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社会福祉法人の資産の総額の変更登記|6月末までの期限と添付書類

社会福祉法人には、毎年かならず発生する登記があります。役員が変わったときの登記でも、定款を変更したときの登記でもありません。「資産の総額」の変更登記です。

決算が固まってから登記までの期間は限られているのに、同じ時期には計算書類の作成、監事監査、決算理事会、定時評議員会、現況報告書の提出が集中します。毎年のことなのに、期限がいつなのかを法人内で聞くと答えが分かれるという話をよくうかがいます。実際、インターネット上には「5月末まで」と書かれた解説も「6月末まで」と書かれた解説も両方あります。

この記事では、条文にさかのぼって期限を確定させ、そこから決算日程をどう逆算するかを整理します。登記申請書の書式そのものは扱いません(法務局が様式を公開しています)。

なぜ社会福祉法人に「資産の総額」の登記が要るのか

出発点は社会福祉法第29条です。

第二十九条 社会福祉法人は、政令の定めるところにより、その設立、従たる事務所の新設、事務所の移転その他登記事項の変更、解散、合併、清算人の就任又はその変更及び清算の結了の各場合に、登記をしなければならない。
2 前項の規定により登記をしなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

条文が「政令の定めるところにより」と言っているとおり、社会福祉法には登記事項も期限も書かれていません。 中身を決めているのは組合等登記令(昭和39年政令第29号)という政令です。

組合等登記令の別表には、登記の対象になる法人と、その法人に固有の登記事項が並んでいます。社会福祉法人の行は次のようになっています。

名称根拠法登記事項
社会福祉法人社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)資産の総額

つまり、社会福祉法人に固有の登記事項は「資産の総額」ただ一つです。これに加えて、組合等登記令第2条第2項が定める共通の登記事項(目的及び業務、名称、事務所の所在場所、代表権を有する者の氏名・住所・資格、存続期間や解散事由を定めたときはその定め)が登記されます。

医療法人や更生保護法人など、別表に並ぶほかの法人にも「資産の総額」が登記事項として置かれています。出資持分のない法人の財産規模を、登記簿で外部から確認できるようにするための仕組みだと理解しておくと、後の話がつながります。

期限は「事業年度末日から3月以内」。2週間ではない

組合等登記令第3条が変更登記の期限を定めています。ここが今回いちばん重要な条文です。

(変更の登記)
第三条 組合等において前条第二項各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その主たる事務所の所在地において、変更の登記をしなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、出資若しくは払い込んだ出資の総額又は出資の総口数の変更の登記は、毎事業年度末日現在により、当該末日から四週間以内にすれば足りる。
3 第一項の規定にかかわらず、資産の総額の変更の登記は、毎事業年度末日現在により、当該末日から三月以内にすれば足りる。

読みどころは3つあります。

1つめ。原則は第1項の「2週間以内」です。 理事長が交代した、事務所を移転した、名称を変えた——こうした変更は、変更が生じてから2週間以内に登記しなければなりません。

2つめ。資産の総額だけが第3項で別扱いになっています。 資産の総額は日々動きますから、動くたびに2週間以内で登記していたら実務が回りません。そこで「毎事業年度末日現在により」——つまり事業年度末日時点の数字を1年に1回だけ登記すればよい、という建て付けになっています。

3つめ。その期限は「当該末日から三月以内」です。 4週間でも、5月末でもありません。

社会福祉法人の会計年度は法律で決まっています。社会福祉法第45条の23第2項です。

2 社会福祉法人の会計年度は、四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わるものとする。

事業年度末日が3月31日で、そこから3月以内ですから、期限は6月30日です。

項目内容根拠
いつの数字か毎事業年度末日現在(3月31日時点)組合等登記令第3条第3項
いつまでに事業年度末日から3月以内(=6月30日)同上
会計年度4月1日〜翌年3月31日社会福祉法第45条の23第2項
ほかの変更登記変更が生じてから2週間以内組合等登記令第3条第1項

「5月末まで」という説明を見かけたら、条文の第2項(出資関係の4週間)と混同しているか、別の法人種別の話が混ざっている可能性があります。社会福祉法人の資産の総額については、政令の文言は「三月以内」です。

「資産の総額」は貸借対照表のどこを見るのか

登記する「資産の総額」は、資産の部の合計額ではありません。 資産から負債を差し引いた額、つまり貸借対照表の純資産の部の合計額です。

ここは毎年つまずくところです。「資産の総額」という言葉から資産の部の合計を拾ってしまうと、登記簿の数字が実態より大きくなります。前年度の登記事項証明書を見て、自法人の貸借対照表の純資産合計と一致しているかを確認しておくと安心です。

登記申請には、その金額を裏づける書面が要ります。資産の総額を証する書面として、財産目録または資産の総額が判明する貸借対照表を添付します。社会福祉法人の場合、財産目録は社会福祉法第45条の34第1項により毎会計年度終了後3月以内に作成することが義務づけられているので、登記のためだけに別の書類を作る必要はありません。

第四十五条の三十四 社会福祉法人は、毎会計年度終了後三月以内に(社会福祉法人が成立した日の属する会計年度にあつては、当該成立した日以後遅滞なく)、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる書類を作成し、当該書類を五年間その主たる事務所に、その写しを三年間その従たる事務所に備え置かなければならない。
一 財産目録

計算書類も同じく3月以内です。第45条の27第2項を引用します。

2 社会福祉法人は、毎会計年度終了後三月以内に、厚生労働省令で定めるところにより、各会計年度に係る計算書類(貸借対照表及び収支計算書をいう。以下この款において同じ。)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。

