行規則第34条の23第1項ただし書)
登記情報のようにインターネットで確認できるものは、都道府県知事が閲覧できる場合には添付を要しないという趣旨です。添付書類の要否は自治体の運用にもよりますので、実際の提出前には指定権者の案内をご確認ください。
定員を増やす変更届には、勤務形態一覧表の添付が求められる
利用者の定員を増やす変更届については、省令が添付書類を明示しています。
前項の届出であって、同項第六号から第十号までに掲げる居宅サービスの利用者の定員の増加に伴うものは、それぞれ当該居宅サービスに係る事業者の勤務の体制及び勤務形態を記載した書類を添付して行うものとする。
(介護保険法施行規則第131条第2項)
障害者総合支援法施行規則第34条の23第2項にも、同じく「従業者の勤務の体制及び勤務形態を記載した書類を添付して」という規定があります。ここでいう書類が、いわゆる勤務形態一覧表です。定員を増やせば人員基準を満たす職員数も変わるため、その裏付けを求めているわけです。
勤務形態一覧表の作り方と常勤換算の数え方については、勤務形態一覧表の書き方|常勤換算と兼務の数え方を実務目線で整理で詳しく整理しています。
定員を増やすとき、そもそも「変更届」ではない場合がある
ここが、自治体の案内ページではまず説明されていない論点です。
障害者総合支援法には、変更届(第46条)とは別に「指定の変更」という条文が置かれています。
指定障害福祉サービス事業者は、第二十九条第一項の指定に係る特定障害福祉サービスの量を増加しようとするときは、主務省令で定めるところにより、同項の指定の変更を申請することができる。
(障害者総合支援法第37条第1項)
「特定障害福祉サービス」が何を指すかは、省令が定義しています。
法第三十六条第二項に規定する主務省令で定める障害福祉サービス(第三十四条の二十二第一項において「特定障害福祉サービス」という。)は、生活介護、就労継続支援A型及び就労継続支援B型とする。
(障害者総合支援法施行規則第34条の20)
生活介護・就労継続支援A型・就労継続支援B型の3つは、指定そのものが「量を定めて」行われます(同法第36条第2項)。そのため、この3サービスで定員を増やそうとする場合は、変更の「届出」ではなく指定の変更の「申請」というルートになります。届出は事後10日以内ですが、申請は指定権者の処分を待つ手続きです。同じ「定員を増やす」でも、進め方も要する時間もまったく違います。
児童福祉法にも同じ構造の規定があり、指定障害児通所支援事業者が特定障害児通所支援の量を増加しようとするときは、指定の変更を申請することができるとされています(第21条の5の20)。
廃止・休止の届出は「1か月前まで」。届出事項も別に決まっている
事業をやめる・休むときの届出は、変更届とは期限が違います。
指定居宅サービス事業者は、当該指定居宅サービスの事業を廃止し、又は休止しようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、その廃止又は休止の日の一月前までに、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
(介護保険法第75条第2項)
変更届は事後10日以内、廃止・休止届は事前1か月前まで。 方向が逆なので、混同すると取り返しがつきません。廃止を決めてから1か月以内に閉じることはできない、という前提で日程を組む必要があります。
届け出る中身も省令に列挙されています。介護保険法施行規則第131条第4項は次の4つです。
- 廃止し、又は休止しようとする年月日
- 廃止し、又は休止しようとする理由
- 現に指定居宅サービスを受けている者に対する措置
- 休止しようとする場合にあっては、休止の予定期間
障がい福祉側は、利用者一人ひとりの情報まで求められる
同じ廃止・休止の届出でも、障がい福祉側は介護保険側よりはっきり重くなっています。障害者総合支援法施行規則第34条の23第4項第三号は、次のように定めています。
現に当該指定障害福祉サービスを受けている者に関する次に掲げる事項
イ 現に当該指定障害福祉サービスを受けている者に対する措置
ロ 現に当該指定障害福祉サービスを受けている者の氏名、連絡先、受給者証番号及び引き続き当該指定障害福祉サービスに相当するサービスの提供を希望する旨の申出の有無
ハ 引き続き当該指定障害福祉サービスに相当するサービスの提供を希望する者に対し、必要な障害福祉サービスを継続的に提供する他の指定障害福祉サービス事業者の名称(障害者総合支援法施行規則第34条の23第4項第三号)
介護保険側が「利用者に対する措置」とだけ書いているのに対し、障がい福祉側は利用者の氏名・連絡先・受給者証番号・継続希望の有無、さらに引き継ぎ先の事業者名まで求めています。つまり、廃止届を出す時点で一人ひとりの行き先が決まっている必要があるということです。
この非対称は、実務の段取りに直結します。障がい福祉の事業所を閉じる場合、1か月前の届出に間に合わせるには、その前に利用者への説明と引き継ぎ先の調整を終えておかなければなりません。廃止の意思決定から逆算すると、実際にはもっと早い時期に動き始める必要があります。
様式は国が定めている。だから電子申請と相性がよい
変更届の様式について、省令は次のように定めています。
