1歳未満の子を育てている職員から、「育児時間を取りたい」と申し出があった。シフトは早番・遅番・夜勤が混ざっている。休憩とは別に30分を2回与えるのか、その時間は給料を払うのか、男性職員から言われたらどうなのか。勤務表を組む立場として、迷うところが多い条文です。
育児時間の根拠は、労働基準法(以下「法」)第67条です。条文は2つの項だけで、とても短く書かれています。短いぶん、実務で気になる点の多くは、条文に答えが書かれていません。
令和8年11月4日にe-Gov法令検索から取得した条文が根拠です。この記事では、法と労働基準法施行規則(以下「則」)の条文だけを使い、次の3点を切り分けます。
- 第67条の条文が、はっきり書いていること
- 第34条の休憩と、どこが違うのか
- 条文には書かれていないこと(無給か有給か、男性、勤務が短い日、夜勤、2回をまとめること など)
書かれていないことを、この記事で結論として断定することはしません。そうした点は「条文からは決まりません。所轄の労働基準監督署に確認してください」と書きます。
先に結論
- 第67条第1項は、生後満一年に達しない生児を育てる女性が、第34条の休憩時間のほか、一日二回各々少なくとも三十分、その生児を育てるための時間を請求することができると定めています。
- 第67条第2項は、使用者は育児時間中は、その女性を使用してはならないと定めています。
- 第34条の休憩は、使用者が与えなければならないもの。育児時間は、女性が請求するもの。条文の主語と動詞が違います。
- 条文の言葉は「女性」です。男性が請求できるかどうかを定める文言は、第67条には書かれていません。
- 第67条には、賃金を払うかどうかを定める文言がありません。無給か有給かは、第67条の条文からは決まりません。
- 「生後満一年に達しない」の言葉の先、つまり1歳の何日前までかなどの数え方は、今回読んだ条文には書かれていません。
- 則第31条(一斉付与)と則第33条(自由利用)が外しているのは、第34条第2項と第3項です。育児時間に及ぶかどうかは、条文からは決まりません。
- 第67条の違反は、第119条第1号の罰則(六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金)の対象に入っています。
第67条の条文を読む
第67条は、次のとおりです。第1項から見ます。
生後満一年に達しない生児を育てる女性は、第三十四条の休憩時間のほか、一日二回各々少なくとも三十分、その生児を育てるための時間を請求することができる。
読み取れることを、言葉ごとに分けます。
- 対象は、生後満一年に達しない生児を育てる女性
- 時間は、一日二回、各々少なくとも三十分
- 目的は、その生児を育てるための時間
- 女性が請求することができる
- 第34条の休憩時間のほか
「少なくとも」とあるので、30分は下限です。上限は、条文には書かれていません。「各々」とあるので、2回のそれぞれが30分以上です。
次に第2項です。
使用者は、前項の育児時間中は、その女性を使用してはならない。
第2項の主語は使用者で、育児時間中は、その女性を使用してはならない、という定めです。請求された時間に、使用者の側から「この時間は仕事をしてほしい」と言うことは、この言葉とは合いません。
一方で、請求の方法(口頭か書面か)、請求をいつまでにするか、請求できる時間帯を決めてよいか、といった点は、第67条には書かれていません。
第34条の休憩との違い
育児時間は、休憩と並べて読むと分かりやすくなります。第34条第1項は、次のとおりです。
使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
休憩の長さと位置については、休憩時間の記事で整理しています。ここでは、育児時間との違いだけを表にします。
| 比べる点 | 第34条の休憩 | 第67条の育児時間 |
|---|---|---|
| 主語と動詞 | 使用者が与えなければならない | 女性が請求することができる |
| 対象 | 労働者(条文に性別の限定なし) | 生後満一年に達しない生児を育てる女性 |
| 長さの決まり方 | 労働時間が6時間超なら45分以上、8時間超なら1時間以上 | 一日二回、各々少なくとも三十分 |
| 長さの前提 | その日の労働時間の長さ | 労働時間の長さは条文に出てこない |
| 与える位置 | 労働時間の途中 | 条文に書かれていない |
表の下から2行目に注意してください。第34条は、休憩の長さを労働時間の長さで決めています。第67条は、1日の労働時間が何時間かには触れず、「一日二回各々少なくとも三十分」と書いています。
