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公益的な取組|社会福祉法人に求められる3つの要件と所轄庁の関わり方

理事会の前の打合せで、こんな会話になったことはないでしょうか。

「地域における公益的な取組って、うちは何をやっていることになるんですか」

「地域の行事にお誘いして、場所も貸していますよね。あれは入りますか」

「そもそも、これは義務なのか、努力義務なのか。どっちなんでしょう」

この会話が噛み合わないのには理由があります。「地域における公益的な取組」は、社会福祉法の本則に、言葉としては一度も出てこないのです。条文を探して見つからず、結局は他法人の事例紹介ページを眺めて「うちもこのくらいなら」と見当をつける。そうなりがちです。

ただ、事例を眺めても、自法人の活動が当たるかどうかは判断できません。判断に必要なのは、事例の数ではなく、何が要件で、どこまでが範囲なのかという線引きです。その線引きは、厚生労働省の通知にかなり具体的に書かれています。

この記事では、社会福祉法の条文と、厚生労働省社会・援護局福祉基盤課長通知「社会福祉法人による『地域における公益的な取組』の推進について」(平成30年1月23日)の原文を読みながら、次の3点を整理します。

  • 社会福祉法の本則に「地域における公益的な取組」という言葉が出てこないこと。根拠になる第24条第2項の文言と、通知の書きぶりを並べて読むこと
  • 通知が示す3つの要件と、迷いやすい場面についての通知の説明
  • 所轄庁(行政)が、この取組についてどこまで関わると通知が書いているか

なお、事例の一覧は載せません。通知自身が、法人に対して画一的かつ特定の取組の実施を促すものではないと書いているためです(後述します)。

目次

まず結論:条文と通知から言える8つのこと

最初に全体像を示します。以降の章で、1つずつ原文を確認します。

  • 社会福祉法の本則に、「地域における公益的な取組」という語は出てこない(抜粋ファイルでの実測値は0回)。根拠とされるのは第24条第2項である
  • 第24条第2項は「福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならない」という書きぶりである
  • 一方、通知は、この取組の実施が法人の責務として位置付けられたと書き、責務は全ての法人に課されるものだとしている
  • したがって言えるのは「条文の文言は『努めなければならない』であり、通知は責務と位置づけて全ての法人に課されるとしている」まで。どちらか一方だけを引いて「義務だ」「努力義務にすぎない」と言い切ることは、この記事ではしない
  • 通知は、取組の範囲を3つの要件(社会福祉事業又は公益事業で提供される福祉サービス/支援を必要とする者が対象/無料又は低額な料金)の全てを満たすものとしている
  • 行事の開催・環境美化活動・防犯活動のように、直接は社会福祉に関連しない取組も、通知が書く条件を満たせば要件に該当しうる。月に1回の行事など、恒常的でない取組も含まれる
  • 資金の拠出や建物の貸し出しだけでは、取組に該当するとは言えない。地域ニーズの把握から企画・実施までに、法人の役職員が実質的に関与する必要がある
  • 所轄庁は、取組の内容が関係法令に明らかに違反するものでない限り、その適否を判断して指導はしない、と通知は書く。ただし、資産等に明らかに余力があるのに全く実施していないときなどは、助言するとされている

法律に書いてあるのは、第24条第2項の一文

本則に「地域における公益的な取組」は出てこない

社会福祉法の本則(全277条)を機械的に検索すると、「地域における公益的な取組」という語の出現回数は0回でした。

検索の仕方が壊れているのではないか、と疑う方のために、対照も示しておきます。同じ方法で「無料又は低額」を数えると8回出てきます。今回の抜粋で見ると、その内訳は次のとおりです。

