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社会福祉法人の退職手当共済|対象施設と公費助成の範囲を条文で読む

新しい事業所を立ち上げる相談が法人本部に上がってきたとき、こんな会話になったことはないでしょうか。

「この事業所の職員は、退職手当共済に入れるのだったよね」

「たぶん入れると思います。公費の助成もあったはずですが、うちのどの事業が対象だったか、はっきりしなくて」

職員の退職金の見通しを立てるときも、同じことが起きます。法人内に、特別養護老人ホームも、障がい福祉のサービス事業所も、保育の事業もある。施設の種類が違うのだから、退職手当共済の扱いも違うのかもしれない。けれども、その違いを条文で説明できる人が法人本部にいない。担当者が代わるたびに、前任者の記憶と過去の書類をたどって確認し直している。そんな法人は少なくありません。

退職手当共済は、社会福祉法人にとって、職員の退職に備える大きな仕組みです。そして、この仕組みでは、「うちの施設は対象なのか」「公費の助成はどこまで及ぶのか」という2つの問いの答えが、法律の最初のほうにある定義の条文で決まっています。 制度の概要をなぞるだけでは、この2つの答えにたどり着けません。

この記事では、社会福祉施設職員等退職手当共済法(以下、この記事では「法」と呼びます)と、その施行令(以下「令」)の原文を根拠に、次の3点を整理します。

  • 法第2条の定義が、施設と事業を「社会福祉施設」「特定社会福祉事業」「特定介護保険施設等」「申出施設等」に分けており、扱いが違うこと
  • 国の補助(第18条)と都道府県の補助(第19条)は、どちらも「できる」と書かれた規定であり、国の補助は職員の区分によって対象が絞られていること
  • 法人本部には、掛金の納付、届出、記録の作成と保存、立入検査への対応という、法律上の事務の義務があること

なお、掛金の単価や退職手当金の具体的な金額、申込みの手続などは、この記事で使う条文の抜粋には書かれていません。それらは書かずに、最後の「この記事で書いていないこと」の章に列挙しました。個別の数字と手続は、独立行政法人福祉医療機構と所轄庁でご確認ください。

目次

まず結論:第2条の定義で、施設の種類ごとに扱いが分かれる

先に全体像を示します。

  • 法第2条は、用語を4つに分けている。「社会福祉施設」「特定社会福祉事業」「特定介護保険施設等」「申出施設等」である。同じ法人の中でも、施設や事業の種類によって、どの用語に当たるかが変わる
  • 特別養護老人ホーム、障害者支援施設、障害福祉サービス事業の多くは、「社会福祉施設」ではなく「特定介護保険施設等」の側に置かれている
  • 特定介護保険施設等は、条文上、経営者または共済契約者が機構に「申し出たもの」に限られる。申し出なければ、この区分には入らない
  • 「経営者」になれるのは、社会福祉法人だけ。条文が、経営者を「社会福祉法人をいう」と定義している
  • 国の補助は、予算の範囲内で、補助金算定対象額の三分の一以内を補助することが「できる」と書かれている。義務ではなく、しかも上限つきの裁量規定である
  • 国の補助の対象になる特定介護保険施設等職員は、第18条第一号または第二号に当たる人に限られる。これに当たらない職員は、条文の上では国の補助の対象に入らない
  • 都道府県の補助も、当該都道府県の予算の範囲内で、補助金算定対象額の一部を補助することが「できる」と書かれている。こちらも裁量規定である
  • 法人本部の義務として、掛金の納付、届出、記録の作成と保存があり、記録の作成と保存を怠ると罰則の対象になりうる(第22条・第28条)

以降、この順で条文を確認していきます。

この制度の目的を、第1条で確認する

制度の全体像をつかむために、最初に第1条を読みます。

この法律は、社会福祉施設、特定社会福祉事業及び特定介護保険施設等を経営する社会福祉法人の相互扶助の精神に基づき、社会福祉施設の職員、特定社会福祉事業に従事する職員及び特定介護保険施設等の職員について退職手当共済制度を確立し、もつて社会福祉事業の振興に寄与することを目的とする。

この条文から読み取れることは、3つあります。

  1. 制度の主体は「社会福祉法人」であること。第1条の時点で、施設や事業を経営する主体が社会福祉法人と書かれています
  2. 制度の土台が「相互扶助の精神」であること。法人どうしが掛金を出し合い、職員の退職手当金の支給を支える形です
  3. 目的の中に、「社会福祉施設」「特定社会福祉事業」「特定介護保険施設等」の3つの言葉が、すでに並んで出てくること

3つ目が、この記事の出発点です。目的の条文の時点で、対象が1種類にまとめられておらず、3つの区分が並べて書かれています。この区分を、第2条が定義していきます。

4つの用語を切り分ける:第2条の第1項から第4項

第2条は、この法律の中で最も読み込む価値のある条文です。ここで定義される用語が、その後の条文(補助、掛金、職員の区分)のすべてで使われるためです。

「社会福祉施設」(第1項)

この法律において「社会福祉施設」とは、次に掲げる施設をいう。

続く各号に掲げられているのは、次の施設です。

  • 第一号:生活保護法の認可を受けた救護施設、更生施設、授産施設及び宿所提供施設
  • 第二号:児童福祉法の認可を受けた乳児院、母子生活支援施設、保育所、児童養護施設、児童心理治療施設及び児童自立支援施設
  • 第三号:幼保連携型認定こども園(設置の認可を受けたもの)
  • 第四号:老人福祉法の認可を受けた養護老人ホーム
  • 第五号:その他前各号に準ずる施設で政令で定めるもの

第五号の「政令で定めるもの」は、令第1条に列挙されています。原文の書き出しどおりに挙げると、女性自立支援施設(一定の費用の支弁が行われているもの)、軽費老人ホーム(厚生労働大臣が定める基準に適合するもの)、視聴覚障害者情報提供施設(同)、授産施設(同)、身体障害者福祉センターの一部の事業に相当する事業を行うもの、です。

「特定社会福祉事業」(第2項)

この法律において「特定社会福祉事業」とは、次に掲げる事業をいう。

こちらは施設ではなく「事業」です。

  • 第一号:児童福祉法の届出がされた児童自立生活援助事業及び小規模住居型児童養育事業
  • 第二号:生活困窮者自立支援法に規定する認定生活困窮者就労訓練事業
  • 第三号:その他政令で定める社会福祉事業

第三号を受けて、令第2条は、児童福祉法の認可を受けた小規模保育事業を挙げています。

「特定介護保険施設等」(第3項)

3つ目が、障がい福祉と高齢者介護の事業所を持つ法人にとって、最も重要な用語です。まず、定義の中心になる部分を引用します。

次に掲げる施設又は事業のうち、経営者が退職手当共済契約の申込みに当たり独立行政法人福祉医療機構(以下「機構」という。)に申し出たもの又は共済契約者が機構に申し出たもの(第四条の二第一項の規定により機構が承諾したものに限る。)をいう。

この文の前に「この法律において「特定介護保険施設等」とは、」がつながり、後ろに各号が続きます。各号に挙げられている施設と事業は、次のとおりです。

  • 第一号:障害児通所支援事業(児童福祉法の届出がされたもの)
  • 第二号:障害児入所施設(児童福祉法の認可を受けたもの)
  • 第三号:老人居宅生活支援事業のうち、老人居宅介護等事業、小規模多機能型居宅介護事業及び認知症対応型老人共同生活援助事業
  • 第四号:特別養護老人ホーム(老人福祉法の認可を受けたもの)
  • 第五号:障害者支援施設(障害者総合支援法に規定するもので、社会福祉法の届出がされたもの)
  • 第六号:障害福祉サービス事業のうち、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、療養介護、生活介護、自立訓練、就労選択支援、就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援、自立生活援助又は共同生活援助を行う事業、及び移動支援事業
  • 第七号:その他前各号に準ずる施設又は事業であって政令で定めるもの

