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福祉サービス第三者評価|義務なのかを社会福祉法の条文で確かめる

「第三者評価は、もう受けていらっしゃいますか」

指導監査の準備をしているときや、自治体からの照会に答えているとき、あるいは新しく管理者になった職員から、こんなふうに聞かれて言葉に詰まったことはないでしょうか。受けていないと答えたら、何か指摘されるのだろうか。そもそも法律で決まっているのか、それとも「受けたほうがよい」程度の話なのか。手元の資料をひっくり返しても、はっきり書いてあるものが見つからない、という場面です。

検索窓に「福祉サービス 第三者評価」と入れると、候補の一番上に出てくる言葉は「義務」です。それだけ多くの方が、同じところで迷っているということだと思います。

そこで、この記事では、社会福祉法の条文と、厚生労働省が都道府県に宛てて出している指針の通知を根拠に、「第三者評価は義務なのか」という問いを、順番に確かめていきます。特に、次の3点を整理します。

  • 社会福祉法の本則に「第三者評価」という語が出てくるかどうか、そして根拠とされる第78条が事業者に何を求めているか
  • 第三者評価は、通知(指針)の中でどのような目的・位置づけの制度として書かれているか
  • 評価結果は誰が公表するのか、公表に事業所の同意は要るのか、評価機関の認証にはどんな期限があるのか

なお、この記事で扱うのは、社会福祉法の第78条と、福祉サービス第三者評価事業に関する指針の話です。介護保険の地域密着型サービスで求められる「自己評価・外部評価」は、根拠も性質も別の制度です。その違いは、記事の後半で切り分けます。

目次

まず結論:社会福祉法は、第三者評価を義務づけていない

先に答えを示します。

  • 社会福祉法の本則(全277条)に「第三者評価」という語は一度も出てこない。したがって、「社会福祉法で第三者評価が義務づけられている」という説明は成り立たない
  • 根拠として挙げられることの多い第78条第1項が求めているのは、「自らその提供する福祉サービスの質の評価を行うことその他の措置」を講ずること。しかも語尾は「努めなければならない」=努力義務で、第三者評価という特定の方法を名指ししてはいない
  • 第78条第2項は、事業者ではなく国に向けた規定。福祉サービスの質の公正かつ適切な評価の実施に資するための措置を講ずる努力義務が書かれている
  • では第三者評価はどこで決まっているのかというと、厚生労働省の通知(福祉サービス第三者評価事業に関する指針)。通知は、第三者評価を受けることを、経営者が行う質の向上のための措置の一環と位置づけ、積極的に受審することが望ましいとしている。つまり、義務ではなく任意の仕組み
  • 通知が書く制度の目的は、一義的には「個々の事業者が事業運営における問題点を把握し、サービスの質の向上に結びつけること」。利用者のサービス選択に役立つ情報になるのは「結果として」と整理されている
  • 評価結果の公表には、事業所の同意が要る。同意を得ていない評価結果は公表しない、と通知に書かれている
  • ただし、個別のサービスの運営基準が、別途「義務」として評価を課している場合がある。第三者評価とは別の制度なので、混同しない

ここからは、この結論を、条文と通知の文章に沿って確かめていきます。

社会福祉法の条文に「第三者評価」という語は一度も出てこない

最初に、事実として押さえておきたいことがあります。社会福祉法の本則(全277条)を機械的に検索すると、「第三者評価」という語は0件です。「評価」という語そのものは9件ありますが、「第三者評価」という形では、法律の条文のどこにも登場しません。

これは、少し意外に感じられるかもしれません。福祉サービス第三者評価という名前の制度が実際に運用されていて、都道府県ごとに評価結果が公表されているのに、その名前が法律の本則に書かれていないからです。

ここで大切なのは、「法律の本則に名前が出てこない」ということが、何を意味するかです。

  • 法律が「第三者評価を受けなければならない」と書いていれば、それは事業者への義務になる
  • 法律が「第三者評価」という手段に一切触れていなければ、少なくとも法律を根拠に第三者評価の受審を義務づけることはできない

つまり、第三者評価の受審が義務なのかどうかは、社会福祉法の本則の外で決まっているか、あるいは義務ではないか、のどちらかということになります。実際どちらなのかは、後の章で通知の文章を見て確かめます。

