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強度行動障害支援者養成研修|基礎・実践・中核的人材と加算の関係

「基礎は何人か受けているんですが、実践を受けた人が異動してしまって」

生活介護の事業所でうかがった言葉です。強度行動障害の支援に関わる加算は、修了者を「何人」「何割」配置しているかが施設基準になっています。研修を受けたこと自体ではなく、いま誰がどこに配置されているかで判定されるため、異動や退職のたびに要件が崩れる可能性があります。

さらに令和6年度から中核的人材養成研修という3つ目の研修が加わりました。基礎・実践との違いや、どの加算に効くのかが分かりにくくなっています。

この記事では、強度行動障害支援者養成研修について、告示が定める科目と時間数・行動援護従業者養成研修との関係・修了証の有効期限・修了者の配置が要件になる加算を整理します。個々の加算の算定要件と記録の作り方は別の記事に譲り、ここでは研修そのものと、法人としての管理に絞ります。

3つの研修の全体像

まず時間数から押さえます。研修の内容は、指定居宅介護の提供に当たる者としてこども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定めるもの等(平成18年厚生労働省告示第538号。以下「居宅介護従業者基準」)と、こども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定める者並びに厚生労働大臣が定める者(平成18年厚生労働省告示第548号)の別表に定められています。

研修内容の根拠合計時間位置づけ
基礎研修居宅介護従業者基準 別表第五12時間直接支援に当たる職員が受ける
実践研修居宅介護従業者基準 別表第八24時間支援計画シート等を作成する立場の職員が受ける
中核的人材養成研修告示第548号 別表17時間事業所内で助言・指導を行う立場の職員が受ける

実践研修の「24時間」は、基礎研修の12時間を含んだ数字です。 別表第八の11科目のうち、最初の5科目(講義2科目・演習3科目)は別表第五とまったく同じ科目・同じ時間数です。実務では「基礎12時間+実践12時間」と数えますが、告示の内容基準としては、実践研修=別表第八の24時間と定められています。

基礎研修(別表第五・12時間)

区分科目時間数
講義強度行動障害がある者の基本的理解に関する講義1.5
講義強度行動障害に関する制度及び支援技術の基礎的な知識に関する講義5
演習基本的な情報収集と記録等の共有に関する演習1
演習行動障害がある者の固有のコミュニケーションの理解に関する演習3
演習行動障害の背景にある特性の理解に関する演習1.5
 合計12

実践研修(別表第八・24時間)

区分科目時間数
講義強度行動障害がある者の基本的理解に関する講義1.5
講義強度行動障害に関する制度及び支援技術の基礎的な知識に関する講義5
講義強度行動障害がある者へのチーム支援に関する講義3
講義強度行動障害と生活の組立てに関する講義0.5
演習基本的な情報収集と記録等の共有に関する演習1
演習行動障害がある者の固有のコミュニケーションの理解に関する演習3
演習行動障害の背景にある特性の理解に関する演習1.5
演習障害特性の理解とアセスメントに関する演習3
演習環境調整による強度行動障害の支援に関する演習3
演習記録に基づく支援の評価に関する演習1.5
演習危機対応と虐待防止に関する演習1
 合計24

「記録に基づく支援の評価に関する演習」が科目として置かれている点に注目してください。強度行動障害の支援では、記録が支援の評価そのものに使われます。加算の算定要件に記録の頻度が組み込まれているのは、この考え方の延長にあります。

実践研修と行動援護従業者養成研修は、告示上まったく同じ内容

ここが実務で最も混同されるところです。居宅介護従業者基準 第1条第7号は、行動援護従業者養成研修をこう定義しています。

行動援護従業者養成研修(知的障害又は精神障害により行動上著しい困難を有する障害者等であって常時介護を要するものにつき、当該障害者等の特性の理解や評価、支援計画シート等の作成及び居宅内や外出時における危険を伴う行動を予防又は回避するために必要な援護等に関する知識及び技術を習得することを目的として行われる研修であって、別表第八に定める内容以上のものをいう。以下同じ。)の課程を修了し、当該研修の事業を行った者から当該研修の課程を修了した旨の証明書の交付を受けた者

行動援護従業者養成研修=別表第八です。そして施設基準告示(後述)は、実践研修を「居宅介護従業者基準別表第八に定める内容以上の研修」と定義しています。

つまり「実践研修」と「行動援護従業者養成研修」は、告示が指している別表が同じです。名前が2つあるのは、根拠となる制度(居宅介護等の従業者要件と、施設系サービスの加算要件)が別だからにすぎません。都道府県によっては、両方の名称で同じ研修を案内しています。

同じ構造で、基礎研修(別表第五)は、重度訪問介護従業者養成研修の内容の一部でもあります。居宅介護従業者基準 第1条第5号は、重度訪問介護従業者養成研修を「別表第二から別表第五までに定める内容以上のもの」と定義しており、その最後の1枚が別表第五です。