第七号を受けた令第2条の2には、軽費老人ホーム(介護保険法の指定に係るもの)、老人福祉センターの一部、老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、複合型サービス福祉事業、地域活動支援センター、福祉ホーム、障害福祉サービス事業のうち短期入所又は重度障害者等包括支援を行う事業、が並んでいます。

「申出施設等」(第4項)

この法律において「申出施設等」とは、共済契約者が経営する社会福祉施設、特定社会福祉事業及び特定介護保険施設等以外の施設又は事業のうち当該共済契約者が機構に申し出たものであつて第四条の二第一項の規定により機構が承諾したものをいう。

前の3つのどれにも当たらない施設や事業について、共済契約者が申し出て、機構が承諾したものが「申出施設等」です。

4つの用語を1枚の表にする

ここまでを表にすると、次のようになります。

用語何を指すか(条文の書き方)「申し出」との関係
社会福祉施設(第1項)救護施設・更生施設・授産施設・宿所提供施設/乳児院・母子生活支援施設・保育所・児童養護施設・児童心理治療施設・児童自立支援施設/幼保連携型認定こども園/養護老人ホーム/政令で定めるもの定義に「申し出」の文言はない
特定社会福祉事業(第2項)児童自立生活援助事業・小規模住居型児童養育事業/認定生活困窮者就労訓練事業/政令で定める社会福祉事業(小規模保育事業)定義に「申し出」の文言はない
特定介護保険施設等(第3項)障害児通所支援事業・障害児入所施設・老人居宅生活支援事業の一部・特別養護老人ホーム・障害者支援施設・障害福祉サービス事業の一部・移動支援事業・政令で定めるもの経営者または共済契約者が機構に申し出たものに限られる
申出施設等(第4項)上の3つ以外の施設・事業のうち、共済契約者が申し出て機構が承諾したもの申し出て、機構が承諾したものに限られる

この表で見ておきたいのは、右の列です。第1項と第2項の定義には「申し出」の文言がなく、第3項と第4項の定義には「申し出」の文言がある、という違いがあります。この違いが、法人が施設を増やしたり事業を始めたりしたときの手続の考え方に直結します。次々章で、あらためて見ます。

「経営者」は社会福祉法人に限られる(第2条第5項)

第2条第5項は、「経営者」を定義しています。

この法律において「経営者」とは、社会福祉施設、特定社会福祉事業又は特定介護保険施設等を経営する社会福祉法人をいう。

ここで見落としやすいのが、文末の「社会福祉法人をいう」です。経営者は、社会福祉法人に限られると定義されています。株式会社やNPO法人などが、たとえば障害福祉サービス事業や介護の事業を営んでいても、この条文の定義に従えば、それらの法人は「経営者」に当たりません。

そして、「経営者」でなければ退職手当共済契約の当事者である「共済契約者」にもなれません。第2条第10項は、共済契約者を「退職手当共済契約の当事者である経営者」と定義しています。つまり、この制度は、社会福祉法人が契約者になる制度として組み立てられています。

この定義は、契約の継続にも関わっています。第6条第2項は、機構が契約を解除しなければならない場合を挙げています。

機構は、次の各号に掲げる場合には、当該退職手当共済契約を解除しなければならない。

その第一号は、次のとおりです。

共済契約者が、経営者でなくなつたとき。

条文の構造として、契約者であることの前提は「経営者であること」、つまり社会福祉法人であることだと読めます。この点は、法人の組織変更や事業の承継を考える場面で、条文に立ち返る手がかりになります。ただし、個々の組織変更が契約にどう影響するかは、この記事の抜粋だけでは判断できません。必ず機構と所轄庁に確認してください。

職員と役員は、同じ言葉で扱えない

もう1点、「職員」という言葉にも注意が要ります。この制度の職員は、法の定義に従って「経営者に使用され」「業務に常時従事することを要する者」とされています(次の章で見ます)。役員が「使用される」者に当たるのかどうかは、この記事の抜粋では扱っていません。役員に関する報酬の考え方は、社会福祉法人の役員報酬の記事で整理しています。役員と職員は、制度上の位置づけが異なる前提で、混同しないようにしてください。

職員の側にも3つの区分がある:第2条第6項から第8項

施設や事業の区分に対応して、職員も3つに分かれています。

社会福祉施設等職員(第6項)

この法律において「社会福祉施設等職員」とは、経営者に使用され、かつ、その者の経営する社会福祉施設又は特定社会福祉事業の業務に常時従事することを要する者をいう。

ただし書きが続きます。

ただし、一年未満の期間を定めて使用される者(その者が一年以上引き続き使用されるに至つた場合を除く。次項ただし書及び第八項ただし書において同じ。)を除く。

ここから、対象の絞り込みが二重に働いていることが分かります。1つ目は「常時従事することを要する者」であること。2つ目は、一年未満の期間を定めて使用される者は除かれることです(一年以上引き続き使用されるに至った場合を除く)。

特定介護保険施設等職員(第7項)

この法律において「特定介護保険施設等職員」とは、経営者に使用され、かつ、その者の経営する社会福祉施設、特定社会福祉事業又は特定介護保険施設等の業務に常時従事することを要する者であつて社会福祉施設等職員以外のものをいう。

「社会福祉施設等職員以外のもの」という書き方から、特定介護保険施設等職員は、社会福祉施設等職員に当たらない人の区分として作られていることが分かります。ただし書きには、第6項と同じく、一年未満の期間を定めて使用される者を除く旨が書かれています。

申出施設等職員(第8項)

第8項は、共済契約者に使用され、共済契約対象施設等(社会福祉施設、特定社会福祉事業、特定介護保険施設等、申出施設等の総称)の業務に常時従事することを要する者で、社会福祉施設等職員でも特定介護保険施設等職員でもないものを、申出施設等職員としています。ここでも、一年未満の期間を定めて使用される者は除かれます。

「被共済職員」とは

3つの職員区分を束ねる言葉が、第11項の「被共済職員」です。

  • 共済契約者に使用される社会福祉施設等職員、特定介護保険施設等職員及び申出施設等職員をいう

以降の条文で、退職手当金を受け取る資格、期間の計算、掛金の計算は、すべてこの被共済職員を単位に書かれています。

ここで、実務の視点を1つ加えておきます。職員がどの区分に当たるかは、その職員が勤める施設や事業が、第1項から第4項のどれに当たるかで決まります。 同じ法人の同じ職種でも、勤務先の施設や事業の種類が違えば、区分が違ってくる。この構造を押さえておくと、後の掛金や補助の話が理解しやすくなります。

特定介護保険施設等は「申し出たもの」に限られる(自動では入らない)

先に見た第3項の引用文を、もう一度、注意深く読みます。

次に掲げる施設又は事業のうち、経営者が退職手当共済契約の申込みに当たり独立行政法人福祉医療機構(以下「機構」という。)に申し出たもの又は共済契約者が機構に申し出たもの(第四条の二第一項の規定により機構が承諾したものに限る。)をいう。

構造を分けると、次のようになります。

  1. 対象の候補は、各号に列挙された施設と事業
  2. そのうち、申し出たものだけが「特定介護保険施設等」になる
  3. 申し出のタイミングは2通り。(ア)経営者が退職手当共済契約の申込みに当たって申し出たもの、(イ)共済契約者が契約後に申し出たもの(この場合は機構の承諾を要する)

つまり、特別養護老人ホームや障害者支援施設、障害福祉サービス事業の事業所であっても、申し出をしなければ、条文上は特定介護保険施設等に当たりません。 第4条の2は、その申し出への機構の対応を定めています。

