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社会福祉

社会福祉法人の理事会議事録の書き方|記載事項・署名人・保存期間を条文から整理

理事会が終わったあと、議事録を作る係になっている方は多いと思います。

そして、こう思ったことはないでしょうか。

「前回の議事録をコピーして日付と議案を差し替えているけれど、これで本当に足りているのだろうか」

私たちが社会福祉法人様のご支援に入ると、この不安をよく伺います。議事録は、指導監査で必ず見られる書類です。にもかかわらず、何を書けば法令上足りるのかを条文レベルで確認する機会は、実務ではあまりありません。前任者が作ったひな形をそのまま使い続けている、というケースがほとんどです。

この記事では、社会福祉法と社会福祉法施行規則を根拠に、理事会議事録に必要な要素を整理します。あわせて、評議員会議事録との違い(ここが混ざりやすい)と、決議の省略を使ったときの議事録の書き方も扱います。

まず押さえる3つの条文

理事会議事録のルールは、実質的に次の3か所に分かれて書かれています。ここを行き来しないと全体像がつかめません。

条文何が書かれているか
社会福祉法 第45条の14第6項・第7項議事録を作る義務と、署名・記名押印をする人
社会福祉法施行規則 第2条の17議事録に何を書くか(記載事項)
社会福祉法 第45条の15何年間どこに置くか、誰が閲覧できるか

「様式」を定めた条文はありません。法令が求めているのは様式ではなく、記載されている内容です。自治体が公表しているひな形は、この記載事項を満たすための参考例という位置づけになります。

署名・記名押印をするのは誰か

まず、いちばん間違いが多いところから。社会福祉法第45条の14第6項はこう定めています。

理事会の議事については、厚生労働省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもつて作成されているときは、出席した理事(定款で議事録に署名し、又は記名押印しなければならない者を当該理事会に出席した理事長とする旨の定めがある場合にあつては、当該理事長)及び監事は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。

読み解くと、次の2パターンしかありません。

パターン1:定款に特段の定めがない場合
→ 出席した理事全員と、出席した監事全員が署名または記名押印する。

パターン2:定款に「議事録署名人は出席した理事長とする」旨の定めがある場合
理事長と、出席した監事全員が署名または記名押印する。

ここで注意したい点が2つあります。

ひとつは、どちらのパターンでも監事は外れないことです。「理事長だけでいい」と定款に定めても、それは理事側の話で、出席した監事の署名・記名押印は必要です。理事会に監事が出席していたのに監事の署名欄がない議事録は、この点で足りていません。

もうひとつは、条文が「理事長」と書いていることです。一般社団法人・一般財団法人では「代表理事」という言い方をしますが、社会福祉法人の条文上は理事長です。他法人向けのひな形を流用すると、この用語がずれます。

なお、「署名」と「記名押印」はどちらでも構いません。条文が「署名し、又は記名押印し」と並列で書いているためです。全員の自署をそろえるのが実務上大変であれば、記名押印で足ります。

議事録を電磁的記録(PDFなど電子データ)で作る場合は、第45条の14第7項により「厚生労働省令で定める署名又は記名押印に代わる措置」をとる必要があります。紙を回して押印する運用をやめるなら、この点の整理が先に必要になります。

