「社会福祉法人だから、固定資産税はかからないはず」
法人本部の経理を担当していると、こうした言い方を一度は耳にすると思います。ところが、新しい土地を取得したとき、職員用の駐車場を整備したとき、あるいは建物を借りて新しい事業所を開いたときに、ふと手が止まります。「これも非課税なのだろうか」「根拠はどの条文なのだろうか」と。
答えを探して自治体のページを開くと、手続きの案内は見つかっても、なぜその資産が非課税になるのか、どこまでが非課税なのかという根拠までは書かれていないことが多いものです。
この記事では、地方税法第348条と第702条の2の条文そのものを読みながら、次の3点を整理します。
- 社会福祉法人の固定資産税の非課税は「法人」単位ではなく、「固定資産」単位・用途単位で決まっていること
- 施設の種類ごとに、根拠になる号が分かれていること
- 条文が政令に委ねている部分があり、最後は施行令と所轄の市町村に確認する構造になっていること
制度の手続き案内ではなく、「自法人の施設がどの号に当たるのかを、自分たちで確かめられる状態」を目指します。
なお、この記事の根拠は地方税法の条文(e-Govで取得した原文)に限っています。地方税法施行令や各自治体の運用は確認の対象に入れていないため、その部分は「ここから先は施行令と市町村で確認する」という位置づけで書きます。
「社会福祉法人だから非課税」という理解のどこがずれているのか
結論から言うと、地方税法は「社会福祉法人という者」を丸ごと非課税にはしていません。
固定資産税の非課税の範囲を定める第348条は、第1項と第2項で作りが違います。まず第1項です。
市町村は、国並びに都道府県、市町村、特別区、これらの組合、財産区及び合併特例区に対しては、固定資産税を課することができない。
第1項は、国や都道府県、市町村といった「者」を名指しして課税を禁じています。この書き方であれば、名指しされた者が持つ固定資産は、原則として丸ごと対象になります。
社会福祉法人はこの第1項には出てきません。社会福祉法人が登場するのは第2項です。第2項は次のように始まります。
固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない。
主語は「者」ではなく「次に掲げる固定資産」です。つまり、第2項が判定しているのは「どの法人か」ではなく、「その固定資産が、どの用途に使われているか」です。
ここが実務の混乱の根本にあります。
- 法人を単位に考えると「うちは社会福祉法人なのだから、持っている土地も建物もすべて非課税」となりやすい
- 条文は資産を単位に「この用途に供している固定資産は課税できない」と書いている
この差が、駐車場や寮、賃借した建物といった「判断に迷う資産」で表に出てきます。
第2項は「用途ごとに号が分かれている」
第2項には、社会福祉法人に関係する号がいくつも並んでいます。ここでは、社会福祉法人が条文に出てくる号を、対象になっている固定資産の用途ごとに整理します。
| 号 | 社会福祉法人などが「用に供する」固定資産の対象 | 条文中の根拠法など |
|---|---|---|
| 第九号 | 社会福祉法人などが設置する幼稚園において直接保育の用に供する固定資産 | 号の中に、学校法人・公益法人・宗教法人などの別の類型も並んでいる |
| 第九の二号 | 社会福祉法人などが設置する看護師・准看護師・歯科衛生士その他政令で定める医療関係者の養成所において直接教育の用に供する固定資産 | 同じく医療法人・公益法人などと並んで書かれている |
| 第十号 | 保護施設 | 生活保護法第38条第1項 |
| 第十の二号 | 小規模保育事業 | 児童福祉法第6条の3第10項 |
| 第十の三号 | 児童福祉施設 | 児童福祉法第7条第1項 |
| 第十の四号 | 認定こども園 | 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律第2条第6項 |
| 第十の五号 | 老人福祉施設 | 老人福祉法第5条の3 |
| 第十の六号 | 障害者支援施設 | 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第5条第11項 |
| 第十の七号 | 上記のほかの社会福祉事業 | 社会福祉法第2条第1項 |