ただし、名称が同じ内容でも、修了証は「その研修の課程を修了した旨の証明書」として交付されたものが必要です。告示はいずれも「当該研修の事業を行った者から当該研修の課程を修了した旨の証明書の交付を受けた者」と書いています。内容が同等だから読み替えられる、と自己判断せず、所轄自治体に確認してください。

中核的人材養成研修(17時間)と、令和9年3月末までの限定

令和6年度から加わったのが中核的人材養成研修です。告示第548号 第14号が定義しています。

強度行動障害を有する障害者等の特性の理解に基づき、障害福祉サービス事業を行う事業所又は障害者支援施設における環境調整、コミュニケーションの支援並びに当該障害者等への支援に従事する者に対する適切な助言及び指導を行うための知識及び技術を習得することを目的として行われる研修であって、別表に定める内容以上のもの(次号において「中核的人材養成研修」という。)を修了した者

「当該障害者等への支援に従事する者に対する適切な助言及び指導を行う」——つまり、直接支援ではなく、支援する職員を支える立場の研修です。基礎・実践が「利用者にどう関わるか」であるのに対し、中核的人材養成研修は「事業所のチームをどう回すか」に軸足があります。

科目は次のとおりです(告示第548号 別表)。

区分科目時間数
講義強度行動障害を有する者に対する標準的な支援に関する講義/環境調整に向けたアセスメントに係るシート等の使用方法に関する講義1.5
講義・演習チーム支援及び管理者の役割に関する講義/事業所におけるアセスメントの実施状況の振り返りに関する演習2.5
講義・演習環境調整のプロセスに関する講義/アセスメントに関する演習2.5
講義・演習環境調整に係る計画の策定に関する講義/同 演習2.5
講義・演習環境調整の実践の振り返りに関する演習/環境調整に係る課題の設定及びその改善に関する講義2.5
講義・演習機能的アセスメントに関する講義/機能的アセスメントを踏まえた個別支援計画の作成に関する演習/生活の質の向上に向けた支援に関する講義2.5
演習強度行動障害を有する者に対する標準的な支援に係るチーム支援の実践の振り返りに関する演習3
 合計17

「管理者の役割」「実施状況の振り返り」「実践の振り返り」が並ぶ構成です。受講して終わりではなく、事業所に持ち帰って実践し、また戻って振り返るという設計になっています。

そして、受けられる場所が当面は限られます。 令和6年3月15日のこども家庭庁・厚生労働省告示第3号の附則第7条です。

令和九年三月三十一日までの間は、第十三条の規定による改正後のこども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定める者並びに厚生労働大臣が定める者第十四号に規定する中核的人材養成研修は、同号に規定する研修であって、独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園法(平成十四年法律第百六十七号)第十一条第一号の規定により独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園が設置する施設が行う研修その他これに準ずるものとして厚生労働大臣が認める研修に限るものとする。

2027年3月31日までは、のぞみの園が行う研修(およびこれに準ずるものとして認められた研修)に限られます。 定員が限られるため、受講したい年度の前年度から都道府県への推薦の動きが必要になります。都道府県経由の推薦・選定によることが多いので、募集時期を所轄自治体に確認してください。

修了証に有効期限はない。サビ管の更新研修とは別物

強度行動障害支援者養成研修の修了証には、有効期限や更新の定めが見当たりません。 居宅介護従業者基準(告示第538号)・告示第548号・施設基準告示(告示第551号)のいずれにも、失効や更新に関する規定は置かれていません。

※これは「期限を定めた規定が確認できない」ことによるもので、「有効期限はない」と明記した条文があるわけではありません。

サービス管理責任者の更新研修(実践研修を修了した年度を起点に5年度ごと)とは、まったく別の制度です。 混同して「強度行動障害の研修も5年で切れる」と考えている現場もありますが、そうではありません。サビ管側の期限の数え方はサービス管理責任者等更新研修(期限の数え方・失効時の復帰)で整理しています。

とはいえ、期限がないことと、管理しなくてよいことは別です。次に見るとおり、加算の要件は「人数」と「割合」で判定されるため、人が動くたびに崩れます

修了者の配置が要件になる加算:生活介護の重度障害者支援加算を例に

配置要件を定めているのは、厚生労働大臣が定める施設基準並びにこども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定める施設基準(平成18年厚生労働省告示第551号)です。生活介護の重度障害者支援加算(Ⅱ)(Ⅲ)に係る第6号ヘは次のように定めています。

(2) 指定生活介護事業所等の従業者のうち強度行動障害支援者養成研修(実践研修)(指定居宅介護の提供に当たる者としてこども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定めるもの等(平成十八年厚生労働省告示第五百三十八号。以下「居宅介護従業者基準」という。)別表第八に定める内容以上の研修をいう。以下同じ。)の課程を修了し、当該研修の事業を行った者から当該研修の課程を修了した旨の証明書の交付を受けた者を一以上配置し、支援計画シート等を作成すること。

