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社会福祉法人の財産目録の書き方|様式・記載欄の埋め方と備置きの実務

決算のたびに、貸借対照表はできているのに財産目録で手が止まる。そんな声をよく伺います。

理由はだいたい同じです。財産目録は、貸借対照表にない情報を4つ余分に持っているからです。「場所・物量等」「取得年度」「使用目的等」「取得価額」「減価償却累計額」。これらは会計システムから自動で出てこないことが多く、毎年どこかから引っ張ってきて手で入れ直す作業になります。

この記事では、社会福祉法人会計基準(会計基準省令)と厚生労働省の局長通知を根拠に、財産目録の様式と各欄の埋め方、そして「作ったあと」の手続き(承認・届出・備置き・公表)を整理します。

財産目録は何のための書類か

社会福祉法第45条の34第1項は、社会福祉法人に対して次の4つの書類を作ることを義務づけています。

社会福祉法人は、毎会計年度終了後三月以内に(社会福祉法人が成立した日の属する会計年度にあつては、当該成立した日以後遅滞なく)、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる書類を作成し、当該書類を五年間その主たる事務所に、その写しを三年間その従たる事務所に備え置かなければならない。
一 財産目録
二 役員等名簿(略)
三 報酬等(略)の支給の基準を記載した書類
四 事業の概要その他の厚生労働省令で定める事項を記載した書類

この4つをまとめて「財産目録等」と呼びます(同条第2項)。計算書類(資金収支計算書・事業活動計算書・貸借対照表)とは別のグループなので、条文を追うときは混ぜないようにしてください。

そして、財産目録が持つもうひとつの役割があります。社会福祉充実残額の算定です。社会福祉法第55条の2に基づく控除対象財産の判定を行うため、財産目録には各資産の使用目的を書くことになっています(後述の「使用目的等」欄)。単なる財産の一覧ではなく、充実残額計算の入口の書類だという位置づけです。

様式はどこに書かれているか

会計基準省令(平成28年厚生労働省令第79号)第34条は、こう定めているだけです。

財産目録は、法人全体について表示するものとし、その様式は、社会・援護局長が定める。

つまり省令に様式は載っていません。実際の様式は、局長通知「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の取扱いについて」(平成28年3月31日、最終改正 令和3年11月12日)の別紙4にあります。同通知の「27 財産目録について(会計基準省令第34条関係)」には次のように書かれています。

財産目録は、法人全体を表示するものとする。その様式は別紙4のとおりとする。

ここで大事なのは「法人全体」という点です。拠点区分別・サービス区分別の財産目録は求められていません。拠点別の内訳表を作る計算書類とは考え方が違います。

6つの欄をどう埋めるか

別紙4の様式は、貸借対照表科目に続いて次の欄が並びます。

内容記載のポイント
貸借対照表科目現金預金、土地、建物など貸借対照表の科目に合わせる
場所・物量等「○○銀行○○支店他」「(A拠点)○○市○○町1-1-1」「○○他3台」など資産が具体的に特定できる程度に書く
取得年度「19××年度」建物についてのみ記載する
使用目的等「運転資金として」「第1種社会福祉事業である、○○施設等に使用している」など控除対象財産の判定ができるように書く。負債には記載不要
取得価額金額減価償却資産以外は「-」
減価償却累計額金額減価償却資産(有形固定資産に限る)について記載
貸借対照表価額金額取得価額と減価償却累計額の差額と一致させる

別紙4の「記載上の留意事項」には、実務で迷いやすい点がまとめて書かれています。要点を整理します。

取得年度は建物だけ
「建物についてのみ『取得年度』欄を記載する」とされています。土地や車輌運搬具の取得年度は求められていません。土地の取得年度を調べようとして登記簿を探し始める必要はありません。

減価償却累計額には減損損失累計額を含める
「減価償却累計額には、減損損失累計額を含むものとする」とされています。減損を計上した資産がある法人は、ここで足し込みます。

ソフトウェアは差額で書く
無形固定資産であるソフトウェアについては、「取得価額から貸借対照表価額を控除して得た額を『減価償却累計額』欄に記載する」とされています。減価償却累計額の欄が有形固定資産限定である一方、ソフトウェアだけは差額を入れるという扱いです。