この表は条文の骨格を並べたもので、各号の細かい括弧書きや除外は省略しています。実際に根拠を書くときは、必ず条文の原文で確認してください。
たとえば第十号は、条文上は次のとおりです。
社会福祉法人(日本赤十字社を含む。次号から第十号の七までにおいて同じ。)が生活保護法第三十八条第一項に規定する保護施設の用に供する固定資産で政令で定めるもの
「社会福祉法人」の範囲を括弧書きで定義し、続く号でもその定義を使い回す作りになっています。そのうえで、対象を「保護施設の用に供する固定資産」と用途で切っています。
障害者支援施設の号も、同じ作りです。
社会福祉法人が障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第五条第十一項に規定する障害者支援施設の用に供する固定資産
ここでも主語は社会福祉法人ですが、非課税になる対象は「障害者支援施設の用に供する固定資産」です。法人であることは入口の条件であって、それだけで非課税が決まるわけではありません。
最後の第十の七号が「包括規定」になっている
施設の種類ごとに号が分かれているのなら、どの号にも当たらない事業はどうなるのか。その受け皿になっているのが第十の七号です。
第十号から前号までに掲げる固定資産のほか、社会福祉法人その他政令で定める者が社会福祉法第二条第一項に規定する社会福祉事業(同条第三項第一号の二に掲げる事業を除く。)の用に供する固定資産で政令で定めるもの
書き出しが「第十号から前号までに掲げる固定資産のほか」となっているとおり、それまでの号で拾われなかった社会福祉事業を、社会福祉法第2条第1項の社会福祉事業という枠で受ける作りです。
ここで確認しておきたいのは次の2点です。
- 括弧書きで、社会福祉法第2条第3項第1号の2に掲げる事業が対象から除かれていること。どの事業がそれに当たるかは、この記事では扱っていません。該当しそうな事業がある場合は、社会福祉法の条文で確認してください
- 末尾が「政令で定めるもの」になっていること
自法人の施設がどの号に当たるかによって、根拠になる条文も、自治体に説明するときの言葉も変わります。「うちの施設は、児童福祉施設の号なのか、それとも包括規定なのか」を条文から確認することが、最初の一歩になります。
「政令で定めるもの」──法律だけでは範囲が決まらない
先ほどの表のあとで、条文の末尾を見返してみてください。多くの号が「固定資産で政令で定めるもの」で終わっています。
| 号 | 対象の固定資産に「政令で定めるもの」が付くか | 対象となる者に「その他政令で定める者」が含まれるか |
|---|---|---|
| 第十号 | 付く | 含まれない(社会福祉法人のみ) |
| 第十の二号 | 付かない | 含まれる |
| 第十の三号 | 付く | 含まれる |
| 第十の四号 | 付かない | 含まれる |
| 第十の五号 | 付く | 含まれる |
| 第十の六号 | 付かない | 含まれない(社会福祉法人のみ) |
| 第十の七号 | 付く | 含まれる |
つまり、条文の構造としては、法律が非課税の大枠を示し、範囲の具体的な線引きの一部を政令に委ねているということになります。
ここで大事なのは、次の点です。
- 「政令で定めるもの」が付いている号では、法律の条文だけを読んでも、どこまでが非課税なのかは確定しない
- 付いていない号でも、対象の用途(施設・事業)が定義された法律の条文に沿って読む必要がある
この記事の一次情報には、地方税法施行令の条文を含めていません。そのため、施行令で具体的に何が定められているかは、ここでは書きません。 範囲の最終確認は、地方税法施行令の条文と、所轄の市町村の窓口で行うことになります。
「法律の条文は政令に投げている」という構造を知っているだけでも、自治体との会話は変わります。「この号の、政令で定める範囲に入りますか」と聞けるからです。
借りて運営している場合は「所有者に課される」ことがある
第2項には、もう一つ見落とされやすい定めがあります。柱書のただし書きです。
ただし、固定資産を有料で借り受けた者がこれを次に掲げる固定資産として使用する場合には、当該固定資産の所有者に課することができる。
読み解くと、次のようになります。
- 非課税の号に当たる用途で使っていても、その固定資産を「有料で借り受けた者」が使っている場合には、所有者(貸主)に課税できる
- 課税される相手は借りている法人ではなく、貸している所有者
