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賃金台帳の保存期間|5年と3年の関係と起算日を労働基準法から読む

退職した職員の賃金台帳は、いつまで取っておけばよいのか。法人の書庫やサーバーを整理しようとして、そう迷った経験のある事務担当者の方は多いと思います。調べると「5年」と書いてあるページもあれば、「3年」と書いてあるページもあります。出勤簿やタイムカードはどうなのか、数え始めるのはいつからなのか、という疑問も続けて出てきます。

この記事では、労働基準法の第107条から第109条、附則第143条、労働基準法施行規則の第56条などの文言を順に読み、「5年」と「3年」がなぜ両方出てくるのか、起算日はどう決まっているのかを整理します。条文から決まることと、条文だけでは決まらないことは分けて書きます。介護保険の指定基準にある記録の保存とは別の義務である点にも、最後に触れます。

先に結論

  • 保存期間の根拠は、労働基準法第109条です。労働者名簿、賃金台帳、雇入れ・解雇・災害補償・賃金その他労働関係に関する重要な書類を、五年間保存しなければならないと書かれています。
  • ところが附則第143条第1項が、第109条の「五年間」を、当分の間「三年間」と読み替えるとしています。本則は五年、附則で当分の間三年という二段構えです。
  • 起算日は書類ごとに違い、施行規則第56条第1項が5つに分けています。労働者名簿は死亡・退職・解雇の日、賃金台帳は最後の記入をした日、といった具合です。
  • 「出勤簿」という語は、この記事で確かめた条文の範囲には出てきません。出勤簿が第109条のどの書類に当たるかは、条文だけでは決まりません。
  • 施行規則には、第109条以外にも保存を定めた規定があります。附則第71条は、そのうち第17条第2項や第24条の7の「五年間」も当分の間「三年間」と読み替えます。一方、労働安全衛生規則の労働時間の状況の記録は、読み替えではなく本則で三年間です。

第109条は「五年間」:本則から読む

まず、保存の義務を定めた第109条です。

使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。

義務を負うのは「使用者」で、保存すべき対象は、次の2つに大きく分かれます。

  • 労働者名簿と賃金台帳(名指しされている書類)
  • 雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類

この2つ目は、書類の種類を細かく列挙していません。「その他労働関係に関する重要な書類」という包括的な書き方です。この点は、後で出勤簿の話をするときに効いてきます。

労働者名簿と賃金台帳は「各事業場ごと」に作る

保存の対象となる名簿と台帳が、どういう単位で作られるのかも見ておきます。第107条は労働者名簿について、第108条は賃金台帳について、それぞれ次のように書いています。

使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日日雇い入れられる者を除く。)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。

使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。

どちらも「各事業場ごとに」調製すると書かれています。第107条は名簿を「各労働者について」調製するとし、日日雇い入れられる者を除いています。第108条は賃金台帳に、賃金支払の都度、遅滞なく記入するよう求めています。

この「各事業場ごとに」という単位が、社会福祉法人では実務上の悩みになりやすい点です。入所施設、通所事業所、訪問系の事業所、法人本部と、拠点が分かれている法人では、台帳をどの単位で作り、どこに置くのかを決めておく必要があります。ただし、この記事で確かめた条文には、「事業場」の範囲(施設単位か、法人全体か)を定義した文言はありません。法人の中の拠点がそれぞれ事業場に当たるのかどうかは、ここでは決めずに、後の「条文だけでは決まらないこと」に回します。

附則第143条が「五年間」を「三年間」に読み替える

次に、附則です。附則第143条第1項は、こう書いています。

第百九条の規定の適用については、当分の間、同条中「五年間」とあるのは、「三年間」とする。

つまり、第109条を適用するときは、当分の間、条文中の「五年間」を「三年間」に置き換えて読む、という意味です。本則の第109条そのものは「五年間」のまま残っています。そのうえで、「当分の間」は附則で三年に読み替える、という二段構えになっています。

ここで、2つの表現を区別しておくと混乱しません。

  • 本則:第109条は「五年間」
  • 附則:第143条第1項が、当分の間は「三年間」と読む

「5年と書いてあるページ」は本則を、「3年と書いてあるページ」は附則による読み替えを、それぞれ見ていると考えられます。どちらも条文の文言としては実在します。

なお、附則第143条は、同じ条の中で第114条と第115条の適用についても、当分の間の読み替えを定めています。この記事は保存期間が主題なので、第114条・第115条の読み替えの中身は取り上げません。