機構は、次に掲げる場合を除いては、特定介護保険施設等又は申出施設等に係る共済契約者の申出を承諾しなければならない。

除外される場合は、納付期限を超えてまだ納付されていない掛金(割増金を含む)があるとき(第一号)と、それ以外に厚生労働省令で定める正当な理由があるとき(第二号)です。裏返せば、掛金を滞納していない共済契約者が申し出れば、機構は、原則として承諾しなければなりません。

効力が生じるのは「申出のあつた日」

承諾された場合の効力は、第4条の2第2項に書かれています。

機構が前項の規定による承諾をしたときは、当該申出に係る特定介護保険施設等又は申出施設等は、当該申出のあつた日において特定介護保険施設等又は申出施設等となつたものとみなす。

承諾の日ではなく、申出のあった日に、その施設や事業が特定介護保険施設等になったものとみなされます。 申し出の書類を出した日が、区分の起点になる。事業所を新設するときに、いつ申し出るかを法人本部で管理しておくことが大切だと分かります。

さらに、同条第3項は、共済契約者の通知義務を定めています。機構が承諾したときは、共済契約者は、遅滞なく、その旨を被共済職員に通知しなければなりません。契約の成立時にも、同様の通知義務があります(第4条第2項)。職員に「あなたの勤務先は、この制度の対象になりました」と伝えることは、任意のお知らせではなく、法律上の義務です。

申し出をしていない事業所は、いま把握できているか

ここまでを踏まえると、法人本部で確認したい点が見えてきます。

  • 自法人の障害福祉サービス事業所、障害者支援施設、特別養護老人ホームなどについて、申し出をしているものと、していないものを、一覧にできるか
  • 申し出をしたものについて、申出のあった日を記録しているか
  • 新設した事業所で、退職手当共済への申し出が手続として抜けていないか

申し出の様式や提出方法は、この記事の抜粋に書かれていません。機構の案内で確認してください。

公費助成は第18条と第19条の2本立て

ここからが、多くの担当者が気にしている公費助成の話です。条文を読むと、助成は国の補助(第18条)と都道府県の補助(第19条)の2本立てになっていることが分かります。そして、どちらも「できる」と書かれています。

国の補助:第18条

第18条の本文を、そのまま引用します。

国は、毎年度、予算の範囲内において、機構に対し、被共済職員のうち社会福祉施設等職員であるもの及び特定介護保険施設等職員であるもの(次に掲げる者に限る。)に係る退職手当金の支給に要する費用の額として政令で定めるところにより算定した額(以下「補助金算定対象額」という。)の三分の一以内を補助することができる。

この文には、実務で押さえておきたい要素が5つ含まれています。

  1. 「予算の範囲内において」:国の予算の範囲という制約がある
  2. 「機構に対し」:補助の相手は、法人ではなく機構である
  3. 「補助金算定対象額」:補助の計算のもとになる額。政令(令第9条)で算定の方法が定められている
  4. 「三分の一以内」:三分の一そのものではなく、「以内」の上限である
  5. 「補助することができる」:補助する義務があるとは書かれていない

読み落としがちなのは、最後の5番目です。条文の文言は「補助する」ではなく、「補助することができる」です。つまり、法律の上では、毎年度の補助が保証されているわけではありません。予算の範囲で、上限の三分の一以内で、補助が「できる」と書かれているだけです。

この記事の抜粋からは、実際にどれだけの割合が交付されているかを知ることはできません。実際の交付の状況は、公表されている最新の情報で確認する必要があります。

補助の相手は機構であって、法人ではない

補助の相手が機構であることは、制度の仕組みを理解するうえで重要です。国は、法人に直接補助するのではなく、機構に対して補助します。この補助は、退職手当金の支給に要する費用に充てられ、その分、共済契約者が納める掛金の水準に反映される仕組みになっています。

その根拠が、令第7条です。令第7条は、毎事業年度の単位掛金額を、次の考え方で決めると書いています。「当該事業年度において支給される退職手当金の見込額」から、国と各都道府県が機構に交付する補助金の見込額の合計額を控除して得た額を、一定の職員数で除して得た額を基準として、厚生労働大臣が定める、という構造です。

つまり、公費助成は、法人が補助金として受け取るお金ではなく、掛金の水準を押し下げる形で、間接的に効く仕組みとして組まれています。この記事では単位掛金額の具体的な金額には触れませんが、公費助成と掛金の関係は、条文でこのように結びついています。

都道府県の補助:第19条

もう1つの助成が、第19条の都道府県の補助です。

都道府県は、毎年度、当該都道府県の予算の範囲内において、機構に対し、補助金算定対象額の一部を補助することができる。

国の補助と比べると、次のような特徴があります。

比べる点国の補助(第18条)都道府県の補助(第19条)
予算の制約予算の範囲内において当該都道府県の予算の範囲内において
補助の相手機構機構
補助の割合補助金算定対象額の三分の一以内補助金算定対象額の一部
規定の性格補助することができる補助することができる
対象の職員社会福祉施設等職員と、一定の特定介護保険施設等職員条文上は「補助金算定対象額」に対する補助

都道府県の補助は、第19条の条文上、割合の上限も書かれていません。「一部を」「補助することができる」という書き方です。どの程度補助されるかは、各都道府県の予算に左右されると読める構造です。ここでも、実際の補助の有無や水準は、この記事の抜粋では分かりません。所轄の都道府県の情報で確認してください。

「できる」規定であることの実務上の意味

「できる」規定であることは、法人の資金計画に直接関わります。

  • 退職手当共済の公費助成は、法律の上では毎年度の交付が保証されていない
  • 国と都道府県のどちらも、予算の範囲内での裁量として書かれている
  • したがって、公費助成を前提にした長期の資金計画を組む場合は、その前提が条文上の保証ではないことを、意思決定の場で共有しておく必要がある

この点は、法人の年度の資金の見通しを立てる場面で影響します。予算の作り方そのものは、社会福祉法人の収支予算の記事で整理していますので、あわせてご覧ください。ここでは、公費助成が「できる」規定であるという条文上の事実だけを押さえてください。

国の補助の対象から外れる職員がいる:第18条第一号・第二号の読み方

第18条の本文には、見逃せない括弧書きがあります。

  • 補助の対象は、被共済職員のうち社会福祉施設等職員であるもの
  • 及び、特定介護保険施設等職員であるもの(次に掲げる者に限る。)

「次に掲げる者に限る」と書かれているのは、後半の特定介護保険施設等職員だけです。つまり、社会福祉施設等職員は、国の補助の対象として広く書かれている一方、特定介護保険施設等職員は、第一号または第二号に当たる者に限って対象になる、という書き分けになっています。

第一号と第二号

社会福祉施設又は特定社会福祉事業の業務に相当程度従事することを要する者として政令で定めるもの(次号に掲げる者を除く。)

児童福祉法第三十五条第四項の規定による認可を受けた障害児入所施設の業務(同法第二十七条第一項の規定により同項第三号の措置がとられている児童に係るものに限る。)に従事することを要する者として政令で定めるもの

第一号は、社会福祉施設や特定社会福祉事業の業務に「相当程度」従事することを要する者。第二号は、障害児入所施設の業務のうち、措置がとられている児童に係るものに従事することを要する者。どちらも、「政令で定めるもの」とされています。ここで、政令、つまり令の規定を確認する必要があります。

令第8条が、政令で定める者を決めている

令第8条は、第18条の第一号・第二号の「政令で定める者」を、次のように定めています。

第1項(第一号の者)です。

法第十八条第一号の政令で定める者は、第六条第二項第二号に掲げる事業所において使用する特定介護保険施設等職員とする。

第2項(第二号の者)です。

法第十八条第二号の政令で定める者は、第六条第二項第一号に掲げる施設において使用する特定介護保険施設等職員とする。

さらに、令第6条第2項第一号・第二号を見ます。ここに、対象になる施設と事業所の条件が書かれています。

令の規定対象になる施設・事業所の条件
令第6条第2項第一号(令第8条第2項が参照)法第2条第3項第二号に掲げる施設(障害児入所施設)であって、措置がとられた児童に関する業務量の割合(措置入所障害児関係業務割合)が零を上回るもの
令第6条第2項第二号(令第8条第1項が参照)法第2条第3項第一号・第三号・第六号または令第2条の2第八号に掲げる事業を行う事業所であって、特定社会福祉事業に関する業務量の割合(特定社会福祉事業割合)が三分の一以上であるもの