また、第67条第1項は「第三十四条の休憩時間のほか」と書いています。この言葉からの読みとしては、育児時間は、休憩時間とは別に請求できる時間です。休憩を45分や1時間与えているから育児時間は与えたことになる、という読みは、「のほか」という言葉とは合いません。
第34条第3項は、休憩の自由利用を定めています。
使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。
育児時間のほうは、「その生児を育てるための時間」と、目的が条文の中に書かれています。この目的の書き方が、自由利用との関係でどう読まれるのかは、条文からは決まりません。
一斉付与・自由利用の除外は、育児時間に及ぶか
則には、休憩についての除外が2か所あります。則第31条第1項は、次のとおりです。
法別表第一第四号、第八号、第九号、第十号、第十一号、第十三号及び第十四号に掲げる事業並びに官公署の事業(同表に掲げる事業を除く。)については、法第三十四条第二項の規定は、適用しない。
則第33条第1項の柱書は、次のとおりです。
法第三十四条第三項の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。
どちらも、適用しないのは法第34条の第2項(一斉付与)と第3項(自由利用)です。条文は、第67条の育児時間については何も書いていません。
条文から言えるのは、次の2点までです。
- 則第31条と則第33条は、法第34条の第2項と第3項について書いている
- 育児時間(第67条)が、同じように一斉付与や自由利用の対象から外れるのか、外れないのかは、この2つの条文には書かれていない
育児時間についてこの除外を当てはめて運用しているときは、「条文から決まる」と思い込まないでください。所轄の労働基準監督署に確認しておくと安心です。
場面ごとに、条文で言えることと言えないこと
実務で出やすい質問を、場面ごとに並べます。
無給か有給か
第67条の2つの項に、賃金を払うかどうかを定める文言はありません。条文が書いているのは、請求できること、その時間は使用してはならないことの2点です。
そのため、育児時間を無給とするか有給とするかは、第67条の条文からは決まりません。この記事で「無給でよい」「有給にしなければならない」と結論を示すことはしません。
賃金の扱いが問題になったときは、次の点を並べて確認するのが現実的です。
- 法人の就業規則・賃金規程に、育児時間についての定めがあるか
- 定めがない場合は、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士に確認する
あわせて、第37条も読んでおきます。第37条は、時間外・休日・深夜の割増賃金を定める条文です。第4項は次のとおりです。
使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
第37条には、育児時間の語は出てきません。育児時間を取った日の賃金や割増賃金の計算が、第37条とどうつながるのかは、今回読んだ条文には書かれていません。
男性は対象か
第67条第1項の言葉は、「生後満一年に達しない生児を育てる女性は」です。男性についての文言は、第67条には書かれていません。
条文から言えるのは、次の2点までです。
- 第67条第1項が請求できるとしているのは、「女性」
- 男性職員から申し出があったときに、第67条を根拠に育児時間として扱うかどうか、また別の定めがあるかどうかは、今回の一次情報には入っていない
男性職員からの申し出への対応は、法人の就業規則や、ほかの制度の定めを確認したうえで、所轄の労働基準監督署に確認してください。この記事では、ほかの制度の内容には立ち入りません。
何歳までか
条文の言葉は、「生後満一年に達しない生児」です。読み取れるのは、生児が生まれてから満1年に達するまでの間、という範囲です。
次の点は、条文には書かれていません。
- 満1年に達する日を、誕生日の当日とするか前日とするか
- 請求した育児時間を、満1年に達する日の前にどう扱うか
日の数え方が問題になる月(満1年に近い時期)は、勤務表を組む前に、所轄の労働基準監督署に確認しておくと安心です。
「1歳まで」「満1歳の誕生日の前日まで」といった言い方で資料に書く場合も、条文の言葉は「生後満一年に達しない」だと分かるように書いておくと、誤解が起きにくくなります。
1日の勤務が短いとき