その前に、「法律が第三者評価に触れていないなら、第78条は何を求めているのか」を条文で確認しておきます。

第78条は第1項と第2項で、名宛人も求める内容も違う

第三者評価の根拠として引かれることが多いのが、社会福祉法第78条です。条の見出しは「福祉サービスの質の向上のための措置等」で、2つの項から成っています。この2つは、誰に向けた規定かが違います。

第1項:事業者に向けた、努力義務

第1項は、次のとおりです。

社会福祉事業の経営者は、自らその提供する福祉サービスの質の評価を行うことその他の措置を講ずることにより、常に福祉サービスを受ける者の立場に立つて良質かつ適切な福祉サービスを提供するよう努めなければならない。

読み方のポイントは3つあります。

1つ目は、名宛人が「社会福祉事業の経営者」であること。 社会福祉法人に限らず、社会福祉事業を経営する者に向けた規定です。

2つ目は、求めている行為が「自らその提供する福祉サービスの質の評価を行うことその他の措置を講ずること」であること。 ここで書かれているのは、自ら質の評価を行うことです。外部の機関に評価してもらうこととは書かれていません。「その他の措置」という言葉があるとおり、質の評価は、質を高めるための措置の例として挙げられているにすぎません。

3つ目は、語尾が「努めなければならない」であること。 法律の条文では、「しなければならない」と「努めなければならない」は、重さが違います。前者はその行為をすることが義務ですが、後者は、その方向で努力することを求める書き方です。

この違いを、同じ社会福祉法の中で隣り合う条文と並べてみると、はっきりします。

第75条第1項は、情報の提供についての規定で、こう書かれています。

社会福祉事業の経営者は、福祉サービス(社会福祉事業において提供されるものに限る。以下この節及び次節において同じ。)を利用しようとする者が、適切かつ円滑にこれを利用することができるように、その経営する社会福祉事業に関し情報の提供を行うよう努めなければならない。

第76条は、利用契約の申込みがあったときの説明についての規定です。

社会福祉事業の経営者は、その提供する福祉サービスの利用を希望する者からの申込みがあつた場合には、その者に対し、当該福祉サービスを利用するための契約の内容及びその履行に関する事項について説明するよう努めなければならない。

どちらも「努めなければならない」です。一方、第77条第1項は、利用契約が成立したときの書面の交付についての規定で、こう書かれています。

社会福祉事業の経営者は、福祉サービスを利用するための契約(厚生労働省令で定めるものを除く。)が成立したときは、その利用者に対し、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。

こちらは「交付しなければならない」で、努力ではなく義務の書き方です。同じ社会福祉事業の経営者に向けた、連続する条文の中でも、法律は義務として課すものと努力を求めるものを書き分けています。

条文内容語尾性質
第75条第1項情報の提供行うよう努めなければならない努力義務
第76条利用契約の申込み時の説明説明するよう努めなければならない努力義務
第77条第1項利用契約の成立時の書面の交付交付しなければならない義務
第78条第1項福祉サービスの質の向上のための措置提供するよう努めなければならない努力義務

第78条第1項は、この表のとおり、第75条・第76条と同じ「努力義務」の並びに入ります。第77条のように「しなければならない」と書かれているわけではありません。

なお、第75条の括弧書きを見ると、ここでいう「福祉サービス」は「社会福祉事業において提供されるものに限る」とされています。第78条が対象にしているのも、社会福祉事業として提供される福祉サービスです。

第2項:国に向けた、努力義務

第2項は、名宛人ががらりと変わります。

国は、社会福祉事業の経営者が行う福祉サービスの質の向上のための措置を援助するために、福祉サービスの質の公正かつ適切な評価の実施に資するための措置を講ずるよう努めなければならない。

主語は「国」です。国が、事業者の質の向上のための措置を援助するために、質の公正かつ適切な評価の実施に資する措置を講ずるよう努める、と書かれています。

この第2項は、事業者に何かを義務づける規定ではありません。事業者が質の向上に取り組むのを、国が後押しするための規定です。

第1項と第2項を並べると、次のような構造になっています。

 第1項第2項
名宛人社会福祉事業の経営者国
求めていること自らその提供する福祉サービスの質の評価を行うことその他の措置を講ずること福祉サービスの質の公正かつ適切な評価の実施に資するための措置を講ずること
目的常に福祉サービスを受ける者の立場に立って良質かつ適切な福祉サービスを提供すること経営者が行う質の向上のための措置を援助すること
語尾努めなければならない努めなければならない