議事録に書く8つの事項

社会福祉法施行規則第2条の17第3項が、記載事項を8号に分けて定めています。実務の言葉に置き換えると次のとおりです。

記載事項実務での書きかたのポイント
開催された日時及び場所(その場所にいない理事・監事・会計監査人が出席した場合は、その出席の方法を含む)オンライン参加者がいた場合は「Web会議システムにより出席」等を明記する
招集の経緯が特定の類型に当たるときは、その旨理事の請求を受けて招集した場合、監事の請求を受けて招集した場合など。通常の招集なら記載不要
議事の経過の要領及びその結果「要領」でよい。逐語録は求められていない
決議事項について特別の利害関係を有する理事があるときは、その理事の氏名該当者は議決に加われない(第45条の14第5項)。氏名の記載と、退席・除外の事実を書く
一定の規定により理事会で述べられた意見・発言があるときは、その内容の概要監事の意見陳述(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第100条・第101条第1項の準用)などが該当する
第45条の14第6項の定款の定めがあるときは、理事長以外の理事であって理事会に出席したものの氏名「理事長のみ署名」の定款にしている法人は、出席理事の氏名を本文に書く必要がある。ここが漏れやすい
理事会に出席した会計監査人の氏名又は名称会計監査人設置法人で出席があった場合
理事会の議長が存するときは、議長の氏名定款で議長を定めている法人は必ず記載

第六号は特に見落とされます。定款を変えて「署名は理事長だけ」に簡素化した法人は、そのかわりに出席理事の氏名を議事録本文に書く必要が生じます。署名欄が減ったぶん、本文に情報を戻す仕組みになっているわけです。署名欄も出席者名簿も両方ないと、誰が出席したのか議事録から分からなくなります。

反対に、第45条の14第4項の定足数(議決に加わることができる理事の過半数の出席)を満たしていたことを議事録で示すには、出席者が特定できる記載が事実上必要になります。理事会の成立要件そのものについては、別の記事で整理しています。

▶ 関連記事:社会福祉法人の理事会の成立要件と定足数

保存期間は10年。ただし「主たる事務所」だけ

社会福祉法第45条の15第1項は、こう定めています。

社会福祉法人は、理事会の日(前条第九項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第九十六条の規定により理事会の決議があつたものとみなされた日を含む。)から十年間、前条第六項の議事録又は同条第九項において準用する同法第九十六条の意思表示を記載し、若しくは記録した書面若しくは電磁的記録(以下この条において「議事録等」という。)をその主たる事務所に備え置かなければならない。

ここで押さえるべきことは3つあります。

1. 起算日は「理事会の日」。作成日や承認日ではありません。決議の省略を使った場合は「決議があったものとみなされた日」が起算日です。

2. 保存対象は議事録だけではない。決議の省略で理事から提出された「同意の意思表示を記載した書面(または電磁的記録)」も、議事録等として10年間の備置き対象です。同意書のメールやFAXを、議事録と別のところに置いたまま行方不明にしてしまう法人は少なくありません。

3. 備え置くのは主たる事務所のみ。理事会議事録には、従たる事務所での備置き義務がありません。ここが評議員会議事録との大きな違いです。

評議員会議事録との違いを整理する

同じ「議事録」なので、法人内でも混ざりやすいところです。条文上の違いを並べると次のようになります。

 理事会議事録評議員会議事録
作成義務の条文法第45条の14第6項法第45条の11第1項
記載事項施行規則第2条の17施行規則第2条の15
署名・記名押印必要(出席理事+出席監事。定款の定めにより理事長+出席監事)条文上の義務なし
主たる事務所での備置き10年間10年間
従たる事務所での備置き規定なし写しを5年間(電磁的記録で一定の措置をとる場合を除く)
閲覧・謄写を請求できる者評議員(債権者は裁判所の許可が必要)評議員及び債権者
議事録作成者の氏名通常の記載事項には含まれない(みなし決議の場合は必要)記載事項に含まれる(第2条の15第3項第七号)

評議員会議事録には、法令上の署名義務がありません。多くの法人が定款や運営規程で議事録署名人を定めていますが、それは自法人のルールとして定めているものです。「法律で決まっているから」ではなく「うちの定款でこう決めているから」という理解にしておくと、定款変更の議論のときに話が早くなります。

▶ 関連記事:社会福祉法人の評議員会の決議事項・報告事項

決議の省略(みなし決議)を使ったときの議事録

理事会を実際に開かずに決議を成立させる方法があります。社会福祉法第45条の14第9項が準用する、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第96条です。

