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生産性向上推進体制加算|委員会と実績報告で見る(Ⅰ)(Ⅱ)の要件

見守り機器やインカム、介護記録ソフトを入れたけれど、「加算を取るには何を満たせばよいのか」「(Ⅰ)と(Ⅱ)は何が違うのか」「報告するデータは誰の何を調べるのか」と手が止まることはないでしょうか。

生産性向上推進体制加算は、機器を入れただけでは算定できません。委員会を開き、業務改善を続け、年に1回、実績のデータを国に報告することまでが一続きの要件です。この記事では、通知の原文に書かれている範囲で、(Ⅰ)(Ⅱ)の違いと、記録として何を残すかを整理します。

この記事の前提(見た資料と版)

  • 加算の仕組みと報告の方法は、厚生労働省老健局の「生産性向上推進体制加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例等の提示について」(令和6年3月15日付け老高発0315第4号。令和6年3月29日付けの改正を反映した版)を読みました。以下「基本的考え方の通知」と書きます。
  • 単位数は、告示の新旧対照表(令和6年3月の告示第86号)と、厚生労働省「介護報酬の算定構造」(令和8年6月改定反映版)の表で確かめました。処遇改善加算との関係は、令和8年3月の告示第87号の新旧対照表の改正後の文言で確かめました。
  • 留意事項通知は、令和6年度改定時の新旧対照表(抄)を見ています。令和8年6月施行の改定でこの加算の本体は変わっていないことを弊社で確認しましたが、令和7年中の通知改正の反映は確認できていません。最新のQ&Aと、事業所のある自治体の案内もあわせて確かめてください。

先に結論

  • 加算は、委員会の開催・見守り機器などの導入・業務改善・年1回の実績データ報告がそろって初めて算定できます。
  • (Ⅱ)は1月につき10単位、(Ⅰ)は1月につき100単位です。(Ⅰ)が上位区分で、同時には算定できません。
  • (Ⅰ)は、(Ⅱ)の取組で成果が確認されることが要件です。機器も(Ⅰ)は3種類すべてを使います。
  • 委員会は三月に一回以上開き、議事概要は報告のときに提出します。
  • 報告する項目は、(Ⅱ)が3つ、(Ⅰ)が5つです。

この加算は何か

加算が評価しているのは、機器の導入そのものではなく、導入したあとの「継続的な活用」です。通知は、委員会の設置を義務付けたうえで、この加算を新設した、と書いています。

利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会(以下「委員会」という。)の設置を義務付ける(3年間の経過措置を設定)とともに、

この一文は令和6年度改定時のものです。経過措置がいつ終わるかなど、現在の取扱いは、この記事で確かめた通知からは決まりません。自治体と最新のQ&Aで確認してください。

留意事項通知は、加算の中身を直接は書かず、別の通知を見るよう指示しています。

生産性向上推進体制加算の内容については、別途通知(「生産性向上推進体制加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例等の提示について」)を参照すること。

つまり、算定要件の本体は「基本的考え方の通知」にあります。

対象サービスと単位数

告示では、短期入所生活介護と短期入所療養介護の加算の注に、次のように書かれています。短期入所生活介護の部分を引きます。

別に厚生労働大臣が定める基準に適合しているものとして、電子情報処理組織を使用する方法により、都道府県知事に対し、老健局長が定める様式による届出を行った指定短期入所生活介護事業所において、利用者に対して指定短期入所生活介護を行った場合は、当該基準に掲げる区分に従い、1月につき次に掲げる所定単位数を加算する。ただし、次に掲げるいずれかの加算を算定している場合においては、次に掲げるその他の加算は算定しない。

届出は電子情報処理組織(電子申請・届出システム)で行うこと、そして(Ⅰ)(Ⅱ)はどちらか一方だけ算定することが、ここから読めます。

単位数は次のとおりです。

サービス区分と単位数確かめた資料
短期入所生活介護(Ⅰ)100単位、(Ⅱ)10単位(1月につき)告示の新旧対照表
短期入所療養介護(Ⅰ)100単位、(Ⅱ)10単位(1月につき)告示の新旧対照表
特定施設入居者生活介護(Ⅰ)100単位(1月につき)算定構造