つまり、第78条は全体として、「事業者が自ら質を高める努力をする(第1項)。国は、その努力を援助するために、公正かつ適切な評価が行われるための措置を講ずる(第2項)」という二段の構造です。第三者評価という言葉が条文に出てこないのは、この構造を見ると納得がいきます。第2項が国に求めている「質の公正かつ適切な評価の実施に資するための措置」の中に、第三者評価事業が位置づけられている、と読むのが自然ですが、その位置づけを書いているのは条文ではなく、次の章で見る通知です。

では、第三者評価はどこで決まっているのか:厚生労働省の通知(指針)

第三者評価の具体的な仕組みは、厚生労働省の通知に書かれています。通知の名前は、「『福祉サービス第三者評価事業に関する指針について』の全部改正について」です。

通知の基本情報を、整理しておきます。

項目内容
通知の名称「福祉サービス第三者評価事業に関する指針について」の全部改正について
通知番号雇児発0401第12号・社援発0401第33号・老発0401第11号
発出日平成26年4月1日
最終改正平成30年3月26日
改正後全文の施行平成31年4月1日
宛先各都道府県知事
発出者厚生労働省の雇用均等・児童家庭局長、社会・援護局長、老健局長

この通知は、都道府県知事に宛てて出されたものです。その別紙として、「福祉サービス第三者評価事業に関する指針」が付いています。

通知の冒頭では、福祉サービス第三者評価が次のように定義されています。社会福祉法人等の提供する福祉サービスの質を、事業者及び利用者以外の公正・中立な第三者機関が、専門的かつ客観的な立場から行った評価をいう、という趣旨です。この評価を行う事業が「福祉サービス第三者評価事業」です。

ここまでで、二つのことが分かります。

  1. 第三者評価とは、事業者でも利用者でもない、公正・中立な第三者機関が行う評価である
  2. その仕組みを定めているのは、社会福祉法の条文ではなく、厚生労働省が都道府県に宛てて出した通知(指針)である

通知が書いている改正の背景

この通知は、平成16年に出された旧指針を全部改正したものです。冒頭には、旧指針のもとで各方面から指摘されていた課題が、4つ挙げられています。

  • サービスの種別にかかわらず共通的に取り組む項目(共通評価項目)に、ばらつきがみられること
  • 福祉サービス第三者評価事業の目的・趣旨が、他制度との違いが明確でない等の要因により、広く認識されていないこと
  • 第三者評価機関(評価機関)や評価調査者により、評価結果にばらつきがみられること
  • 受審件数が少ないこと

2つ目の課題は、この記事の冒頭で挙げた「義務なのかどうか分からない」という戸惑いと、重なる部分があります。通知自身が、制度の目的・趣旨が他の制度との違いも含めて十分に認識されていない、と認めているのです。

そのうえで通知は、この事業の本来の目的を改めて整理しています。その内容は、次の章で見ます。

通知は、受審を「望ましい」としている:義務ではなく任意

義務かどうかの答えに直結するのが、指針の「1 福祉サービス第三者評価事業の目的等について」の(1)「経営者の責務及び福祉サービス第三者評価事業の位置づけ」です。要点を、地の文で整理します。

まず、指針はこの項目の冒頭で、社会福祉法第78条第1項に触れています。社会福祉事業の経営者は、自らその提供するサービスの質の評価その他の措置を講ずることにより、利用者の立場に立って良質かつ適切な福祉サービスを提供するよう努めなければならないこととされている、という確認です。ここは、前の章で見た条文と同じ内容です。

そのうえで、指針は次のように整理しています。

  1. 社会福祉事業の経営者が福祉サービス第三者評価を受けることは、社会福祉事業の経営者が行う福祉サービスの質の向上のための措置の一環である
  2. したがって、福祉サービス第三者評価事業は、一義的には、経営者が行う福祉サービスの質の向上のための措置を援助するための事業である
  3. また、この事業は、利用者の適切なサービス選択に資するものともなり得る
  4. そのため、社会福祉事業の経営者は、これらの意義を踏まえ、福祉サービス第三者評価を積極的に受審することが望ましい

注目したいのは、最後の結びの言葉です。通知は「受審しなければならない」とは書いておらず、「積極的に受審することが望ましい」と書いています。

ここまでの内容をまとめると、次のような構造になります。

段階内容根拠
1経営者は、自ら質の評価などの措置を講ずるよう努める(努力義務)社会福祉法第78条第1項
2第三者評価を受けることは、その措置の一環である指針(通知)
3経営者が第三者評価を積極的に受審することが望ましい指針(通知)

