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社会福祉法人の評議員選任・解任委員会|構成・任期・議事録の実務

「評議員選任・解任委員会」という名称の規程は、多くの法人の定款にすでに置かれています。委員も任命され、規程も整っている。けれども実際に4年に一度、評議員の改選が近づいたときに、「今回、誰を委員に迎えられるのか」「理事は出席していいのか、それとも避けるべきなのか」で立ち止まる法人様は少なくありません。

この記事では、評議員選任・解任委員会を一から解説するのではなく、まずこの委員会が法律上どこに根拠を置いているのかという構造を整理したうえで、委員に誰を入れられて誰を入れられないのか、いつ開いて何を残すのかという、実際に手続きを回すときに迷う点に重心を置いて整理します。

評議員選任・解任委員会は、実は法律に明記された機関ではない

まず押さえておきたいのは、「評議員選任・解任委員会」という名称そのものは、社会福祉法のどの条文にも登場しないということです。

評議員の選任について、法律が定めているのは次の一文だけです。

第三十九条(評議員の選任)評議員は、社会福祉法人の適正な運営に必要な識見を有する者のうちから、定款の定めるところにより、選任する。

「定款の定めるところにより」——選任の具体的な手続きは、法律ではなく各法人の定款に委ねられています。では、理事や理事会が直接評議員を選んでよいかというと、それは明確に禁じられています。

5第一項第五号の評議員に関する事項として、理事又は理事会が評議員を選任し、又は解任する旨の定款の定めは、その効力を有しない。

理事・理事会が評議員を選んだり解任したりする旨の定款の定めは、それ自体が無効とされる。これが社会福祉法第31条第5項です。評議員会は理事・理事会を牽制する機関であるため、その評議員を理事・理事会が直接選べてしまっては牽制関係が成り立ちません。理事会と評議員会がそれぞれどのような役割を持つかはこちらの記事で整理していますが、評議員選任・解任委員会は、この役割分担を守りながら「では実際に誰がどう選ぶのか」という空白を埋めるために、定款の定めと厚生労働省のQ&Aの運用によって組み立てられてきた仕組みです。「法律に書かれた機関ではないが、法律の禁止規定を守るために各法人が定款で設ける機関」——この構造を最初に理解しておくことが、以降のすべての運用ルールを読み解く土台になります。

委員の構成——外部委員は必須、監事・事務局員は必須ではない

委員会に誰を入れるかについて、Q&Aは次のように整理しています。

問9 評議員選任・解任委員会において、監事・事務局員・外部委員を委員にしないことは可能か。
(答)
1.監事・事務局員を委員としないことは可能であるが、評議員選任・解任委員会が法人関係者でない中立的な立場にある外部の者が参加する機関であることから、少なくとも外部委員 1 名を委員とすることが適当である。

監事や事務局員を委員に入れないことは差し支えありませんが、外部委員だけは少なくとも1名、必須です。 法人関係者だけで構成された委員会では、評議員選任・解任委員会が本来担うはずの「中立的な立場からのチェック」が働きません。

事務局員については、法人の職員が担うこと自体は認められています。

問8 評議員選任・解任委員である事務局員に法人の職員がなることは可能か。
(答)
1.事務局員に法人の職員(介護職員等を含む。)がなることは可能である。

介護職員等を含め、法人の職員が事務局員を務めること自体に問題はありません。人数については、次のとおりです。

問 11 評議員選任・解任委員の人数に制限はあるのか。
(答)
1.評議員選任・解任委員の人数については、法人の規模等に応じて、各法人において判断することとなる。
2.ただし、評議員選任・解任委員会は合議体の機関であることから、3 名以上とすることが適当である。