土地・建物が複数あれば拠点区分ごとに行を分ける
「土地、建物が複数ある場合には、科目を拠点区分毎に分けて記載するものとする」とされています。別紙4の記載例も「(A拠点)」「(B拠点)」と拠点名を付けています。

控除対象になるものとならないものは分けて書く
「同一の科目について控除対象財産に該当し得るものと、該当し得ないものが含まれる場合には、分けて記載する」「科目を分けて記載した場合は、小計欄を設けて、『貸借対照表価額』欄と一致させる」とされています。たとえば定期預金でも、寄附者が使途を指定しているものと、指定のないものは行を分けます。

車輌運搬具は会社名と車種を書く。車輌番号は任意
「車輌運搬具の○○には会社名と車種を記載すること。車輌番号は任意記載とする」とされています。預金の口座番号も任意記載です。ここは書かなくてもよい情報なので、毎年転記している法人は見直してよいところです。

重要性の原則が適用される
同通知の「1 重要性の原則の適用について」の末尾には「なお、財産目録の表示に関しても重要性の原則が適用される」とあります。少額の資産を1件ずつ列挙して膨らませる必要はありません。

「使用目的等」欄の書き方が実質的な山場

別紙4の留意事項は、この欄についてこう定めています。

「使用目的等」欄には、社会福祉法第55条の2の規定に基づく社会福祉充実残額の算定に必要な控除対象財産の判定を行うため、各資産の使用目的を簡潔に記載する。

つまりこの欄は、あとで控除対象財産を判定するための根拠として書きます。別紙4の記載例を見ると、書き方の粒度が分かります。

  • 現金:「運転資金として」
  • 土地(基本財産):「第1種社会福祉事業である、○○施設等に使用している」
  • 定期預金(その他の固定資産):「寄附者により○○事業に使用することが指定されている」
  • 投資有価証券:「特段の指定がない」
  • 土地(その他の固定資産):「5年後に開設する○○事業のための用地」
  • 建物(その他の固定資産):「第2種社会福祉事業である、訪問介護事業所に使用している」
  • 積立資産:「将来における○○の目的のために積み立てている定期預金」

ポイントは、「何に使っているか」だけでなく「誰の意思でそう決まっているか」を書き分けていることです。寄附者の指定なのか、法人が将来の事業のために確保しているのか、特段の指定がないのか。この違いが控除対象財産の判定に効いてきます。

前年の財産目録をコピーして金額だけ入れ替える運用をしていると、実態が変わったのにこの欄が去年のままになります。事業を廃止した、用地の開設予定が変わった、積立の目的を見直した——こうした変化はここに反映しなければなりません。「使用目的等」欄の見直しを決算作業のチェック項目に入れておくことをおすすめします。

作ったあとの手続きを間取りで押さえる

財産目録は、作って終わりではありません。承認・届出・備置き・公表の4段階があり、それぞれ根拠条文が違います。

1. 承認(見落としやすい)

社会福祉法施行規則第2条の40第1項はこう定めています。

法第四十五条の三十四第一項第一号に掲げる財産目録は、定時評議員会(法第四十五条の三十一の規定の適用がある場合にあつては、理事会)の承認を受けなければならない。

財産目録は定時評議員会の承認事項です。ここを「理事会の承認だけで足りる」と誤解している法人が少なくありません。カッコ書きの例外は、会計監査人設置法人で計算書類が一定の要件に該当する場合(法第45条の31)です。この場合は理事会の承認となり、計算書類は定時評議員会には報告で足ります。会計監査人を置いていない法人には、この例外は適用されません。

2. 所轄庁への届出

社会福祉法第59条により、毎会計年度終了後3か月以内に、計算書類等と財産目録等を所轄庁に届け出ます。届出の方法は施行規則第9条に3通り定められており、そのうち第3号が、行政機関と独立行政法人福祉医療機構(WAM)の電子計算機に接続された情報処理システムに記録する方法です。実務上は、WAMの財務諸表等電子開示システムに入力する方法がこれに当たります。

3. 備置きと閲覧

法第45条の34第1項により、主たる事務所に5年間、写しを従たる事務所に3年間備え置きます。電磁的記録で作成し、従たる事務所で閲覧請求に応じられる措置をとっている場合は、従たる事務所の備置きは不要です(同条第5項)。

閲覧請求ができるのは「何人も」です(同条第3項)。理事や評議員に限られません。しかも「正当な理由がないのにこれを拒んではならない」とされています。誰から求められても出せる状態にしておく必要があります。

