児童発達支援や放課後等デイサービスを運営していると、児童発達支援管理責任者(以下「児発管」)の確保が最大の経営課題になります。児発管がいなければ事業所は開けません。だからこそ、「この職員はいつから児発管になれるのか」を正確に押さえておく必要があります。
ここで多くの法人がつまずくのが、児発管の要件をサービス管理責任者(サビ管)と同じだと思ってしまうことです。研修の時間数は同じですが、実務経験の数え方には決定的な違いが2つあります。この違いを見落とすと、「5年働いたから大丈夫だと思っていたのに要件を満たしていなかった」という事故が起きます。
この記事では、要件を定めている「障害児通所支援又は障害児入所支援の提供の管理を行う者としてこども家庭庁長官が定めるもの」(平成24年3月30日厚生労働省告示第230号。令和8年3月31日こども家庭庁告示第6号による改正まで反映)の条文を根拠に整理します。
サビ管側の要件はサービス管理責任者の資格要件|実務経験の数え方と研修の期限管理にまとめています。両方を担当される法人様は、あわせてご確認ください。
サビ管との決定的な違いは2つ
先に結論を書きます。児発管の実務経験がサビ管と違うのは、次の2点です。
違い1:高齢者分野の経験だけでは要件を満たせない
児発管は、必要年数(5年または8年)を満たすだけでは足りません。その期間から高齢者分野等の期間を除いた期間が3年以上あることが、別に求められます。特別養護老人ホームで8年働いた方が、その経験だけで児発管になることはできません。
違い2:国家資格ルートは「資格業務5年」(サビ管は3年)
看護師や保育士などの資格に基づく業務の期間で満たすルートについて、サビ管は3年ですが、児発管は5年です。ここは単純に年数が違います。
以下、条文に沿って具体的に見ていきます。
実務経験:まず6つの期間を押さえる
告示は実務経験を、イからヘまでの6つの期間に分けて定義しています。
| 記号 | 何の期間か |
|---|---|
| イ | 相談支援の業務に従事した期間 |
| ロ | 社会福祉主事任用資格者等である人が、直接支援の業務に従事した期間 |
| ハ | 上記のうち、高齢者分野等での相談支援の業務/社会福祉主事任用資格者等による直接支援の業務の期間 |
| ニ | 社会福祉主事任用資格者等でない人が、直接支援の業務に従事した期間 |
| ホ | 上記のうち、高齢者分野等での期間 |
| ヘ | 国家資格等を持つ人が、その資格に基づき当該資格に係る業務に従事した期間 |
ハとホは、イ・ロ・ニの中から「高齢者分野等の期間」を抜き出したものです。具体的には、老人福祉施設、救護施設、更生施設、介護老人保健施設、介護医療院、地域包括支援センター、療養病床に係る病室、居宅介護支援事業、介護予防支援事業、老人居宅介護等事業、そして特例子会社・助成金受給事業所での期間が該当します。
「社会福祉主事任用資格者等」には、社会福祉法第19条第1項各号に該当する者のほか、保育士が明記されています。
3つのルート
そのうえで、次のいずれかを満たせば「実務経験者」です。
| ルート | 必要年数 | 加えて必要な条件 |
|---|---|---|
| A | イ+ロが通算5年以上 | (イ+ロ)からハを除いた期間が3年以上 |
| B | ニが通算8年以上 | ニからホを除いた期間が3年以上 |
| C | ヘが通算5年以上 | (イ+ロ+ニ)からハ+ホを除いた期間が3年以上 |
表の右側が、サビ管にはない「3年以上」の下限です。言い換えれば、障害児・障害者・児童分野などでの経験が3年以上ないと、児発管にはなれないということです。
具体例で考えます。
- 介護老人保健施設で介護職員(介護福祉士)として8年 → 児発管になれない。 ニが8年でも、ホを除いた期間が0年のためBを満たさない
- 介護老人保健施設で5年+放課後等デイサービスで3年(いずれも保育士) → なれる。 イ+ロが8年、ハを除いた期間が3年でAを満たす
- 病院で看護師として12年 → 児発管になれない。 ヘは5年を超えるが、(イ+ロ+ニ)からハ+ホを除いた期間の3年がない
3つ目の例は特に注意が必要です。看護師資格をお持ちの方の採用時に「資格があるからすぐ児発管に」と考えてしまうケースがありますが、障害児・児童分野等での3年が別に必要です。
ヘに入る資格
医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、管理栄養士、栄養士、精神保健福祉士、公認心理師。