出てくる条文脈
第2条第2項第1号生計困難者を無料又は低額な料金で入所させる施設(第一種社会福祉事業)
第2条第3項第8号簡易住宅の貸付けや宿泊所の利用
第2条第3項第9号診療を行う事業
第2条第3項第10号介護老人保健施設又は介護医療院を利用させる事業
第2条第3項第11号隣保事業
第2条第3項第12号福祉サービス利用援助事業
第24条第2項社会福祉事業及び公益事業を行うに当たっての福祉サービスの提供
第55条の2第4項第2号社会福祉充実計画で検討する地域公益事業の定義

「無料又は低額」という語は法律の中にあるのに、「地域における公益的な取組」という名前は本則に無い。この取組は、第24条第2項の文言を、通知が「地域における公益的な取組」と呼んで整理したもの、と読むのが自然です。実際、通知の書き出しも、この取組を「第24条第2項の規定に基づき」と説明しています。

第24条の見出しは「経営の原則等」

第24条の見出しは「(経営の原則等)」です。第1項から読みます。

社会福祉法人は、社会福祉事業の主たる担い手としてふさわしい事業を確実、効果的かつ適正に行うため、自主的にその経営基盤の強化を図るとともに、その提供する福祉サービスの質の向上及び事業経営の透明性の確保を図らなければならない。

第1項は、経営基盤の強化、福祉サービスの質の向上、事業経営の透明性の確保を「図らなければならない」と書いています。そして、地域における公益的な取組の根拠とされる第2項は、同じ条の中に置かれています。

第2項の文言

第2項の全文です。

社会福祉法人は、社会福祉事業及び第二十六条第一項に規定する公益事業を行うに当たつては、日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料又は低額な料金で、福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならない。

読みどころは3つあります。

  1. 「社会福祉事業及び第二十六条第一項に規定する公益事業を行うに当たつては」:提供される福祉サービスは、社会福祉事業と公益事業を行うに当たってのものとされています。公益事業の定義は社会福祉法人の公益事業と収益事業の記事で整理しています
  2. 「日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対して」:対象者の限定です
  3. 「無料又は低額な料金で、福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならない」:料金と、行為の書きぶりです。文末は「努めなければならない」です

後で見るように、通知の3要件は、この3つの読みどころとほぼ重なります。

条文の「努めなければならない」と、通知の「責務」を並べて読む

ここが、現場でいちばん迷いやすい点です。両方の原文を、1つずつ示します。

条文:努めなければならない

先ほど引用したとおり、第24条第2項の文末は「積極的に提供するよう努めなければならない」です。条文そのものは、この形で書かれています。

通知:責務として位置付けられた

通知は、書き出しの段落で、次のように書いています。この段落は、第24条第2項の規定に基づいて平成28年4月から、という説明の続きです。

当該取組の実施が法人の責務として位置付けられたところです。

さらに、通知の「1.『地域における公益的な取組』の実施に係る責務の趣旨」では、次のとおり書かれています。

「地域における公益的な取組」の実施に係る責務は、このような認識の下、全ての法人に課されるものであるが、法人に対して画一的かつ特定の取組の実施を促すものではなく、法人が、保有する資産や職員(以下「資産等」という。)の状況、地域ニーズの内容、地域における他の社会資源の有無などを踏まえつつ、その自主性、創意工夫に基づき取り組むべきものであり、当該取組の実施を通じて、地域に対し、法人が自らその存在価値を明らかにしていくことが重要である。

2つを並べると

見る点社会福祉法第24条第2項通知(平成30年1月23日)
文言「福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならない」「法人の責務として位置付けられた」「全ての法人に課されるもの」
対象になる法人社会福祉法人「全ての法人」
何をするか福祉サービスを、無料又は低額な料金で積極的に提供する「画一的かつ特定の取組の実施を促すものではな」く、法人の自主性、創意工夫に基づく

この表から言えるのは、次のことです。

  • 条文は、「努めなければならない」と書いている
  • 通知は、取組の実施を責務と位置づけ、全ての法人に課されるものだと書いている
  • 同時に通知は、何をするかは法人が資産等の状況や地域ニーズを踏まえて自主的に決めるもので、特定の取組を一律に求めるものではない、としている