理事会設置一般社団法人は、理事が理事会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき理事(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監事が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の理事会の決議があつたものとみなす旨を定款で定めることができる。

条件は4つです。

  1. 定款に定めがあること(これがなければ使えません)
  2. 理事が提案したこと
  3. 議決に加わることができる理事の全員が書面または電磁的記録で同意したこと
  4. 監事が異議を述べていないこと

「全員」が要件なので、1人でも同意が返ってこなければ成立しません。過半数では足りません。

このときの議事録は、通常の8項目ではなく、施行規則第2条の17第4項第1号が定める4つの事項を書きます。

  • 理事会の決議があったものとみなされた事項の内容
  • その事項の提案をした理事の氏名
  • 理事会の決議があったものとみなされた日
  • 議事録の作成に係る職務を行った理事の氏名

通常の議事録と項目が違うため、いつものひな形を流用すると噛み合いません。決議の省略用の様式を別に用意しておくのが実務的です。

似た仕組みとして、報告の省略もあります。同法第98条第1項により、理事・監事・会計監査人が理事及び監事の全員に報告すべき事項を通知したときは、理事会への報告を要しません。この場合の議事録も、施行規則第2条の17第4項第2号で別に定められています。

ただし、業務執行理事の職務執行状況の報告は省略できません。社会福祉法第45条の16第3項は、理事長および理事会の決議で選定された業務執行理事に対し、3か月に1回以上(定款で定めれば、毎会計年度に4か月を超える間隔で2回以上)自己の職務執行状況を理事会に報告することを義務づけており、この報告は同法第98条第2項によって省略の対象から外されています。年に2回しか理事会を開かない法人は、この定款の定めがあるかを確認しておいてください。

議事録が「探せない」ほうが問題になる

ここまで制度の話をしてきましたが、私たちが現場で見てきた実務のつまずきは、書き方ではありません。探せないことです。

よくある状態を挙げます。

  • 議事録の最終版がどれか分からない(理事会議事録_最終.docx理事会議事録_最終2.docx理事会議事録_修正版.docx が並んでいる)
  • 押印済みの原本はキャビネットにあるが、電子データは別の担当者のPCにしかない
  • 決議の省略で集めた同意書が、メールの添付ファイルのまま残っている
  • 10年前の議事録があるかどうか、誰も把握していない
  • 指導監査の直前に、過去5年分をキャビネットから探し出す作業が発生する

10年間の備置き義務は、10年間探せる状態にしておく義務とほぼ同じ意味です。ファイル名の付け方を決める、保存場所を1か所にする、議案と決議結果を一覧で引けるようにする。この3つだけでも、監査前の作業量はかなり変わります。

とくに拠点が複数ある法人では、「本部にあるはずの原本」と「拠点にあるコピー」が食い違うことが起きます。議事録は主たる事務所での備置きが義務ですから、原本の置き場所を1か所に決めて、それ以外はすべて参照用と割り切るのが安全です。

まとめ

  • 理事会議事録のルールは、社会福祉法第45条の14第6項・第7項(作成と署名)、施行規則第2条の17(記載事項)、法第45条の15(備置き・閲覧)の3か所に分かれている
  • 署名・記名押印は「出席理事全員+出席監事全員」が原則。定款の定めで理事側は理事長のみにできるが、監事は外れない
  • 定款で理事長のみ署名にした場合は、施行規則第2条の17第3項第六号により出席理事の氏名を本文に記載する必要がある
  • 保存は理事会の日から10年間、主たる事務所。従たる事務所での備置き義務はない(評議員会議事録は写しを5年間)
  • 決議の省略を使うときは、定款の定め・理事全員の同意・監事の異議なしが要件。議事録の記載事項も通常とは別(施行規則第2条の17第4項)
  • 同意の意思表示を記載した書面も10年間の備置き対象。議事録と一緒に保管する
  • 実務のボトルネックは書き方ではなく、最終版と原本の所在が分からなくなること

参考(一次情報)


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