第78条第1項が努力義務であり、その措置の一環として第三者評価が位置づけられ、さらに通知の結びが「望ましい」である以上、第三者評価の受審そのものを、社会福祉法や通知が一律に義務づけている、と読むことはできません。

ここは、実務で誤解が起きやすいところです。「第78条があるから、第三者評価は義務だ」という説明を目にしたときは、次の順に確かめると、話が整理できます。

  1. 第78条第1項が求めているのは、「自ら質の評価を行うことその他の措置」であって、第三者評価とは書かれていない
  2. 語尾は「努めなければならない」で、努力義務である
  3. 第三者評価を受けることは、通知の上では、その措置の一環と位置づけられ、受審は「望ましい」とされている

制度の目的の順序:一義的には「自法人のため」

次に、通知が第三者評価の目的をどう書いているかを見ます。指針の(2)「福祉サービス第三者評価事業の目的」です。

指針は、福祉サービス第三者評価事業の目的を、次のように整理しています。

  • 個々の事業者が、事業運営における問題点を把握し、サービスの質の向上に結びつけることを目的とするものである
  • なお、福祉サービス第三者評価を受けた結果が公表されることにより、結果として、利用者の適切なサービス選択に資するための情報となる

目的として書かれているのは、前半の事業者自身の問題点の把握と、質の向上です。利用者の選択に資する情報になることは、後半で「結果として」という言葉とともに、付け加えるように書かれています。

この順序は、実務の感覚に直結します。

見方通知が書いている順序
一義的な目的個々の事業者が、事業運営における問題点を把握し、サービスの質の向上に結びつけること
結果として生じること評価結果が公表されることで、利用者の適切なサービス選択に資する情報となること

多くの法人では、第三者評価と聞くと、「受審すると、広くお知らせしなければならない」「評価が低いと、利用者が来なくなる」といった、外向きの印象を持たれがちです。しかし、通知が書く目的の順序は逆です。まず内向き、つまり自分たちの事業運営の問題点を把握し、質の向上につなげるための制度であり、利用者への情報提供は、公表されたことによる結果です。

このことは、受審を検討する際の問いの立て方にも影響します。

  • 「利用者に選んでもらうために、受審するべきか」という問い方だけでは、制度の一義的な目的とずれる
  • 「自法人・自事業所の運営の問題点を、外部の専門的な目で整理してもらう機会が必要か」という問い方が、通知の目的の順序に沿っている

もちろん、どちらの問いが自法人にとって重要かは、法人ごとに違います。ここで言えるのは、通知は、事業者自身のための制度として、第三者評価を位置づけているという点までです。

「評価の判断水準」も、最低基準が前提になっている

通知の改正の説明の中には、評価の判断水準(a・b・c)の見直しにも触れた部分があります。ここは、第三者評価が「何を測る制度なのか」を理解するうえで参考になります。

通知は、判断水準の定義が明確に示されていないこと、また「a」評価でなければ適切なサービスが提供されていないとの誤解を招くとの意見があったことを踏まえて、位置づけを改訂した、と説明しています。改訂後の位置づけは、次の内容です。

評価通知が示している位置づけ
a評価よりよい福祉サービスの水準・状態、質の向上を目指す際に目安とする状態
b評価aに至らない状況、多くの施設・事業所の状態、aに向けた取組みの余地がある状態
c評価b以上の取組みとなることを期待する状態

そして、この位置づけは、最低基準を満たしていることを前提として行われるものとされています。

ここで読み取れることは、2つあります。

  1. b評価は、「多くの施設・事業所の状態」を含む位置づけであり、「b評価だから不適切なサービス」という意味ではない。通知が、a評価でなければ適切なサービスが提供されていないとの誤解を招く、という意見を踏まえて改訂した、と説明している
  2. 判断水準は、最低基準を満たしていることが前提。最低基準を満たすかどうかは、この評価の物差しの外にある

なお、通知の改正の説明には、評価項目の重点化を行った結果、項目数が53項目から45項目に変更となったこと、という記述もあります。ただし、この記事では、評価項目の中身には立ち入りません。