基本的考え方の通知も、(Ⅱ)を「一月当たり10単位」、(Ⅰ)を「一月当たり100単位」としています。

そのほかのサービスにも、算定構造に「生産性向上推進体制加算」の行があります。確かめられたのは、介護福祉施設サービス、小規模多機能型居宅介護費、認知症対応型共同生活介護費、地域密着型特定施設入居者生活介護費、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、複合型サービス費、介護予防の各サービスです。ただし、これらの単位数は、表の読み取りだけでは、どのサービスの値かを特定できませんでした。記事では書きません。ご自身のサービスの単位数は、算定構造の表で確かめてください。

また、算定構造の行の見出しには条件が付くものがあります。特定施設入居者生活介護では「イ又はハを算定する場合のみ算定」、小規模多機能型居宅介護では「イを算定する場合のみ算定」と書かれています。

実績報告書の様式には、「施設種別」として16種類が並んでいます。短期入所生活介護、短期入所療養介護、特定施設入居者生活介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設、看護小規模多機能型居宅介護、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院と、介護予防の各サービスです。ここに挙がっていないサービスが算定できるかは、この記事で確かめた通知からは決まりません。

仮の数字で、1年の違いを見る

(Ⅱ)と(Ⅰ)の差を、1年間算定する場合の単位数で見ます。これは仮の数字による計算で、実際の報酬額は事業所の地域区分などで変わります。

区分1年(12か月)の単位数計算
(Ⅱ)120単位10単位 × 12か月
(Ⅰ)1,200単位100単位 × 12か月
差1,080単位1,200 − 120

算定要件(1):(Ⅱ)の要件

(Ⅱ)の要件を、通知は次のようにまとめています。

生産性向上推進体制加算(以下「加算」という。)は、テクノロジーの導入後の継続的な活用を支援するため、委員会の開催や必要な安全対策を講じた上で、見守り機器等のテクノロジーを1つ以上導入し、生産性向上ガイドラインの内容に基づいた業務改善を継続的に行うとともに、事業年度毎に1回、生産性向上の取組に関する実績データを厚生労働省に報告する場合に、一月当たり10単位を算定(加算(Ⅱ))することとした。

読み取れる要件は4つです。

  • 委員会を開き、必要な安全対策を講じる
  • 見守り機器等のテクノロジーを1つ以上導入する
  • 生産性向上ガイドラインの内容に基づいた業務改善を継続的に行う
  • 事業年度ごとに1回、実績データを厚生労働省に報告する

機器については、通知が別の項で具体的に書いています。

加算(Ⅱ)を算定するにあたっては、(1)①から③に掲げる介護機器のうち、1つ以上を使用すること。なお、(1)②の機器は同一の時間帯に勤務する全ての介護職員が使用すること。

①から③は、後ほどの(Ⅰ)の項で出てきます。(Ⅱ)では、どれか1つ以上を使えばよい一方で、②(インカムなど)を使う場合は、同じ時間帯に勤務する全ての介護職員が使う必要があります。

算定要件(2):(Ⅰ)の要件

(Ⅰ)は、(Ⅱ)に上乗せの条件が付く形です。

上記の加算(Ⅱ)の要件を満たし、当該要件に基づき提出した実績データにより生産性向上の取組による成果が確認された場合であって、見守り機器等のテクノロジーを複数導入し、かつ、職員間の適切な役割分担(特定の介護職員が利用者の介助に集中して従事することのできる時間帯を設けることやいわゆる介護助手の活用等。以下同じ。)の取組を行っている場合に、一月当たり100単位を算定(加算(Ⅰ))することとした。

(Ⅱ)との違いを表にまとめます。

項目(Ⅱ)(Ⅰ)
単位数1月につき10単位1月につき100単位
機器①〜③のうち1つ以上①〜③をすべて
成果の確認要件にしていない要件になる
役割分担の取組通知に要件としての記載なし必要
報告する項目(1)〜(3)(1)〜(5)