法定の人数制限はありませんが、合議体である以上、3名以上が目安とされています。ここまでを整理すると、次のようになります。

委員の種別委員にできるか根拠
外部委員少なくとも1名は必要問9
監事委員としないことも可能問9
事務局員(法人職員・介護職員等を含む)委員となることは可能問8
理事不可(議決には加われない。説明のための出席は可)問6・問7・問10
評議員原則不可(次の評議員にならないことが明らかなら可)問10・問12-2

理事と評議員については、それぞれ個別の事情があります。次の章で詳しく確認します。

理事は委員になれない。評議員も原則不可、ただし「出席」はできる

理事は評議員選任・解任委員になれません。 根拠は先ほど確認した法第31条第5項です。

問6 理事が評議員選任・解任委員となることは可能か。
(答)
1.理事又は理事会が評議員を選任する旨の定款の定めは無効であることから(法第31条第5項)、理事が評議員選任・解任委員となることは認められない。

評議員についても、理事とは理由が異なりますが、原則として委員になることは認められていません。

問 10 理事、評議員は評議員選任・解任委員になることは可能か。
(答)
1.理事については、理事又は理事会による評議員の選任・解任を禁止した法第 31 条第 5項の趣旨を踏まえ、認められない。
2.評議員については、自分を選任・解任することになるため、適当ではない。

評議員が委員を兼ねると、自分自身の再任・解任を自分で判断することになってしまうため、「適当ではない」という位置づけです。ただし、これには例外があります。

問 12-2 評議員が評議員選任・解任委員会の委員になることは、「自分を選任・解任することになるため、適当ではない」(問10)とあるが、当該評議員が、次の評議員に選出されないことが明らかな場合は、委員となる事が可能と考えて良いか。【8/22 付けブロック別担当者会議 FAQ 問1同旨】
(答)
1.法人の判断で、次の評議員にならない者を選任・解任委員にすることは差し支えない。

次の評議員にならないことが明らかな評議員(任期満了で退任することが決まっている評議員など)であれば、法人の判断で委員にすることは差し支えないとされています。

ここで実務上もっとも混同しやすいのが、「理事は委員になれない」ことと「理事は委員会に出席できない」ことはイコールではないという点です。

問7 評議員選任・解任委員会に理事は出席できるのか。
(答)
1.理事又は理事会が評議員を選任する旨の定款の定めは無効(法第 31 条第5項)とする法の趣旨から、理事が評議員選任・解任委員会の議決に加わることは認められず、議事に影響を及ぼすことは適当でない。
2.他方、評議員選任候補者等の提案は理事会の決定に従い、理事が行うことが通常と考えられることから、その提案の説明・質疑対応のために理事が出席することは可能である。

理事は議決に加わることはできませんが、候補者の提案について説明したり、質疑に対応したりするために出席することは可能です。 「理事は委員会に一切関わってはいけない」と誤解して候補者の提案説明の場を持たずに進めてしまうケースと、逆に理事が議決の場に居座ってしまうケース。どちらも本来の趣旨からは外れます。「出席はできるが、議決には加われない」——この線引きを、委員会の運営規程や進行表に明文で残しておくことが実務上のポイントです。

常時設置が適当。委員の任期は理事・評議員の任期を参考に

評議員選任・解任委員会は、そもそも都度設置してよいのか、常に置いておくべきなのか。Q&Aは次のように答えています。

問1 評議員選任・解任委員会を置く場合は、常時設置としなければならないのか。それとも、必要に応じその都度設置することができるものなのか。
(答)
1.評議員が欠けた場合等に迅速に対応できるよう、常時設置することが適当である。

評議員が任期途中で欠けるといった事態にも迅速に対応できるよう、常時設置が適当とされています。常時設置する以上、委員自身の任期も問題になります。

問2 評議員選任・解任委員会を常時設置する場合、委員の任期を設ける必要はあるか。
(答)
1.常時設置する場合には、理事や評議員の任期を参考に委員の任期を設けることが適当である。

