共同生活援助(グループホーム)や施設入所支援の現場では、「補足給付」という言い方が当たり前のように使われます。自治体の案内にも、事務の会話にも出てきます。
ところが、障害者総合支援法の本則にも、施行令にも、施行規則にも、「補足給付」という語は1回も出てきません。 条文上の名前は特定障害者特別給付費です。
この記事では、2026年10月16日に取得した障害者総合支援法(以下「法」)、同法施行令(以下「令」)、同法施行規則(以下「規則」)の本則の条文だけを読みます。呼び名の違いを手がかりに、何に対して、誰が、どう支給するのかを確かめます。金額・自治体独自の助成・申請様式は条文に無いので、最後の節で正直に挙げます。
「補足給付」は条文に無い言葉です
取得した3つの本則(法・令・規則)を走査して、「補足給付」を数えました。結果は3つとも0回です。同じ走査で「特定障害者特別給付費」は法で19回、令で17回、規則で23回見つかったので、走査そのものは機能しています。
つまり、書類や条文を探すときは次のように読み替える必要があります。
| 現場での呼び方 | 条文上の名前 |
|---|---|
| 補足給付 | 特定障害者特別給付費(法第34条) |
| 補足給付の特例 | 特例特定障害者特別給付費(法第35条) |
自治体の資料や報酬の資料で「補足給付」と書かれていても、法的な根拠を確かめるときは条文の名前で探すのが近道です。
対象は「食事」か「居住」の費用です
家賃の補助という理解が広く持たれていますが、条文が対象にしているのは家賃だけではありません。法第34条第1項は、食事の提供に要した費用または居住に要した費用と書いています。長い条文なので、2つに分けて引用します。まず前半部分を引用します。
市町村は、施設入所支援、共同生活援助その他の政令で定める障害福祉サービス(以下この項において「特定入所等サービス」という。)に係る支給決定を受けた障害者のうち所得の状況その他の事情をしん酌して主務省令で定めるもの(以下この項及び次条第一項において「特定障害者」という。)が、
次に、支給の部分です。
当該特定障害者に対し、当該指定障害者支援施設等又は共同生活援助を行う住居における食事の提供に要した費用又は居住に要した費用(同項において「特定入所等費用」という。)について、政令で定めるところにより、特定障害者特別給付費を支給する。
主語は市町村で、支給される相手は特定障害者です。読み取れる点を整理します。
- 対象のサービス:施設入所支援、共同生活援助、その他の政令で定める障害福祉サービス
- 対象の費用:食事の提供に要した費用、または居住に要した費用(条文はこれを「特定入所等費用」と呼びます)
- 金額の決め方:「政令で定めるところにより」。金額は法の中に書かれていません
なお、取得した法と令の本則には、「家賃」という語は出てきません。条文の言葉は「居住に要した費用」です。
食事も居住も、介護給付費の側から外れている費用です
少し視点を変えて、介護給付費・訓練等給付費の条(法第29条第1項)を見ます。サービスの費用を支給する際、括弧書きで一部の費用を外しています。
食事の提供に要する費用、居住若しくは滞在に要する費用その他の日常生活に要する費用又は創作的活動若しくは生産活動に要する費用のうち主務省令で定める費用(以下「特定費用」という。)
介護給付費・訓練等給付費は、この特定費用を除いた費用について支給されます。並べて読むと、食事や居住に要する費用が介護給付費の対象の外に置かれ、その費用に別の給付として立てられているのが特定障害者特別給付費、という位置関係が見えます。ただし、特定費用の範囲は「主務省令で定める費用」とされており、どの費用が特定費用に当たるかは、取得した条文だけでは確定できません。
対象サービスも二段構えです
対象のサービスは、法では「施設入所支援、共同生活援助その他の政令で定める障害福祉サービス」と書かれています。政令側(令第20条)はこうです。
法第三十四条第一項に規定する政令で定める障害福祉サービスは、施設入所支援、共同生活援助その他これらに類するものとして厚生労働省令で定めるものとする。
法が政令に委ね、政令がさらに厚生労働省令に委ねています。 施設入所支援と共同生活援助は名前が挙がっていますが、「これらに類するもの」が何かは、取得した条文には書かれていません。
額の組み立ては、施設と共同生活援助で違います
金額そのものは条文に書かれていませんが、組み立て方は令第21条第1項が書いています。2つの区分があります。
| 受けたサービスの区分 | 令第21条第1項 | 対象になる費用 |
|---|---|---|
| 指定障害者支援施設等から受けた特定入所等サービス(第一号) | 食費等の基準費用額から、食費等の負担限度額を控除して得た額 | 食事の提供及び居住 |
| 指定障害福祉サービス事業者から受けた特定入所等サービス(第二号) | 居住費の基準費用額に相当する額 | 居住のみ |
法第34条では「食事の提供に要した費用又は居住に要した費用」とまとめて書かれていますが、共同生活援助を行う住居について令が書いているのは、居住に要する費用の基準費用額です。 令第21条第1項第二号は次のとおりです。
共同生活援助を行う住居における居住に要する平均的な費用の額を勘案して厚生労働大臣が定める費用の額(次項において「居住費の基準費用額」という。)に相当する額(その額が現に居住に要した費用の額を超えるときは、当該現に居住に要した費用の額)
