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介護扶助|みなし2号も介護券も、生活保護法の条文に出てこない言葉

生活保護を受けている方の介護サービスを担当すると、「この方はみなし2号です」「介護券が届いています」といった言葉が、請求や窓口の会話で自然に出てきます。

ところが、この2つの言葉は生活保護法の本則に1回も出てきません。 2026年10月17日にe-Govから取得した生活保護法の本則(附則は含みません)で数えると、次のとおりです。

探した語生活保護法の本則
みなし二号0回
みなし2号0回
介護券0回

どれも現場の呼び名で、条文の言葉ではありません。 では条文は何を定めているのか。中心になるのは第15条の2(介護扶助)・第34条の2(介護扶助の方法)・第54条の2(介護機関の指定等)の3本です。この記事では、事業所と法人本部が「自分たちは何を確かめ、何を記録しておけばよいか」を、条文の言葉から整理します。

生活保護の手前にある制度については、生活困窮者自立支援法の記事で扱っています。

介護扶助は、生活保護の8種類の扶助の1つ

まず位置づけです。第11条は保護の種類を8つ並べていて、介護扶助は第五号に置かれています(生活扶助・教育扶助・住宅扶助・医療扶助・介護扶助・出産扶助・生業扶助・葬祭扶助)。第2項は、その組み合わせ方を次のように書いています。

前項各号の扶助は、要保護者の必要に応じ、単給又は併給として行われる。

介護扶助だけが単独で行われることも、医療扶助などと一緒に行われることもある、という建て付けです。

第15条の2:どこまで及ぶかは「号」で決まる

介護扶助の範囲を決めているのが第15条の2第1項です。長い条文ですが、前半の構造は次のように始まります。

介護扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない要介護者(介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第七条第三項に規定する要介護者をいう。第三項において同じ。)に対して、第一号から第四号まで及び第九号に掲げる事項の範囲内において行われ、

続きを読むと、対象になる人が3つに分かれ、それぞれに及ぶ号が違います。

対象になる人及ぶ号
要介護者第一号から第四号まで、第九号
要支援者第五号から第九号まで
居宅要支援被保険者等に相当する者(要支援者を除く)第八号、第九号

各号の中身は、条文のとおり次の9つです。

号条文の言葉
一居宅介護(居宅介護支援計画に基づき行うものに限る。)
二福祉用具
三住宅改修
四施設介護
五介護予防(介護予防支援計画に基づき行うものに限る。)
六介護予防福祉用具
七介護予防住宅改修
八介護予防・日常生活支援(介護予防支援計画又は第一号介護予防支援事業による援助に相当する援助に基づき行うものに限る。)
九移送

事業所から見て押さえたい点が2つあります。

  • 「居宅介護」は、この条の中で定義された言葉です。 第2項が、介護保険法の訪問介護・訪問入浴介護・訪問看護・通所介護・短期入所生活介護・小規模多機能型居宅介護などと「これらに相当するサービス」を並べています。障がい福祉の「居宅介護」とは別の言葉なので、混同しないようにします。
  • 第一号の居宅介護は「居宅介護支援計画に基づき行うものに限る」と書かれています。計画は第3項で、居宅で生活する要介護者が利用するサービスの種類・内容等を定める計画とされています。ケアプランとの対応が、条文の側から求められている形です。

第34条の2:原則は現物給付

介護扶助の方法は、第34条の2第1項が定めています。

介護扶助は、現物給付によつて行うものとする。

例外として、現物給付によることができないとき、適当でないとき、その他保護の目的を達するために必要があるときは、金銭給付で行えるとされています(ただし書)。金銭給付は例外で、原則は現物給付です。

第2項は、居宅介護・福祉用具の給付・施設介護・介護予防などの現物給付について、誰に委託して行うかを書いています。末尾の部分を引用します。

であつて、第五十四条の二第一項の規定により指定を受けたもの(同条第二項本文の規定により同条第一項の指定を受けたものとみなされたものを含む。)にこれを委託して行うものとする。

つまり、現物給付は第54条の2の指定を受けた介護機関への委託として行われます。かっこ書きに、みなし指定を受けたものも含むと書かれている点が、あとの話につながります。

介護保険の被保険者かどうかで、介護扶助の入り方が変わる

ここが「みなし2号」の中身にあたる話です。この言葉は条文にないので、条文の言葉から順に導く形で整理します。

1. 介護保険の第二号被保険者になるには、医療保険加入者であることが条文の条件です。 介護保険法第9条第二号は、次のように書いています。

市町村の区域内に住所を有する四十歳以上六十五歳未満の医療保険加入者(以下「第二号被保険者」という。)

40歳以上65歳未満であっても、医療保険加入者でなければ第二号被保険者には当たりません。 医療保険加入者の中身は同法第7条第8項が列挙しています(健康保険法・国民健康保険法などの被保険者、共済組合の組合員、被扶養者など)。

