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介護の協力医療機関|経過措置の対象は一部だけ。年1回の届出は義務

「協力医療機関の要件には3年の経過措置があるので、令和9年3月までに体制を整えればよい」——令和6年度介護報酬改定の説明を受けたあと、こう理解したまま運用されている施設は少なくありません。

しかし条文を読むと、経過措置が猶予しているのは義務の一部だけです。自治体の届出案内や介護ソフトの解説記事は「3年の経過措置がある」で説明が止まっているものが多く、何が猶予され、何がすでに義務になっているのかの線引きまで書かれたものはあまり見かけません。

この記事では、指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号。以下「指定介護老人福祉施設基準」)と指定地域密着型サービスの運営基準(平成18年厚生労働省令第34号)、そして経過措置を定めた令和6年1月25日厚生労働省令第16号の附則の条文に沿って、協力医療機関をめぐる義務を整理します。

協力医療機関の義務は「定めること」と「毎年確認して届け出ること」の2階建て

まず全体像です。協力医療機関に関する規定は、①要件を満たす協力医療機関を定めることと、②一年に一回以上、協力医療機関との間で対応を確認し、名称等を指定権者に届け出ることの、2つの動作で組み立てられています。

指定介護老人福祉施設基準第28条第1項は、①について次のように定めています。

指定介護老人福祉施設は、入所者の病状の急変等に備えるため、あらかじめ、次の各号に掲げる要件を満たす協力医療機関(第三号の要件を満たす協力医療機関にあっては、病院に限る。)を定めておかなければならない。

続く同条第2項が、②の確認と届出です。

指定介護老人福祉施設は、一年に一回以上、協力医療機関との間で、入所者の病状が急変した場合等の対応を確認するとともに、協力医療機関の名称等を、当該指定介護老人福祉施設に係る指定を行った都道府県知事(指定都市及び中核市にあっては、指定都市又は中核市の市長)に届け出なければならない。

この2つは別の項に置かれた、別の義務です。 そして次章で見るとおり、経過措置がかかっているのは第1項だけです。

経過措置が猶予しているのは第1項だけ。届出はすでに義務

経過措置を定めているのは、令和6年1月25日厚生労働省令第16号の附則第6条です。条文は次のとおりです。

この省令の施行の日から令和九年三月三十一日までの間は、新地域密着型サービス基準第百五十二条第一項(新地域密着型サービス基準第百六十九条において準用する場合を含む。)、第九条の規定による改正後の養護老人ホームの設備及び運営に関する基準第二十五条第一項、新指定介護老人福祉施設基準第二十八条第一項(新指定介護老人福祉施設基準第四十九条において準用する場合を含む。)、新介護老人保健施設基準第三十条第一項(新介護老人保健施設基準第五十条において準用する場合を含む。)、新特別養護老人ホーム基準第二十七条第一項(新特別養護老人ホーム基準第四十二条、第五十九条及び第六十三条において準用する場合を含む。)及び新介護医療院基準第三十四条第一項(新介護医療院基準第五十四条において準用する場合を含む。)の規定の適用については、これらの規定中「定めておかなければ」とあるのは、「定めておくよう努めなければ」とする。

読み方のポイントは2つです。

第一に、読み替えの対象として並んでいるのは、いずれも「第一項」です。指定介護老人福祉施設基準であれば第28条第1項、地域密着型介護老人福祉施設であれば地域密着型サービス基準第152条第1項が挙げられており、確認と届出を定めた第2項は、この一覧のどこにも入っていません。

第二に、読み替えの中身は「定めておかなければ」を「定めておくよう努めなければ」に変えるというものです。つまり令和9年3月31日までの間、要件を満たす協力医療機関を定めることが努力義務に緩和される、というだけの規定です。

したがって、一年に一回以上の確認と届出は、経過措置の対象外=すでに義務ということになります。「3年間は何もしなくてよい」という理解のまま届出を出していない場合、猶予されていない義務を履行していない状態になります。この誤解は、経過措置の説明と届出の案内が別々の資料で行われているために起きやすく、施設長の交代や事務担当者の異動をまたぐと引き継がれにくい論点です。