資格の範囲はサビ管と同じですが、前述のとおり必要年数が5年である点が違います。
よく聞かれる3つのケース
保育士は保育所勤務の期間を使えるか
使えます。ロの対象施設には、障害児入所施設や障害者支援施設だけでなく、保育所、幼保連携型認定こども園、児童厚生施設、乳児院、母子生活支援施設、児童養護施設、児童心理治療施設、児童自立支援施設、児童家庭支援センター、里親支援センターが列挙されています。また、対象事業には障害児通所支援事業、放課後児童健全育成事業、子育て短期支援事業、一時預かり事業、家庭的保育事業、小規模保育事業、居宅訪問型保育事業、事業所内保育事業、病児保育事業などが挙げられています。
保育士が保育所で保育に従事した期間はロに入り、かつ高齢者分野ではないためハに該当しません。したがって、保育所勤務5年で、そのままAルートを満たします。児発管の人材確保において、保育士の採用が有力な選択肢になる理由がここにあります。
教員免許・学校勤務の期間は使えるか
使えます。ここはサビ管との細かい差が出るところです。
- サビ管:相談支援の業務の対象は「特別支援学校その他これに準ずる機関」
- 児発管:イの対象は「学校教育法第1条に規定する学校(大学を除く)その他これらに準ずる機関」
児発管では、特別支援学校に限らず、小学校・中学校・高等学校・幼稚園などが対象に含まれます。ただし、教員免許を持っていることが要件なのではなく、そこで従事した業務が相談支援の業務(または直接支援の業務)に該当することが要件です。「教員免許があれば要件を満たす」わけではない点に注意してください。実務経験証明書を書く際は、担当した業務の内容を具体的に記載してもらう必要があります。
なお、ヘの資格リストに教員免許は含まれていません。学校勤務の期間はイまたはロとして数えます。
高次脳機能障害者支援センターは対象か
対象です。令和7年10月1日から、高次脳機能障害者支援法(令和7年法律第96号)第19条第1項に規定する高次脳機能障害者支援センターが、イの対象施設に加わりました。比較的新しい追加なので、古い解説記事や自治体の旧版資料には載っていないことがあります。
研修:時間数はサビ管と同じ
研修体系は基礎研修 → 実践研修 → 更新研修の3段階で、時間数は告示の別表に定められています。
| 研修 | 内容(告示別表) | 合計時間 |
|---|---|---|
| 基礎研修(別表第一) | 基本姿勢とサービス提供のプロセスに関する講義7.5時間+サービス提供プロセスの管理に関する演習7.5時間 | 15時間 |
| 実践研修(別表第三) | 障害福祉の動向1時間+サービス提供に関する講義及び演習6.5時間+人材育成の手法3.5時間+多職種及び地域連携3.5時間 | 14.5時間 |
| 更新研修(別表第四) | 障害福祉の動向1時間+サービス提供の自己検証に関する演習5時間+サービスの質の向上と人材育成のためのスーパービジョン7時間 | 13時間 |
基礎研修修了者となるには、あわせて相談支援従事者初任者研修の講義部分(別表第二/合計11時間)の修了が必要です。
基礎研修は実務経験を満たす2年前から受けられる
告示は基礎研修を、「実務経験者となるために必要な年数に達する日までの期間が二年以内である者又は実務経験者」に対して行われる研修と定義しています。Aルート(5年)なら3年目から、Bルート(8年)なら6年目から受講できます。
事業所の増設や既存児発管の退職に備えるなら、要件を満たす2年前から候補者を研修に送り込むのが定石です。
実践研修の受講要件
- 原則:基礎研修修了者となった日以後、実践研修受講開始日前5年間に通算して2年以上、相談支援の業務または直接支援の業務に従事していること
- 短縮ルート:基礎研修の受講開始日において既に実務経験者だった場合は、基礎研修修了後、実践研修受講開始日前5年間に通算して6か月以上、児発管等の業務(指定基準に規定する個別支援計画の作成等の業務)に従事していれば足りる
更新研修の期限は年度で管理する
更新研修の期限は、実践研修を修了した日の属する年度の翌年度を初年度とする、5年度ごとの各年度の末日です。日付ではなく年度で数えます。
そして、期限までに更新研修を修了しなかった場合、告示は基礎研修修了者とみなし、実践研修を改めて修了することを要すると定めています。更新研修(13時間)で済むものが、実践研修(14.5時間)の受け直しになります。実践研修は都道府県が年に数回しか開催しないため、次の開催を待つ間、児発管として配置できない期間が生じます。