「義務です」とも「努力義務にすぎません」とも、条文と通知の両方を読んだうえでは言い切れません。 実務で意識しておきたいのは、全ての法人に課される責務とされている以上、「うちは小さいから関係ない」とは通知の書きぶりからは言いにくい、という点です。一方で、何をどの規模でやるかについては、法人に判断の幅があると通知は書いています。

なお、「通知」であることにも注意

ここまで引用しているのは法律ではなく、厚生労働省の課長通知です。通知は、都道府県・指定都市・中核市の民生主管部(局)長あてに出されています。通知の前文には、4の規定(所轄庁の役割)が、地方自治法に基づく法定受託事務を処理するに当たりよるべき基準として発出されるものだと書かれています。

法定受託事務を処理するに当たりよるべき基準として発出することを申し添えます。

つまり、通知の4(所轄庁の役割)は、所轄庁が従う基準として出されたものです。その内容は、後の「所轄庁は何を見るのか」の章で読みます。

通知が示す3つの要件

では、何をすれば「地域における公益的な取組」に当たるのか。通知の「2.『地域における公益的な取組』の内容」は、まず要件を示しています。

法第24条第2項に規定するとおり、次の①から③までの3つの要件の全てを満たすことが必要である。

3つの要件は、次のとおりです。

要件通知の文言第24条第2項との対応
①社会福祉事業又は公益事業を行うに当たって提供される福祉サービスであること「社会福祉事業及び第二十六条第一項に規定する公益事業を行うに当たつては」「福祉サービスを」
②対象者が日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者であること「日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対して」
③無料又は低額な料金で提供されること「無料又は低額な料金で」

3つの全てを満たすことが必要、と書かれています。どれか1つでよい、という書き方ではありません。

通知は、要件ごとに「考え方」を説明しています。以下、順に読みます。

要件①:どんな取組が「福祉サービス」に当たるか

通知の(2)は、まず原則を書きます。

「地域における公益的な取組」は、「社会福祉事業又は公益事業を行うに当たって提供される福祉サービス」であるが、これは、原則として、社会福祉を目的とする取組を指すものである。

原則は「社会福祉を目的とする取組」です。通知はそのうえで、これに該当する場合として、地域ニーズを踏まえ、公費を受けずに新たな社会福祉事業又は公益事業を実施する場合や、既存の社会福祉事業等のサービス内容の充実を図る場合を挙げています。

直接は社会福祉に関連しない取組も入りうる

通知は、続けて次のように書きます。

ただし、地域共生社会の実現に向けた地域づくりを進めていく観点からは、地域住民がそれぞれの立場から、地域社会に参加し、協働していくことが重要であることから、行事の開催や環境美化活動、防犯活動など、取組内容が直接的に社会福祉に関連しない場合であっても、地域住民の参加や協働の場を創出することを通じて、地域住民相互のつながりの強化を図るなど、間接的に社会福祉の向上に資する取組であって、当該取組の効果が法人内部に留まらず地域にも及ぶものである限り、この要件に該当する。

ここで、通知が自ら例として挙げているのは「行事の開催」「環境美化活動」「防犯活動」の3つです。ただし、これらを行えば自動的に要件に該当する、とは書かれていません。 通知が置いている条件は、次の3点です。

  • 地域住民の参加や協働の場を創出すること
  • それを通じて、地域住民相互のつながりの強化を図るなど、間接的に社会福祉の向上に資すること
  • 取組の効果が、法人内部に留まらず地域にも及ぶこと

冒頭の会話に出てきた「地域の行事にお誘いして、場所も貸している」活動が当たるかどうかは、この3点に照らして考えることになります。法人の中の職員や利用者だけに閉じた行事なら、「効果が法人内部に留まらず地域にも及ぶ」という条件に照らして、別の判断になりうるでしょう。

