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介護の電子申請届出システムとは|様式統一とGビズIDでの申請実務

「うちの県の様式に書き直して」――複数の指定権者に事業所を持つ法人であれば、一度はこの指示に頭を抱えたことがあるのではないでしょうか。指定申請や変更届の様式は自治体ごとにばらばら、という前提が長く続いてきました。

けれど、いまはこの前提そのものが変わっています。検索してみても、自治体ごとの「うちの県ではこう出してください」という案内ばかりが並び、全国共通の仕組みがどう変わったのかを説明しているものはほとんど見当たりません。この記事では、①様式が全国で統一されたことと、②電子申請・届出システムでの提出が原則化されたこと――という別々の2つの制度変更を、条文・通知に沿って整理します。

電子申請届出システムとは何か

厚生労働省老健局高齢者支援課 介護業務効率化・生産性向上推進室の資料「電子申請・届出システムについて」によると、電子申請・届出システムは、既存の「介護サービス情報公表システム」をベースに機能改修を行い、そのサブシステムとして開発されたものです。まったく新しいシステムを一から作ったのではなく、事業所情報がすでに蓄積されている既存基盤の上に、申請・届出の機能を載せる形で整備されました。

ログインにはGビズID(行政手続等において手続を行う法人等を認証するための、法人・個人事業主向け共通認証システム)を使います。

介護サービス事業所が「 GビズID」 を用いて指定申請機能にログインできる

このシステムでできることは、次のとおりです。

  • 新規指定申請・変更届出・更新申請等について、必要な項目を入力し、ファイルをアップロードして提出する
  • 提出した申請・届出の様式一式をダウンロードして印刷する
  • 加算の届出等について、添付書類をアップロードして提出する
  • 受付状況を申請一覧上で確認する
  • 新たな申請・届出を行う際には、前回の申請情報に基づいて入力内容がプリセット表示される

指定権者側も、提出通知を受けて受付完了または差戻しを通知でき、差戻し時にはコメントの記入やファイル添付ができる仕組みになっています。紙のやり取りにありがちな「不備の指摘が電話でしか来ない」「差戻しの理由が後から分からなくなる」という状況を減らす設計です。

この取組の背景にあるのは、「規制改革実施計画」(令和4年6月7日閣議決定)です。介護事業者が全ての地方公共団体に対して所要の申請・届出を簡易に行い得ることとする観点から、申請・届出先の地方公共団体を問わず手続を完結し得ることとするための法令上の措置を講ずる、という方針が示され、そのもとで整備が進められてきました。厚生労働省の資料は、整備の目標時期を次のように示しています。

令和7年度までに、全ての指定権者(1,788団体)において利用開始・システム利用の原則化

全国1,788の指定権者すべてで使えるようにする、という規模の取組であることが分かります。

全国統一様式とシステム利用の原則化は別の話

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいポイントです。「様式が全国で統一された」ことと「電子申請届出システムで出す」ことは、根拠となる制度がまったく別です。両方まとめて「電子申請の話」として語られがちですが、切り分けて理解しておかないと、自法人で何を確認すればよいかを見誤ります。

様式の統一は「省令」が根拠

様式の統一は、省令の改正によるものです。介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号)は、指定居宅サービス事業者等の指定の申請等について、申請書は厚生労働大臣が定める様式によるものと定めています。たとえば第114条(指定訪問介護事業者に係る指定の申請等)第5項は次のように規定しており、同趣旨の規定がサービス種別ごとに置かれています。

第一項及び第二項に規定する申請書は、厚生労働大臣が定める様式によるものとする。

この規定は、介護保険法施行規則の一部を改正する省令(令和5年厚生労働省令第46号)による改正で入りました。厚生労働省の事務連絡は、この経緯を次のように説明しています。

介護保険法施行規則の一部を改正する省令(令和5年厚生労働省令第 46 号)による改正後の介護保険法施行規則(平成 11 年厚生省令第 36 号)において、厚生労働大臣が定める様式により行うものとされました。

厚生労働大臣が定める様式そのものは令和5年12月19日厚生労働省告示第331号で示され、その後、指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(令和6年3月15日厚生労働省告示第86号)で改正されました。事務連絡「介護保険法施行規則の規定に基づき厚生労働大臣が定める様式について」(令和6年3月25日、厚生労働省老健局高齢者支援課・認知症施策地域介護推進課・老人保健課)によれば、施行期日は令和6年4月1日(付表第一号(三)、(十六)及び(十七)の改正は令和6年6月1日)、経過措置期限は令和6年9月30日とされています。

