「加算の要件は4月から満たしているので、4月分から算定できますよね」
新しい加算を取りにいくときに、必ず一度は出る会話です。答えは、要件を満たした月ではなく、届出をいつ出したかで決まります。そして、その期限は月の15日です。
体制届は、地域名で検索すると自治体ごとの様式と提出先ばかりが出てきます。しかし「いつ出せばいつから算定できるのか」という一番知りたい部分は、国の通知に共通のルールとして書かれています。ここを押さえておけば、自治体の案内も読み解きやすくなります。
この記事では、障害福祉サービスの体制届について、算定を開始できる月の考え方、前年度の実績で決まる加算の例外、そして算定できなくなったときの届出までを、通知の原文から整理します。
体制届は「加算等の算定に係る体制の届出」
体制届(体制等状況一覧表)は、事業所がどの加算を算定できる体制にあるかを都道府県・指定都市・中核市に届け出る書類です。指定申請時の書類とは別のものとして、加算を新しく取るとき、体制が変わったとき、加算を取らなくなったときに提出します。
取扱いを定めているのは、次の通知です。
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(平成18年10月31日 障発第1031001号)
この通知の第一「届出手続の運用」に、以降で扱う内容がまとまっています。
なお、この体制届と、事業所の名称・所在地などが変わったときに出す変更届は別のものです。変更届については、障害者総合支援法第46条第1項が次のように定めています。
指定障害福祉サービス事業者は、当該指定に係るサービス事業所の名称及び所在地その他主務省令で定める事項に変更があったとき、又は休止した当該指定障害福祉サービスの事業を再開したときは、主務省令で定めるところにより、十日以内に、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
変更届は10日以内、体制届は毎月15日が節目、と覚えておくと混乱しません。変更届と重要事項説明書の関係は、重要事項説明書の記事で扱っています。
15日以前なら翌月から、16日以降なら翌々月から
本題です。通知の第一の1⑷は、次のように定めています。
届出に係る加算等(算定される単位数が増えるものに限る。以下同じ。)については、利用者や指定特定相談支援事業者等に対する周知期間を確保する観点から、届出が毎月15日以前になされた場合には翌月から、16日以降になされた場合には翌々月から、算定を開始するものとすること。
表にすると次のとおりです。
| 届出をした日 | 算定を開始できる月 |
|---|---|
| 4月15日(15日以前) | 5月から |
| 4月16日(16日以降) | 6月から |
| 4月30日 | 6月から |
1日の差で、算定開始が1か月ずれます。 月額で数万円の加算であれば、その1か月分がそのまま失われます。
理由も通知に書かれています。「利用者や指定特定相談支援事業者等に対する周知期間を確保する観点から」です。加算がつけば利用者負担も変わります。事業所の都合ではなく、利用者側に知らせる時間を確保するための期限だ、と読むのが正確です。
ここで実務上気をつけたいのが、「届出をした日」ではなく「届出がなされた日」であること、そして通知には要件審査の期間も定められていることです。
届出書類を基に、要件の審査を行い、補正が必要な場合は適宜補正を求めること。この要件審査に要する期間は原則として2週間以内を標準とし、遅くても概ね1月以内とすること(相手方の補正に要する時間は除く)。
書類に不備があれば補正を求められ、その時間は審査期間に含まれません。15日ぎりぎりに出して補正が入ると、受理が16日以降にずれる可能性があります。 余裕をもって、10日前後には出しておく——というのが、多くの法人で実際に採られている運用です。
前年度の実績で決まる加算は「4月中の届出」でよい
例外があります。前年度1年間の実績で当該年度の報酬区分が決まるサービスについては、次のように定められています。
生活介護、就労選択支援、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型又は就労定着支援に係る基本報酬又は加算等は、前年度の実績等に応じて当該年度の基本報酬の算定区分や加算単位数が決まるため、翌年度4月からの基本報酬の算定区分や加算等の届出は4月中に届出を行うことを認めること。
対象は6つのサービスです(生活介護、就労選択支援、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労定着支援)。前年度の3月31日まで実績が確定しないのに3月15日までに出せ、というのは無理があるため、4月中の届出でその年度の4月分から算定できる扱いになっています。
なお、就労継続支援A型の基本報酬の算定区分の届出については、「厚生労働大臣の定める事項及び評価方法の留意事項について」(令和3年3月30日付け障発0330第5号)を参照することとされています。
この例外は、あくまで前年度実績に基づく基本報酬・加算等についてのものです。 年度途中に新しく取る加算は、原則どおり15日のルールで動きます。
生活介護の加算の全体像は生活介護の加算と記録の記事、就労継続支援B型の工賃については工賃の記事で扱っています。
届け出た内容は掲示する。事後調査もある
体制届は「出したら終わり」ではありません。通知の第一の2は、届出事項の公開について次のように定めています。
届出事項については、都道府県(地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市(以下「指定都市」という。)又は同法第252条の22第1項の中核市(以下「中核市」という。)においては、指定都市又は中核市。)において閲覧に供するほか、指定障害福祉サービス事業者等においても利用料に係る情報として指定障害福祉サービス事業所、指定障害者支援施設等又は基準該当障害福祉サービス事業所(以下「指定障害福祉サービス事業所等」という。)で掲示すること。