恒常的でなくても、環境整備でもよい

通知は、さらに次のように書いています。

また、ここでいう「福祉サービス」には、法人の定款に基づく事業として行われるものに限らず、月に1回の行事の開催など、必ずしも恒常的に行われない取組も含まれる。さらに、災害時に備えた福祉支援体制づくりや関係機関とのネットワーク構築に向けた取組など、福祉サービスの充実を図るための環境整備に資する取組も含まれるものである。

ここから読み取れるのは、次の3点です。

  • 定款に基づく事業として行われるものに限られない
  • 月に1回の行事の開催など、恒常的でない取組も含まれる
  • 災害時に備えた福祉支援体制づくりや、関係機関とのネットワーク構築に向けた取組など、環境整備に資する取組も含まれる

「事業」として定款に書いてあるものだけが対象、という読み方は、通知の文言と合いません。

要件②:誰が「支援を必要とする者」か

通知の(3)は、対象者について次のように書いています。

「日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者」を対象としているが、これは、原則として、利用者以外の者であって、地域において、心身の状況や家庭環境、経済状況等により支援を必要とするものを指すものである。

原則は「利用者以外の者」です。自法人が運営する事業の利用者へのサービスは、この取組の対象者の原則的な範囲には入っていません。

将来支援が必要になりうる人も含まれる

ただし、通知は対象者の範囲を、現に支援を必要としている人だけには限っていません。

したがって、「日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者」には、自立した日常生活を営んではいるものの、単身で地域との関わりがない高齢者など、現に支援を必要としていないが、このままの状態が継続すれば、将来的に支援を必要とする可能性の高い者も含まれるものであり、「地域における公益的な取組」には、これらの者に対する予防的な支援を行う取組も含まれるものである。

通知が例に挙げているのは「単身で地域との関わりがない高齢者」です。予防的な支援を行う取組も含まれる、と明記されています。

直接の対象でなくてもよい場合

さらに、対象者についての説明は、次の一文で終わっています。

また、直接的にこれらの者を対象としていない場合であっても、地域住民に対する在宅での介護技術研修の実施やボランティアの育成など、間接的にこれらの者の支援に資する取組も含まれるものである。

通知が挙げているのは「地域住民に対する在宅での介護技術研修の実施」と「ボランティアの育成」です。支援を必要とする人を直接の対象にしていなくても、間接的に支援に資する取組は含まれる、という書き方です。

要件③:「無料又は低額」とは、どういう意味か

通知の(4)は、「無料又は低額な料金」の考え方を次のように書いています。

これは、原則として、法人が現に保有する資産等を活用することにより、取組の対象者から、通常要する費用を下回る料金を徴収し、又は料金を徴収せずに実施することを指すものである。

ポイントは2つです。

  • 「法人が現に保有する資産等を活用する」ことが原則
  • 「通常要する費用を下回る料金を徴収する」か、「料金を徴収しない」こと

全額の公費負担がある場合

通知は、公費が絡む場合について次のように書いています。

したがって、当該取組の実施に当たって、国又は地方公共団体から全額の公費負担がある場合には、この要件に該当しないが、このような場合であっても、法人による資産等を活用した追加のサービスが行われていれば、この要件に該当する。

整理すると、次のようになります。

場面通知の書きぶり
国又は地方公共団体から全額の公費負担があるこの要件に該当しない
全額の公費負担があるが、法人による資産等を活用した追加のサービスが行われているこの要件に該当する

なお、要件①の説明(2)でも、「公費を受けずに」新たな事業を実施する場合が要件①に該当する例として挙げられています。全額が公費で賄われているものを、そのまま法人の取組として数えることはできない、という方向の整理です。「一部だけ公費が入っている場合」の扱いは、今回の通知の文言からは読み取れません。判断に迷う場合は、所轄庁に確認が必要です。

迷いやすい場面を、通知の言葉で整理する

ここまでを、現場が迷いやすい場面ごとに整理し直します。ここに載せているのは、通知が明示している内容だけです。通知に書かれていない活動の例を、この記事で足してはいません。