ここまでを読んだうえで、整理します。

条文の読みとして、何が言えるか

ここは慎重に読む必要があります。条文の構造から言えることは、次のとおりです。

  1. 第18条は、特定介護保険施設等職員のうち、第一号または第二号の者に限って国の補助の対象にしている
  2. 第一号の者は、令第8条第1項により、令第6条第2項第二号の事業所(障害児通所支援事業・老人居宅生活支援事業の一部・障害福祉サービス事業の一部などを行う事業所で、特定社会福祉事業割合が三分の一以上のもの)で使用する特定介護保険施設等職員
  3. 第二号の者は、令第8条第2項により、令第6条第2項第一号の施設(措置入所障害児関係業務割合が零を上回る障害児入所施設)で使用する特定介護保険施設等職員
  4. 令第8条には、特別養護老人ホームや障害者支援施設は、挙げられていない(令第6条第2項第一号は障害児入所施設、第二号は法第2条第3項第一号・第三号・第六号または令第2条の2第八号の事業を行う事業所)
  5. したがって、これらに当たらない特定介護保険施設等職員は、条文の上では、国の補助の対象に入らない

障がい福祉の事業所の職員には公費助成が及ばない、という整理を目にすることがあるかもしれません。その整理が条文のどこに対応するのかといえば、この第18条の書き分けと、令第8条の限定に行き着きます。

一方で、条文には、対象が「ゼロ」ではない筋道も書かれています。令第6条第2項第二号は、障害福祉サービス事業(法第2条第3項第六号)を行う事業所であっても、特定社会福祉事業割合が三分の一以上なら、その割合に応じた職員数を、特定職員数として扱う書き方です。ただし、この割合が、個々の事業所でどのように算定されるのかは、「厚生労働省令で定めるところにより算定」とされていて、省令の内容はこの記事の抜粋にはありません。したがって、自法人の障害福祉サービス事業所が、この筋道に当たるかどうかは、この記事では判断できません。 機構と所轄庁で確認してください。

割合で按分される仕組み

条文には、按分の仕組みも書かれています。令第6条第2項の各号は、措置入所障害児関係業務従事職員数や特定職員数を「職員数に割合を乗じて得た数(一に満たない端数は切り捨て)」と定めています。

さらに令第9条は、補助金算定対象額の計算を次のように定めています。

  • 当該事業年度における退職手当金の支給に要する費用の額に、
  • 当該事業年度の初日における「社会福祉施設等職員(被共済職員である者に限る)の数、措置入所障害児関係業務従事職員数及び特定職員数を合計した数」を、同日における被共済職員の数で除して得た数を乗じて得た額

言い換えれば、補助金算定対象額は、被共済職員全体のうち「補助の対象になる職員」が占める割合に応じて決まる構造です。補助の対象にならない職員が多いほど、算定対象額の割合が小さくなります。

ここまでの整理

職員の区分国の補助(第18条)の条文上の扱い
社会福祉施設等職員補助の対象として書かれている(ただし補助は「できる」規定)
特定介護保険施設等職員のうち、第一号・第二号に当たる者(令第8条)補助の対象として書かれている
特定介護保険施設等職員のうち、上記に当たらない者条文の上では対象に入らない
申出施設等職員第18条の本文には挙げられていない

最後の行は、第18条本文が「社会福祉施設等職員であるもの及び特定介護保険施設等職員であるもの」と書いていて、申出施設等職員を挙げていないことからの読みです。

掛金にも、区分が反映されている:令第6条

ここまでは公費助成の話でした。区分の違いは、法人が納める掛金にも現れています。掛金の単価や具体的な金額は、この記事では扱いません。ここでは、区分によって掛金の計算の仕方が違うことだけを、条文で確認します。

法第15条は、掛金の額を3つに分けて定めるとしています。

  • 社会福祉施設等職員(被共済職員である者に限る)に係る掛金
  • 特定介護保険施設等職員(被共済職員である者に限る)に係る掛金
  • 申出施設等職員に係る掛金

そして、令第6条第2項は、特定介護保険施設等職員に係る掛金を次のように定めています。

法第十五条第二項第二号に規定する特定介護保険施設等職員に係る掛金の額は、単位掛金額に三を乗じて得た額に当該事業年度の初日において当該共済契約者が使用する特定介護保険施設等職員の数を乗じて得た額とする。

社会福祉施設等職員に係る掛金は、単位掛金額に事業年度の初日の職員数を乗じて得た額(令第6条第1項)。申出施設等職員に係る掛金は、特定介護保険施設等職員と同じく、単位掛金額に三を乗じた額を基礎にします(令第6条第3項)。

条文の書き方を比べると、特定介護保険施設等職員と申出施設等職員は、単位掛金額に「三を乗じた額」を基礎に計算し、社会福祉施設等職員は、単位掛金額のままで計算する、という違いがあります。この「三を乗じる」ことが、施設の区分と、公費助成の有無が掛金の水準に反映される仕組みとつながっています。前の章で見たとおり、単位掛金額は、国と都道府県の補助金の見込額を控除して算定されるためです(令第7条)。

なお、令第6条第2項の各号には、前章で見た措置入所障害児関係業務従事職員数や特定職員数を、この「三を乗じる」計算から差し引いて、通常の単位掛金額で計算する、という按分も書かれています。実際の掛金額を試算するときは、この按分の規定まで含めて計算することになります。掛金の具体的な単位額は、毎事業年度、厚生労働大臣が定めるとされています(令第7条)。この記事では書きません。

掛金の予算化

掛金は、毎事業年度、法人が納めることになります(法第15条第1項)。納付する額の計算は、事業年度の初日に使用している職員の数を基礎にするため、年度の初めの時点で職員数と区分を把握しておく必要があります。掛金の予算への織り込み方は、社会福祉法人の計算書類の記事で扱っている計算書類の考え方とあわせて、法人の会計担当者と確認しておくとよいでしょう。ここでは、会計処理の方法までは踏み込みません。

退職手当金の額と被共済職員期間:第7条から第11条

次に、職員の側から見た「いくら、いつ、どのように支給されるのか」を確認します。ここでも、具体的な金額や支給乗率は書かず、条文の構造だけを整理します。

退職手当金の支給と、一年未満の退職(第7条)

第7条は、被共済職員が退職したときに、機構がその者(死亡によるときは遺族)に退職手当金を支給するとしています。そして、ただし書きで次のように書いています。

ただし、被共済職員となつた日から起算して一年に満たないで退職したときは、この限りでない。

被共済職員となってから一年に満たないで退職したときは、退職手当金は支給されません。 これは、先に見た「一年未満の期間を定めて使用される者は職員の対象から除かれる」(第2条第6項ただし書き)とは、別の規定です。期間を定めない雇用であっても、被共済職員となってから一年未満で退職すれば、支給の対象から外れます。

金額の決まり方(第8条・第9条・第9条の2)

第8条は、金額の決まり方を定めています。構造は次のとおりです。

  • 被共済職員期間が一年以上十年以下、十一年以上十五年以下、十六年以上十九年以下、二十年以上というように、期間の長さで、計算の型が分かれている
  • 期間を区分し、区分ごとに、政令で定める額に一定の割合を乗じて合計する仕組みになっている
  • 割合は、期間が長い区分ほど段階的に変わる書き方になっている

