「児童発達支援センターと児童発達支援事業所は、何が違うのか」——検索すると、定員や職員配置を並べた比較表がたくさん出てきます。ただ、その多くは両者を「規模の大きい方」と「小さい方」として並べているだけです。
実際には、この2つは児童福祉法のなかで根拠条文の系統がまったく違います。 センターは法律が列挙する「児童福祉施設」の一つであり、事業所は都道府県知事の指定を受けて「事業」を行う場所です。ここを押さえないまま比較表だけで検討を進めると、移行の手続きの重さを読み違えたり、令和6年4月に施行された改正で何が変わったのかを取り違えたりします。
この記事では、児童福祉法の条文に沿って、センターと事業所の違いを5つの論点に絞って整理します。定員数・人員配置基準の具体的な数値は内閣府令で定められているため、この記事では数値には踏み込まず、法律そのものが書いている構造の違いを扱います。
1. センターは「施設」、事業所は「事業」。条文の系統が違う
まず、児童福祉法第7条第1項です。この条文は、法律上の「児童福祉施設」を列挙しています。
この法律で、児童福祉施設とは、助産施設、乳児院、母子生活支援施設、保育所、幼保連携型認定こども園、児童厚生施設、児童養護施設、障害児入所施設、児童発達支援センター、児童心理治療施設、児童自立支援施設、児童家庭支援センター及び里親支援センターとする。
この列挙のなかに「児童発達支援センター」が入っています。 保育所、児童養護施設、障害児入所施設といった施設と、法律上は同じ並びに置かれているということです。
一方、児童発達支援事業所はこの列挙に入っていません。事業所の根拠は第21条の5の15第1項です。
第二十一条の五の三第一項の指定は、内閣府令で定めるところにより、障害児通所支援事業を行う者の申請により、障害児通所支援の種類及び障害児通所支援事業を行う事業所(以下「障害児通所支援事業所」という。)ごとに行う。
ここで定義されているのは「障害児通所支援事業を行う事業所」であって、児童福祉施設ではありません。条文の位置も、第7条(総則の定義規定)ではなく、第21条の5の3以下の給付・指定に関する規定のなかにあります。
つまり、センターは「施設の種類」として法律の総則に書かれているもの、事業所は「指定を受けて事業を行う場所」です。同じ児童発達支援を提供していても、法律上の立ち位置がそもそも別系統だということになります。
2. だから手続きが「認可」と「指定」で分かれる
立ち位置が違えば、開設の手続きも違います。児童福祉施設の設置について定めているのは第35条です。設置主体ごとに、4つの異なる書き方がされています。まず国についてです。
国は、政令の定めるところにより、児童福祉施設(助産施設、母子生活支援施設、保育所及び幼保連携型認定こども園を除く。)を設置するものとする。
都道府県については、同条第2項が「設置しなければならない」と定めています(条文には適用条文を列挙した長い括弧書きが挟まっているため、ここでは引用を省いて内容のみ記します)。
次に市町村です。
市町村は、内閣府令の定めるところにより、あらかじめ、内閣府令で定める事項を都道府県知事に届け出て、児童福祉施設を設置することができる。
そして、社会福祉法人をはじめとする民間の設置主体です。
国、都道府県及び市町村以外の者は、内閣府令の定めるところにより、都道府県知事の認可を得て、児童福祉施設を設置することができる。
社会福祉法人が児童発達支援センターを設置する場合は、この最後の規定に当たります。必要なのは「都道府県知事の認可」です。
これに対して、事業所については先ほど引用した第21条の5の15第1項のとおり、事業を行う者の申請にもとづき、障害児通所支援の種類および事業所ごとに、都道府県知事が「指定」するという構造になっています。
ここが実務上のいちばんの要点です。すでに児童発達支援事業所を運営している法人が、その事業所をセンターへ移行しようとする場合、指定の手続きだけでは足りません。 児童福祉施設の設置という別の手続きが加わります。「指定の変更届で済むだろう」という前提でスケジュールを引くと、準備期間の見積もりが大きくずれることになります。具体的な必要書類や協議のタイミングは都道府県ごとに異なるため、検討の初期段階で指定権者に相談しておくことをおすすめします。
3. 第43条は「他の事業所を支援すること」まで目的に書き込んでいる
センターの目的を定めているのが第43条です。令和6年4月に施行された改正児童福祉法で、この条文は次の内容になりました。
児童発達支援センターは、地域の障害児の健全な発達において中核的な役割を担う機関として、障害児を日々保護者の下から通わせて、高度の専門的な知識及び技術を必要とする児童発達支援を提供し、あわせて障害児の家族、指定障害児通所支援事業者その他の関係者に対し、相談、専門的な助言その他の必要な援助を行うことを目的とする施設とする。