迷う場面通知の書きぶり通知の箇所
行事・環境美化・防犯のような、福祉と直接関係しない活動は数えてよいか地域住民の参加や協働の場を創出し、間接的に社会福祉の向上に資し、効果が法人内部に留まらず地域にも及ぶ限り、要件に該当する2(2)
定款に書いていない活動は数えられないか定款に基づく事業として行われるものに限られない2(2)
月に1回の行事のように、毎日続けていない活動はどうか必ずしも恒常的に行われない取組も含まれる2(2)
災害に備えた体制づくりや、ネットワークづくりはどうか環境整備に資する取組も含まれる2(2)
自法人の利用者向けのサービスはどうか対象者は、原則として、利用者以外の者2(3)
今は困っていない地域の人はどうか将来的に支援を必要とする可能性の高い者も含まれ、予防的な支援を行う取組も含まれる2(3)
研修やボランティア育成のように、支援を必要とする人を直接の対象にしないものはどうか間接的にこれらの者の支援に資する取組も含まれる2(3)
全額が公費で賄われているものはどうか全額の公費負担がある場合は該当しない。追加のサービスが行われていれば該当する2(4)
他の法人と一緒に行ってよいか複数の法人で連携して行うことも差し支えない2(5)

やってはいけない形:資金や建物を出すだけ、行政の代わりをするだけ

通知は、「該当するとは言えない」形と、「あってはならない」形を、それぞれ書いています。

資金の拠出や建物の貸し出しだけでは足りない

通知の(5)は、次のように書いています。

また、単に資金の拠出、建物等、法人が保有する資産の貸し出しのみでは、当該取組に該当するとは言えず、地域ニーズの把握から取組の企画、実施までの一連のプロセスに法人の役職員が実質的に関与することが必要である。

この一文は、先ほどの会話の「場所も貸していますよね」の部分に直接関わります。場所を貸すだけ、資金を出すだけでは、当該取組に該当するとは言えない、と通知は書いています。必要なのは、次の一連のプロセスに法人の役職員が実質的に関与することです。

  1. 地域ニーズの把握
  2. 取組の企画
  3. 実施

複数の法人で行ってもよい

同じ(5)には、次の一文もあります。

「地域における公益的な取組」は、法人が単独で行わなければならないものではなく、複数の法人で連携して行うことも差し支えない。

行政の事業を単に代替させてはならない

通知の1には、次の記述があります。

なお、「地域における公益的な取組」により、行政が主体となって実施する又は実施しようとする事業を単に代替させるようなことがあってはならず、法人が、当該事業とは異なる新たな取組を創出することにより、地域における支援体制が重層化され、地域における課題解決力の向上が図られることを期待するものである。

行政が主体となって実施している、または実施しようとしている事業を、単に代わりに行うことは「あってはならない」と書かれています。法人に期待されているのは、その事業とは異なる新たな取組の創出です。

社会福祉事業に支障を及ぼさない

通知は、本来事業との関係についても書いています。

一方、法人は、社会福祉事業の運営を主たる目的とすることから、「地域における公益的な取組」の実施に当たっては、社会福祉各法に基づく各種基準等を満たしつつ、法人が現に運営する社会福祉事業に支障を及ぼすことのないようにすることが必要である。

取組のために、本来の社会福祉事業の基準を割ったり、支障を出したりしてはいけない、ということです。この考え方は、公益事業・収益事業について第26条第1項が置いている「社会福祉事業に支障がない限り」という入口の縛りとも、方向が同じです。

定款の変更は要るのか

実務で次に出てくる質問が、「定款を変えないと、この取組はできないのか」です。通知の「3.定款上の位置付けについて」は、次のように書いています。

「地域における公益的な取組」のうち、恒常的に行われるものではない取組については、定款の変更は不要である。

これに続けて通知は、公益事業のうち、規模が小さく社会福祉事業と一体的に行われる事業についても、「社会福祉法人の認可について」(平成12年12月1日付けの厚生省関係局長連名通知)に規定のとおり、定款の変更は不要だと書いています。