役割分担については、通知が例を挙げています。委員会で、現場の状況に応じて必要な対応を検討するとされています。

  • 負荷が集中する時間帯の業務を細分化し、個人に集中することがないよう平準化すること
  • 特定の介護職員が利用者の介助に集中して従事することのできる時間帯を設けること
  • いわゆる介護助手の活用(食事等の準備や片付け、清掃、ベッドメイク、ごみ捨て等を集中的に実施する者を設ける取組)を行うこと
  • 利用者の介助を伴わない業務の一部を外注すること

(Ⅰ)の機器の要件は、次のとおりです。

加算(Ⅰ)を算定するに当たっては、以下の①から③の介護機器を全て使用することとし、また、①の機器は全ての居室に設置し(全ての利用者を個別に見守ることが可能な状態をいう。)、②の機器は同一の時間帯に勤務する全ての介護職員が使用すること。

①の見守り機器は、通知が次のように定義しています。

利用者がベッドから離れようとしている状態又は離れたことを感知できるセンサーであり、当該センサーから得られた情報を外部通信機能により職員に通報できる利用者の見守りに資する機器をいう。

②と③の機器の定義は次のとおりです。

インカム(マイクロホンが取り付けられたイヤホンをいう。)等の職員間の連絡調整の迅速化に資するICT機器(ビジネス用のチャットツールの活用による職員間の連絡調整の迅速化に資するICT機器も含む。)

介護記録ソフトウェアやスマートフォン等の介護記録の作成の効率化に資するICT機器(複数の機器の連携も含め、データの入力から記録・保存・活用までを一体的に支援するものに限る。)

③は「データの入力から記録・保存・活用までを一体的に支援するもの」に限られています。単に入力する端末があるだけでは、この定義に当たるかが分かりません。

なお、通知は、見守り機器を居室に設置するときは、利用者または家族等に必要な説明をして同意を得ること、機器の運用は当該利用者または家族等の意向に応じて、使用を停止するなどの運用が認められること、も書いています。

委員会:何を検討し、どう開くか

委員会の構成と開催頻度は、次のとおりです。

委員会は、現場職員の意見が適切に反映されるよう、管理者だけでなく、ケアを行う職員を含む幅広い職種やユニットリーダー等が参画するものとする。

委員会では、次の(1)から(4)までの事項について必要な検討を行い、また、委員会は三月に一回以上開催し、当該事項の実施状況を確認し、ケアを行う職員等の意見を尊重しつつ、必要に応じて利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減を図る取組の改善を図ること。

検討する4つの事項は、通知にある見出しを使うと次の表のとおりです。

事項通知に書かれた内容の例参考
利用者の安全とケアの質離床状況などの情報で利用者の状態維持を確認する通知5(1)
職員の負担軽減と勤務状況アンケートやヒアリングで心身の負担、休憩、時間外勤務を確認する通知5(2)
介護機器の定期的な点検時間を定めた不具合チェックと、メーカー等と連携した定期点検通知5(3)
職員に対する研修使用方法の講習、ヒヤリ・ハット事例の周知と再発防止策の実習通知5(4)

「利用者の安全とケアの質」では、機器の使用に起因する介護事故やヒヤリ・ハット事例の状況を把握して、原因を分析し再発防止策を検討することも書かれています。(Ⅰ)を算定する場合は、これに加えて、職員間の適切な役割分担による業務の効率化などのための職員研修を定期的に実施します。

業務が効率化された場合の時間の使い方も、通知は定めています。

委員会における検討に基づき実施された取組により業務効率化が図られた場合、その効率化された時間は、介護サービスの質の確保及び職員の負担の軽減に資する取組に優先して充てること。

委員会は、テレビ電話装置等を活用して行うことができるとされています。その場合は、個人情報の取扱いのガイダンスや、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインに対応することも求められています。

実績データの報告:何を、誰に聞いて、いつ出すか

報告の原則は次のとおりです。

事業年度毎に1回、生産性向上の取組に関する実績として、加算(Ⅰ)を算定する場合には、次の(1)から(5)の事項について、加算(Ⅱ)を算定する場合には、次の(1)から(3)の事項について、原則としてオンラインにより厚生労働省(提出されたデータについては、厚生労働省のほか指定権者においても確認ができるものとする)に当該事項の結果を提出すること。