第9条は、業務上の負傷や疾病により政令で定める程度の障害の状態になったことで退職した場合や、業務上死亡したことで退職した場合に、第8条とは別の計算をするとしています。令第4条は、その障害の状態を、厚生年金保険法の障害等級に該当する程度の障害の状態としています。第9条の2は、計算した額が一定の上限を超えるときは、その上限を退職手当金の額とするとしています。

具体的な乗率や金額は、この記事では書きません。退職手当金の額の計算の基礎になる額(令第3条)は、退職の日の属する月の前における、被共済職員期間の計算の基礎となった最後の六月の本俸の総額を六で除して得た額を、区分表に当てはめて決める書き方です。つまり、退職前の本俸の水準が、基礎額に影響する構造になっています。実際の試算には、機構の資料を使ってください。

遺族の範囲と順位(第10条)

被共済職員が死亡により退職したときの受取人は、第10条が定めています。順位は、配偶者(届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む)、次に生計を維持していた子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹、その次に生計を維持していた親族、その次にそれ以外の子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹、という順序です。同順位の遺族が2人以上いるときは、人数で等分して支給されます。

被共済職員期間の計算:第11条

人事の実務に最も直結するのが、第11条です。ここで、退職手当金の額を左右する「被共済職員期間」の数え方が決まります。

月単位で数える(第1項)

被共済職員期間を計算する場合には、月によるものとし、その者が被共済職員となつた日の属する月から被共済職員でなくなつた日の属する月までをこれに算入する。

日割りではなく、月単位です。被共済職員となった日の属する月から、被共済職員でなくなった日の属する月までが算入されます。

従事日数が十日以下の月は算入しない(第2項)

前項の場合において、その者が被共済職員となつた日の属する月から被共済職員でなくなつた日の属する月までの期間のうちに、その者が当該共済契約対象施設等の業務に従事した日数が十日以下である月があるときは、その月は、同項の規定にかかわらず、被共済職員期間に算入しない。

月に業務に従事した日数が十日以下の月は、被共済職員期間に算入されません。ここで、出勤の実績を月単位で把握しておく必要が生じます。第21条の届出にも、「業務に従事した日数」が挙げられています。

休業の期間の扱い(第3項・第4項)

休業した月をどう扱うかも、条文が細かく書いています。

  • 業務上負傷し、または疾病にかかり、療養のために業務に従事しなかった期間、介護休業により業務に従事しなかった期間、女子である被共済職員の出産前六週間(多胎妊娠の場合は十四週間)及び出産後八週間の期間は、第2項の適用については、業務に従事したものとみなす(第3項)
  • 育児休業などにより業務に従事しなかったときは、従事しなくなった日の属する月から従事することとなった日の属する月までの月数の二分の一に相当する月数が、被共済職員期間に算入される(第4項)

育児休業と介護休業で扱いが違うことは、条文を見ないと気づきにくい点です。休業から復帰した職員の期間を確認するときは、休業の種類を区別して記録しておく必要があります。

期間の合算(第5項から第8項)

退職と再雇用が繰り返された場合の期間の通算は、次のように書かれています。

  • 被共済職員でなくなった日の属する月に、さらに被共済職員となった場合は、二重には算入しない(第5項)
  • 引き続き一年以上被共済職員であった者が、契約の解除(第6条第2項第二号・第三号、第3項から第5項)により被共済職員でなくなり、一箇月以内にさらに被共済職員となって引き続き一年以上被共済職員であったときは、その間引き続き被共済職員であったものとみなす。一箇月を超え、五年以内に再び被共済職員となって引き続き一年以上被共済職員であったときは、前後の期間を合算する(第6項)
  • 引き続き一年以上被共済職員である者が、共済契約対象施設等以外の施設や事業の業務に常時従事することを要するものとなったこと、その他政令で定める理由により退職した場合に、退職の日から五年以内に、退職手当金を請求しないで再び同じ共済契約者の被共済職員となったときは、前後の期間を合算する(第7項。令第5条は、兼務の場合について、勤務時間の合計が共済契約対象施設等の業務に常時従事する者の一週間の勤務時間に見合う場合に限る旨を書いています)
  • 第7項の場合のほか、引き続き一年以上被共済職員である者が退職した場合(支給の制限を受ける場合を除く)に、退職の日から三年以内に、退職手当金を請求しないで再び被共済職員となり、かつ、その者が機構に申し出たときは、前後の期間を合算する(第8項)

第8項は、職員本人が機構に申し出ることが要件に入っています。法人本部としては、再雇用した職員に、この申し出の仕組みがあることを伝えられるかどうかが、実務上のポイントになりえます。申し出の方法そのものは、この記事の抜粋にはありません。

一年未満の端数(第9項)

被共済職員期間(前三項の規定により二以上の被共済職員期間を合算すべき場合には、合算後の被共済職員期間)に一年未満の端数がある場合には、その端数は、切り捨てる。

合算した後の期間に、一年未満の端数があれば切り捨てられます。 月で数えた期間を、最後に年単位で切り捨てる構造です。

経営者が変わったとき:第2条第12項・第13項

法人の合併や事業の譲渡などで、施設や事業の経営者が変わる場合の職員の期間の通算は、第2条第12項と第13項が定めています。

  • 社会福祉施設または特定社会福祉事業の経営者に変更が生じた場合で、変更前の経営者がその時まで退職手当共済契約を締結しており、変更後の経営者がその時から契約を締結したときは、引き続き変更後の経営者に係る被共済職員となった者は、変更前から引き続き被共済職員であったものとみなす(第12項)
  • 特定介護保険施設等または申出施設等の経営者に変更が生じた場合は、上記に加えて、変更後の経営者が、その時に、その施設や事業について第3項または第4項の申し出をしたときに、同様にみなす(第13項)

第13項の「その時に申し出をしたとき」という要件は、事業を承継する側の法人にとって重要です。特定介護保険施設等と申出施設等については、承継のタイミングで申し出をしておかないと、職員の期間の通算がみなされない構造になっています。事業を受け継ぐ前に、この要件を機構に確認しておく必要があります。

法人本部にかかる事務の義務

ここまでで、制度の中身は見えてきました。ここからは、法人本部が日々行うことになる事務を、条文の義務として確認します。

掛金の納付:第15条から第17条

毎事業年度、掛金を納付する(第15条第1項)

共済契約者は、毎事業年度、機構に掛金を納付しなければならない。

納付期限は、原則として五月三十一日(第16条第1項)

毎事業年度に納付すべき掛金の納付期限は、当該事業年度の五月三十一日とする。

新たに契約を締結した場合は、ただし書きが別の期限を定めています。

ただし、新たに退職手当共済契約が締結された場合における当該契約の申込みの日又はその承諾の日が属する事業年度分の掛金にあつては、機構が当該契約の申込みを承諾した日から起算して二箇月を経過する日とする。

また、災害その他やむを得ない理由により期限までに納付できないと機構が認めるときは、納付期限を延長することができるとされています(同条第2項)。

納付が遅れると:割増金と契約の解除

納付を怠った場合の効果が、2つの条文に分かれて書かれています。

1つ目は割増金です。第17条第1項は、次のとおりです。

機構は、掛金の納付義務者が掛金をその納付期限までに納付しなかつたときは、その納付義務者に対し、割増金を請求することができる。

第2項は、その上限を定めます。

割増金の額は、掛金の額につき年十四・六パーセントの割合で納付期限の翌日から納付の日の前日までの日数によつて計算した額をこえることができない。

2つ目は、契約の解除です。先に見た第6条第2項は、次のような場合にも機構が契約を解除しなければならないとしています。

共済契約者が、納付期限後二箇月以内に掛金を納付しなかつたとき。

つまり、納付期限から二箇月以内に掛金を納付しないと、機構は契約を解除しなければならない、という構造です。「できる」ではなく「しなければならない」と書かれている点に注意してください。