欠員が出たときの扱い
1. 基礎研修修了者のみなし配置
児発管(1人以上が常勤でなければならない場合は常勤の児発管)が配置されている事業所では、個別支援計画の作成等の業務を基礎研修修了者に行わせることができ、その児発管に加えて基礎研修修了者を置くことで、置くべき児発管の数に達したとみなすことができます。
2. やむを得ない事由で欠けた場合
やむを得ない事由により児発管が欠けた事業所では、その事由の発生した日から1年間、実務経験者である配置者(告示は「みなし児童発達支援管理責任者」と呼びます)について研修要件を満たしているものとみなします。
さらに、そのみなし児発管が基礎研修修了者で、かつ事由の発生した日以前から引き続きその事業所に配置されていた場合は、実践研修修了者となるまでの間(事由発生日から2年間に限る)まで期間が延びます。
いずれも猶予にすぎません。欠員が出た日を起点に、研修の開催時期から逆算して計画を立てる必要があります。
法人としてどう管理するか
児発管の要件は、上で見たとおり「年数」と「どの分野で働いたか」の掛け算です。つまり、職歴を分野ごとに分解して持っていないと判定できません。
私たちが法人様のご支援に入るとき、職員台帳に足すことをお勧めしているのは次の項目です。
- 保有資格(社会福祉主事任用資格・保育士・国家資格の別)
- 職歴を「施設種別 × 業務(相談支援/直接支援)× 期間」で分解した記録
- 研修の修了年月日と、次回の更新期限(年度)
- 修了証・実務経験証明書のPDF
とくに実務経験証明書は、前職の事業所に発行してもらう必要があります。事業所が廃止されていたり、担当者が代わっていたりすると、時間が経つほど取りにくくなります。採用時に取得しておくのが最も安全です。
そして、児発管の要件は「あと何年で満たすか」が事業計画に直結します。職員台帳に分野別の年数が入っていれば、「来年度、児発管候補になるのは誰か」が検索一発で分かります。逆にこれが紙とExcelに散っていると、増設の計画を立てるたびに人事担当者が全員分を手計算することになります。
個別支援計画そのものの書き方(5領域の扱い)については、個別支援計画の5領域とは|記載の必須ルールと支援プログラムの関係で整理しています。
まとめ
- 児発管の要件は実務経験と研修修了の2階建て。研修の時間数はサビ管と同じだが、実務経験の数え方が違う
- ルートは3つ。イ+ロで5年/ニで8年/ヘ(国家資格業務)で5年
- どのルートでも、高齢者分野等の期間を除いた期間が3年以上必要。高齢者分野の経験だけでは児発管になれない
- 国家資格ルートの必要年数は5年(サビ管は3年)。しかも障害児・児童分野等での3年が別に必要
- 保育士の保育所勤務はロに入るため、保育所勤務5年でAルートを満たす
- イの対象は「学校教育法第1条に規定する学校(大学を除く)」。特別支援学校に限らないが、教員免許があれば足りるわけではなく、従事した業務の内容で判断する
- 令和7年10月1日から、高次脳機能障害者支援センターが対象施設に加わった
- 研修は基礎15時間 → 実践14.5時間 → 更新13時間。基礎研修は要件を満たす2年前から受講できる
- 更新研修の期限は5年度ごとの各年度の末日。過ぎると基礎研修修了者に戻り、実践研修を受け直す
- 欠員時は1年間(一定の場合は2年間)のみなし配置が使える
- 判定に必要なのは「年数」だけでなく「どの分野で、どの業務に従事したか」。職員台帳を分野別に分解して持つことが、そのまま人材計画になる
参考(一次情報)
- 障害児通所支援又は障害児入所支援の提供の管理を行う者としてこども家庭庁長官が定めるもの(平成24年3月30日厚生労働省告示第230号)|厚生労働省
- 指定障害福祉サービスの提供に係るサービス管理を行う者として厚生労働大臣が定めるもの等(平成18年9月29日厚生労働省告示第544号)|厚生労働省
- 各種ガイドライン・手引き等について|こども家庭庁
※研修の開催回数・申込時期・実務経験証明書の様式は都道府県ごとに異なります。受講計画を立てる際は、自法人の所在地の都道府県が公表している最新の開催案内をご確認ください。
資格と研修期限の管理を仕組みにしたい法人様へ
パレットテクノロジーズは、社会福祉法人様のデジタル化を「現地現物」で伴走支援しています。ITに詳しい職員がいらっしゃらなくても大丈夫です。まずは、いま何にどれだけ時間がかかっているかを一緒に見るところから始めます。