評価結果の扱い:公表には事業所の同意が要る

「第三者評価を受けたら、結果が必ず世の中に出てしまう」と考えて、受審に慎重になる法人もあります。この点について、通知の指針の「6 第三者評価結果の取扱い」に、具体的な書きぶりがあります。要点は次のとおりです。

評価機関における取扱い

  • 第三者評価機関は、事業所の同意を得て、「福祉サービス第三者評価結果の公表ガイドライン」に基づき、第三者評価結果を公表する
  • その際、公表ガイドラインを満たしたうえで、所要の修正を行うことは差し支えない
  • 評価機関は、都道府県推進組織に対して、公表ガイドラインに基づき、第三者評価結果を報告する
  • 評価機関は、都道府県推進組織に第三者評価結果を報告することにより、上記の公表に替えて差し支えない

都道府県推進組織における取扱い

  • 都道府県推進組織は、評価機関からの報告を受け、公表ガイドラインに基づき、第三者評価結果を公表する。あわせて、事業所の所在する市町村に対して評価結果を情報提供するなど、地域住民等に対する周知・広報に努める
  • 公表ガイドラインを満たしたうえで、所要の修正を行うことは差し支えない
  • そして、公表することについて事業所の同意を得ていない第三者評価結果については、公表しない

この流れを、順番に整理します。

場面誰が何をするか
評価が終わったあと評価機関事業所の同意を得て、公表ガイドラインに基づき結果を公表する(または、都道府県推進組織への報告をもって公表に替える)
評価機関の報告を受けたあと都道府県推進組織公表ガイドラインに基づき結果を公表し、市町村への情報提供など周知・広報に努める
事業所の同意がない場合評価機関・都道府県推進組織公表しない

つまり、受審したからといって、結果が自動的に公表されるわけではありません。通知は、公表の前提として事業所の同意を置いています。公表されない結果については、そのとおり扱う、とも明記されています。

ここは、受審を検討するうえで、確認しておきたいポイントです。

  • 受審を決める前に、公表の同意をどの段階で、どのような形で求められるのかを、評価機関に確認できる
  • 公表するかどうかは、事業所の同意の有無に関わる。「受審=必ず公表」ではない

もっとも、通知が書いているのは、公表についての基本的な枠組みです。実際に、評価機関との契約書や事前説明の中で、同意がどのような手続で行われるのかは、この記事の一次情報には含まれていません。受審を具体的に検討するときは、評価機関や、都道府県の推進組織に直接確認してください。

受審の手順そのものは、この記事では扱わない

「受審の流れ」と聞くと、申込みから訪問調査、報告書の受け取りまでの手順を想像される方も多いと思います。ただ、この記事で根拠にしている通知の抜粋には、受審の具体的な手順(申込み・自己評価・訪問調査・報告書の作成など)を書いた部分は含まれていません。そのため、この記事では、結果の取扱い(誰が、どの段階で、何を根拠に公表するか)に絞って整理しています。受審の具体的な手順は、都道府県推進組織や評価機関の案内で確認してください。

誰が評価するのか:推進組織と、評価機関の認証

第三者評価事業の運営には、複数の組織が関わっています。通知の指針の「2 福祉サービス第三者評価事業の推進体制」から、要点を整理します。

全国の推進組織:全社協

指針は、全国の推進組織として、全国社会福祉協議会(全社協)を位置づけています。全社協が担う業務は、都道府県における福祉サービス第三者評価事業の推進組織(都道府県推進組織)に対する支援などです。具体的には、次のような業務が挙げられています。

  • 都道府県推進組織に関するガイドラインの策定・更新
  • 福祉サービス第三者評価機関認証ガイドラインの策定・更新
  • 福祉サービス第三者評価基準ガイドラインの策定・更新
  • 福祉サービス第三者評価基準ガイドラインにおける各評価項目の判断基準に関するガイドラインの策定・更新
  • 福祉サービス第三者評価結果の公表ガイドラインの策定・更新
  • 評価調査者養成研修等のモデルカリキュラムの作成・更新、その他評価調査者養成研修に関すること
  • 福祉サービス第三者評価事業の普及・啓発
  • その他、福祉サービス第三者評価事業の推進に関すること

さらに、こうした業務を実施するにあたり、全社協には、学識経験者等で構成される「福祉サービスの質の向上推進委員会」と、都道府県推進組織及び評価機関を構成員とする「評価事業普及協議会」が、それぞれ設置される、と書かれています。