さらに、掛金の未納は、別の場面にも影響します。第4条の2は、掛金が納付期限を超えて未納の共済契約者の申出を、機構が承諾しなくてよい場合として挙げています。第12条は、退職した職員に係る退職手当金の支払を差し止める場合として、掛金の未納を挙げています(後述)。

つまり、掛金の納付は、単に期限までにお金を送る事務ではなく、契約の継続、新しい事業所の申し出、職員への退職手当金の支払のすべてに関わる事務だといえます。掛金は、社会福祉法人の収支予算の中で、年度の初めの資金計画に確実に織り込んでおく項目のひとつです。

掛金は、財政の均衡が前提

なお、掛金の額を決める原則として、第15条第3項は、退職手当金の支給に要する費用の予想額や被共済職員の見込数などに照らして、おおむね五年を通じ財政の均衡を保つことができるものでなければならない、と書いています。掛金の水準が、制度全体の収支の見通しによって決められることが、条文から分かります。

届出:第21条

共済契約者は、厚生労働省令の定めるところにより、被共済職員の異動、業務に従事した日数その他厚生労働省令で定める事項を機構に届け出なければならない。

届け出る事項は、被共済職員の異動と、業務に従事した日数が条文で挙げられています。前章で見たとおり、被共済職員期間の計算は、月ごとの従事日数(第11条第2項)に左右されます。日々の勤怠の記録が、この届出の土台になります。

届出の期限や様式など、具体的な内容は「厚生労働省令の定めるところにより」とされていて、この記事の抜粋には含まれていません。

記録の作成と保存:第22条

この記事で最も強調したいのが、第22条です。記録の作成と保存は、努力目標ではなく、条文で義務とされています。

共済契約者は、その使用する被共済職員ごとに、従業の状況その他厚生労働省令で定める事項に関する記録を作成しなければならない。

共済契約者は、前項の記録を、その作成の日から起算して二年間、保存しなければならない。

整理すると、次のようになります。

義務内容
作成(第1項)被共済職員ごとに、従業の状況その他厚生労働省令で定める事項の記録を作成する
保存(第2項)その記録を、作成の日から起算して二年間、保存する

「被共済職員ごとに」記録を作ること、そして二年間保存すること。 この2つが、法律上の義務として書かれています。前章で見た月ごとの従事日数の判定や、休業期間の扱いは、この記録がなければ確認できません。

立入検査:第23条

記録が本当に作られ、保存されているかは、立入検査で確認される可能性があります。第23条第1項の前半を引用します。

厚生労働大臣又は都道府県知事は、必要があると認めるときは、当該職員をして、経営者の経営する共済契約対象施設等に係る施設若しくは事業所又は経営者の事務所に立ち入つて、被共済職員若しくは掛金に関する事項について関係人に質問させ、

この条文の後半は、これらの事項に関する帳簿書類(電磁的記録で作成や保存がされている場合は、その電磁的記録を含む)を検査させることができる、と続きます。

ここから、3つのことが分かります。

  1. 立入りの対象は、施設や事業所だけでなく、経営者の事務所(法人本部)にも及ぶ
  2. 質問と検査の対象は、被共済職員と掛金に関する事項
  3. 検査の対象となる帳簿書類には、電磁的記録が含まれる。紙で保存していても、電子で保存していても、検査の対象になりうる

また、この権限を行う職員は、身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があるときは提示しなければならず(第23条第2項)、この権限は犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならないとされています(同条第3項)。なお、都道府県が処理する立入検査の事務は、第一号法定受託事務とされています(第26条の2)。

罰則:第28条・第29条

届出、記録、検査の義務には、罰則が付いています。

次の各号の一に該当する者は、二十万円以下の罰金に処する。

その第二号は、次のとおりです。

第二十二条第一項の規定に違反して、記録を作成せず、若しくは虚偽の記録を作成し、又は同条第二項の規定に違反した者

第一号は、届出をせず、または虚偽の届出をした者(第21条の違反)。第三号は、立入検査での質問に答弁せず、もしくは虚偽の陳述をし、または検査を拒み、妨げ、もしくは忌避した者です。第29条は、法人の代表者や従業者などが、その法人の業務に関して違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人にも同じ刑を科すると定めています。

つまり、記録を作らない、虚偽の記録を作る、二年間の保存を守らない、といった事務上の不備は、条文の上では罰則の対象になりえます。 制度の対象になることは、給付を受けるだけでなく、事務の義務を負うことでもある。この両面を、法人本部で共有しておくことが大切です。

時効:第20条

もう1つ、事務に影響する条文があります。第20条は、退職手当金の支給を受ける権利、及び掛金を請求し、または返還を受ける権利は、行使することができる時から五年を経過したときは、時効によって消滅するとしています。請求の機会を逃さないようにする、という点でも、退職した職員の記録は、期間を意識して管理する必要があります。

よく質問を受ける点:譲渡等の禁止、支給の制限、支払の差止め

ここでは、法人本部に職員から質問が来やすい3つの条文を確認します。

退職手当金の権利は譲り渡せない:第14条

退職手当金の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。

権利を譲渡したり、担保に入れたりすることは、条文で禁止されています。差押えも同様です。ただし書きには、例外があります。

ただし、国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない。

原則として差押えもできないが、国税滞納処分による差押えは例外、という構造です。職員から「退職金を担保に借りられるか」といった質問を受けたときは、この条文が根拠になります。

犯罪行為などによる退職は、支給しない:第13条

機構は、被共済職員が自己の犯罪行為その他これに準ずべき重大な非行により退職したときは、退職手当金を支給しない。

支給されない場合が、条文に明示されています。「支給しないことができる」ではなく、「支給しない」と書かれている点に注意してください。第13条第2項は、被共済職員を故意に死亡させた者、及び被共済職員の死亡によって退職手当金の支給を受けるべき者を故意に死亡させた者にも、退職手当金を支給しないと定めています。

また、第11条第8項は、期間の合算の対象から、この支給の制限に該当する場合を除いています。

どのような非行が「重大な非行」に当たるかは、条文の抜粋からは分かりません。個別のケースは、機構に確認してください。

掛金が未納なら、支払が差し止められる:第12条

機構は、退職した被共済職員をその退職時まで使用していた共済契約者が、当該退職の日の属する事業年度(四月一日から翌年の三月三十一日までをいう。以下同じ。)の掛金を納付するまでは、当該退職に係る退職手当金の支払を差し止めることができる。

これは、法人の掛金の納付状況が、退職した職員の退職手当金の支払に影響しうることを示す条文です。職員には落ち度がないのに、法人の納付が済んでいないために支払が差し止められることがありえる。ここでも、掛金の納付管理の重要性が分かります。この条文は「差し止めることができる」と書かれていて、機構の裁量の規定であることも確認しておいてください。

契約の解除と職員への通知:第6条

契約の解除についても、質問が出やすい点があります。共済契約者が契約を解除できるのは、次の場合に限られています。

  • すべての被共済職員の同意を得たとき(第6条第4項)
  • 経営する特定介護保険施設等または申出施設等の業務に従事するすべての被共済職員の同意を得たときは、契約のうち、その同意を得た被共済職員に関する部分(第6条第5項)

契約の解除は、将来に向かってのみ効力を生じます(第6条第6項)。機構が契約を解除したときは、その契約に係る被共済職員に通知しなければなりません(同条第7項)。

契約を新しく結ぶ場面では、機構が契約の締結を拒絶できる場合が、第3条に列挙されています。その中には、契約の申込者に使用されている社会福祉施設等職員または特定介護保険施設等職員につき、中小企業退職金共済法の規定による退職金共済契約が締結されているとき、も含まれています。他の退職金制度との関係や、その制度との比較は、この記事の抜粋の範囲外です。

契約の成立から解除まで:第3条から第6条を時系列で読む

区分と公費助成の話が続いたので、ここで契約そのものの流れを、時系列で整理します。法人本部が、いつ、何を判断する立場になるのかを見るためです。

契約の申込みと、機構が断れる場合(第3条)