読みどころは括弧書きです。基準費用額が、現に居住に要した費用の額を超えるときは、現に要した額が上限になります。 基準費用額も、負担限度額も、「厚生労働大臣が定める」とされています。つまり、具体的な金額は大臣が定める額の側にあり、条文には出てきません。 令第21条第2項は、費用の状況が著しく変動したときは、厚生労働大臣が速やかに改定しなければならないと定めています。
施設の場合には、もう1つ重要な規定があります。令第21条第3項は、特定障害者が指定障害者支援施設等に対し、食事の提供及び居住に要する費用として、基準費用額を超える金額を支払った場合には、特定障害者特別給付費を支給しないと書いています。ここで読めるのは施設に対する支払の場合で、共同生活援助についての同様の定めは、取得した条文には見当たりません。
「特定障害者」は誰か:法は枠だけを置き、中身は省令です
法第34条第1項の括弧書きは、特定障害者を「所得の状況その他の事情をしん酌して主務省令で定めるもの」と定義しています。中身は法の中では決まりません。 規則第34条がその受け皿です。
法第三十四条第一項の主務省令で定める障害者は、次の各号に掲げる障害者の区分に応じ、当該各号に定める者とする。
各号は、支給決定を受けているサービスで分かれています。
| 号 | 支給決定を受けたサービス | 特定障害者になる者 |
|---|---|---|
| 一 | 施設入所支援 | 二十歳未満である者、及び二十歳以上であって令第十七条第四号に掲げる者に該当するもの |
| 二 | 共同生活援助、または令第二十条に規定する厚生労働省令で定めるもの | 令第十七条第四号に掲げる者に該当するもの |
施設入所支援では二十歳未満の者が含まれ、共同生活援助では令第17条第4号に該当する者だけ、という違いがあります。令第17条第4号に何が書かれているかは、今回取得した条文に含めていませんので、この記事では中身に踏み込みません。所得の区分に関わる部分と思われますが、条文だけでは判断できないので、所管の市町村の案内で確認してください。
本体(第34条)と特例(第35条)は、書き方が違います
名前の似た2つを分けます。法第35条は特例特定障害者特別給付費です。
| 特定障害者特別給付費(第34条) | 特例特定障害者特別給付費(第35条) | |
|---|---|---|
| 書き方 | 「支給する」 | 必要があると認めるときは「支給することができる」 |
| 場面 | 支給決定の有効期間内に、施設に入所し、または共同生活援助の住居に入居して特定入所等サービスを受けたとき | 次の2つの場合 |
| 対象の場所 | 指定障害者支援施設等、共同生活援助を行う住居 | 指定障害者支援施設等、基準該当施設、共同生活援助を行う住居 |
特例の2つの場合は、法第35条第1項に書かれています。
- 第一号:申請(法第20条第1項)をした日から支給決定の効力が生じた日の前日までの間に、緊急その他やむを得ない理由により指定障害福祉サービス等を受けたとき
- 第二号:基準該当障害福祉サービスを受けたとき
令第21条の3は、第21条を準用しています。基準該当施設に読み替える部分と、食費等の負担限度額が絡む括弧書きを外す読み替えがあります。本体は「支給する」、特例は「必要があると認めるときは支給することができる」という書き分けから、特例は自治体の判断が入る給付だと読めます。
お金が事業所に届く経路は、介護給付費の仕組みを準用しています
法第34条第2項は、次のように定めています。
第二十九条第二項及び第四項から第七項までの規定は、特定障害者特別給付費の支給について準用する。
準用されているのは、介護給付費の条(法第29条)のうち、次の部分です。
- 第2項:受給者証の提示
- 第4項:市町村が、支給すべき額の限度で、本人に代わって事業者等に支払うことができること
- 第5項:その支払があったときは、支給があったものとみなすこと
- 第6項・第7項:請求を審査の上支払うこと、審査と支払の事務を国民健康保険団体連合会に委託できること
「この場合において、必要な技術的読替えは、政令で定める」とされており、読替えの中身は取得した条文には含まれていません。事業所に入るお金の経路は、介護給付費と同じ型を準用していると読めます。請求を行う側の事務は、第3項が「主務省令で定める」と省令に委ねています。 同じ型の考え方は障害児通所給付費の記事でも整理しています。児童福祉法側にも、保護者への支給を市町村が代わって事業者に支払う、という同じ型が出てきます。
申請・額の変更・取消しは、規則の第34条の3・5・6にあります
手続は規則にあります。順に整理します。
申請(規則第34条の3第1項・第2項)
特定障害者特別給付費の支給を受けようとする特定障害者は、申請書を市町村に提出します。記載事項は次の3つです。
- 特定障害者の氏名、居住地、生年月日、個人番号及び連絡先
- 特定入所等サービスを受けている指定障害者支援施設等または事業者の名称
- 令第17条第4号に該当する旨
添付書類は、令第17条第4号に該当する者であることを証する書類、受給者証、そして区分に応じて次の書類です。
- 施設入所支援に係る支給決定を受けた特定障害者:食費等の負担限度額の算定のために必要な事項に関する書類