「当分の間」がいつまで続くのか、読み替えがいつ終わるのかは、この記事で確かめた条文からは分かりません。条文は期限を示さず、「当分の間」とだけ書いています。この点は書かないことにします。

名指しされた書類と、「出勤簿」の位置

では、出勤簿やタイムカードは、第109条のどの書類に当たるのでしょうか。

先に事実を整理します。第109条が名指ししているのは、労働者名簿と賃金台帳です。そのほかは「雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類」と、包括的に書かれています。第109条にも、第107条・第108条にも、施行規則第53条から第56条にも、「出勤簿」という語は出てきません。

そのため、出勤簿が第109条のどこに当たるのかは、条文からは決まりません。読み方としては、「その他労働関係に関する重要な書類」に当たると読むのが自然かもしれませんが、条文がそう書いているわけではなく、断定はできません。

もう1つ、賃金台帳との関係を確かめておきます。施行規則第54条第1項は、賃金台帳に記入すべき事項として、賃金計算期間、労働日数、労働時間数などを挙げています。賃金台帳には、労働日数と労働時間数の記入欄があるわけです。ただし、その記入のもとになる出勤簿やタイムカードを、台帳とは別の書類として保存しなければならないのか、台帳に記入された事項で足りるのかは、この条文の文言からは読み取れません。

「タイムカード」という語が出てくる条文

「タイムカード」という語は、労働基準法と施行規則の抜粋には出てきませんが、労働安全衛生規則の第52条の7の3に出てきます。第1項は、次のように書いています。

法第六十六条の八の三の厚生労働省令で定める方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする。

これは、労働時間の状況を把握する方法の例として、タイムカードによる記録などを挙げた規定です。保存期間を定めた文言ではありません。保存期間は、同条の第2項に別に書かれています。これは後の節で読みます。

つまり、「タイムカード」は、労働時間の状況の把握の方法として名前が出てくるのであって、第109条の保存の対象として名指しされているわけではありません。

起算日は書類ごとに5つに分かれる

保存期間は「いつから」数えるのでしょうか。これを定めているのが、施行規則第56条です。第1項は、次のように書いています。

法第百九条の規定による記録を保存すべき期間の計算についての起算日は次のとおりとする。
一 労働者名簿については、労働者の死亡、退職又は解雇の日
二 賃金台帳については、最後の記入をした日
三 雇入れ又は退職に関する書類については、労働者の退職又は死亡の日
四 災害補償に関する書類については、災害補償を終わつた日
五 賃金その他労働関係に関する重要な書類については、その完結の日

条文のとおり表にすると、次のようになります。

書類起算日規則第56条第1項
労働者名簿労働者の死亡、退職又は解雇の日第一号
賃金台帳最後の記入をした日第二号
雇入れ又は退職に関する書類労働者の退職又は死亡の日第三号
災害補償に関する書類災害補償を終わつた日第四号
賃金その他労働関係に関する重要な書類その完結の日第五号

ここから読み取れることを、いくつか挙げます。

  • 労働者名簿は、職員が在職している間は起算日が来ません。退職・解雇・死亡の日が起算日です。
  • 賃金台帳は、「最後の記入をした日」が起算日です。台帳は賃金の支払の都度、記入していくものなので、その人についての最後の記入が起算日になります。
  • 名簿と台帳では、起算日の考え方が違います。1人の職員について、名簿と台帳とでは、保存期間が切れる日が同じとは限りません。

支払期日が遅いときは、支払期日が起算日

第56条には第2項があり、賃金台帳と「賃金その他労働関係に関する重要な書類」について、例外を定めています。

前項の規定にかかわらず、賃金台帳又は賃金その他労働関係に関する重要な書類を保存すべき期間の計算については、当該記録に係る賃金の支払期日が同項第二号又は第五号に掲げる日より遅い場合には、当該支払期日を起算日とする。

読み方を整理します。

  • 対象は、賃金台帳と、賃金その他労働関係に関する重要な書類です。
  • 第1項第二号の「最後の記入をした日」、または第五号の「その完結の日」より、その記録に係る賃金の支払期日のほうが遅いときは、その支払期日が起算日になります。

たとえば、賃金台帳に最後の記入をした日よりも、その記録に係る賃金の支払期日のほうが後の日である場合は、記入した日ではなく、支払期日から数え始めます。支払期日が記入した日以前なら、この例外は働きません。