賃借で施設を運営している法人が、「うちは社会福祉法人で、障がい福祉の事業所として使っているのだから非課税のはず」と考えるのは自然です。しかし条文の作りでは、借りている側が非課税用途で使っていることと、貸主に課税できるかどうかは、別の問題として整理されています。
実務で効いてくるのは、次のような場面です。
- 新しい事業所を、民間の建物を借りて開設するとき
- 貸主との賃貸借契約で、税負担の扱いをどう定めるかを検討するとき
- 賃料の設定に、貸主側の税負担が織り込まれているかを確認するとき
ただし書きが具体的にどのような場面で適用されるか、貸主にどう課税されるかといった運用は、この記事の一次情報の範囲を超えます。「賃借の場合は条文にただし書きがある」という点を押さえたうえで、個別の契約は所轄の市町村に確認してください。なお、有料で借りるのではない場合(無償の場合など)の扱いも条文からは読み取れないため、ここでは書いていません。
都市計画税は、固定資産税の判定に連動する
固定資産税と一緒に納めるものに、都市計画税があります。この都市計画税は、固定資産税の判定が決まれば自動的に決まる作りになっています。根拠は、地方税法第702条の2第2項です。
前項に規定するもののほか、市町村は、第三百四十八条第二項から第五項まで、第七項若しくは第九項又は第三百五十一条の規定により固定資産税を課することができない土地又は家屋に対しては、都市計画税を課することができない。
要点は次のとおりです。
- 第348条第2項の規定により固定資産税を課することができない土地又は家屋には、都市計画税も課することができない
- したがって、非課税の判定を固定資産税で済ませれば、都市計画税を別に調べ直す必要はない
なお、この条文には第348条第3項から第5項まで、第7項、第9項、および第351条も並んでいます。これらの条文の中身は、この記事の一次情報に含まれていないため、ここでは扱いません。社会福祉法人に関係する号は第2項に置かれているため、この記事では第2項に絞って整理しました。
第702条の2第1項の対象は国や都道府県などの「者」であり、第348条第1項と同じく者を名指しする作りです。ここでも、社会福祉法人が非課税になるのは、第2項という「資産の用途」を通じてになります。
職員駐車場・職員寮のような資産はどう考えるか
現場で最も質問が多いのが、事業に直接は使っていないが、法人が持っている資産です。職員用の駐車場や職員寮がその代表例でしょう。
ここで、先に断っておきます。「職員駐車場は課税される」「職員寮は非課税」といった結論を、条文から断定することはできません。 地方税法の条文にそうした記述はなく、施行令と市町村の運用の領域になるためです。
そのうえで、判断の出発点として押さえておきたいことがあります。
- 第2項の各号は、いずれも「○○の用に供する固定資産」と、用途を限定して書いている
- 第九号は「直接保育の用に供する固定資産」、第九の二号は「直接教育の用に供する固定資産」と、さらに「直接」という言葉で絞っている号もある
- 第十号から第十の七号は「用に供する固定資産」と書いている
条文は用途で切っているので、その資産が「事業の用に供している」といえるかどうかが、争点になります。職員の駐車場が、施設の運営にとってどのような位置づけの資産なのか。その資産は、どの号のどの施設の用に供しているといえるのか。この問いに、法律の条文だけで答えを出すことはできません。
そこで、次のように整理して確認を進めることを勧めます。
- その資産が、どの施設・事業の用に使われているかを整理する(事業所との関係、使っている人、使っている時間帯など)
- 該当しそうな号を特定する(先の表で確認する)
- 該当する号に「政令で定めるもの」が付いていれば、地方税法施行令の条文で範囲を確認する
- 最終的には、資産の所在地の市町村に確認する
自法人で確認するための進め方
ここまでの内容を、実務の手順に落とします。固定資産を1件ずつ、次の順で整理していくと、根拠の説明がしやすくなります。
| 確認すること | 見る場所 |
|---|---|
| ① その資産は法人が所有しているか、借りているか | 登記・賃貸借契約 |
| ② 借りている場合、有料か | 賃貸借契約(第2項ただし書きの確認) |
| ③ その資産は、どの施設・事業の用に供しているか | 施設ごとの事業の実態 |