一文が長いので、目的を分解します。
- 地域の障がい児の健全な発達において中核的な役割を担う機関として位置づけられている
- 障がい児を日々保護者の下から通わせて、高度の専門的な知識及び技術を必要とする児童発達支援を提供する
- あわせて、障がい児の家族・指定障害児通所支援事業者その他の関係者に対し、相談、専門的な助言その他の必要な援助を行う
注目していただきたいのは3番目です。支援の相手方として、利用している子どもと家族だけでなく、「指定障害児通所支援事業者その他の関係者」が条文に明記されています。地域の他の事業所を支援することが、センターの目的の一部として法律に書かれているということです。
そして、事業所側にこれに相当する規定はありません。 事業所の根拠規定である第21条の5の15は指定の手続きを定めたものであり、「中核的な役割」や「他の事業者への助言」といった文言は出てきません。
ここはよく誤解されるところです。中核機能は「センターになったらそういう役割も期待される」という運用上の努力目標ではなく、条文が定めた設置目的そのものです。センターへの移行を検討する法人にとっては、自事業所の支援体制を整えることと同じ重さで、地域の事業所からの相談を受ける体制を用意できるかどうかが判断材料になります。
なお、事業所側で日々作成している支援計画の手続きについては、放課後等デイサービス計画|作成と変更に必要な手続きを条文で解説で整理しています。センターに移行しても、利用している子どもへの計画作成の手続きがなくなるわけではありません。
4. 福祉型・医療型の区分は、センターからは無くなり、入所施設には残っている
「児童発達支援センターには福祉型と医療型がある」——この理解のまま資料を作っている法人が、いまも少なくありません。条文を並べると、現在の姿がはっきりします。
まず、障害児入所施設について定めた第42条です。
障害児入所施設は、次の各号に掲げる区分に応じ、障害児を入所させて、当該各号に定める支援を行うことを目的とする施設とする。
この条文は、第一号に「福祉型障害児入所施設」、第二号に「医療型障害児入所施設」を掲げ、それぞれに対応する支援の内容を定めています。つまり、入所施設については、福祉型と医療型の区分がいまも法律上残っています。
これに対して、先に引用した第43条を読み返してみてください。区分を示す文言が一切ありません。 「次の各号に掲げる区分に応じ」という書き出しも、号の列挙もなく、センターという一つの施設類型として目的が定められています。
つまり、通所(センター)だけが一元化されたということが、第42条と第43条を並べるだけで条文から読み取れます。センターについて「福祉型・医療型のどちらを選ぶか」を検討する余地は、現在の条文上はありません。この点は、社内の運営規程や保護者向けの説明資料に古い区分の記載が残っていないか、あわせて確認しておきたいところです。
5. 肢体不自由のある児童への治療は、センターでしかできない
定員や人員配置の比較よりも、法人の判断材料として重いのが、この機能面の違いです。児童発達支援の定義は第6条の2の2第2項に置かれています。
支援そのものを行う場所については、次のように書かれています。
児童発達支援センターその他の内閣府令で定める施設に通わせ
「児童発達支援センターその他の内閣府令で定める施設」——支援については、センターに限定されていません。ここに事業所が含まれるからこそ、センター以外の事業所でも児童発達支援を提供できます。
ところが、同じ条文のなかで治療について書いている部分は、書きぶりが変わります。
又はこれに併せて児童発達支援センターにおいて治療
こちらは「その他の内閣府令で定める施設」が付いていません。治療は「児童発達支援センターにおいて」行うものと、条文上センターに限定されています。 そのうえで、この治療の対象は括弧書きで「上肢、下肢又は体幹の機能の障害(以下「肢体不自由」という。)のある児童」に限る旨が定められています。
整理すると、次のようになります。
| 内容 | 児童発達支援センター | 児童発達支援事業所 |
|---|---|---|
| 日常生活における基本的な動作・知識技能の習得等の支援 | 提供できる | 提供できる(内閣府令で定める施設に該当する場合) |
| 肢体不自由のある児童に対する治療 | 提供できる | 条文上、対象外 |
肢体不自由のあるお子さんへの治療機能を地域で担うのであれば、センターであることが条文上の前提になります。逆に言えば、この機能を担う予定がない法人にとっては、センターへの移行の意味は主に中核的な役割の側にある、という判断ができます。定員や配置の比較表だけを見て検討するより、まずこの機能の要否から入るほうが、意思決定は早くなります。
センターに移行すると、「別種の記録」が発生する
ここまでの5点を、運営の実務に引き直します。もっとも見落とされやすいのが、記録の種類が増えるという点です。