都道府県の推進組織:都道府県の判断の下で設置

都道府県については、指針は「都道府県は、都道府県の判断の下、『都道府県推進組織に関するガイドライン』に基づき、都道府県推進組織を設置すること」としています。

ここで注目したいのは、「都道府県の判断の下」という言葉です。都道府県推進組織の設置は、国が全都道府県に一律に求めているものではなく、都道府県の判断に委ねられている、と読めます。そのため、都道府県によって、推進組織の体制や、実際の運用が異なる可能性があります。具体的にどのような違いがあるのかは、この記事の一次情報には含まれていません。所在する都道府県の情報を、直接確認する必要があります。

評価機関の認証:有効期間は3年

実際に評価を行う第三者評価機関については、指針の枠組みでは、都道府県推進組織が認証する仕組みになっています。認証の有効期間などは、指針の別添2「福祉サービス第三者評価機関認証ガイドライン」に書かれています。

項目内容
認証の有効期間認証を受けた日から3年間
更新更新することができる
更新時研修(直近3か年度の評価件数が10件以上の場合)評価機関に所属する評価調査者が、全国推進組織又は都道府県推進組織が行う更新時研修を受講するよう努めなければならない
更新時研修(評価件数が10件未満の場合)更新を行う年度中に、更新時研修を必ず受講しなければならない

更新時研修についての条件は、社会的養護関係施設第三者評価機関を除く場合の取扱いです。また、「直近3か年度における評価件数」には、社会的養護関係施設に係る評価件数を含むとされています。

この表で分かることは、評価機関は一度認証されたら終わりではなく、3年ごとに更新が必要な仕組みになっている、という点です。そして、評価件数が少ない機関には、評価調査者の更新時研修の受講が、義務として求められます。評価の質を保つために、評価機関と評価調査者の側にも、一定の仕組みが用意されている、ということです。

法人・事業所の側から見ると、評価機関を選ぶときに確認できることの一つとして、「都道府県推進組織の認証を受けた評価機関か」という点があります。どの機関が認証を受けているのかは、都道府県ごとに異なります。一覧は、この記事では扱いません。所在する都道府県の推進組織の案内で確認してください。

指導監査とは何が違うのか:最低基準を前提にした評価という組み立て

福祉法人の実務で、第三者評価が話題になるのは、指導監査や運営指導の準備と一緒のときが多いと思います。そのため、「第三者評価は、指導監査の代わりになるのか」「指導監査の準備として、受けておくものなのか」と混同されやすいところです。

この記事で言えるのは、通知の書き方から見えてくる評価の組み立ての違いです。

通知の判断水準は、先に見たとおり、最低基準を満たしていることを前提として位置づけられています。そのうえで、a評価は「よりよい福祉サービスの水準・状態、質の向上を目指す際に目安とする状態」、b評価は「多くの施設・事業所の状態、aに向けた取組みの余地がある状態」と整理されています。

つまり、第三者評価の物差しは、最低基準を満たしているかどうかを確かめるものではなく、最低基準を満たしていることを前提に、そのうえでどの水準にあるか、質の向上の余地がどこにあるかを見るものとして組み立てられています。

一方、指導監査や運営指導は、法人や事業所の運営が、法令や基準に沿っているかを確認する場です。指導監査については、社会福祉法人の指導監査の記事で、条文に沿って整理しています。

 第三者評価指導監査
根拠の置かれ方通知(指針)が仕組みを定め、受審は「望ましい」とされる別記事で条文に沿って整理
評価の物差し最低基準を満たしていることを前提に、質の向上の余地を見る法令・基準に沿った運営がされているかを確認する
評価を行う主体事業者・利用者以外の公正・中立な第三者機関(都道府県推進組織が認証する評価機関)所管の行政機関
結果の公表事業所の同意を得て公表。同意がなければ公表しない本記事の一次情報の範囲外

この表の「指導監査」の列は、あくまで両者の組み立ての違いを示すための整理です。指導監査の根拠条文や、確認される項目の詳細は、この記事の一次情報には含まれていません。詳しくは、上記の記事を参照してください。

実務上の注意点として、次の点は押さえておきたいところです。

  • 第三者評価を受けたからといって、指導監査が免除される、と読める根拠は、この記事の一次情報にはない
  • 逆に、指導監査で指摘がなかったからといって、第三者評価の目的(質の向上の余地の把握)が果たされている、とも言えない