「完結の日」は何を指すのか

第5号の「その完結の日」は、書類の種類によって何を指すかが変わりえます。たとえば、賃金に関する書類であれば、賃金の支払がすべて終わった日と読めそうに思えますが、この記事で確かめた条文には、「完結」の意味を説明した文言はありません。個々の書類について完結の日がいつなのかは、条文だけでは決まりません。

第109条以外にも、保存を定めた規定がある

労働基準法施行規則と労働安全衛生規則には、第109条とは別に、保存の期間を定めた規定があります。この記事で確かめたのは、次の4つです。

36協定の健康・福祉確保措置の記録(規則第17条第2項)

規則第17条第2項は、次のように書いています。

使用者は、前項第五号に掲げる措置の実施状況に関する記録を同項第一号の有効期間中及び当該有効期間の満了後五年間保存しなければならない。

「前項第五号に掲げる措置」は、同じ条の第1項第5号にある「限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置」です。第1項第1号は、法第36条第1項の協定の有効期間の定めです。数え始めは、協定の「有効期間の満了後」ですから、第109条の起算日の規定とは別の書き方になっています。

年次有給休暇管理簿(規則第24条の7)

規則第24条の7は、年次有給休暇を与えたときに、時季、日数及び基準日を労働者ごとに明らかにした書類(「年次有給休暇管理簿」)を作成し、次のように保存するよう求めています。

当該有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後五年間保存しなければならない。

こちらも、起算の仕方は「有給休暇を与えた期間の満了後」で、第109条の名簿・台帳の起算日とは別の書き方です。

附則第71条による読み替え

これらの「五年間」は、施行規則の附則第71条によって、当分の間「三年間」と読み替えられます。附則第71条は、次のように書いています。

第十七条第二項、第二十四条の二の二第三項第四号、第二十四条の二の二の二、第二十四条の二の三第三項第四号、第二十四条の二の三の二、第二十四条の二の四第二項(第三十四条の二の三において準用する場合を含む。)、第二十四条の七及び第三十四条の二第十五項第四号の規定の適用については、当分の間、これらの規定中「五年間」とあるのは、「三年間」とする。

列挙されている規定の中に、第17条第2項と第24条の7の両方が入っていることを確認できます。ほかにも、第24条の2の2第3項第4号など、複数の規定が並んでいます。この記事では、列挙された規定のうち、第17条第2項と第24条の7だけを取り上げています。

なお、附則第71条が読み替えるのは、列挙された規定の中の「五年間」です。第109条の「五年間」を読み替えているのは、先に見た労働基準法の附則第143条第1項です。法律の読み替えは法律の附則、省令の読み替えは省令の附則と、別々に定められていることが分かります。

労働時間の状況の記録(労働安全衛生規則第52条の7の3第2項)

労働安全衛生規則第52条の7の3の第2項は、次のように書いています。

事業者は、前項に規定する方法により把握した労働時間の状況の記録を作成し、三年間保存するための必要な措置を講じなければならない。

ここは、先の3つとは仕組みが違います。「五年間」を「三年間」と読み替えるのではなく、条文そのものが、最初から「三年間」と書いています。附則第71条は労働基準法施行規則の附則ですので、この安衛則の規定の期間を読み替えているわけでもありません。

もう1つ、書き方の違いにも気づきます。第109条などは「保存しなければならない」ですが、第52条の7の3第2項は「三年間保存するための必要な措置を講じなければならない」です。また、義務を負うのは、労働基準法では「使用者」、安衛則では「事業者」と書かれています。この言い回しの違いが、実務の何を変えるのかは、この記事で確かめた条文からは決まりません。労働時間の状況の記録そのものについては、長時間労働者の面接指導を扱った記事で整理しています。

4つの規定を並べると

ここまでの4つを表にまとめます。

規定本則の期間当分の間
法第109条五年間三年間(附則第143条第1項)
規則第17条第2項有効期間中及び満了後五年間満了後三年間(附則第71条)
規則第24条の7期間中及び満了後五年間満了後三年間(附則第71条)
安衛則第52条の7の3第2項三年間読み替えなし(本則で三年間)

「3年」と「5年」が混在して見える原因は、条文ごとに本則の期間と読み替えの有無が違うことにあります。保存期間を調べるときは、書類の名前だけでなく、どの条文に基づく書類なのかを先に押さえておくと整理しやすくなります。