ここで書かれていることを整理します。

  • 恒常的に行われるものではない取組は、定款の変更は不要
  • 公益事業のうち、規模が小さく社会福祉事業と一体的に行われる事業も、定款の変更は不要

書かれていないのは、「恒常的に行う取組・規模が大きい公益事業は定款の変更が要る」という裏の部分です。通知の文言から言えるのは「不要な場合が2つ示されている」ところまでです。それ以外の場合に、定款にどう書くのか、変更の手続は認可なのか届出なのかは、この記事の一次情報には入っていません。

この論点は、次の記事に任せます。

所轄庁は、この取組で何を見るのか

法人本部がいちばん気にするのが、「監査でどう見られるのか」ではないでしょうか。通知の「4.所轄庁の役割について」を、原文のまま読みます。

「地域における公益的な取組」は、法人が地域ニーズを把握し、自らの保有する資産等の状況なども勘案しながら、法人の自主的な判断の下、行われることが重要であり、また、当該取組の是非は地域において評価されるべきものであることから、所轄庁は、法人に対し、特定の事業の実施を強制するような指導を行わないことは当然であるが、当該取組の内容が関係法令に明らかに違反するものでない限り、その適否を判断し、指導は行わないこと。

ここで書かれているのは、次の3点です。

  • 取組は、法人が地域ニーズを把握し、資産等の状況を勘案して、法人の自主的な判断の下で行うことが重要
  • 取組の是非は、地域において評価されるべきもの
  • 所轄庁は、特定の事業の実施を強制するような指導は行わない。取組の内容が関係法令に明らかに違反するものでない限り、その適否を判断して指導は行わない

続いて、通知は「ただし」として、助言の場面を書いています。

ただし、法人の資産等に明らかに余力があるにも関わらず、当該取組を全く実施していない場合や、地域において同様の取組が供給過剰となっている場合などの状況を把握した場合には、当該取組の実施や取組内容の変更を助言するものとする。

整理すると、次のとおりです。

場面通知の書きぶり
取組の内容が関係法令に明らかに違反していないその適否を判断し、指導は行わない
特定の事業の実施を強制するか強制するような指導は行わないことは当然
資産等に明らかに余力があるのに、全く実施していない実施や取組内容の変更を助言する
地域で同様の取組が供給過剰になっている実施や取組内容の変更を助言する

ここは、読み違えやすい点です。

  • 通知が書いているのは「指導は行わない」と「助言する」の区別です。「何もしなくても何も言われない」とは書いていません。 資産等に明らかに余力があるのに全く実施していない場合は、助言の対象として挙げられています
  • 助言の例として挙がっている2つは「など」で終わっており、この2つだけに限られるとは書かれていません
  • この記載は、所轄庁が従う基準として出されたものです。法人がどう評価されるかは、地域で評価されるべきものだとされています

さらに、通知は所轄庁の役割として、次の点も書いています。

また、所轄庁においては、地域協議会等の開催などを通じ、法人が円滑に地域ニーズを把握できるような場を提供するとともに、管内の法人の取組状況を把握し、好事例を周知することなどを通じて、地域において、法人の取組を促す環境整備を進めていくよう努めること。

所轄庁は、取組を「取り締まる」ためだけでなく、地域ニーズを把握できる場の提供や、好事例の周知といった環境整備も求められています。

取組の見直しも、通知は想定している

最後に、通知の(5)の末尾の一文も読んでおきます。

さらに、当該取組については、社会情勢の変化等に伴う地域ニーズの変化に応じて、求められる内容も変化していくことから、地域協議会や地域福祉計画策定委員会等の場を活用すること等を通じて、定期的に地域住民等の意見を聴取し、当該取組の実施状況について検証を行った上で、その結果を踏まえ、必要に応じて取組内容の充実や見直しを行っていくことが重要である。