2. 一方、介護扶助の側の「要介護者」は、被保険者という言葉で定義されていません。 第15条の2は介護保険法第7条第3項の「要介護者」を引いています。その第二号は次のとおりです。

要介護状態にある四十歳以上六十五歳未満の者であって、その要介護状態の原因である身体上又は精神上の障害が加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病であって政令で定めるもの(以下「特定疾病」という。)によって生じたものであるもの

定義は年齢と特定疾病で書かれていて、被保険者であることは条件として出てきません。したがって、介護保険の被保険者でない40歳以上65歳未満の方でも、条文の上では要介護者に当たりえます。 現場で「みなし2号」と呼ばれているのは、この40歳以上65歳未満の被保護者の場合を指す言い方だと考えられます。

ただし、生活保護を受けている方が医療保険加入者に当たるかどうかは、医療保険各法の側の条文で決まります。 国民健康保険法などは今回の一次情報に入れていないので、この記事では結論を書きません。

3. 介護保険の被保険者である場合は、保険給付が先です。 第4条第2項の文言は次のとおりです。

民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。

介護保険法の給付は、ここでいう「他の法律に定める扶助」にあたると読むのが自然です。保険給付が優先し、そのうえで保護が補う、というのが第4条(保護の補足性)の建て付けです。どの費用にどこまで介護扶助が及ぶかという割合は、今回読んだ条文には書かれていません。 数字は市町村の案内や通知でご確認ください。

整理すると、利用者ごとに確かめる軸は次の2つです。

軸条文の根拠
介護保険の被保険者か(第一号・第二号のどちらか、あるいは当たらないか)介護保険法第9条
介護扶助のどの号に当たるサービスか生活保護法第15条の2第1項

第54条の2:指定介護機関と、みなし指定

事業所にとっていちばん実務に効くのが、第54条の2です。第1項は、誰が指定するかを書いています。

厚生労働大臣は、国の開設した地域密着型介護老人福祉施設、介護老人福祉施設、介護老人保健施設又は介護医療院について、都道府県知事は、その他の地域密着型介護老人福祉施設、介護老人福祉施設、介護老人保健施設若しくは介護医療院、その事業として居宅介護を行う者若しくはその事業として居宅介護支援計画を作成する者、

この後に、福祉用具販売事業者・介護予防を行う者・介護予防・日常生活支援事業者などが続きます。国の開設した施設は厚生労働大臣、それ以外は都道府県知事が指定する、という分け方です。

項ごとの役割は次のとおりです。

項書かれていること
第1項指定の主体(厚生労働大臣・都道府県知事)と対象
第2項みなし指定と、別段の申出
第3項別表第二の第三欄に掲げる場合に当たると、指定の効力を失う
第4項別表第二の第四欄に掲げる場合に当たる期間、指定の効力を停止する
第5項第49条の2・第50条から前条までの準用(介護予防・日常生活支援事業者を除く)
第6項介護予防・日常生活支援事業者についての準用
第7項届出があったとみなす扱い

第2項:別表第二の指定・許可があれば、みなし指定

みなし指定の条文は、第2項の本文です。

介護機関について、別表第二の第一欄に掲げる介護機関の種類に応じ、それぞれ同表の第二欄に掲げる指定又は許可があつたときは、その介護機関は、その指定又は許可の時に前項の指定を受けたものとみなす。

別表第二に掲げる指定または許可があったときは、その時に生活保護法の指定を受けたものとみなされます。 ただし書には、例外があります。

ただし、当該介護機関(地域密着型介護老人福祉施設及び介護老人福祉施設を除く。)が、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、別段の申出をしたときは、この限りではない。

つまり、あらかじめ別段の申出をした介護機関は、みなし指定にならない場合があります(地域密着型介護老人福祉施設と介護老人福祉施設は、この申出の対象から外れています)。

なお、別表第二の中身(どの種類の介護機関に、どの指定・許可が並んでいるか)は、今回の一次情報に入れていません。自分の事業所の種類が別表第二のどこに当たるかは、この記事では確かめていません。 第4項のかっこ書きから、別表第二の欄に介護保険法の規定による指定または許可が並んでいる部分があることは読み取れますが、事業所の種類ごとの一覧は別表でご確認ください。

第3項・第4項:介護保険側の指定の状況に連動する

第3項と第4項は、みなし指定を含む指定が、別表第二に書かれた場合に効力を失う、あるいは効力が停止されると定めています。第4項は次のように書いています。

別表第二指定介護機関に係る第一項の指定は、当該別表第二指定介護機関が別表第二の第四欄に掲げる場合に該当するときは、その該当する期間、その効力(それぞれ同欄に掲げる介護保険法の規定による指定又は許可の効力が停止された部分に限る。)を停止する。

どんな場合が第三欄・第四欄に並んでいるかは別表の側にあります。事業所としては、介護保険の指定の状況が変わったとき、生活保護法の指定にも影響しうるという構造を知っておくことが大切です。