報告する項目と、(Ⅰ)(Ⅱ)のどちらで求められるかは、次のとおりです。

項目内容求められる加算
(1)利用者の満足度等WHO-5と生活・認知機能尺度。5名程度が対象(Ⅰ)(Ⅱ)
(2)業務時間10月の総業務時間と超過勤務時間の平均(Ⅰ)(Ⅱ)
(3)年次有給休暇10月を起点に直近1年の取得日数の平均(Ⅰ)(Ⅱ)
(4)心理的負担等SRS-18と職員のモチベーションの調査(Ⅰ)のみ
(5)タイムスタディ5日間の自記式または他記式の調査(Ⅰ)のみ

調査の対象は、項目ごとに違います。(1)は、負担を考えて5名程度の利用者が対象で、利用者自身が回答できる人を優先してもかまわないとされています。(2)から(4)は、全ての介護職員が対象です。ただし(Ⅱ)で(2)(3)を報告する場合は、介護機器を入れたフロア等に勤務する介護職員が対象になります。(5)は、日中と夜間のそれぞれで複数人の介護職員が対象です。

(1)と(4)は、利用者または家族等、介護職員に必要な説明をして同意を得ること、その意向に応じて調査の対象としない運用が認められることも書かれています。

(2)の労働時間の把握については、次のとおり求められています。

労働時間の把握については、原則として、タイムカード、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間(ログインからログアウトまでの時間)の記録等の客観的な記録(賃金台帳に記入した労働時間数も含む)により把握する必要があること。

総業務時間と超過勤務時間は、調査対象者全体の平均値を小数点第1位まで報告します。加算を算定した初年度は、調査の月を「算定を開始した月」とするとされています(この部分は通知の注記から読めます)。

報告の様式は別紙1で、実績報告書には「人員配置状況」として「(常勤換算方式)利用者3(人):介護職員(人)」の欄もあります。勤務実績の整理については、勤務形態一覧表の記事も参考になります。

報告の提出方法について、通知は、電子申請・届出システムによるオンライン提出を予定しつつ、システム改修に期間を要するため当面は別の方法による、と書いています。これは令和6年3月時点の記載です。いまの提出方法は、自治体や最新の案内で確認してください。

報告のときには、委員会の議事概要も提出します。

報告にあたり、指定権者が委員会における検討状況を確認できるよう、当該委員会の議事概要を提出すること。

年に1回の報告が、国への報告であると同時に、指定権者(自治体)が委員会の状況を見る機会にもなっている、ということです。

(Ⅰ)の成果の確認:何をどう比べるか

(Ⅰ)を算定するには、取組の成果が確認される必要があります。

加算(Ⅰ)の算定開始に当たっては、生産性向上の取組の成果として、業務の効率化及びケアの質の確保並びに職員の負担軽減が行われていることの確認が必要である。

比べ方は、(Ⅱ)の機器を導入したあとの期間で決まっています。

具体的には、加算(Ⅱ)の要件となる介護機器の導入後、生産性向上の取組を三月以上継続した上で、6(1)から6(3)の項目について、当該介護機器の導入前後の状況を比較することにより、①から③のとおり成果が確認される必要がある。

①から③の内容は、次のとおりです。

項目求められる結果参考
利用者の満足度等(1)本取組による悪化がみられないこと通知7(1)①
業務時間(2)総業務時間と超過勤務時間が短縮していること通知7(1)②
年次有給休暇(3)維持または増加していること通知7(1)③

「悪化がみられないこと」の意味は、通知が補足しています。

「悪化がみられないこと」とは、比較により数値が下がっていないことをいうものであるが、数値の低下の要因が生産性向上の取組に伴うものではない事象によるものであることが明らかな場合については当該事象の発生した利用者について、調査の集計対象から除くことは差し支えない。

比較の対象は、原則として、導入前後ともに調査を受けている同一の利用者と介護職員です。育児・介護等の短時間勤務制度の利用などで、比較の期間中に勤務形態が変わる介護職員は、比較の対象から除くとされています。