なお、役員等名簿については、評議員以外の者から請求があった場合、個人の住所の部分を除外して閲覧させることができます(同条第4項)。財産目録本体には個人情報が入らないのが通常ですが、名簿とセットで管理している法人は、閲覧用の版を別に用意しておくと安全です。

4. 公表の範囲(財産目録は対象に挙がっていない)

社会福祉法第59条の2第1項第3号は、所轄庁への届出をしたときは「同条各号に掲げる書類のうち厚生労働省令で定める書類の内容」を公表しなければならないとしています。そして施行規則第10条第3項が、その「厚生労働省令で定める書類」を次のとおり限定しています。

  • 法第45条の27第2項に規定する計算書類
  • 法第45条の34第1項第2号に規定する役員等名簿及び同項第4号に規定する書類(一部を除く)

財産目録は、この公表対象書類として列挙されていません。 財産目録は届出の対象であり、誰でも閲覧できる備置きの対象ですが、第59条の2に基づいてインターネットで公表することが義務づけられている書類ではない、という整理になります。

公表の方法はインターネットの利用によることとされ(施行規則第10条第1項)、電子開示システムを通じて届出を行い行政機関等がその内容を公表するときは、法人が公表を行ったものとみなされます(同条第2項)。

整理すると次のようになります。

手続き財産目録根拠
承認定時評議員会(会計監査人設置法人で要件該当時は理事会)施行規則第2条の40
所轄庁への届出対象法第59条、施行規則第9条
主たる事務所での備置き5年間法第45条の34第1項
従たる事務所での備置き写しを3年間(電磁的記録+措置で不要)法第45条の34第1項・第5項
閲覧請求何人も可。正当な理由なく拒めない法第45条の34第3項
インターネットでの公表義務列挙されていない法第59条の2、施行規則第10条第3項

決算作業を軽くする現実的な工夫

財産目録で毎年時間がかかるのは、会計システムの外にある情報を集めるところです。私たちが支援に入るときは、次の順番で手を入れます。

1. 固定資産台帳と財産目録の項目をそろえる
「場所・物量等」と「使用目的等」は、固定資産台帳の備考欄に持たせておけば毎年転記が不要になります。台帳側に欄がなければ追加します。ここを整えるだけで、財産目録の8割は台帳から出せるようになります。

2. 変わったときに直す運用にする
資産を取得したとき・処分したとき・用途を変えたときに台帳の使用目的を更新するルールにします。決算期にまとめて思い出そうとすると、必ず抜けます。

3. 拠点をまたぐ確認をやめる
複数拠点の法人では、「その建物は今どの事業に使っているか」を拠点に電話で確認する作業が発生しがちです。台帳を全拠点で同じ場所を見る形にすれば、この往復がなくなります。

4. 前年版との差分を必ず見る
金額の差分ではなく、「使用目的等」欄の文言の差分を見ます。1年間に事業の変更があったのに文言が同じなら、更新漏れの可能性が高いです。

決算の実務は、現況報告書の作成とも密接に関わります。あわせて整理しておくと、3月決算後の作業全体が見通しやすくなります。

▶ 関連記事:社会福祉法人の現況報告書の書き方

まとめ

  • 財産目録は「財産目録等」4書類のひとつ(法第45条の34第1項)。計算書類とは別グループ
  • 様式は会計基準省令にはなく、局長通知「運用上の取扱い」の別紙4。「27 財産目録について」に「法人全体を表示する」と明記されている
  • 取得年度は建物のみ、減価償却累計額は有形固定資産のみ(減損損失累計額を含む)。ソフトウェアは取得価額と貸借対照表価額の差額を記載
  • 「使用目的等」欄は社会福祉充実残額の控除対象財産を判定するための欄。負債には記載不要
  • 財産目録は定時評議員会の承認事項(施行規則第2条の40)。会計監査人設置法人で要件該当時のみ理事会
  • 備置きは主たる事務所5年・従たる事務所3年。閲覧請求は「何人も」可で、正当な理由なく拒めない
  • インターネットでの公表義務の対象書類には、財産目録は列挙されていない(施行規則第10条第3項)
  • 実務の負担は「会計システムの外にある情報」を毎年集め直すこと。固定資産台帳側に「場所」と「使用目的」を持たせるのが早い

参考(一次情報)


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