なお、附則第6条には介護老人保健施設基準第30条第1項と介護医療院基準第34条第1項、養護老人ホームと特別養護老人ホームの各基準も並んでいます。施設種別が違っても、猶予されているのは「第一項」だけという構造は共通です。

特養が満たすべき3つの要件。入院の受入れは「病院に限る」

では、第1項が求める「要件」とは何か。指定介護老人福祉施設基準第28条第1項は、3つの号を挙げています。

一入所者の病状が急変した場合等において医師又は看護職員が相談対応を行う体制を、常時確保していること。二当該指定介護老人福祉施設からの診療の求めがあった場合において診療を行う体制を、常時確保していること。三入所者の病状が急変した場合等において、当該指定介護老人福祉施設の医師又は協力医療機関その他の医療機関の医師が診療を行い、入院を要すると認められた入所者の入院を原則として受け入れる体制を確保していること。

整理すると、①常時の相談対応体制、②常時の診療体制、③入院を要すると認められた入所者の入院を原則として受け入れる体制の3つです。①②はいずれも「常時確保していること」とされており、日中の診療時間内に限られた体制では要件を満たしません。夜間・休日の相談先をどう確保するかが論点になり、在宅当番医や地域の輪番体制を組み合わせて検討している施設もあります。

そして見落とされやすいのが、第1項の柱書にある括弧書きです。③の要件を満たす協力医療機関は「病院に限る」とされています。日頃から往診をお願いしている診療所は①②の要件で位置づけられても、③の入院受入れの相手方にはなれない、ということです。

要件ごとに複数の医療機関へ分けてよい

3つの要件をすべて満たす1つの病院を探そうとすると、地域によっては現実的でない場合があります。この点について、第28条第1項にはただし書きが置かれています。

ただし、複数の医療機関を協力医療機関として定めることにより当該各号の要件を満たすこととしても差し支えない。

要件ごとに相手方を分け、全体として3つの要件を満たす形でよいと条文が明示しています。たとえば、①②を日頃から連携している診療所で、③を入院受入れが可能な病院で満たす、という組み立てです。この形を取ると、協力医療機関が複数になります。どの医療機関が、どの要件を担っているのかを法人として管理しておかないと、翌年の確認や届出の際に「何を確認すべき相手なのか」があいまいになります。後述する管理項目のとおり、医療機関名と要件の対応は必ずセットで持たせることをおすすめします。

グループホーム・地域密着型特定施設は義務の重さが違う

同じ「協力医療機関」という言葉でも、施設系と居住系では条文の作りが異なります。認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は地域密着型サービス基準第105条、地域密着型特定施設入居者生活介護は同第127条に規定があります。

グループホームの第105条第2項は次のとおりです。

指定認知症対応型共同生活介護事業者は、前項の規定に基づき協力医療機関を定めるに当たっては、次に掲げる要件を満たす協力医療機関を定めるように努めなければならない。

違いは2点あります。

1点目は要件の数です。ここで挙げられている要件は、常時の相談対応体制と常時の診療体制の2つだけで、特養にある③の入院受入れ体制は含まれていません。第127条の地域密着型特定施設も同じ構成です。

2点目は義務の強さです。協力医療機関を定めること自体は第105条第1項で「定めておかなければならない」と義務づけられていますが、上記の2要件を満たす医療機関であることは「定めるように努めなければならない」=努力義務にとどまります。特養が「要件を満たす協力医療機関を定めておかなければならない」(第28条第1項)としているのと、ここが決定的に違います。

一方で、一年に一回以上の確認と届出は、グループホームにも地域密着型特定施設にも同じように義務として課されています(第105条第3項、第127条第3項)。届出先は市町村長です。要件の話は努力義務でも、毎年の確認と届出は義務、という点は施設系と変わりません。