委員の任期そのものを法律が定めているわけではなく、「理事や評議員の任期を参考に」設けることが適当、という位置づけです。裏を返せば、法人ごとに委員の任期を定款や規程で明文化しておかないと、「この委員はいつまでの任期なのか」が誰にも分からない状態になりかねません。

招集は理事会の決定を経て理事が行う。議案の提案も同様

委員会を誰が招集するかについても、Q&Aに定めがあります。

問3 評議員選任・解任委員会は誰が招集するのか。
(答)
1.評議員選任・解任委員会の招集は、法人運営の状況を把握し、業務執行に関し責任を負う理事会において決定し、理事が行うことが適当である。

委員自身が自発的に招集するのではなく、理事会が招集を決定し、理事が招集の実務を行うという位置づけです。委員そのものの選任についても同様です。

問5 評議員選任・解任委員会の委員は誰が選任するのか。
(答)
1.評議員選任・解任委員は、法人運営の状況を把握し、業務執行に関し責任を負う理事会において選任する方法が考えられる。
2.この場合、特定の理事が委員を選任するとした場合、偏った委員構成となるおそれがあるため、理事会において決定することが適当である。

議題・議案の提案についても、理事会の関与が前提とされています。

問 12 評議員選任・解任委員会における評議員の選任又は解任に係る議題又は議案の提案は誰が行うのか。
(答)
1.評議員の選任又は解任に係る議題又は議案の提案は、理事が行うこととすることが考えられる。
2.その場合、恣意的な評議員の選任又は解任を防止する観点から、理事会の決定を必要とすることが適当である。

招集の決定・委員の選任・議案の提案——いずれも「理事会が決定し、理事が実務を行う」という共通のパターンをとっています。 特定の理事や事務局だけの判断で委員会を動かすのではなく、その都度、理事会の決定という手続きを経ることが、恣意的な運用を防ぐ歯止めになっています。

議事録は10年保存。評議員会の議事録と同じ年限

委員会を開いたら、議事録の作成・保存が必要です。

問4 評議員選任・解任委員会の議事録を作成・保存する必要があるか。
(答)
1.適正な手続により評議員の選任・解任を行ったことについて説明責任を果たすことができるよう、議事録を作成することが適当である。
2.その際、出席委員又は委員長を置く場合には委員長の署名又は押印がされていることが適当である。
3.また、評議員選任・解任委員会の議事録は、評議員会や理事会の議事録と同様に、10年間保存しておくことが適当である。

保存年限は10年間。 これは、評議員会の議事録について社会福祉法が定める年限とそろえられています。

2社会福祉法人は、評議員会の日から十年間、前項の議事録をその主たる事務所に備え置かなければならない。

社会福祉法第45条の11第2項が定める「評議員会の日から十年間」という年限と、評議員選任・解任委員会の議事録の保存年限は同じ考え方に基づいています。評議員会そのものの決議事項についてはこちらの記事で整理していますが、評議員自身の選任・解任は評議員会の決議事項ではなく、この委員会での手続きが起点になります。だからこそ、委員会の議事録も、評議員会・理事会の議事録と同じ10年という物差しで管理しておくことが、説明責任を果たすうえでの基本になります。

委員への報酬は可能

無報酬を前提と思い込まれがちですが、報酬を支払うこと自体は認められています。

問 12-3 評議員選任・解任委員会の委員に報酬を支払うことは可能か。【8/22 付けブロック別担当者会議 FAQ 問 2 同旨】
(答)
1.可能。ただし、社会福祉法人の経理の状況その他の事情を考慮して、不当に高額なものとならないようにすることが適当である。

報酬を支払うことは可能ですが、法人の経理状況等に照らして不当に高額にならないようにするという条件つきです。外部委員に一定の責任と負担を求める以上、報酬の有無・水準は委員会の規程にあらかじめ定めておく事項の一つです。