定期的に地域住民等の意見を聴き、実施状況を検証し、必要に応じて内容を充実・見直しする。この流れを回すには、実施状況の記録が前提になります。

社会福祉充実計画とは、言葉がつながっている

通知の(2)には、「(法第55条の2第4項第2号に規定する地域公益事業を含む。)」という書き込みがあります。この「地域公益事業」は、社会福祉充実計画(法第55条の2)に出てくる語です。条文での定義を示します。

公益事業(第二条第四項第四号に掲げる事業を除き、日常生活又は社会生活上の支援を必要とする事業区域の住民に対し、無料又は低額な料金で、その需要に応じた福祉サービスを提供するものに限る。第六項及び第九項第三号において「地域公益事業」という。)

「日常生活又は社会生活上の支援を必要とする」「無料又は低額な料金で」という言葉が、第24条第2項や通知の要件と同じ形で出てきます。また、同条第6項は、地域公益事業を行う社会福祉充実計画の作成に当たっては、事業の内容と需要について住民その他の関係者の意見を聴くことを定めています。

社会福祉法人は、地域公益事業を行う社会福祉充実計画の作成に当たつては、当該地域公益事業の内容及び事業区域における需要について、当該事業区域の住民その他の関係者の意見を聴かなければならない。

この記事では、「通知が地域公益事業という語を通じて、社会福祉充実計画とつながっている」ところまでを示します。計画が必要になる条件、承認の流れ、地域公益事業の位置づけの詳細は、社会福祉充実計画の記事をご覧ください。

実務の打ち手:取組の記録を、最初から1か所に残す

ここまで読むと、法人本部がやるべきことは、「何をするか」よりも、「やったことを説明できる状態にしておくか」に絞られてきます。通知は、取組の内容を法人の自主性に委ねています。一方で、次の点は説明が求められうるものです。

  • 地域ニーズをどう把握したか(通知の(5)の「一連のプロセス」)
  • 法人の役職員が実質的に関与したか(同)
  • 無料又は低額で、法人の資産等を活用して提供したか((4))
  • 実施状況を検証して、見直したか((5)の末尾)
  • 資産等に余力があるかどうか、取組を全く実施していない状態ではないか(4の助言の場面)

取組ごとに、1枚の記録を作る

取組を行うたびに、次のような項目を1か所に残しておきます。表の項目名は、通知の言葉に合わせています。

記録する項目内容対応する通知の箇所
取組の名称・内容何を行ったか2(1)
要件①の整理社会福祉を目的とするか。直接関連しないなら、地域住民の参加や協働の場の創出と、地域への効果をどう考えたか2(2)
対象者誰を対象としたか(利用者以外か、将来的に支援を必要とする可能性の高い人か)2(3)
地域ニーズどのような地域ニーズに対して行ったか。どう把握したか1、2(5)
料金無料か、通常要する費用を下回る料金か。公費負担の有無2(4)
法人の関与企画・実施に、法人の役職員がどう関わったか2(5)
活用した資産等職員・場所・設備など、法人の資産等のうち何を使ったか1、2(4)
連携先他の法人や関係機関と連携したか2(5)
実施の記録いつ、何人に対して行ったか運営上の記録
検証・見直し地域住民等の意見と、見直しの内容2(5)
本来事業への影響社会福祉事業に支障を及ぼしていないかの確認1

表の「実施の記録」の行は、通知に直接書かれた項目ではなく、運営上の記録として加えたものです。ただ、いつ・何人に・いくらで・どの地域ニーズに対して行ったかが1か所にまとまっていれば、理事会の資料を作るときも、所轄庁から取組について尋ねられたときも、同じ記録から説明を組み立てられます。

なお、所轄庁へ提出する現況報告書などで、この取組についてどの項目をどの様式で書くのかは、この記事の一次情報には入っていません。様式や記載欄は、所轄庁の案内でご確認ください。現況報告書そのものの整理は、社会福祉法人の現況報告書の記事で扱っています。