目的が違う制度だからこそ、片方を片方の代わりにはできない、というのが、通知の組み立てから読み取れる整理です。

「義務」になる場合がある:個別のサービスの運営基準

ここまで、「第三者評価の受審は、社会福祉法や通知が一律に義務づけているものではない」と整理してきました。ただし、実務では、「評価」に関わる義務が、別のところに存在することがあります。それが、個別のサービスの運営基準です。

代表的な例が、介護保険の地域密着型サービスのうち、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の運営基準です。指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)の第97条第8項に、自己評価と、外部の者による評価(または運営推進会議における評価)に関する規定があります。こちらは、運営基準の中の規定として、事業者が行うべきものとして義務づけられています。

この規定の内容を、この記事で詳しく解説することはしません。グループホームの自己評価と外部評価の記事で、条文に沿って整理しているためです。ここで押さえておきたいのは、次の3点です。

 福祉サービス第三者評価地域密着型サービスの自己評価・外部評価
根拠社会福祉法第78条第1項(努力義務)と、通知(指針)平成18年厚生労働省令第34号(指定地域密着型サービスの運営基準)第97条第8項
位置づけ経営者の質の向上のための措置の一環。受審は望ましい運営基準の規定として、事業者が行うもの(義務)
制度の枠組み都道府県推進組織・評価機関の認証など、指針が定める枠組み運営基準が定める自己評価と外部評価(または運営推進会議における評価)の枠組み
  1. 制度が別である。 福祉サービス第三者評価は、社会福祉法第78条と、通知(指針)にもとづく仕組みです。地域密着型サービスの自己評価・外部評価は、介護保険の運営基準にもとづく仕組みです
  2. 条番号は、省令ごとに別である。 「第97条第8項」は、平成18年厚生労働省令第34号(介護保険の指定地域密着型サービスの運営基準)の条番号です。障がい福祉サービス側の運営基準の条番号とは、別のものです。条番号を書くときは、必ず「どの省令の第何条か」とセットで確認してください
  3. 義務かどうかは、サービスごとに確認が要る。 第三者評価が任意でも、自法人が運営しているサービスの運営基準が、評価に関する義務を別に定めていることがあります

つまり、「第三者評価は義務ではない」という結論は、「評価に関する義務が、まったく存在しない」という意味ではありません。運営しているサービスの運営基準に、評価に関する規定がないかを、サービスごとに確認する、という手順が必要です。

社会的養護関係施設には、別建ての仕組みがある

もう一つ、触れておくべきことがあります。通知の別添2には、「社会的養護関係施設第三者評価機関」という区分が出てきます。これは、社会的養護関係施設には、一般の福祉サービス第三者評価とは別の仕組みがあることを示しています。

社会的養護関係施設に関する詳しい取扱いは、別の通知が根拠で、この記事の一次情報には含まれていません。該当する施設を運営している場合は、こども家庭庁が出している通知を、直接確認してください。

受審を検討するときの確認の順序(チェックリスト)

ここまでの内容を、実務で使えるチェックの形にまとめます。「受審するかどうか」を決めるのではなく、決めるための確認の順序として使ってください。

ステップ1:義務の有無を確認する

  • [ ] 「第三者評価は法律で義務」という説明を受けたとき、根拠とされている条文を確認したか(社会福祉法の本則に「第三者評価」という語はない)
  • [ ] 第78条第1項が「努めなければならない」という努力義務であることを、担当者間で共有したか
  • [ ] 運営しているサービスの運営基準に、評価に関する規定がないかを、サービスごとに確認したか(例:介護保険の地域密着型サービスは別制度)
  • [ ] 社会的養護関係施設に当たる場合は、別建ての仕組みの通知(こども家庭庁)を確認したか

ステップ2:自法人にとっての目的を整理する

  • [ ] 通知が書く一義的な目的(事業運営の問題点の把握と、サービスの質の向上)に沿って、自事業所で確かめたいことを整理したか
  • [ ] 「利用者に選んでもらうため」だけを理由にしていないか(通知は、利用者への情報提供を「結果として」と位置づけている)
  • [ ] 判断水準の位置づけ(b評価は多くの施設・事業所の状態を含む、など)を、関係者で共有したか

