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社会福祉法人の規程一覧|どの規程をどの機関の決議で変えるのか

「うちの法人に規程は何本ありますか」と尋ねると、たいていの事務局から返ってくるのは「キャビネットのこの辺りに全部あるはずです」という答えです。そして「では、この規程を直すときはどこの決議が要りますか」と重ねて聞くと、そこで止まります。

規程の管理でつまずくのは、本数を数えられないからではありません。一本ずつ決裁の経路が違うのに、その違いが誰の頭の中にもないからです。理事会で決めればよいものを評議員会にかけてしまったり、逆に評議員会の承認が必要なものを理事会止まりにしてしまったりする。指導監査で指摘を受けて初めて気づく、という順序になりがちです。

この記事では、規程のひな形を並べるのではなく、どの規程を、どの機関の決議で、どういう順序で変えるのかという決裁経路の側から整理します。

規程は4つの層に分かれる

社会福祉法人の内部ルールは、決め方の重さで次の4層に分けて捉えると整理がつきます。

何を決めるか変更に必要な手続
1. 定款法人の基本事項評議員会の決議(3分の2以上)+原則として所轄庁の認可
2. 評議員会の承認が必要な基準役員等の報酬等の支給の基準評議員会の承認
3. 理事会の決議で定める規程経理規程、専決規程、就業規則 ほか理事会の決議(定款に定める手続による)
4. 理事長が専決できる事項日常の業務として理事会が定めたもの理事長の決裁+理事会への報告

この4層のうち、実務で最も事故が起きやすいのは2と3の境目、そして3と4の境目です。順に見ていきます。

第1層:定款——評議員会の決議と所轄庁の認可

出発点は定款です。社会福祉法第31条第1項は、定款に定めなければならない事項として15項目を挙げています。評議員及び評議員会に関する事項、役員の定数その他役員に関する事項、理事会に関する事項、資産に関する事項、会計に関する事項などが並びます。

定款を変えるときの手続は明確です。

定款の変更は、評議員会の決議によらなければならない。

(社会福祉法第45条の36第1項)

しかもこの決議は通常の過半数では足りません。社会福祉法第45条の9第7項第三号により、定款変更の決議は議決に加わることができる評議員の3分の2以上に当たる多数が必要です。そのうえで、厚生労働省令で定める事項に係るものを除き、所轄庁の認可を受けなければ効力を生じません。

定款変更の手続そのものについては、社会福祉法人の定款変更手続きで詳しく整理しています。

規程の改正を検討するとき、最初に確認すべきは「その内容が定款に書かれていないか」です。 定款に書かれている事柄を規程だけで変えても効力はありません。

第2層:報酬等の支給の基準——評議員会の承認が必要

規程のうち、法律が名指しで評議員会の承認を求めているものがあります。役員等の報酬等の支給の基準です。

前項の報酬等の支給の基準は、評議員会の承認を受けなければならない。
これを変更しようとするときも、同様とする。

(社会福祉法第45条の35第2項)

「これを変更しようとするときも、同様とする」という後段が実務では重要です。最初に定めたときだけ評議員会にかけて、その後の改定は理事会だけで済ませている法人が少なくありません。改定のたびに評議員会の承認が要ります。

この基準の中身と、備置き・公表の扱いについては社会福祉法人の役員報酬にまとめています。

第3層:理事会の決議で定める規程

経理規程は「定めるものとする」

経理規程の根拠は法律ではなく、厚生労働省の課長通知「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」(平成28年3月31日)の「1 管理組織の確立」にあります。

法人は、上記事項を考慮し、会計基準省令に基づく適正な会計処理のために必要な事項について経理規程を定めるものとする。

通知の文言は「定めるものとする」ですが、指導監査の実務では実質的に必須です。厚生労働省の「社会福祉法人指導監査実施要綱の運用について(指導監査ガイドライン)」は、経理規程について次のように定めています。

次の場合は文書指摘とする。
・ 経理規程が定められていない場合

続けて、経理規程の内容が法令又は通知に反する場合、経理規程が定款に定める手続により決定されていない場合、経理規程及びその細則等に定めるところにより事務処理が行われていない場合も、いずれも文書指摘の対象として挙げられています。

注目したいのは3つめです。 「経理規程が定款に定める手続により決定されていない場合」——つまり、内容が正しくても、決め方が定款のとおりでなければ指摘になります。多くの法人の定款では経理規程は理事会の決議事項とされていますから、改正したのに理事会議事録が残っていない、という状態がそのまま指摘につながります。

経理規程の中身とモデル規程の使い方は社会福祉法人の経理規程モデルで扱っています。

理事会が理事に委任できない6つの事項

規程で「理事長に委任する」と書いても、そもそも委任できない事項があります。

理事会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を理事に委任することができない。
一 重要な財産の処分及び譲受け
二 多額の借財
三 重要な役割を担う職員の選任及び解任
四 従たる事務所その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
五 理事の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他社会福祉法人の業務の適正を確保するために必要なものとして厚生労働省令で定める体制の整備