種別(根拠条文)要件を満たす機関を定めること要件の数入院受入れ体制年1回の確認・届出届出先附則第6条の経過措置
指定介護老人福祉施設(第28条)義務3つあり(病院に限る)義務都道府県知事(指定都市・中核市は市長)対象(第1項のみ)
地域密着型介護老人福祉施設(第152条)義務3つあり(病院に限る)義務市町村長対象(第1項のみ)
認知症対応型共同生活介護(第105条)定めること自体は義務、要件は努力義務2つなし義務市町村長対象外
地域密着型特定施設入居者生活介護(第127条)定めること自体は義務、要件は努力義務2つなし義務市町村長対象外

グループホームと地域密着型特定施設が附則第6条の読み替え対象に入っていないのは、要件の部分がもともと努力義務として規定されているためです。経過措置の一覧に自分の事業所の条文が見当たらないときは、「猶予がない」のではなく「そもそも義務の形が違う」可能性を先に確認してください。

新興感染症への対応は、努力義務と義務が切り替わる

協力医療機関に関する条文には、新興感染症への対応も組み込まれています。指定介護老人福祉施設基準第28条第3項は次のとおりです。

指定介護老人福祉施設は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)第六条第十七項に規定する第二種協定指定医療機関(次項において「第二種協定指定医療機関」という。)との間で、新興感染症(同条第七項に規定する新型インフルエンザ等感染症、同条第八項に規定する指定感染症又は同条第九項に規定する新感染症をいう。次項において同じ。)の発生時等の対応を取り決めるように努めなければならない。

第二種協定指定医療機関との取決めは「取り決めるように努めなければならない」=努力義務です。ところが、続く第4項で扱いが変わります。

指定介護老人福祉施設は、協力医療機関が第二種協定指定医療機関である場合においては、当該第二種協定指定医療機関との間で、新興感染症の発生時等の対応について協議を行わなければならない。

すでに定めている協力医療機関が第二種協定指定医療機関に該当する場合は、協議が義務になります。同じ条の中で努力義務と義務が切り替わる作りのため、第3項だけを読んで「新興感染症の取決めは努力義務」と整理してしまうと、第4項の義務を取りこぼします。この構成は、グループホームの第105条第4項・第5項、地域密着型特定施設の第127条第4項・第5項でも同じです。実務としては、まず自施設の協力医療機関が第二種協定指定医療機関に該当するかどうかを確認するのが出発点になります。該当する場合は協議が義務ですので、協議を行った事実と内容を記録に残しておく必要があります。

「年1回」は1つではない。特養には見直し義務がもう1つある

特養でとくに整理が必要なのが、年1回以上の義務が2つある点です。1つは先に見た第28条第2項の確認と届出。もう1つが、緊急時等の対応を定めた第20条の2第2項です。

指定介護老人福祉施設は、前項の医師及び協力医療機関の協力を得て、一年に一回以上、緊急時等における対応方法の見直しを行い、必要に応じて緊急時等における対応方法の変更を行わなければならない。

ここでいう「前項の医師」は、第20条の2第1項が挙げる「第二条第一項第一号に掲げる医師」、つまり施設に置かれる医師です。配置医師と協力医療機関の協力を得て、緊急時等における対応方法そのものを年1回以上見直すことが求められています。

第28条第2項が「協力医療機関との間で対応を確認し、名称等を届け出る」義務であるのに対し、第20条の2第2項は「緊急時等における対応方法を見直し、必要に応じて変更する」義務です。似ていますが、成果物が違います。

何をするか根拠条文頻度相手方残すもの
病状急変時等の対応を確認し、協力医療機関の名称等を届け出る第28条第2項一年に一回以上協力医療機関/指定権者確認の記録と届出の控え
緊急時等における対応方法を見直し、必要に応じて変更する第20条の2第2項一年に一回以上配置医師・協力医療機関見直し後の対応方法と見直し記録

同じ場で両方を済ませること自体は差し支えありませんが、記録は別のものとして残す必要があります。「協力医療機関と年1回話をしている」という実態はあっても、確認したのか、対応方法を見直したのかが記録から読み取れない、という状態は避けたいところです。