年に一度、次の点を見直す

  • [ ] 行った取組は、3つの要件(①福祉サービス ②支援を必要とする者 ③無料又は低額)を、それぞれ説明できるか
  • [ ] 資金の拠出や場所の貸し出しだけになっていないか。役職員の関与を説明できるか
  • [ ] 行政が行っている(行おうとしている)事業を、単に代替していないか
  • [ ] 本来の社会福祉事業に支障を及ぼしていないか
  • [ ] 全く実施していない状態になっていないか
  • [ ] 地域住民等の意見を聴き、見直しを検討したか

記録は、日々の運営の中で残すほうが軽い

年度末にまとめて思い出して書こうとすると、「誰に・何回・いくらで」が分からなくなります。取組を行った時点で、名称・日時・参加人数・活用した職員や場所・料金を残しておくと、後の説明がずっと軽くなります。拠点やサービスの区分で記録を持つ発想は、拠点区分とサービス区分の記事も参考になります。

この記事で書いていないこと

一次情報の範囲を守るため、次の点は扱っていません。

  • 他の法人や自治体が行っている取組の具体的な事例の一覧(通知は画一的かつ特定の取組を促すものではないと書いており、通知に載っていない活動を、この記事が「当たる」と断定することはできないため)
  • 現況報告書の様式番号や記載欄の名称
  • 平成28年の法改正の立法経緯の詳細
  • 税制上の優遇措置の具体的な内容(通知の1に「税制上の優遇措置を受けている」とあるのみで、中身は通知に書かれていません)
  • 全額ではなく、一部だけ公費負担がある場合の扱い
  • 恒常的に行う取組や規模の大きい公益事業の、定款への書き方と変更手続
  • 社会福祉充実計画の作成が必要になる条件と承認の流れ

これらは、所轄庁の案内、関係する法令・通知、顧問の専門家の助言でご確認ください。

まとめ

  • 社会福祉法の本則に「地域における公益的な取組」という語は出てこない(抜粋ファイルでの実測値は0回。「無料又は低額」は8回)。根拠は第24条第2項で、文末は「努めなければならない」
  • 通知は、取組の実施を法人の責務として位置付け、責務は全ての法人に課されるものだとしている。同時に、画一的かつ特定の取組を促すものではなく、法人の自主性、創意工夫に基づくものだとしている。条文と通知の両方を並べて読むと、「義務」とも「努力義務にすぎない」とも言い切れない
  • 要件は3つで、全てを満たすことが必要。①社会福祉事業又は公益事業で提供される福祉サービス、②日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者が対象、③無料又は低額な料金
  • 行事・環境美化・防犯など直接は福祉に関連しない取組も、地域住民の参加や協働の場を創出し、効果が法人内部に留まらず地域にも及ぶ限り、要件に該当しうる。定款に基づく事業でなくても、月に1回の行事のように恒常的でなくてもよい。災害時の支援体制づくりやネットワーク構築も含まれる
  • 対象者は原則として利用者以外の者。将来的に支援を必要とする可能性の高い者も含まれ、予防的な支援も入る
  • 全額の公費負担がある場合は要件に該当しない。ただし、法人による資産等を活用した追加のサービスがあれば該当する
  • 資金の拠出や建物の貸し出しだけでは、該当するとは言えない。 地域ニーズの把握から企画・実施まで、法人の役職員が実質的に関与することが必要。行政の事業を単に代替してはならない
  • 所轄庁は、関係法令に明らかに違反していない限り、適否を判断して指導は行わない。ただし、資産等に明らかに余力があるのに全く実施していない場合などは、助言するとされている

この取組を、法人本部が説明できる状態にしておくには、突き詰めると「どの地域ニーズに対して、法人の誰が、いつ、何人に、いくらで行い、どう見直したか」を、取組ごとに1か所に残すことに行き着きます。定款との関係は社会福祉法人の公益事業と収益事業、地域公益事業は社会福祉充実計画、所轄庁へ出す報告書類は現況報告書の記事で、あわせてお読みください。

参考(一次情報)


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