第一項及び前二項の規定による届出は、厚生労働大臣が定める様式により行うものとする。
(介護保険法施行規則第131条第5項)
障がい福祉側は「こども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定める様式により行うものとする」(同法施行規則第34条の23第5項)です。
様式そのものは国が定めており、自治体が独自に作っているわけではありません。 自治体ごとにページや添付書類の案内が違って見えるのは、運用上の取扱いや独自の確認書類が上乗せされているためです。この「様式は全国共通」という前提が、電子申請届出システムの土台になっています。
システムの位置づけと、様式の統一・利用の原則化がそれぞれ何を根拠にしているかは、介護の電子申請届出システム|全国統一様式と利用原則化の根拠を整理で整理しています。
体制届・指定更新とは別の手続き
現場で混同されやすい3つの届出を整理しておきます。
| 手続き | 何のための届出か | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 変更届 | 指定申請書に書いた事項が変わったとき | 変更後10日以内 | 介護保険法第75条ほか/障害者総合支援法第46条ほか |
| 廃止・休止届 | 事業をやめる・休むとき | 廃止・休止の日の1か月前まで | 同上(第2項) |
| 体制届 | 加算等の算定に係る体制を届け出るとき | 算定開始月の前月15日以前ほか | 報酬告示・留意事項通知 |
| 指定更新 | 6年ごとの有効期間を更新するとき | 有効期間の満了前 | 介護保険法第70条の2ほか |
体制届は加算を算定するための届出で、変更届とは系統がまったく違います。加算の要件を満たす職員が変わったときは、変更届と体制届の両方が必要になることがあるという点に注意が必要です。それぞれの詳細は障害福祉サービスの体制届|提出期限と算定できなくなったときの届出と介護・障がい福祉の指定更新|6年ごとの有効期間と失効の実務対応をご覧ください。
実務の打ち手は「変更のきっかけ」から逆算して持つこと
変更届が漏れるのは、担当者が怠けているからではありません。変更が起きる場所と、届出を出す場所が離れているからです。
- 管理者・サービス提供責任者の交代 → 人事で決まる。届出担当者に伝わるのは後日
- 事業所の移転・改修 → 総務で進む
- 運営規程の改正 → 理事会・管理者会議で決まる
- 定員の増減 → 事業計画で決まる
- 法人の役員変更・名称変更 → 法人本部で決まる。全事業所・全指定権者に波及する
現実的な打ち手は、「変更届の台帳」を作ることではなく、上の5つのきっかけが発生したときに、指定台帳を必ず見に行く導線を作ることです。具体的には次の3つです。
- 指定の一覧を1か所に持つ(事業所名・サービス種別・指定番号・指定権者・有効期間・管理者名・定員)
- 人事異動と運営規程改正の決裁フローに、「指定への影響の有無」を確認する欄を作る
- 法人全体に関わる変更(役員・名称・所在地)は、指定の一覧から提出先を機械的に洗い出す
とくに3つ目は、指定権者が都道府県と市町村に分かれている法人ほど効きます。事業所数が10を超えると、Excelを目で追うやり方では必ず抜けが出ます。
まとめ
- 変更届の期限は、介護保険法・障害者総合支援法・児童福祉法のいずれも変更後10日以内。条文構造は3法で共通している
- 「休止した事業を再開したとき」も同じ10日以内の届出対象。抜けやすい
- 届出が必要な事項は、省令が指定申請書の号を名指しで限定している。申請書のどの欄の情報かをたどるのが早い
- 定員を増やす変更届には、勤務形態一覧表の添付が省令で求められる
- 生活介護・就労継続支援A型・就労継続支援B型は指定が「量を定めて」行われるため、定員増は変更届ではなく指定の変更の申請になる
- 廃止・休止の届出は事前1か月前までで、変更届とは向きが逆
- 廃止・休止の届出事項は、障がい福祉側が介護保険側より重い。利用者の氏名・受給者証番号・引き継ぎ先事業者名まで求められるため、届出の前に引き継ぎを終えておく必要がある
- 様式は国が定めており全国共通。自治体ごとに違って見えるのは運用上の上乗せ
参考(一次情報)
- 介護保険法(平成9年法律第123号)|e-Gov法令検索
- 介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号)|e-Gov法令検索
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)|e-Gov法令検索
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則(平成18年厚生労働省令第19号)|e-Gov法令検索
- 児童福祉法(昭和22年法律第164号)|e-Gov法令検索
※提出先・様式の配布方法・添付書類の範囲・電子申請の可否は、指定権者(都道府県・市町村等)ごとに運用が異なります。届出の直前に、自事業所の指定権者が公表している最新の案内をご確認ください。本記事では自治体ごとに異なる取扱いの具体は扱っていません。
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