事業所側にも掲示が求められています。 重要事項説明書や運営規程の掲示は意識されていても、体制届の内容の掲示まで手が回っていない事業所は少なくありません。
さらに、第一の3として「届出事項については、その内容が適正であるかどうか、適宜事後的な調査を行うこと」とされており、あとから確認が入る前提の制度になっています。運営指導の準備については、障害福祉サービスの運営指導の記事をあわせてご覧ください。
要件を満たしていなかったと判明したら、返還になる
事後調査で要件に合致していなかったことが分かった場合の扱いも、明確に書かれています。
事後調査等により、届出時点において要件に合致していないことが判明し、所要の指導の上、なお改善がみられない場合は、当該届出は無効となるものであること。
この場合、それまで受領していた介護給付費・訓練等給付費は不当利得となるため返還措置を講ずることとされ、悪質な場合には指定の取消しをもって対処する、とまで書かれています。
そして、改善がみられた場合であっても、それで済むわけではありません。
また、改善がみられた場合においても、要件に合致するに至るまでは当該加算等は算定しないことはもちろん、要件に合致していないことが判明した時点までに当該加算等が算定されていた場合は、不当利得になるので返還措置を講ずること。
「直したから今後は大丈夫」ではなく、さかのぼって返還が生じます。だからこそ、届出時点で要件を満たしていることを示せる記録が必要になります。
算定できなくなったときこそ、届出が要る
体制届でいちばん抜けやすいのが、実はこちらです。加算を取るときの届出は意識されていても、取れなくなったときの届出は忘れられがちです。通知の第一の5は次のように定めています。
指定障害福祉サービス事業所等の体制について加算等が算定されなくなる状況が生じた場合又は加算等が算定されなくなることが明らかな場合は、速やかにその旨を届出させることとする。
そして、その効力は届出をした日からではありません。
加算等が算定されなくなった事実が発生した日から、算定を行わないものとされています(特定事業所加算および機能強化型サービス利用支援費等については、事実が発生した日の属する月の翌月の初日から)。
さらに、届け出ずに請求した場合の扱いも書かれています。
また、この場合において届出を行わず、当該算定について請求を行った場合は、不正請求となり、支払われた介護給付費等は不当利得となるので返還措置を講ずることになることは当然であるが、悪質な場合には指定の取消しをもって対処すること。
「不正請求」という言葉が使われています。 加算を取り始めるときの届出漏れは算定できないだけで済みますが、取れなくなったときの届出漏れは、性質がまったく違います。
現場でこれが起きるのは、たいてい人が辞めたときや配置が変わったときです。有資格者の退職、研修修了者の異動、常勤換算の割り込み——加算の要件は人に紐づいているものが多く、人事の動きがそのまま加算の要件に影響します。人事の情報と加算の要件がつながっていない法人ほど、この漏れが起きます。
実務としてどう回すか
ここまでを整理すると、体制届まわりで法人が持つべき情報は次のとおりです。
| 持つべき情報 | 用途 |
|---|---|
| 事業所ごとに現在届け出ている加算の一覧 | 取れなくなったときに気づく前提。届出の控えを1か所に集める |
| 加算ごとの要件(誰が・何人・どの資格が必要か) | 人事の動きが要件に触れるかを判断する材料 |
| 加算の要件を支えている職員の一覧 | 退職・異動が出たときに、どの加算に影響するかを即座に引ける |
| 届出日と算定開始月 | 15日ルールで正しく算定を始められているかの確認 |
ある社会福祉法人様では、体制届の控えがすべて紙のファイルで事業所ごとに保管されており、本部では「どの事業所がどの加算を取っているか」を一覧で見られない状態でした。退職者が出るたびに、その人が要件になっている加算がないかを事業所に問い合わせて確認していたのです。この一覧を1か所にまとめたところ、退職の申し出が出た時点で影響する加算がその場で分かるようになりました。特別なシステムではなく、まずは一覧をつくるところからで十分です。
加算は取りにいくときより、失うときのほうが危険です。 取り損ねれば収入が増えないだけですが、取れなくなったのに請求すれば不正請求になります。届出の管理は、その非対称性を意識して組み立ててください。
まとめ
- 加算等の届出は、15日以前なら翌月から、16日以降なら翌々月から算定を開始する。理由は利用者等への周知期間の確保
- 要件審査は原則2週間以内・遅くとも概ね1月以内が標準。補正の時間は含まれないため、15日ぎりぎりの提出は避ける
- 生活介護・就労選択支援・就労移行支援・就労継続支援A型・就労継続支援B型・就労定着支援は、前年度実績に基づくものに限り4月中の届出が認められている
- 届出事項は、事業所でも掲示することとされている
- 事後調査で要件不適合が判明すれば届出は無効となり、さかのぼって返還になる
- 加算等が算定されなくなったときは速やかに届け出る。 届け出ずに請求すれば不正請求になる
- 事業所の名称・所在地等の変更届は10日以内(障害者総合支援法第46条第1項)。体制届とは別のもの
加算の要件と人の情報を、つないで持ちたい法人様へ
パレットテクノロジーズは、社会福祉法人様のデジタル化を「現地現物」で伴走支援しています。事業所ごとの届出済み加算、その要件になっている職員、届出日と算定開始月を1か所に集め、人が動いたときに影響する加算がその場で分かる状態に整えるところからご一緒します。ITに詳しい職員がいらっしゃらなくても大丈夫です。
参考にした一次情報
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(平成18年10月31日 障発第1031001号。令和7年3月31日最終改正)
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)/e-Gov法令検索
※様式・提出先・提出方法(郵送か電子申請か)は自治体ごとに異なります。実際の提出にあたっては、必ず所轄の都道府県・指定都市・中核市の案内をご確認ください。本記事では単位数には触れていません。