| ④ その施設・事業は、第2項のどの号に当たるか | 地方税法第348条第2項 |
| ⑤ その号に「政令で定めるもの」が付いているか | 条文の末尾 |
| ⑥ 付いている場合、政令の範囲に入るか | 地方税法施行令、所轄の市町村 |
| ⑦ 都市計画税は、固定資産税の判定と同じ結果か | 地方税法第702条の2第2項 |
この表のうち、①〜④と⑤は法人の中で確認できます。⑥だけは、施行令と市町村に頼ることになります。自分たちで確認できる部分と、外部に確認すべき部分を分けておくと、自治体の窓口での会話も具体的になります。
「法人の種類で決まる税」と「用途で決まる税」を分けて考える
税金の話は、つい「社会福祉法人は税がかからない」という一言にまとめられがちです。しかし、税ごとに判定の単位は違います。固定資産税は、ここまで見てきたとおり資産の用途で決まります。
一方、法人税など「法人そのもの」に着目する税は、別の考え方で整理されています。収益事業との関係については、社会福祉法人の法人税と収益事業を整理した記事で扱っています。「法人の種類で判定する税」と「資産の用途で判定する税」を分けて考えると、見落としが減ります。
なお、非課税と、いわゆる減免は別の制度です。この記事は非課税の条文だけを扱っており、減免の要件は一次情報として確認できていないため書いていません。
台帳と書類の整理が、確認の速さを決める
条文の構造が分かっても、実務で時間がかかるのは、確認に必要な情報が、あちこちに散らばっていることです。
- 資産ごとの登記、取得の経緯、取得した年度が、どこにまとまっているのか分からない
- 賃借している建物の賃貸借契約が、法人本部ではなく施設に保管されている
- どの施設の用に供している資産なのかが、担当者の記憶にしか残っていない
- 担当者が異動・退職して、過去にどの号として整理してきたのかが引き継がれていない
前述の確認表のうち、①〜④は、どれも「資産と施設・事業を結びつけた情報」です。固定資産の管理台帳に、資産ごとに「どの施設・事業の用に供しているか」「該当する号はどれか」「根拠を確認した日と相手」を書いておくだけで、次に確認が必要になったときの手間が大きく変わります。
固定資産の管理台帳の考え方は、社会福祉法人の減価償却を整理した記事でも触れています。また、基本財産として持っている不動産については、社会福祉法人の基本財産を整理した記事もあわせてご覧ください。
私たちが社会福祉法人様のご支援に入るときも、固定資産まわりは、台帳・契約書・登記の情報がばらばらの場所にあることがほとんどです。新しい仕組みを入れること自体が目的ではなく、「探す・確認する・引き継ぐ」時間を減らすことが目的です。
固定資産と契約書類の管理を、軽くしたい法人様へ
パレットテクノロジーズは、社会福祉法人様のデジタル化を「現地現物」で伴走支援しています。ITに詳しい職員がいらっしゃらなくても大丈夫です。資産と施設、契約書類をひも付けて、法人本部から見える形に整えるところから、一緒に考えます。
この記事で書いていないこと
一次情報として確認できた範囲を超えるため、次の点は書いていません。誤解のないよう明記します。
- 地方税法施行令が、各号の「政令で定めるもの」を具体的にどう定めているか
- 減免の要件
- 自治体ごとの申告様式・提出期限
- 判例
- 不動産取得税・事業所税など、固定資産税以外の税
まとめ
- 社会福祉法人の固定資産税の非課税は、法人という「者」ではなく、固定資産の用途で判定される。第348条第1項は国や都道府県などの「者」を名指しし、社会福祉法人が出てくるのは第2項である
- 第2項は、保護施設・小規模保育事業・児童福祉施設・認定こども園・老人福祉施設・障害者支援施設と、施設種別ごとに号が分かれ、第十の七号が社会福祉事業の包括規定になっている
- 多くの号が「政令で定めるもの」で終わっており、範囲の最終確認は地方税法施行令と所轄の市町村になる
- 第2項のただし書きにより、有料で借り受けた者が非課税用途で使う場合は、所有者に課税できるとされている
- 都市計画税は、第348条第2項により固定資産税を課することができない土地・家屋には課することができない。固定資産税の判定が決まれば、都市計画税も連動する
- 職員駐車場・職員寮のような資産は、条文が用途で切っているため、事業の用に供しているといえるかが焦点になる。ただし結論は施行令と市町村の運用による