- 共同生活援助等に係る支給決定を受けた特定障害者:入居している共同生活援助を行う住居に係る居住に要する費用の額を証する書類
最初の書類については、市町村が公簿等で確認できるときは省略させることができる、というただし書きが付いています。共同生活援助の事業所にとっては、居住に要する費用の額を証する書類が出てくる点が実務に近い部分です。 書式は条文に無いので、市町村に確認してください。
決定後の記載(同条第3項)
市町村が支給の決定を行ったときは、次の2つを受給者証に記載します。
- 特定障害者特別給付費の額
- 特定障害者特別給付費を支給する期間
変更の届出(同条第4項・第5項)
その期間内に、申請の記載事項や額の算定に必要な事項に変更があったときは、特定障害者が届出書に受給者証を添えて市町村に提出します。変更を証する書類の添付も必要です。
額の変更(規則第34条の5第1項)
市町村は、特定障害者の所得の状況等に変更があったときは、第三十四条の三第三項第一号に掲げる事項の変更を行うことができる。
市町村が額を変更したときは、書面で通知し、受給者証の提出を求め、変更後に記載して返還します。
支給の取消し(規則第34条の6第1項)
市町村は、次の各号に掲げる場合には、特定障害者特別給付費及び特例特定障害者特別給付費(以下この条において「特定障害者特別給付費等」という。)の支給を行わないことができる。
場合は2つあります。支給を受ける必要がなくなったと認めるとき、そして、受給者証に記載された期間内に、他の市町村の区域内に居住地を有するに至ったと認めるときです。いずれも、書面で通知し、受給者証の提出を求める流れが第2項以下に書かれています。
不正があったときの規定も、法第8条に入っています
もう1点、事業者側に関わる規定です。法第8条第2項は、指定障害福祉サービス事業者等が偽りその他不正の行為により、介護給付費、訓練等給付費、特定障害者特別給付費などの支給を受けたときは、市町村等が、その支払った額につき返還させるほか、その返還させる額に百分の四十を乗じて得た額を支払わせることができる、と定めています。特定障害者特別給付費も、この規定の対象に名前が挙がっています。請求の根拠書類を整えておく理由の1つです。
この記事で書いていないこと
今回読んだ条文には、次の内容は書かれていません。
- 具体的な金額:基準費用額・負担限度額は、厚生労働大臣が定める額です。月額の目安なども、条文には出てきません
- 令第17条第4号の中身:特定障害者の要件が指す条文ですが、今回は取得していません
- 「これらに類するもの」の具体:令第20条が厚生労働省令に委ねている対象サービスの範囲
- 特定費用の範囲:どの費用が特定費用に当たるかは、主務省令に委ねられています
- 自治体独自の上乗せ助成や家賃助成:市町村ごとの制度は、法・令・規則の本則には出てきません
- 申請様式:規則は記載事項を挙げるだけで、様式は示していません
- 請求の締め日:請求の期限や、国保連合会での実務上の運用は条文に無い内容です
- 準用の読替えの中身:第34条第2項の「必要な技術的読替え」は政令に委ねられており、取得した条文に含まれていません
実際の取扱いは、所管の市町村の最新の案内と、厚生労働大臣が定める告示でご確認ください。
まとめ
- 現場で使われる「補足給付」は、法・令・規則の本則に0回。条文上の名前は特定障害者特別給付費(法第34条)
- 対象は食事の提供に要した費用または居住に要した費用(特定入所等費用)。家賃だけではない。共同生活援助について令第21条が書くのは居住費の基準費用額
- 金額は条文に無く、厚生労働大臣が定める基準費用額・負担限度額の側にある
- 対象サービスは、法から政令、政令から厚生労働省令へと二段構えで委ねられている(令第20条)
- 「特定障害者」の中身は、規則第34条が区分ごとに定める
- 本体は「支給する」、特例(法第35条)は「必要があると認めるときは支給することができる」。事業所への経路は介護給付費の型を準用(法第34条第2項)
- 申請・額の変更・取消しは規則第34条の3・第34条の5・第34条の6。受給者証には額と期間が記載される
参考にした一次情報
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)|e-Gov法令検索:第8条(不正利得の徴収)、第19条、第29条、第34条(特定障害者特別給付費の支給)、第35条(特例特定障害者特別給付費の支給)
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行令|e-Gov法令検索:第20条、第21条、第21条の3
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則|e-Gov法令検索:第34条、第34条の3、第34条の5、第34条の6
いずれも2026年10月16日に取得した本則の条文による。本記事は条文の構造を整理したもので、個別の支給の可否や金額を示すものではありません。具体的な取扱いは、所管の市町村の最新の案内をご確認ください。
受給者証の記載、事業所で一覧にできていますか
パレットテクノロジーズは、社会福祉法人様のデジタル化を「現地現物」で伴走支援しています。利用者ごとの受給者証の記載内容と有効期間、変更の届出状況を1つの台帳で追える状態に整えるところからご一緒します。ITに詳しい職員がいらっしゃらなくても大丈夫です。