新しく契約を結ぼうとする法人にとって、最初の関門が第3条です。

機構は、次に掲げる場合を除いては、退職手当共済契約の締結を拒絶してはならない。

原則は「拒絶してはならない」です。例外として挙げられているのは、次の場合です。

号機構が拒絶できる場合
第一号申込者が、第6条第2項第二号または第3項の規定により契約を解除され、その解除の日から起算して六月を経過しない者であるとき
第二号申込者が共済契約者であったことがある者で、納付期限を超えてまだ納付されていない掛金(割増金を含む)があるとき
第三号申込者に使用されている社会福祉施設等職員または特定介護保険施設等職員につき、中小企業退職金共済法の規定による退職金共済契約が締結されているとき
第四号前三号のほか、厚生労働省令で定める正当な理由があるとき

第一号と第二号は、過去の契約の解除や掛金の未納が、新しい契約に影響する構造を示しています。掛金の納付を怠ることの影響は、その場の割増金だけにとどまらない、ということです。第三号は、他の退職金共済契約との関係を書いたもので、この記事ではこれ以上踏み込みません。

契約の成立と、職員への通知(第4条・第5条)

契約の成立の時期は、第4条第1項が定めています。

退職手当共済契約は、機構が契約の申込みを承諾したときは、その申込みの日において成立したものとみなし、かつ、その日から効力を生ずる。

先に見た特定介護保険施設等の申出と同じく、契約も、承諾の日ではなく申込みの日にさかのぼって成立したものとみなされます。 そして、成立したときは、共済契約者は、遅滞なく、その旨を被共済職員に通知しなければなりません(第4条第2項)。

職員の側の権利については、第5条が短く定めています。

被共済職員及びその遺族は、当然退職手当共済契約の利益を受ける。

職員が個別に申し込む仕組みではなく、法人が契約を結べば、被共済職員とその遺族は「当然」その利益を受ける、という書き方です。法人が契約の当事者になり、職員はその利益を受ける立場にある、という関係が分かります。

契約を解除できる場合とできない場合(第6条)

第6条第1項は、解除の原則を、こう書いています。

機構又は共済契約者は、次項から第五項までに規定する場合を除いては、退職手当共済契約を解除することができない。

解除できるのは、限られた場合だけです。整理すると、次のようになります。

誰がどの場合規定の性格
機構共済契約者が経営者でなくなったとき、納付期限後二箇月以内に掛金を納付しなかったとき、被共済職員につき中小企業退職金共済法の規定による退職金共済契約を締結したとき(第2項)解除しなければならない
機構共済契約者が第28条第一号・第二号の違反行為をしたとき、または従業者が業務に関して同条第三号の違反行為をしたとき(第3項)解除することができる
共済契約者すべての被共済職員の同意を得たとき(第4項)解除することができる
共済契約者特定介護保険施設等または申出施設等の業務に従事するすべての被共済職員の同意を得たとき(第5項)。同意を得た被共済職員に関する部分について解除することができる

ここで、第2項は「しなければならない」、第3項は「することができる」と書き分けられていることに気づくでしょうか。掛金の未納は解除の義務が生じる場合、届出や記録の義務違反は解除の裁量が生じる場合、という区別です。

第3項が引いている第28条は、先に見た罰則の条文です。届出や記録に関する違反が、罰金だけでなく、契約の解除にもつながりうる。条文が、この2つを結びつけていることは覚えておいてよい点です。

なお、解除は「将来に向つてのみ効力を生ずる」とされています(第6項)。過去の期間がさかのぼって消えるわけではありません。

特定介護保険施設等や申出施設等を、部分的にやめる場合

第5項は、特定介護保険施設等や申出施設等について、契約全体ではなく、一部の被共済職員に関する部分だけを解除できることを示しています。ただし、条件は、その施設や事業の業務に従事する「すべての」被共済職員の同意を得ることです。一部の職員だけの同意では足りません。

事業の縮小や廃止を検討するときは、この条件を頭に置く必要があります。手続の詳細は、この記事の抜粋には書かれていないため、機構に確認してください。

職員の権利は、どのように守られているか:第24条・第25条

ここまでは法人の側の義務を中心に見てきました。最後に、職員の側の権利を守る条文も、簡単に確認しておきます。法人本部は、職員から問い合わせを受ける立場でもあるためです。

原簿の閲覧(第24条)

機構は、被共済職員に関する原簿を備え、氏名、被共済職員期間その他厚生労働省令で定める事項を記録しなければならないとされています(第24条第1項)。そして、第2項は職員の権利を定めます。

被共済職員又は被共済職員であつた者は、厚生労働省令の定めるところにより、いつでも前項の原簿の閲覧を請求することができる。

職員本人が、自分の被共済職員期間がどう記録されているかを、いつでも見せてほしいと請求できる。 これは、法人本部にとっても重要な意味を持ちます。法人が届け出た情報と、法人自身の記録が食い違っていれば、職員から問い合わせが来る可能性があるためです。法人が作成し、二年間保存する記録(第22条)が、こうした場面で、期間を確かめる手がかりになります。

紛争のあっせん(第25条)

機構と法人、または機構と職員との間で紛争が生じた場合の仕組みも、条文にあります。

  • 契約の成立や解除の効力、掛金に関して、機構と契約の申込者または共済契約者との間に紛争が生じ、請求があったときは、厚生労働大臣は、その解決についてあっせんをすることができる(第1項)
  • 被共済職員期間や退職手当金に関して、機構と被共済職員、被共済職員であった者、その遺族との間に紛争が生じ、請求があったときも、同様(第2項)

あっせんの手続は、厚生労働省令で定めるとされています(第3項)。この記事の抜粋には含まれていません。

法人でよくある場面を、条文に当てはめてみる

ここまでの条文を、法人本部で起こりがちな場面に当てはめてみます。個別の事情によって結論は変わりうるため、あくまで「条文のどこを確認するか」の練習として読んでください。

場面1:障害福祉サービスの事業所を新しく開設する

新しい事業所を開設するとき、法人本部が確認する順序は次のとおりです。

  1. その事業が、第2条第3項の各号(または令第2条の2)に列挙されているかを確認する。たとえば、共同生活援助や生活介護といった障害福祉サービス事業は、第6号に挙げられている
  2. 列挙されていれば、特定介護保険施設等の候補である。ただし、申し出をしなければ、特定介護保険施設等にはならない
  3. 申し出をするなら、機構の承諾を得る(第4条の2第1項)。承諾されれば、申出のあった日に特定介護保険施設等となったものとみなされる(同条第2項)。承諾を受けたら、遅滞なく職員に通知する(同条第3項)
  4. 職員は、特定介護保険施設等職員に当たる。掛金は、令第6条第2項に従って、単位掛金額に三を乗じた額を基礎に計算される
  5. 国の補助の対象になるかは、令第6条第2項第二号と令第8条第1項に照らして、特定社会福祉事業割合が三分の一以上かを確認する必要がある。割合の算定は省令に委ねられている
  6. 被共済職員ごとに記録を作成し、二年間保存する体制を、開設の準備の段階から整える

この順序で見ると、事業所の開設の準備には、指定申請などの手続のほかに、退職手当共済への申し出という手続が並んで存在することが分かります。指定に関する手続は、介護と障がい福祉の指定更新や障害福祉サービスの体制届の記事で整理しています。退職手当共済の申し出は、退職手当共済法という別の法律に根拠を持つ手続です。開設のチェックリストに別項目として書き添えておくと、漏れが減ります。

場面2:特別養護老人ホーム、障害福祉サービス、保育所を併せ持つ法人

複数の種類の施設や事業を持つ法人では、条文の区分が施設ごとに分かれます。

施設・事業の例第2条の区分申し出との関係
特別養護老人ホーム特定介護保険施設等(第3項第四号)申し出たものに限られる
障害福祉サービス事業(生活介護・共同生活援助など)特定介護保険施設等(第3項第六号)申し出たものに限られる
保育所社会福祉施設(第1項第二号)定義に申し出の文言はない