開催のタイミングは、評議員の任期満了から逆算する

委員会を「いつ開くか」は、委員自身の判断というより、評議員の任期から逆算して決まります。評議員の任期は、社会福祉法第41条が定めています。

第四十一条(評議員の任期)評議員の任期は、選任後四年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時までとする。ただし、定款によつて、その任期を選任後六年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時まで伸長することを妨げない。

原則は選任後4年以内に終了する会計年度の定時評議員会の終結時まで。定款の定めによって、これを最長6年まで伸ばすことができます。つまり、委員会を開くべき周期は、4年サイクルの法人と6年サイクルの法人とで異なります。

あわせて、評議員の資格・員数についても確認しておきます。

2評議員は、役員又は当該社会福祉法人の職員を兼ねることができない。3評議員の数は、定款で定めた理事の員数を超える数でなければならない。

評議員は役員(理事・監事)や法人職員との兼務が禁じられており(第40条第2項)、評議員の数は定款で定めた理事の員数を超える数でなければなりません(同条第3項)。評議員が任期満了で退任する際、この員数を割り込まないよう、後任の評議員候補を委員会で選任・提案しておく必要があります。「委員会をいつ開くか」は、各評議員の選任日と、自法人の定款が定める任期(4年か6年か)から逆算して決まる、という運用の流れになります。

4年(または6年)に一度しか開かないために起きること

評議員選任・解任委員会は、日常的に活動する会議体ではありません。任期が満了に近づいたときにだけ動く、いわば「休眠期間の長い機関」です。ここに、実務上の落とし穴があります。

前回の議事録と委員名簿がどこに保存されているか分からない。委員自身の任期がいつ切れたのか、誰も気づかないまま放置されている。外部委員の連絡先を把握していた担当者が異動・退職し、久しぶりに連絡を取ろうとした際に連絡先が分からなくなっている——いずれも、委員会の活動頻度が低いために起きる、よくある事態です。4年や6年という間隔は、多くの法人の担当者交代のサイクルよりも長く、引き継ぎの網からこぼれ落ちやすいのです。

これを防ぐ方向性はシンプルです。評議員一人ひとりの任期満了日と、それに合わせた委員会の開催予定を、法人全体の年間スケジュールに載せておく。 そして、委員名簿・招集記録・議事録を1か所に集約し、10年という保存年限のあいだ、担当者が変わっても迷わず取り出せる状態にしておく。「体制は整っているが記録が事業所や担当者ごとにバラバラ」という状態は、評議員選任・解任委員会に限らず社会福祉法人の運営全般で起きがちな課題ですが、開催頻度が極端に低いこの委員会では、とりわけ深刻な形で表面化します。

まとめ

  • 評議員選任・解任委員会は、社会福祉法のどの条文にも明記された機関ではない。根拠は法第31条第5項(理事・理事会が評議員を選任・解任する旨の定款の定めは無効)という禁止規定と、それを受けた定款・Q&Aの運用にある
  • 委員構成は、外部委員が少なくとも1名必須、監事・事務局員(法人職員)は委員にしないことも可能、3名以上が目安
  • 理事は委員になれない(議決に加われないが、提案の説明・質疑対応のための出席は可能)。評議員も原則不可だが、次の評議員にならないことが明らかな者は法人の判断で委員にできる
  • 設置形態は常時設置が適当。委員の任期は理事・評議員の任期を参考に設ける
  • 招集は理事会が決定し理事が行う。議案の提案も理事が行い、理事会の決定を必要とすることが適当
  • 議事録は10年間保存。評議員会の議事録(社会福祉法第45条の11第2項)と同じ年限
  • 委員への報酬は可能(不当に高額でないことが条件)
  • 開催のタイミングは、評議員の任期(原則4年、定款で最長6年)満了から逆算して決まる

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参考にした一次情報

※所轄庁によって、定款例の運用や様式に細かな違いがあります。実際の手続きにあたっては、必ず所轄庁の案内をご確認ください。本記事では定款・規程のひな形は扱っていません。

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