第67条の言葉は、「一日二回各々少なくとも三十分」です。第34条のように、労働時間が何時間なら何分、という段階は、条文に書かれていません。
次の点は、条文には書かれていません。
- 1日の労働時間が短い日(短時間勤務の日、半日勤務の日)に、2回の請求が成り立つか
- 勤務が短い日に、2回のうち1回に減るのか、30分より短くなるのか
条文の言葉をそのまま読むと、「一日二回各々少なくとも三十分」と書かれているだけで、勤務の長さによって回数や分数が変わるとは書かれていません。ただし、勤務が短い日の実際の運用は、条文からは決まりません。短時間勤務の職員から請求があったときは、所轄の労働基準監督署に確認してください。
夜勤のとき
夜勤は、勤務が日をまたぎます。第67条の言葉は「一日二回」です。
次の点は、条文には書かれていません。
- 「一日」を暦日で数えるのか、一つの勤務で数えるのか
- 16時間の夜勤で、2回なのか、それ以上なのか
- 夜勤の途中のどの時間帯に与えるのか
夜勤の勤務で請求があったときは、第67条第2項の「使用してはならない」という言葉を踏まえて、与える時間を事前に決めておくことになります。「一日」の数え方は、条文から決まらないため、所轄の労働基準監督署に確認してください。
夜勤の勤務と休憩、宿直との関係は、宿直と夜勤の記事で整理しています。夜勤の休憩の与え方は、第34条の側の整理です。
2回をまとめて1時間にできるか
第67条の言葉は、「一日二回各々少なくとも三十分」です。「二回」「各々」という言葉が使われています。
2回の30分をまとめて、1回1時間として請求できるか、また使用者の側で1時間にまとめることができるかは、今回読んだ条文には書かれていません。条文から言えるのは、「一日二回」「各々少なくとも三十分」と書かれている、という点までです。
勤務の都合で、2回をまとめたい、あるいは勤務の始めや終わりに充てたい、という希望が出ることがあります。そのときは、条文を根拠に断定せず、所轄の労働基準監督署に確認してください。
第12条第3項:平均賃金から控除される期間に、育児時間は挙がっているか
平均賃金の計算では、算定期間中に一定の期間があるときは、その日数とその間の賃金を控除します。第12条第3項は、次のとおりです。
前二項に規定する期間中に、次の各号のいずれかに該当する期間がある場合においては、その日数及びその期間中の賃金は、前二項の期間及び賃金の総額から控除する。
挙がっている期間は、5つです。
| 号 | 期間 |
|---|---|
| 第一号 | 業務上負傷し疾病にかかり療養のために休業した期間 |
| 第二号 | 産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業した期間 |
| 第三号 | 使用者の責めに帰すべき事由によつて休業した期間 |
| 第四号 | 育児休業、介護休業をした期間(法律名を挙げて指定) |
| 第五号 | 試みの使用期間 |
第一号の表記は、条文では「業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間」です。第二号は、条文では次のとおりです。
産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業した期間
表を見ると、挙がっているのは、休業の期間(第一号から第四号)と試みの使用期間(第五号)です。育児時間という語は、第12条第3項のどの号にも出てきません。
この事実から、条文だけで言えるのは、次の点までです。
- 第12条第3項は、育児時間を控除する期間として挙げていない
- 育児時間を取った日が、平均賃金の計算でどう扱われるかは、第12条第3項の列挙からは決まらない
控除の範囲を「条文に書かれていないものにまで広げる」ことも、「書かれていないから一切控除しない」と決めつけることも、この記事ではしません。平均賃金を計算する場面(休業手当の算定など)で育児時間を取った日がかかわるときは、所轄の労働基準監督署に確認してください。
罰則:第67条は第119条第1号に入っている
第119条第1項の柱書は、次のとおりです。
次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
第1号に並ぶ条文の一部を、次に引用します。
第六十一条、第六十二条、第六十四条の三から第六十七条まで、第七十二条
「第六十四条の三から第六十七条まで」とあるので、第67条の規定に違反した者は、この罰則の対象に入っています。第34条と第37条も、同じ第1号に挙がっています。
条文から言えるのは、ここまでです。次の点は、今回の一次情報には入っていません。