ステップ3:公表の扱いを確認する

  • [ ] 公表について、事業所の同意が必要であること(同意がなければ公表されないこと)を理解しているか
  • [ ] 同意をどの段階で、どのような形で求められるのかを、評価機関に確認したか
  • [ ] 評価結果が、都道府県推進組織を通じて、市町村への情報提供などにも使われうることを理解しているか

ステップ4:評価機関と都道府県の窓口を確認する

  • [ ] 所在する都道府県の推進組織が、どの窓口かを確認したか
  • [ ] 候補の評価機関が、都道府県推進組織の認証を受けているかを確認したか(認証の有効期間は3年)
  • [ ] 受審の手順・費用・スケジュールなどは、この記事の一次情報に含まれていないので、評価機関から直接説明を受ける予定を立てたか

ステップ5:社内の説明資料に、根拠を残す

  • [ ] 「義務ではなく、望ましいとされている」という整理の根拠として、社会福祉法第78条と、通知の指針を、資料に残したか
  • [ ] 条番号を書くときは、法律名・省令名(第何号)とセットで書いているか

「なぜ受けているのか」「なぜ受けていないのか」を聞かれたときに、根拠の条文と通知を挙げて説明できるようにしておくだけで、担当者が代わったときの判断のぶれは、大きく減ります。

この記事で書いていないこと

この記事は、一次情報として確認できた範囲だけを書いています。次の点は、抜粋の中に含まれていないため、扱っていません。

  • 受審にかかる費用の相場、補助の有無
  • 都道府県ごとの評価機関の一覧や、申込先
  • 評価基準の全45項目の中身(項目数が53項目から45項目に変更となった、という通知の記述の紹介にとどめています)
  • 社会的養護関係施設の受審義務の詳細(別の通知が根拠のため。こども家庭庁の通知を直接確認してください)
  • 受審の具体的な手順(申込み・自己評価・訪問調査・報告書の作成など)
  • 受審件数の統計
  • 評価機関との契約や、公表の同意の具体的な手続
  • 第三者評価を受けたことが、指導監査や加算の算定に与える影響
  • 指導監査で確認される項目の詳細(別記事を参照してください)

判断に迷うときは、所在する都道府県の推進組織や、評価機関、所管の行政機関に確認してください。

まとめ

  • 社会福祉法の本則(全277条)に、「第三者評価」という語は一度も出てこない。法律を根拠に、第三者評価の受審が義務づけられている、とは言えない
  • 根拠とされる第78条第1項が求めているのは、「自らその提供する福祉サービスの質の評価を行うことその他の措置を講ずること」で、語尾は「努めなければならない」=努力義務。第三者評価という手段は名指しされていない
  • 第78条第2項は、国に向けた規定。事業者への義務ではない
  • 第三者評価の仕組みは、厚生労働省の通知(指針)が定めている。通知は、受審を経営者が行う質の向上のための措置の一環と位置づけ、積極的に受審することが望ましいとしている。つまり任意
  • 通知が書く一義的な目的は、事業者自身の問題点の把握と、サービスの質の向上。利用者への情報提供は「結果として」
  • 評価結果の公表には、事業所の同意が要る。同意を得ていない結果は公表されない
  • 評価機関の認証の有効期間は3年。更新でき、評価件数に応じて評価調査者の更新時研修の受講が求められる
  • 判断水準は、最低基準を満たしていることを前提にしたもの。指導監査とは、評価の組み立てが違う
  • ただし、個別のサービスの運営基準が、評価を義務として課している場合がある。介護保険の地域密着型サービスの自己評価・外部評価(平成18年厚生労働省令第34号第97条第8項)は、別制度

第三者評価は、「義務だから受ける」「義務ではないから受けない」という二択で考えるよりも、自法人の運営の問題点を、外部の目で確かめる機会として、いま必要かどうかを軸に考えるのが、通知の趣旨に沿った向き合い方です。受審を検討するときは、あわせて利用者からの苦情への対応の仕組みも点検しておくと、質の向上の取り組みが一続きになります。苦情の解決については、第82条を中心に社会福祉法人の苦情解決の記事で整理しています。

社会福祉法第82条は、次のように書かれています。

社会福祉事業の経営者は、常に、その提供する福祉サービスについて、利用者等からの苦情の適切な解決に努めなければならない。

苦情の解決も、第78条と同じく「努めなければならない」という書き方です。質の向上のための取り組みは、こうした努力義務が積み重なって成り立っています。あわせてお読みください。

参考(一次情報)


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