最初から(Ⅰ)を算定できる場合

原則は、(Ⅱ)から(Ⅰ)へ移る流れです。

原則として、加算(Ⅱ)を算定し、一定の期間、加算(Ⅱ)の要件に基づいた取組を進め、加算(Ⅰ)に移行することを想定しているものであるが、生産性向上の取組を本加算の新設以前より進めている介護サービス事業所においては、最初から加算(Ⅰ)を算定することも可能である。

最初から(Ⅰ)を算定する場合の扱いは、事業所の状況で3つに分かれます。

  • 新設前から(Ⅰ)の要件を満たす取組を進めている事業所は、取組を始めた際のデータと現在の状況の比較が考えられる
  • 導入前の(1)のデータがない場合は、導入前から利用している利用者へのヒアリング調査等を行い、委員会で利用者の満足度等への影響がないことを確認することで足りるとされている
  • それ以外の事業所は、(Ⅱ)の機器を導入して3月以上取組を続けたうえで、導入前後のデータを提出する

届出と算定開始

(Ⅱ)の届出は、告示のとおり、電子情報処理組織を使って都道府県知事に対して、老健局長が定める様式で行います。

(Ⅰ)の算定を開始する場合の届出書類は、通知が次のように書いています。

加算(Ⅰ)の算定を開始する場合、「介護給付費算定に係る体制等に関する届出等における留意点について」(令和6年3月15日老発0315第1号)の別紙28「生産性向上推進体制加算に係る届出書」を届け出る際に、当該届出書の備考1に規定する各種指標に関する調査結果のデータとして別紙2を添付すること。

別紙2は「生産性向上推進体制加算(Ⅰ)の算定に関する取組の成果」の様式で、導入時期、利用者の満足度等の変化、総業務時間と超過勤務時間の変化、年次有給休暇の取得状況の確認欄があります。

届出の期限や、算定を開始できる月の決まりは、この記事で確かめた通知からは決まりません。体制等の届出の一般的な流れは、処遇改善加算の実績報告の記事など別の記事でも、考え方を整理しています。自治体の案内で、提出期限を確かめてください。

記録として残すもの

通知の文言から、記録としてそろえておくものが読み取れます。次の表は、通知の文言に基づく整理です。

残すもの通知の文言から言えること区分
委員会の議事概要報告時に提出する。三月に一回以上の開催の確認にもなる通知
機器の不具合チェックあらかじめ時間を定めて確認する仕組みを設ける通知
ヒヤリ・ハット事例等機器の使用に起因する事例の原因分析と再発防止策通知
研修の実施記録使用方法の講習や、ヒヤリ・ハットの周知・実習通知
労働時間の客観的な記録タイムカードなどの客観的な記録で把握する通知
同意の記録見守り機器の設置や調査の対象について利用者・家族・職員の同意を得る通知
導入前の調査データ(Ⅰ)の成果の確認で、導入前後の比較に使う通知

「研修の実施記録」や「同意の記録」などの様式は、通知には書かれていません。どのような形式で残すかは、事業所が決めることになります。以下は弊社の整理です。

  • 同意の記録は、同意を得た日と、同意しなかった人(調査の対象にしない人)を、後から数えられる形で残す
  • 導入前の調査は、機器を入れる前に実施日を決めておく。導入後に気づくと、比較ができなくなる((Ⅰ)を目指す場合に、特に注意したい点です)

算定できない場合・よくある誤り

通知に根拠があるものだけを挙げます。

  • (Ⅰ)と(Ⅱ)を同時に算定する

加算(Ⅰ)及び加算(Ⅱ)を同時に算定することはできないものである。

  • (Ⅰ)で、機器が3種類そろっていない、見守り機器が全居室に設置されていない、インカムなどの②の機器を同じ時間帯に勤務する全介護職員が使っていない
  • 委員会を三月に一回以上開いていない
  • 事業年度ごとの実績データを報告していない
  • (Ⅱ)から(Ⅰ)へ移るときに、機器の導入後3月以上の取組を続けていない、または(1)から(3)の成果(悪化がみられない・業務時間の短縮・休暇の維持または増加)が確認されていない