- 法人に対する罰則(いわゆる両罰規定)があるか
- どのような場合に、誰が処罰の対象になるか
- 請求を断った場合、請求がなかった場合に、第67条違反になるか
個別の運用が問題になったときは、社会保険労務士や所轄の労働基準監督署にご相談ください。
法人本部・事業所で整理しておくこと
条文の構造から、法人本部や管理者が手元でそろえておくとよい整理は、次の5つです。条文から導いた弊社の整理で、個別の判断は所轄の労働基準監督署にご確認ください。
- 該当する職員を一覧にする。 生後満一年に達しない生児を育てている女性職員が誰か、満一年に達する時期はいつごろかを、勤務表を組む人が見える形にする
- 請求の受け方を決める。 条文は請求の方法を書いていないので、法人で決める場合は、就業規則への記載の有無を確かめ、「条文で決まっていることではない」と分かるようにしておく
- 勤務の種類ごとの扱いを確認する。 日勤、早番、遅番、夜勤、短時間勤務のそれぞれで、2回の時間をどう取るかを、事前に整理する。決まらない点は、所轄の労働基準監督署に確認する
- 賃金の扱いを、条文のほかの根拠で決める。 第67条には賃金の定めがないので、就業規則・賃金規程の側で確認する。決められないときは、社会保険労務士に確認する
- 育児時間中に業務を頼まない運用を徹底する。 第67条第2項は「その女性を使用してはならない」と書いている。呼び出しや電話対応を、育児時間中に頼んでよいかどうかを、現場の判断に任せない
勤務の種類ごとの扱いを一覧で持っておくと、育児時間の請求があったときにも、労働基準監督署への相談のときにも、説明しやすくなります。
この記事で書いていないこと
次のことは、今回確認した条文には書かれていません。この記事でも書きません。
- 育児時間を有給とするか無給とするか:第67条に賃金の定めがありません
- 男性職員の育児時間:第67条の言葉は「女性」です。ほかの制度の内容はこの記事では扱いません
- 満一年に達する日の数え方:条文には書かれていません
- 勤務が短い日、夜勤での回数・分数・時間帯:条文には書かれていません
- 2回の育児時間をまとめてよいか:条文には書かれていません
- 請求の方法・期限、請求を断った場合の扱い:条文には書かれていません
- 一斉付与・自由利用の除外が育児時間に及ぶか:則第31条と則第33条は、法第34条について書いています
- 育児・介護休業法の短時間勤務制度の内容:今回の一次情報に入っていません。制度の名前に触れるにとどめます
- 平均賃金・割増賃金の個別の計算:今回の一次情報に入っていません
- 法人に対する罰則:今回の一次情報に入っていません
- 通達・判例・行政解釈:今回の一次情報に入っていません
まとめ
- 第67条第1項は、生後満一年に達しない生児を育てる女性が、第34条の休憩時間のほか、一日二回各々少なくとも三十分、その生児を育てるための時間を請求することができると定めている
- 第67条第2項は、使用者は育児時間中は、その女性を使用してはならないと定めている
- 第34条の休憩は使用者が与えるもの、第67条の育児時間は女性が請求するもの。第67条は、休憩時間の「ほか」
- 賃金の定めは第67条に書かれていない。無給か有給かは、条文からは決まらない
- 条文の言葉は「女性」。男性が請求できるかは、第67条には書かれていない
- 「生後満一年に達しない」の日の数え方、勤務が短い日・夜勤での扱い、2回をまとめてよいかは、条文には書かれていない。所轄の労働基準監督署に確認する
- 則第31条・第33条が外しているのは法第34条第2項・第3項。育児時間に及ぶかは条文からは決まらない
- 第12条第3項の控除期間に、育児時間は挙がっていない
- 第67条の違反は、第119条第1号の罰則の対象に入っている
参考にした一次情報
- 労働基準法|e-Gov法令検索:第十二条、第三十四条、第三十七条、第六十七条、第百十九条
- 労働基準法施行規則|e-Gov法令検索:第三十一条、第三十三条
いずれも2026年11月4日にe-Govから取得した条文によります。本記事は条文の構造を整理したもので、個別の事業所の育児時間の扱いが適法かどうかを判断するものではありません。具体的な判断は、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士にご確認ください。
育児時間の請求と勤務表を、手作業で突き合わせていませんか
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