第5項:医療機関の条文を読み替えて準用している

第5項は、第50条から前条までの規定を、指定を受けた介護機関について準用します。準用するときの読み替えのうち、審査の部分を引用します。

「医療情報基盤・診療報酬審査支払機構法(昭和二十三年法律第百二十九号)に定める審査委員会又は医療に関する審査機関で政令で定めるもの」とあるのは「介護保険法に定める介護給付費等審査委員会」と、

読み替えの中には、「国民健康保険団体連合会」という語も出てきます。審査の相手は、医療の側の機関ではなく介護保険法の側の機関に置き換えられています。 準用されている第50条以降の条文の中身は今回読んでいないので、この記事では書きません。

第7項:届出のみなし

第7項は、届出についての扱いです。

別表第二指定介護機関について、別表第二の第五欄に掲げる届出があつたときは、当該届出に係る事由のうち第五項において準用する第五十条の二の規定による届出をすべき事由に相当するものに基づく届出があつたものとみなす。

介護保険側の届出が、生活保護法の側の届出とみなされる場合があるという条文です。どの届出が第五欄に並んでいるかは別表の側にあるため、「どの届出で足りるのか」は別表と所管の案内でご確認ください。

第三者の行為で生じたとき:第76条の2

最後に、損害賠償の条文です。

都道府県又は市町村は、被保護者の医療扶助又は介護扶助を受けた事由が第三者の行為によつて生じたときは、その支弁した保護費の限度において、被保護者が当該第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。

介護扶助を受けた事由が第三者の行為で生じたとき、都道府県または市町村が、支弁した保護費の限度で、被保護者の損害賠償請求権を取得すると書かれています。事業所の側で、利用者のけがや状態の悪化が第三者の行為によるものかもしれないと気づいたときに、どこに知らせる必要があるかを確かめておく根拠になる条文です。

事業所・法人本部が、条文で確かめて記録しておくこと

利用者の資格や給付の判断をするのは市町村です。事業所は、条文の言葉に沿って状況を整理しておくところまでが現実的です。次の項目は、条文が記録を求めているものではなく、条文の構造から考えた確認の例です。

  1. 利用者の被保険者区分:介護保険の被保険者か、40歳以上65歳未満で被保険者に当たらない方か(介護保険法第9条)。
  2. 介護扶助のどの号のサービスか:居宅介護なら、居宅介護支援計画に基づくものか(第15条の2第1項第一号)。
  3. 自事業所が指定介護機関か:みなし指定(第54条の2第2項本文)の対象か、別段の申出をしていないか(同項ただし書)。指定の根拠をどちらで受けているかを、事業所ごとに一覧にしておきます。
  4. 所管:国の開設した施設は厚生労働大臣、それ以外は都道府県知事(第54条の2第1項)。
  5. 介護保険側の指定の変更:指定の効力が失われたり停止されたりする場合があること(同条第3項・第4項)。
  6. 第三者の行為の疑い:事故や他者の行為が関わる場合、その事実を市町村に伝える経路(第76条の2)。

この記事で書いていないこと

条文を読んだ範囲では、次のことは書かれていません。この記事でも書きません。

  • 介護扶助が負担する割合・金額:自己負担のどこまでを扱うか、といった数字
  • 「みなし2号」「介護券」の運用上の意味や、書類・様式の名前
  • 別表第二の中身:どの介護機関にどの指定・許可が並ぶか、第三欄・第四欄・第五欄の内容
  • 準用されている第49条の2、第50条から第54条までの中身
  • 生活保護を受けている方が医療保険加入者に当たるかどうか(医療保険各法の条文で決まります)
  • 自治体ごとの運用・案内の違い
  • 個別の方が対象になるかどうかの判断:本記事は条文の構造の整理です

まとめ

  • 「みなし2号」「介護券」は現場の呼び名で、生活保護法の本則に0回しか出てこない
  • 介護扶助は第11条の8種類の扶助の1つで、範囲は第15条の2の号(居宅介護・福祉用具・住宅改修・施設介護・介護予防・移送など)で決まる
  • 方法は第34条の2で、原則は現物給付。指定を受けた介護機関(みなし指定を含む)に委託して行う
  • 介護保険の第二号被保険者は医療保険加入者であることが条件(介護保険法第9条)。一方、介護扶助の「要介護者」は被保険者という言葉で定義されていない
  • 指定は第54条の2。別表第二の指定・許可があればみなし指定、ただし別段の申出をした場合は別
  • 介護扶助を受けた事由が第三者の行為で生じたときは、第76条の2で、都道府県・市町村が損害賠償請求権を取得する

参考にした一次情報

いずれも2026年10月17日時点の本則の条文によります。本記事は条文の構造を整理したもので、個別の給付の可否を示すものではありません。別表や省令・通知、手続の実際は、所管の都道府県・市町村の最新の案内をご確認ください。


生活保護の利用者の受給の根拠と、事業所の指定の根拠、一覧で見られますか

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