このほかに、算定を始める前の調査をしていなかった場合に何が認められるかは、通知が示す範囲(ヒアリング調査等)以外は、この記事で確かめた通知からは決まりません。

令和8年6月の改定と、処遇改善加算との関係

令和8年6月施行の改定では、介護職員等処遇改善加算の一部の区分の基準に、生産性向上推進体制加算を算定していることが、選択肢の1つとして入りました。令和8年3月の厚生労働省告示第87号の新旧対照表で確かめた範囲を整理します。

新旧対照表は改正後と改正前の列が並ぶ形なので、ここでは改正後の文言だけを引用します。

短期入所生活介護の場合

短期入所生活介護費における介護職員等処遇改善加算では、(Ⅰ)ロの基準が新設されています(新旧対照表に「新設」の印があります)。その基準の1つに、次の定めがあります。

⑵次に掲げる基準のいずれかに適合すること。㈠短期入所生活介護費における生産性向上推進体制加算(Ⅰ)又は(Ⅱ)を算定していること。㈡ケアプランデータ連携システムを利用していること。㈢連携推進法人に所属していること。

3つのうちどれか1つに適合すればよい、という書き方です。生産性向上推進体制加算の算定は、その選択肢の1つにあたります。(Ⅰ)と(Ⅱ)のどちらでもかまいません。

同じ短期入所生活介護の(Ⅱ)ロも新設で、その基準の⑵は次のとおりです。

⑵ロ⑵に掲げる基準に適合すること。

(Ⅰ)ロの⑵と同じ基準を求める、という読み方になります。

ほかのサービスで確かめられた箇所

抜粋から読めたサービスと区分を表にします。

サービス区分いずれかの基準
短期入所生活介護(Ⅰ)ロ、(Ⅱ)ロ生産性向上加算の算定、ケアプランデータ連携システムの利用、連携推進法人への所属
特定施設入居者生活介護(Ⅰ)ロ、(Ⅱ)ロ生産性向上加算の算定、連携推進法人への所属
小規模多機能型居宅介護(Ⅰ)ロ、(Ⅱ)ロ生産性向上加算の算定、ケアプランデータ連携システムの利用、連携推進法人への所属

特定施設入居者生活介護の(Ⅰ)ロには、次の定めがあります。

⑵次に掲げる基準のいずれかに適合すること。㈠特定施設入居者生活介護費における生産性向上推進体制加算(Ⅰ)又は(Ⅱ)を算定していること。㈡連携推進法人に所属していること。

小規模多機能型居宅介護の(Ⅰ)ロには、次の定めがあります。

⑵次に掲げる基準のいずれかに適合すること。㈠小規模多機能型居宅介護費における生産性向上推進体制加算(Ⅰ)又は(Ⅱ)を算定していること。㈡ケアプランデータ連携システムを利用していること。㈢連携推進法人に所属していること。

どちらも(Ⅱ)ロは「(Ⅰ)ロの⑵と同じ基準」という形で書かれています。サービスによって、選択肢の数と中身が違う点に注意が必要です。特定施設入居者生活介護の選択肢には、ケアプランデータ連携システムは入っていません。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護費の(Ⅰ)ロの選択肢は、ケアプランデータ連携システムの利用と連携推進法人への所属の2つで、生産性向上推進体制加算は入っていません。

読むときの注意

  • この表は、今回確かめた3か所と、定期巡回・随時対応型訪問介護看護費の箇所から読める範囲です。(Ⅲ)以下の区分や、ここに挙がっていないサービスの基準は、この記事では確かめていません
  • 認知症対応型共同生活介護費と地域密着型特定施設入居者生活介護費は、特定施設入居者生活介護の基準を準用し、一部を読み替える形の定めが見えますが、読み替えの全体は抜粋に入っていません。選択肢は書きません
  • 処遇改善加算の(Ⅰ)ロ・(Ⅱ)ロは、ほかの基準(⑴で挙がる(Ⅰ)の基準など)にも適合する必要があります。この記事は生産性向上推進体制加算が出てくる⑵だけを扱います
  • 処遇改善加算の届出の考え方や、区分ごとの要件は、最新の告示・通知とQ&Aで、サービスごとに確かめてください