(社会福祉法第45条の13第4項第一号〜第五号。第六号として責任の免除に関する事項が続きます)

第五号の「体制の整備」、いわゆる内部管理体制については、事業の規模が政令で定める基準を超える法人では決定が義務になります(同条第5項)。

第4層:専決規程——ないと全ての借財に理事会決議が要る

ここが実務で最も見落とされる論点です。

指導監査ガイドラインは、多額の借財について次の注を置いています。

定款例第24条においては、「日常の業務として理事会が定めるものについては、理事長が専決し、これを理事会に報告する」とされており、法人において定款にこの規定を設ける場合には、「理事会が定めるもの」として専決規程等の規程を定めることとなる。なお、理事会において、専決規程等理事に委任する範囲を定めない場合には、全ての借入れに理事会の決議が必要となる。

専決規程がなければ、金額の大小にかかわらず全ての借入れに理事会の決議が必要になります。 「少額だから理事長決裁で」という運用は、専決規程で範囲を明示していて初めて成り立ちます。

同ガイドラインは指摘基準としても、多額の借財(専決規程等がない場合は全ての借財)について理事会の決議を受けた上で行われていない場合は文書指摘とする、としています。確認書類には定款、理事会議事録、借入金明細書、専決規程等、理事長による決裁文書、借入契約書等が挙げられています。

規程と決裁経路の対応表

実務でよく持つ規程を、根拠と決議機関で並べると次のようになります。所轄庁や法人の定款によって扱いが変わるものもあるため、自法人の定款と必ず突き合わせてください。

規程・基準主な根拠決める機関備考
定款法第31条、法第45条の36評議員会(3分の2以上)原則として所轄庁の認可が必要
報酬等の支給の基準法第45条の35評議員会の承認変更のたびに承認が必要
経理規程運用上の留意事項1の(4)理事会(定款の定めによる)未整備は文書指摘
専決規程定款例第24条理事会ないと全ての借財が理事会決議
内部管理体制に関する規程法第45条の13第4項第五号理事会一定規模超は決定が義務
評議員選任・解任委員会の運営細則法第31条第5項ほか定款・委員会理事会では評議員を選べない
就業規則・給与規程労働基準法第89条ほか理事会+労働基準監督署へ届出労働者代表の意見聴取が必要
苦情解決に関する規程法第82条ほか理事会第三者委員の設置と一体で整える
文書保存規程法第45条の32ほか理事会備置き年限と保存年限を分けて書く

評議員の選任は理事会では決められません。この点は評議員選任・解任委員会の運営で詳しく扱っています。苦情解決の体制は社会福祉法人の苦情解決を参照してください。

「直したのに議事録がない」が一番多い指摘

規程の管理で実際に監査の指摘につながるのは、規程そのものの中身よりも、改正の記録が追えないことです。

  • 現行版がどれなのか分からない(キャビネットに旧版が混在している)
  • 施行日が規程に書かれていない
  • 改正した理事会の議事録が特定できない
  • 拠点ごとに別の版が回っている

理事会議事録は、理事会の日から10年間、主たる事務所に備え置く必要があります(社会福祉法第45条の15第1項)。議事録の記載事項と保存については社会福祉法人の理事会議事録にまとめました。

規程を1本直すたびに、「現行版のファイル」「施行日」「根拠となる議事録」の3点が1組で残る形になっているか。ここが揃っていれば、監査で「この規程はいつ、どこで決めましたか」と聞かれても、その場で答えられます。

規程台帳を1枚だけ作る

本数を増やす前に、まず1枚の台帳を作ることをおすすめしています。列は次の6つで足ります。

  1. 規程名
  2. 現行版の施行日
  3. 決める機関(定款/評議員会/理事会/理事長専決)
  4. 最後に改正した日と議事録の番号
  5. 現行版ファイルの置き場所
  6. 次に見直す予定の時期

この6列が埋まっていれば、規程の改正が必要になったときに「どこに諮るか」で迷うことがなくなります。逆に、この台帳が作れない状態は、現行版がどれか分かっていないということでもあります。

まとめ

  • 規程は定款/評議員会の承認/理事会の決議/理事長の専決の4層で捉える
  • 定款変更は評議員会の3分の2以上の決議と、原則として所轄庁の認可が必要
  • 報酬等の支給の基準は、変更のたびに評議員会の承認が要る(法第45条の35第2項)
  • 経理規程は通知上「定めるものとする」だが、未整備・内容不備・定款の手続によらない決定・規程どおりでない事務処理は、いずれも文書指摘
  • 重要な財産の処分及び譲受け、多額の借財など6つの事項は、理事会から理事に委任できない(法第45条の13第4項)
  • 専決規程を定めていない場合、全ての借入れに理事会の決議が必要になる
  • 指摘につながりやすいのは中身より改正の記録。現行版・施行日・議事録の3点を1組で残す

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参考にした一次情報

※所轄庁によって様式や運用に細かな違いがあります。実際の手続きにあたっては、必ず所轄庁の案内と自法人の定款をご確認ください。本記事では規程のひな形の配布は行っていません。

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