名簿・台帳・管理簿は「あわせて調製」できる

施行規則第55条の2は、次のように書いています。

使用者は、年次有給休暇管理簿、第五十三条による労働者名簿又は第五十五条による賃金台帳をあわせて調製することができる。

年次有給休暇管理簿、労働者名簿、賃金台帳の3つは、あわせて1つの書類として作ってよい、という意味です。

ただし、ここで1つ気をつけたい点があります。先に見たとおり、名簿は退職等の日、台帳は最後の記入をした日、管理簿は期間満了後と、3つの書類で起算の仕方が違います。あわせて調製した書類の保存期間を、どの書類の起算日で数えるのかは、この記事で確かめた条文には書かれていません。あわせて調製する場合の保存期間の数え方は、条文だけでは決まりません。

小規模な事業での記入事項の違い

名簿の記入事項については、規則第53条第2項に、事業の規模による違いがあります。

常時三十人未満の労働者を使用する事業においては、前項第三号に掲げる事項を記入することを要しない。

第1項第3号は「従事する業務の種類」です。常時三十人未満の労働者を使用する事業では、名簿に従事する業務の種類を記入しなくてよい、ということです。小規模な事業所を多く持つ法人では、事業所ごとの名簿の様式に差が出る場合があります。ただし、これは記入事項の話であり、保存期間の長さには関係しません。

守らなかった場合:第120条第1号

保存を守らないと、どうなるのでしょうか。第120条は、罰則を定めています。

次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

その第1号の末尾には、次の文言があります。

第百六条から第百九条までの規定に違反した者

第106条から第109条までには、第107条(労働者名簿)、第108条(賃金台帳)、第109条(記録の保存)が含まれます。したがって、第109条の規定に違反した者は、三十万円以下の罰金の対象になる、と条文から読めます。名簿や台帳を調製しなかった場合や、記入しなかった場合も、同じ第1号に挙げられた条の違反に当たります。

一方、個々の事案で実際にどのように扱われるのかは、条文からは決まりません。ここでは、条文が罰則を置いていること、その範囲に第109条が入っていることまでを確認します。

法人本部で人事・給与をまとめている場合

社会福祉法人では、人事・給与を法人本部でまとめて処理し、各事業所には必要最小限の書類しか置かない運用も珍しくありません。この場合、保存はどのように考えればよいでしょうか。

条文から読み取れる範囲を整理します。

  • 第107条と第108条は、調製の単位を「各事業場ごとに」としています。
  • 第109条は、保存の義務を定めていますが、どこで保存するのかについては、書いていません。
  • 施行規則にも、保存の場所を定めた文言は、この記事で確かめた範囲には見当たりません。

つまり、「事業所ごとに作る」ことと、「本部でまとめて保管する」ことが両立するのかどうかは、この記事で確かめた条文だけでは決まりません。条文から言えるのは、第107条・第108条が各事業場ごとの調製を求め、第109条が保存を求めている、というところまでです。実際に本部で一括保管している場合は、事業場ごとに調製された台帳が区別できる形で残っているかどうかを確認しておくとよいでしょう。

また、事業場の単位や、労働時間の通算といった別の論点とのつながりは、労働時間の通算を扱った記事でも整理しています。台帳の単位を考えるときの参考にしてください。

介護保険の指定基準の記録とは、別の義務

社会福祉法人の中には、介護保険や障害福祉サービスの事業所を運営しているところが多くあります。その場合、「記録の保存」という言葉が、労働基準法のものと、指定基準のものとで混ざりやすくなります。

たとえば、指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準の第29条第2項は、次のように書いています。

指定居宅介護支援事業者は、利用者に対する指定居宅介護支援の提供に関する次の各号に掲げる記録を整備し、その完結の日から二年間保存しなければならない。

ここに挙がっているのは、居宅サービス計画、アセスメントの結果の記録、サービス担当者会議等の記録など、利用者に対する支援の提供に関する記録です。保存の期間は「完結の日から二年間」で、これは、労働基準法第109条の期間とも、起算日とも別のものです。同じ条の第1項は、従業者、設備、備品及び会計に関する諸記録を整備しておくよう求めていますが、保存の期間は、この記事で確かめた範囲には書かれていません。