様式は、様式第一号(一)指定(許可)申請書/(二)指定(許可)更新申請書/(五)変更届出書/(六)再開届出書/(七)廃止・休止届出書などと、サービスごとの付表で構成されています。事務連絡には、この様式の扱いについて次のように明記されています。

【別紙1】の厚生労働大臣が定める様式は、変更を加えずに使用ください。

つまり、施行規則が様式を法定した以上、自治体が独自に様式を作って求める余地は原則なくなったということです。

システム利用の原則化は「国と自治体の取組」が根拠

一方で、この省令・告示・事務連絡のどこにも「システムを使って提出しなさい」とは書かれていません。システムの利用を原則化しているのは、規制改革実施計画に基づく国と自治体の取組であって、様式を法定した省令改正とは別の話なのです。ここを混同すると、「様式が変わったからシステムも変わったはずだ」「システムが原則化されたから様式もどこかで変わったはずだ」という思い込みが生まれます。実際には、様式は省令・告示という法令の形で全国共通になり、システムは行政の運用の取組として全国展開が進められてきた、という二段構えの変化です。

令和8年4月からの原則化と、例外の扱い

記事の執筆時点(2026年9月)では、令和8年4月1日からシステムによる提出が原則化されています。ただし、やむを得ない事情によりシステムによる提出が困難な場合に限り、当面の間は郵送での提出も認められており、その場合はやむを得ない理由を記載した書面の添付を求める運用が案内されています。

ここで注意が必要なのは、この「令和8年4月1日原則化」と例外の扱いは、厚生労働省の通知に条番号付きで書かれているものではなく、各指定権者(都道府県・指定都市・中核市)が公表している案内で示されているものだという点です。たとえば奈良県は「【再周知】令和8年4月からの電子申請届出システムの原則化について」という案内を公表しています。

どんな事情が「やむを得ない事情」に当たるのか、郵送提出をどのくらいの期間認めるのかは、指定権者ごとに違います。 本記事の説明はあくまで制度の全体像であり、これを根拠に自法人の対応を決めるのではなく、必ず自法人が届出を行う指定権者のホームページで最新の取扱いを確認してください。複数の指定権者に事業所を持つ法人であれば、この確認作業自体が一手間になるはずです。

事業所がいま整理しておくべきこと

様式が全国で統一され、システムでの提出が原則化された以上、法人側が持つべきものも変わります。これまでのように「県ごとの様式が入ったバインダー」を各拠点で管理する必要性は薄れました。代わりに重要になるのは、事業所ごとの申請情報を1か所に持ち、どの指定権者に対しても同じ様式・同じ情報で出せる状態を作っておくことです。

電子申請届出システムには、前回の申請情報に基づいて入力内容がプリセット表示される仕組みがあります。裏を返せば、法人側が管理者・従業者の異動、平面図の変更、運営規程の改定といった情報を日頃から整理しておくほど、変更届の入力はスムーズになるということです。逆に、拠点ごとに情報がばらばらのままだと、システムに入力する前の「情報を集める」段階で毎回時間がかかってしまいます。

変更届の対象になりやすい重要事項説明書の改定は、この機会にまとめて見直しておくと二度手間になりません(重要事項説明書の記事で、記載事項の整理の仕方を解説しています)。また、介護と障がい福祉の両方の事業を運営している法人では、変更届の対象になる情報が重なることが多く、障がい福祉サービスの体制届もあわせて確認しておくと、届出の抜け漏れを防ぎやすくなります。

まとめ

  • 様式が全国で統一されたのは省令(介護保険法施行規則の一部を改正する省令・令和5年厚生労働省令第46号)による改正が根拠。厚生労働大臣が定める様式(告示)は変更せずに使うことが求められている
  • 電子申請届出システムは、介護サービス情報公表システムのサブシステムとして開発され、GビズIDでログインして指定申請・変更届出・更新申請等を行える
  • 「全国統一様式」と「システム利用の原則化」は別の制度変更。まとめて語られがちなので、根拠を分けて理解しておく
  • 令和8年4月1日からシステムでの提出が原則化されているが、この時期と例外の扱いは指定権者の案内によるものであり、国の条文に条番号で書かれているわけではない。必ず自法人の指定権者のページで確認する
  • 様式が統一された以上、法人が持つべきは「県ごとの様式集」ではなく「事業所ごとの申請情報を1か所にまとめた状態」

参考(一次情報)


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