登記の期限も、財産目録の作成期限も、計算書類の作成期限も、すべて「毎会計年度終了後3月以内」=6月30日でそろっているわけです。ここが日程を組むうえでの肝になります。

日程は「6月30日」から逆算する

6月30日にすべてが同時に締まるということは、登記だけを最後に回すと間に合わなくなるということでもあります。実際の順序はこうなります。

  1. 決算作業を終えて計算書類・財産目録を作成する
  2. 監事の監査を受ける
  3. 決算理事会で計算書類等の承認を得る
  4. 定時評議員会で計算書類の承認を得る
  5. 確定した純資産額で、資産の総額の変更登記を申請する
  6. 現況報告書等をWAMの財務諸表等電子開示システムへ提出する

登記に添付する「資産の総額を証する書面」は、理事会・評議員会を経て確定した計算書類にもとづくものでなければ意味がありません。したがって、決算理事会と定時評議員会の開催日は、6月30日から登記の申請日数を引いて決める必要があります。

計算書類等の備置きにも期限があります。

第四十五条の三十二 社会福祉法人は、計算書類等(各会計年度に係る計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書並びに監査報告(第四十五条の二十八第二項の規定の適用がある場合にあつては、会計監査報告を含む。)をいう。以下この条において同じ。)を、定時評議員会の日の二週間前の日(第四十五条の九第十項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百九十四条第一項の場合にあつては、同項の提案があつた日)から五年間、その主たる事務所に備え置かなければならない。

定時評議員会の2週間前には計算書類等がそろっていなければなりません。招集通知の発送もあります。ここから素直に逆算すると、次のような形になります。

時期やること
4月〜5月上旬決算作業、計算書類・財産目録の作成
5月中旬監事監査
5月下旬決算理事会(計算書類等の承認)
6月上旬〜中旬定時評議員会(2週間前までに備置き・招集)
6月下旬資産の総額の変更登記の申請、現況報告書等の提出

「6月末が期限だから6月に入ってから動けばよい」ではなく、5月には理事会が終わっている状態を作らないと回りません。理事会・評議員会の招集手続きについては、社会福祉法人の理事会の成立要件もあわせてご覧ください。

登記を忘れるとどうなるか

社会福祉法第29条第2項が効いてきます。

2 前項の規定により登記をしなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

資産の総額が古いままでも、日々の事業運営がすぐ止まるわけではありません。しかし、登記簿は誰でも取得できる公開情報です。金融機関との取引、補助金の申請、入札への参加など、登記事項証明書の提出を求められる場面で、登記簿の数字が最新の決算と食い違っていれば説明を求められます。

指導監査の場でも、登記事項証明書と計算書類の突き合わせは確認されうる項目です。毎年の作業として組み込んでおくのが確実です。

つまずきやすい3点

1. 「変更がなければ登記しなくてよい」と考えてしまう

資産の総額が前年度とまったく同じ1円単位で一致していれば、変更は生じていないので登記は不要です。ただし実際にそうなることはまずありません。「毎年発生する手続き」として扱うのが安全です。

2. 理事長交代の登記と混同する

理事長(代表権を有する者)の変更は組合等登記令第2条第2項第4号の登記事項で、期限は第3条第1項の2週間以内です。資産の総額の3月以内とは別の期限が動いています。任期満了にともなう改選と決算が重なる年は、2つの期限が並走していることを意識してください。

3. 定款変更に伴う登記と一緒くたにする

定款を変更して名称や事務所の所在場所が変わった場合も登記が必要で、こちらも2週間以内です。所轄庁の認可が要るかどうかも含めて、社会福祉法人の定款変更手続きで整理しています。

事務を軽くする打ち手

打ち手1:6月30日を起点にした年次チェックリストを1枚にする

登記、財産目録、計算書類、現況報告書——期限が同じ6月30日にそろっている書類を1枚にまとめ、それぞれの前提となる会議体(監事監査・決算理事会・定時評議員会)の日付を書き込むだけで、どこがボトルネックかが見えます。毎年ゼロから日程を組み直している法人様ほど効果が出ます。

打ち手2:登記事項証明書の数字を台帳で持つ

「前年度はいくらで登記したか」を毎年探すところから始まると、それだけで時間が溶けます。登記した年度・純資産額・申請日・登記完了日の4項目を台帳として持っておけば、翌年の突き合わせが一瞬で終わります。財産目録や計算書類の保存年限(計算書類は10年、財産目録等は5年)とあわせて管理すると、指導監査の準備にもそのまま使えます。

まとめ

  • 社会福祉法人の登記事項・期限を定めているのは社会福祉法ではなく組合等登記令
  • 別表により、社会福祉法人に固有の登記事項は「資産の総額」だけ
  • 期限は組合等登記令第3条第3項の「毎事業年度末日現在により、当該末日から三月以内」=6月30日。ほかの変更登記の2週間以内とは別
  • 登記する金額は資産の部の合計ではなく純資産の額
  • 添付する「資産の総額を証する書面」は、理事会・評議員会を経て確定した財産目録または貸借対照表
  • 財産目録・計算書類の作成期限も同じ6月30日。5月中に決算理事会を終える日程を組む

参考(一次情報)

※登記申請の具体的な添付書類や書式は、管轄の法務局および法務局が公開する最新の様式をご確認ください。定款で会計年度を別に定めている法人様は、期限の起算日が変わります。


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