生産性向上推進体制加算を算定しているかどうかが、処遇改善加算の区分の選択肢に関わる、ということです。処遇改善加算の実績報告や職場環境等要件の考え方は、職場環境等要件の記事でも整理しています。

日々の記録・台帳でどう満たすか(弊社の整理)

ここからは、通知の文言を、日々の運用に当てはめた弊社の整理です。個別の判断は、自治体にご確認ください。

  1. 機器の導入と導入前の調査の時期を、台帳に残す。 導入日、機器の種類(見守り機器・インカム等・記録ソフト)、設置した居室を一覧にする。(Ⅰ)を目指すなら、導入前の調査実施日も入れる
  2. 委員会の開催日と議事概要を、年度の最初に予定表にする。 三月に一回以上の開催を、年4回以上の予定として先に決める
  3. 機器の不具合チェックの記録を、日々の業務の中に組み込む。 時間を定めた確認を、日誌などに書く欄で残す
  4. 10月の勤怠データを、報告の時期に困らない形で保存する。 総業務時間・超過勤務時間・年次有給休暇の取得日数を、職員ごとに出せるようにしておく
  5. 調査の対象者と同意の状況を、名簿にする。 調査の対象にしない人も含めて、後から確かめられるようにする

拠点が複数ある法人では、委員会の議事概要、機器の導入状況、勤怠の集計、同意の記録が、事業所ごとにばらばらの様式で管理されがちです。法人本部で同じ様式にそろえておくと、年1回の報告の準備が楽になります。

この記事で確かめていないこと

  • 令和7年中の通知改正の反映(令和6年度改定時の新旧対照表を見ています)
  • 処遇改善加算の(Ⅲ)以下の区分や、抜粋に挙がっていないサービスの基準(告示第87号で確かめたのは、短期入所生活介護・特定施設入居者生活介護・小規模多機能型居宅介護・定期巡回・随時対応型訪問介護看護の箇所)
  • 各サービスの単位数のうち、上の表にないもの
  • 委員会の経過措置の現在の取扱い、届出の期限、算定開始月の決まり
  • 報告書の提出方法の現在の取扱い(令和6年3月時点では、当面は別の方法とされていた)

まとめ

  • 生産性向上推進体制加算は、委員会・機器の導入・業務改善・年1回の実績データ報告がそろって算定できる加算
  • 単位数は、(Ⅱ)が1月につき10単位、(Ⅰ)が1月につき100単位。同時には算定できない
  • (Ⅱ)は機器1つ以上、(Ⅰ)は3種類すべて(見守り機器は全居室)で、(Ⅰ)は成果の確認と職員間の役割分担が必要
  • 委員会は三月に一回以上開き、議事概要を報告時に提出する
  • 報告する項目は、(Ⅱ)が(1)〜(3)、(Ⅰ)が(1)〜(5)
  • 成果の確認は、機器の導入後3月以上取組を続けたうえで、満足度の悪化なし・業務時間の短縮・年次有給休暇の維持または増加を、導入前後で比べる
  • 令和8年6月改定で、処遇改善加算の(Ⅰ)ロ・(Ⅱ)ロの基準の選択肢に、この加算を算定していることが入った。ただしサービスごとに選択肢の中身が違い、確かめたのは一部のサービスだけ。最新の告示と通知で確認する

参考にした一次情報

基本的考え方の通知は令和6年3月29日付けの改正を反映した版、留意事項通知は令和6年度改定時の新旧対照表(抄)、算定構造は令和8年6月改定反映版を見ています。令和7年中の通知改正の反映は確認できていません。本記事は通知の構造を整理したもので、個別の事業所の算定の可否を判断するものではありません。具体的な判断は、自治体と最新のQ&Aにご確認ください。


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阪本翔太

阪本翔太

奈良県の中小企業診断士 & ITストラテジスト。 公的機関や大学などで講師もしています。 地方でがんばる人をITで後押ししたい。

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