事業所として発生する記録は、基本的に「自分の事業所を利用している子どもについての記録」です。支援の提供記録、計画、モニタリングの記録、保護者とのやり取り——いずれも利用者ごとに整理されます。
ところがセンターになると、第43条が定める目的のうち「指定障害児通所支援事業者その他の関係者に対し、相談、専門的な助言その他の必要な援助を行う」という部分について、自分の利用者ではない相手についての記録が発生します。具体的には、次のような情報です。
- どの事業所から相談を受けたか
- いつ受けたか(初回相談日、その後の経過)
- どんな内容の相談だったか(支援方法、行動面、保護者対応、関係機関との連携など)
- 誰が対応し、どう助言したか
- その後どうなったか(継続支援の有無、訪問の実施、関係機関への引き継ぎ)
これらは、利用者ごとのファイルにも、職員の日報にも、収まりません。置き場所を決めないまま中核機能を担い始めると、多くの場合、担当者個人のメモと、その場に居合わせた職員の記憶にしか残りません。
困るのは、実績を示す場面です。地域の事業所からどれだけ相談を受け、どう応えてきたかを説明できないと、中核的な役割を担っているという事実を、自治体にも、地域の事業所にも、法人内の会議にも示せません。相談を受けた事実そのものは積み上がっているのに、それを一覧にできない、という状態は避けたいところです。
対策はシンプルで、中核機能を始める前に記録の置き場所を設計しておくことです。最低限、「相談元の事業所」「相談日」「相談内容の区分」「対応者」「助言の内容」「その後の対応」の6項目が、後から検索・集計できる形で1か所に集まっていれば、実績の説明にはそのまま使えます。支援の中身を担う職員の体制づくりに気を取られて、記録の設計が後回しになりがちですが、後から遡って整えるのは非常に手間がかかります。
なお、センターの職員体制を検討する際に、児童発達支援管理責任者の配置要件と実務経験の数え方が論点になることがあります。要件の考え方は児童発達支援管理責任者の要件|サビ管との違いと実務経験の数え方で整理していますので、人材計画とあわせてご確認ください。
センターと事業所の違いで押さえておきたいこと
- 児童発達支援センターは児童福祉法第7条第1項が列挙する「児童福祉施設」の一つ。保育所や障害児入所施設と同じ並びに置かれている
- 児童発達支援事業所は第21条の5の15第1項の「指定」を受けた障害児通所支援事業所であって、児童福祉施設ではない
- 手続きは「認可」と「指定」に分かれる。民間の法人が施設を設置する場合は都道府県知事の認可(第35条)、事業所は都道府県知事の指定(第21条の5の15第1項)。センターへの移行は指定の手続きだけでは足りない
- 第43条は、センターを「地域の障害児の健全な発達において中核的な役割を担う機関」と位置づけ、指定障害児通所支援事業者その他の関係者への相談・専門的な助言まで目的に含めている。事業所側に相当する規定はない
- 福祉型・医療型の区分は入所施設(第42条)に残り、センター(第43条)にはない。通所だけが一元化されている
- 肢体不自由のある児童に対する治療は、条文上「児童発達支援センターにおいて」行うものとされている(第6条の2の2第2項)。支援そのものは「センターその他の内閣府令で定める施設」で提供できる
- 中核機能を担うと、自法人の利用者ではない相手についての相談・助言の記録が新たに発生する。置き場所を先に設計しておかないと、実績を示せない
地域からの相談・助言の記録を、法人本部から一覧で見たい法人様へ
児童発達支援センターの中核的な役割は、「どの事業所から、いつ、どんな相談を受け、誰がどう助言したか」を後から示せる形で残せているかが、そのまま実績の裏づけになります。ところがこの記録は、利用者ごとのファイルにも日報にも収まらないため、担当者のメモに埋もれてしまいがちです。
パレットテクノロジーズでは、社会福祉法人・障がい福祉サービス事業所向けに、地域の事業所からの相談受付から助言内容・その後の対応までを1か所に蓄積し、相談元・時期・内容区分で集計できる仕組みをkintoneで構築するご支援をしています。センターへの移行をご検討中の段階から、記録の置き場所を一緒に設計するところから始められます。
- サービスの詳細:IT導入・DX支援(福祉業界)
- ご相談・お問い合わせ:お問い合わせフォーム
参考にした一次情報
- 児童福祉法(昭和22年法律第164号)第6条の2の2第2項・第7条第1項・第21条の5の15第1項・第35条・第42条・第43条(e-Gov法令検索)
※定員・職員配置・設備に関する具体的な基準は内閣府令および都道府県の条例で定められています。設置認可・指定の申請手続き、必要書類、事前協議の時期は自治体によって異なりますので、実際の検討にあたっては所在地の指定権者の手引きで必ずご確認ください。