同じ法人の中でも、勤務先が変われば、職員の区分も、掛金の計算の型も、国の補助の対象になるかどうかも変わりうる、と条文からは読めます。法人本部が、施設ごとに区分を確認する台帳を持っていないと、掛金の見通しも、公費助成の見通しも、施設全体を一括りにした大づかみな話になってしまいます。

たとえば、法人全体の掛金の見込みを立てるときには、事業年度の初日に使用している職員の数を、区分ごとに数える必要があります(令第6条)。区分ごとの人数は、人事の台帳から自動的に出せるようにしておくと、年度初めの作業が軽くなります。

場面3:職員が法人内で異動する

職員が、法人内の別の施設に異動する場面です。

  • 第2条第7項・第6項の定義は、職員が常時従事する業務の施設や事業で区分を定めています。異動によって、勤務先が社会福祉施設から特定介護保険施設等に変われば、職員の区分も変わりうると読めます
  • 異動しても、共済契約対象施設等の範囲内であれば、被共済職員であることに変わりはありません(第2条第11項)
  • 被共済職員の異動は、機構への届出の対象です(第21条)
  • 異動先が共済契約対象施設等以外の施設や事業である場合は、第11条第7項による期間の合算が問題になりうる。令第5条は、兼務の場合について、勤務時間の合計が共済契約対象施設等の業務に常時従事する者の一週間の勤務時間に見合う場合に限る旨を書いている

異動のたびに、区分と届出が動く可能性がある。この条文の構造は、異動が多い法人ほど、記録の整備に手間がかかる理由でもあります。

法人本部のためのチェックリスト

ここまでの内容を、法人本部で使える形に整理します。

施設と事業の区分を確認する

  • [ ] 自法人の施設と事業を一覧にし、第2条の「社会福祉施設」「特定社会福祉事業」「特定介護保険施設等」「申出施設等」のどれに当たるかを、条文の各号と照らして整理したか
  • [ ] 特別養護老人ホーム、障害者支援施設、障害福祉サービス事業の事業所など、特定介護保険施設等の候補について、申し出をしているものとしていないものを区別できているか
  • [ ] 申し出をしたものについて、申出のあった日を記録しているか(効力は申出のあった日に生じる)
  • [ ] 新設した事業所や、承継する事業所について、申し出が必要かを確認したか

職員の区分と期間を把握する

  • [ ] 職員を、社会福祉施設等職員、特定介護保険施設等職員、申出施設等職員のどれに当たるかで区別して把握しているか
  • [ ] 一年未満の期間を定めて使用される職員が、対象から除かれる場合を把握しているか
  • [ ] 月ごとの業務従事日数を記録しているか(十日以下の月は算入されない)
  • [ ] 休業の種類(療養、介護休業、産前産後、育児休業)を区別して記録しているか
  • [ ] 再雇用の職員について、期間の合算に関する申し出の仕組みがあることを伝えているか

公費助成の前提を確認する

  • [ ] 国と都道府県の補助が、いずれも「できる」規定であり、予算の範囲内の裁量であることを、資金計画の関係者で共有しているか
  • [ ] 特定介護保険施設等職員のうち、国の補助の対象になる者(第18条第一号・第二号、令第8条)に、自法人の職員が当たるかどうかを、機構と所轄庁に確認したか

事務の義務を果たす

  • [ ] 掛金の納付期限(原則として五月三十一日)を、年間の予定に入れているか
  • [ ] 新しく契約を締結した場合の納付期限(承諾した日から起算して二箇月を経過する日)を確認したか
  • [ ] 被共済職員の異動と業務に従事した日数を、機構に届け出る体制があるか
  • [ ] 被共済職員ごとの記録を作成し、作成の日から二年間保存しているか
  • [ ] 立入検査で、法人本部の事務所でも、電磁的記録を含めた帳簿書類を示せる状態か
  • [ ] 契約の成立や申出の承諾があったとき、被共済職員に遅滞なく通知しているか

このチェックリストの多くは、日々の勤怠の記録と、施設や事業の区分の記録に行き着きます。記録がそろっていれば、区分の確認も、届出も、立入検査への対応も、ぐっと楽になります。

この記事で書いていないこと

一次情報の範囲を守るために、この記事では次の点を扱っていません。この記事で使った条文の抜粋(社会福祉施設職員等退職手当共済法と同法施行令の本則)に含まれていないためです。

  • 掛金の単価(毎事業年度、厚生労働大臣が定める単位掛金額の具体的な金額)
  • 退職手当金の具体的な支給乗率や、試算した金額
  • 契約の申込みや、特定介護保険施設等・申出施設等の申し出の様式、提出先、締切
  • 福祉医療機構(WAM)の電子届出システムの操作手順
  • 制度の過去の改正の経緯
  • 他の退職金制度(中小企業退職金共済など)との比較
  • 公費助成の実際の交付割合や、各都道府県の補助の有無と水準
  • 特定社会福祉事業割合や措置入所障害児関係業務割合の算定方法(厚生労働省令の内容)
  • 届出や記録に含めるべき具体的な項目(厚生労働省令の内容)
  • 役員が被共済職員に当たるかどうか、会計上の処理の方法

これらは、独立行政法人福祉医療機構の案内と、所轄庁の情報で確認してください。とくに、国の補助の対象に自法人の職員が当たるかどうかは、省令で定められる業務量の割合の算定にも左右されるため、この記事だけで判断せず、必ず確認をお願いします。

まとめ

  • 退職手当共済は、法第2条の定義で、施設と事業が「社会福祉施設」「特定社会福祉事業」「特定介護保険施設等」「申出施設等」に分けられ、扱いが違う
  • 「経営者」は社会福祉法人に限られる(第2条第5項)。共済契約者になれるのは、経営者である
  • 特別養護老人ホーム、障害者支援施設、障害福祉サービス事業などの特定介護保険施設等は、申し出たものに限られ、自動では入らない。効力は「申出のあつた日」に生じる(第4条の2第2項)
  • 国の補助(第18条)は、予算の範囲内で三分の一以内を補助することが「できる」規定。都道府県の補助(第19条)も、当該都道府県の予算の範囲内で「できる」規定である
  • 特定介護保険施設等職員は、第18条第一号・第二号に当たる者(令第8条)に限って国の補助の対象になる。これに当たらない職員は、条文の上では対象に入らない
  • 被共済職員期間は、月単位で数え、従事日数が十日以下の月は算入されない。休業の種類によって扱いが違い、最後に一年未満の端数は切り捨てられる(第11条)
  • 法人本部には、掛金の納付(原則五月三十一日)、届出、被共済職員ごとの記録の作成と二年間の保存という義務があり、違反には罰則がある(第15条・第16条・第21条・第22条・第28条)

退職手当共済の実務は、突き詰めると「どの施設の、どの職員が、いつから、何か月働いたか」を正確に記録し続けることに行き着きます。この記録の考え方は、役員と職員の違いを整理した社会福祉法人の役員報酬の記事や、年度の資金の見通しを立てる社会福祉法人の収支予算の記事ともつながっています。あわせてお読みください。

参考(一次情報)


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退職手当共済の事務は、施設や事業の区分、職員ごとの勤務日数、休業の期間といった記録の積み重ねの上に成り立っています。パレットテクノロジーズは、社会福祉法人様のデジタル化を「現地現物」で伴走支援しています。施設や事業ごとの区分、申し出の日、職員ごとの従事日数や休業の記録を一か所にまとめておくなど、法人本部の記録と管理の負担を、システム側で軽くするお手伝いをしています。ITに詳しい職員がいらっしゃらなくても大丈夫です。

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