なお、緊急時等における対応方法は、実際に病状の急変が起きたときに現場が動く手順そのものです。搬送に至った場合や、転倒・誤嚥などの事故を契機に受診・入院となった場合には、事故としての記録と報告も並行して発生します。事故発生時の報告の考え方は介護の事故報告書で整理していますので、緊急時対応のフローを見直す際にあわせてご確認ください。

法人として持っておきたい4つの管理項目

ここまでの義務を、施設ごと・年度ごとに履行していく必要があります。管理すべき項目は、最低でも次の4つです。

  • (a) 協力医療機関の名称と、満たしている要件の対応表(複数の医療機関で要件を分担している場合は、どの機関がどの号を担っているか)
  • (b) 一年に一回以上の確認を行った日と、その相手方(第28条第2項/第105条第3項等)
  • (c) 届出を提出した日と提出先(都道府県知事か市町村長かは施設種別によって異なる)
  • (d) 緊急時等における対応方法の見直しを行った日(第20条の2第2項)

厄介なのは、「年1回」の起点が施設ごとにばらばらになることです。前回の確認日や届出日は施設ごとに違いますから、法人として複数施設を運営している場合、期限は施設の数だけ存在します。さらに(b)(c)(d)は担当者も相手方も異なるため、施設内でも別々の書類として動きがちです。その結果、「どの施設が、いつ、何を出したのか」が法人本部から見えないという状態が生まれます。実地指導や監査の前に各施設へ照会をかけ、施設側は書庫から控えを探し、確認日が特定できないまま「たしか昨年の秋ごろ」という回答が返ってくる——という場面は、決して珍しくありません。第二種協定指定医療機関との協議の要否のように、施設ごとに答えが変わる論点が加わると、本部での把握はさらに難しくなります。

施設として押さえておきたいこと

  • 協力医療機関の規定は「要件を満たす機関を定めること(第1項)」と「年1回以上の確認・届出(第2項)」の2階建てになっている
  • 令和6年1月25日厚生労働省令第16号附則第6条の経過措置(令和9年3月31日まで)が読み替えるのは、各基準の第一項だけ。「定めておかなければ」が「定めておくよう努めなければ」になる
  • したがって確認と届出は経過措置の対象外=すでに義務。「3年間は何もしなくてよい」は誤り
  • 特養・地域密着型介護老人福祉施設は3要件(常時の相談対応/常時の診療/入院の受入れ)。入院受入れの要件を満たす協力医療機関は病院に限る
  • 複数の医療機関に分けて要件を満たしてよい(第28条第1項ただし書き)
  • グループホーム・地域密着型特定施設は2要件で、要件を満たすことは努力義務。ただし年1回の確認・届出は同じく義務(届出先は市町村長)
  • 第二種協定指定医療機関との取決めは努力義務だが、協力医療機関が第二種協定指定医療機関である場合の協議は義務
  • 特養は第20条の2第2項の「緊急時等における対応方法の年1回以上の見直し」も別途義務。第28条第2項の確認・届出とは別の義務

協力医療機関の確認・届出状況を法人本部から一覧管理したい法人様へ

協力医療機関をめぐる義務は、施設種別によって要件の数も届出先も異なり、年1回の期限が施設ごと・義務ごとに存在します。 施設数が増えるほど、「どの施設が、いつ確認し、いつ届け出たか」を法人本部で把握することが難しくなります。

パレットテクノロジーズでは、社会福祉法人・介護サービス事業所向けに、施設ごとの協力医療機関と担っている要件、年1回の確認日、届出の提出日と提出先、緊急時対応方法の見直し日をkintoneで一元管理するご支援をしています。期限が近づいた施設を本部の一覧画面で拾えるようにするところから始められます。

参考にした一次情報

  • 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第20条の2・第28条(e-Gov法令検索)
  • 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第105条・第127条・第152条(e-Gov法令検索)
  • 令和6年1月25日厚生労働省令第16号 附則第6条(協力医療機関との連携に関する経過措置)

※協力医療機関の届出の様式・提出期限・提出先は、都道府県・指定都市・中核市・市町村によって異なります。実際の提出にあたっては、指定を行った自治体の手引・要領で必ずご確認ください。

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