労働基準法の保存と、指定基準の記録の保存は、別の法令に基づく別の義務です。同じ事業所の書類であっても、根拠となる法令が違えば、期間も起算日も別に見る必要があります。なお、居宅介護支援以外のサービスの基準は、この記事では確かめていないため、取り上げません。

条文だけでは決まらないこと

ここまで読んで、「条文から言えること」と「言えないこと」が分かれたと思います。言えないことを整理します。

論点決まらない理由
出勤簿・タイムカードの位置づけ第109条は書類を包括的に書き、出勤簿の語は条文に無い
「事業場」の範囲第107条・第108条は「各事業場ごとに」と書くだけである
「完結の日」の意味規則第56条第1項第五号は、完結の意味を書いていない
あわせて調製した書類の起算日規則第55条の2は、保存期間の数え方を定めていない
本部での一括保管の可否保存の場所について、確かめた条文に文言がない
「当分の間」の終期附則第143条第1項・附則第71条は、期限を示していない
第109条と安衛則の記録の重なり条文の言い回しの違いが、実務に与える影響は書かれていない

この表のうち、実務で最初に確認したいのは、事業場の範囲と、出勤簿などの扱いです。どちらも条文の文言だけでは決まらないので、行政機関の案内や専門家に確認したうえで、法人としての取扱いを文書にしておくと、後から迷いません。

実務で確認しておきたいこと

条文の読み方を踏まえて、法人本部で押さえておきたい点を整理します。

  • 保存している書類を、根拠となる条文ごとに仕分ける。第109条の書類、施行規則の個別の規定の書類、安衛則の記録、介護保険などの指定基準の記録に分けると、期間と起算日を確認しやすくなります。
  • 書類ごとに、起算日を決めて台帳に書いておく。名簿は退職等の日、賃金台帳は最後の記入をした日(支払期日が遅いときは支払期日)、といった具合です。
  • 「当分の間」の読み替えは、附則に基づくものだと理解しておく。本則の五年間を前提に運用している場合も、三年間を前提にしている場合も、どちらの条文に基づくのかを説明できるようにしておきます。
  • 事業場ごとに台帳を調製し、法人本部で保管している場合は、事業場ごとに区別して取り出せるかを確認する。
  • 出勤簿・タイムカードなど、条文に名前が出てこない書類の扱いを、法人としてどう決めているのか、文書で残しておく。

この記事で書いていないこと

この記事は、一次情報として確かめた条文の範囲にとどめました。次の論点は、確かめていないため書いていません。

  • 書類を電子データで保存してよいか、その方法
  • 退職者の書類の扱い、個人情報の廃棄の方法
  • 税法や社会保険に関する書類の保存期間
  • 「当分の間」の読み替えがいつ終わるのか
  • 保存期間の改正の経緯
  • 居宅介護支援以外の介護保険・障害福祉サービスの記録の保存期間
  • 自治体の条例による保存期間の違い

これらは、実務上は重要な論点ですが、この記事で引いた条文からは決まりません。個別に確認してください。

まとめ

  • 労働基準法第109条は、労働者名簿、賃金台帳、雇入れ・解雇・災害補償・賃金その他労働関係に関する重要な書類を、五年間保存するよう定めています。附則第143条第1項は、当分の間、その「五年間」を「三年間」と読み替えます。本則は五年、附則で当分の間三年という二段構えです。
  • 起算日は、施行規則第56条第1項が書類ごとに5つに分けています。名簿は死亡・退職・解雇の日、賃金台帳は最後の記入をした日です。賃金台帳などは、賃金の支払期日のほうが遅いときは、その支払期日が起算日になります(第2項)。
  • 「出勤簿」という語は、確かめた条文には出てきません。出勤簿が第109条のどの書類に当たるかは、条文だけでは決まりません。「タイムカード」は、労働安全衛生規則第52条の7の3で、労働時間の状況の把握方法として出てきます。
  • 施行規則の第17条第2項と第24条の7の「五年間」は、附則第71条で当分の間「三年間」と読み替えられます。労働時間の状況の記録は、読み替えではなく、安衛則の本則で三年間です。
  • 介護保険の指定基準の記録の保存は、労働基準法とは別の法令に基づく、別の義務です。期間も起算日も別に確認します。

参考にした一次情報


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阪本翔太

阪本翔太

奈良県の中小企業診断士 & ITストラテジスト。 公的機関や大学などで講師もしています。 地方でがんばる人をITで後押ししたい。

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