(3) 指定生活介護事業所等の生活支援員のうち、強度行動障害支援者養成研修(基礎研修)(居宅介護従業者基準別表第五に定める内容以上の研修をいう。以下同じ。)の課程を修了し、当該研修の事業を行った者から当該研修の課程を修了した旨の証明書の交付を受けた者の割合が百分の二十以上であること。

読むべき点は3つです。

  1. 実践研修修了者は「従業者のうち」1以上。職種の限定がありません
  2. 基礎研修修了者は「生活支援員のうち」20%以上分母が生活支援員に限られます。生活支援員以外の職種(看護職員など)は、分母にも分子にも入りません
  3. 支援計画シート等を作成することが、配置と並んで要件になっています

20%要件は、生活支援員が1人増えるだけで崩れることがあります。 生活支援員が9人で基礎研修修了者が2人なら22.2%で満たしますが、生活支援員が11人になると18.2%で割り込みます。採用・異動のたびに再計算が必要な要件です。

さらに、注3・注7の加算に係る第6号トでは、中核的人材養成研修修了者の配置が求められます。

別に厚生労働大臣が定める者を一以上配置し、当該者又は当該者から適切な助言及び指導を受けた実践研修修了者(強度行動障害支援者養成研修(実践研修)の課程を修了し、当該研修の事業を行った者から当該研修の課程を修了した旨の証明書の交付を受けた者をいう。)が、支援計画シート等を作成すること。

この「別に厚生労働大臣が定める者」が中核的人材養成研修修了者であることは、告示第548号 第15号で示されています。同号は、中核的人材養成研修修了者の配置が効く場所を4か所に特定しています。

厚生労働大臣が定める施設基準並びにこども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定める施設基準(平成十八年厚生労働省告示第五百五十一号)第七号ヘのこども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定める者並びに同告示第六号ト、第九号ハ及び第十六号ホの厚生労働大臣が定める者

告示第551号の号対応するサービス
第6号ト生活介護
第7号ヘ短期入所
第9号ハ施設入所支援
第16号ホ共同生活援助

中核的人材養成研修が加算に直結するのは、いまのところこの4つのサービスです。児童系(児童発達支援・放課後等デイサービス・障害児入所支援)の強度行動障害関係の加算については、こども家庭庁長官が定める施設基準に別途規定があります。本記事では扱いません。

生活介護の重度障害者支援加算そのものの算定要件と、記録の作り方は重度障害者支援加算の算定要件と支援計画シートで詳しく整理しています。生活介護の加算全体の見取り図は生活介護の加算と記録で落としやすいポイントをご覧ください。

法人でどう管理するか:「人」ではなく「配置」で持つ

ここまでを踏まえると、管理すべき情報の形が見えてきます。研修の修了状況を職員名簿の属性として持つだけでは足りません。

必要なのは次の3つです。

持つべき情報使いみち
① 職員ごとの修了研修(基礎/実践/中核的人材)と修了年月日、証明書の写し要件を満たす人がいるかの確認、運営指導での提示
事業所ごとの職種別の配置人数(とくに生活支援員の実人数)20%要件の分母
③ ①と②を突き合わせた「いま、この事業所は要件を満たしているか」採用・異動・退職の都度の再判定

①だけを人事の名簿で持っている法人が多いのですが、加算の可否を決めるのは③です。 そして③は、人が動いた瞬間に変わります。

ある社会福祉法人様では、職員マスタに「修了研修」の項目を持たせ、事業所ごとの一覧で「実践研修修了者の人数」と「生活支援員に占める基礎研修修了者の割合」が自動で出るようにしました。 採用の稟議を上げる段階で割合の変化が見えるため、「この人を採用すると20%を割る」ということが事前に分かります。

そこまでできなくても、まず「証明書の写しを1か所に集める」ことが先です。修了証は本人が保管していることが多く、運営指導で求められてから探すことになりがちです。

まとめ

  • 内容の根拠は居宅介護従業者基準(告示第538号)の別表第五・別表第八と、告示第548号の別表。時間数は基礎12時間・実践24時間・中核的人材17時間
  • 実践研修の24時間は基礎研修の12時間を含む。別表第八の最初の5科目は別表第五と同一
  • 実践研修と行動援護従業者養成研修は、告示が指す別表(別表第八)が同じ。基礎研修(別表第五)は重度訪問介護従業者養成研修の内容の一部でもある。ただし修了証は当該研修として交付されたものが必要なので、読み替えは自己判断せず自治体に確認する
  • 中核的人材養成研修は、令和9年3月31日までのぞみの園が行う研修等に限られる(令和6年3月15日告示第3号 附則第7条)。定員が限られるため、受講は前年度からの計画が要る
  • 修了証に有効期限・更新の定めは見当たらない。 サービス管理責任者の更新研修(5年度ごと)とは別の制度
  • 生活介護の重度障害者支援加算(Ⅱ)(Ⅲ)は、実践研修修了者を「従業者のうち」1以上基礎研修修了者を「生活支援員のうち」20%以上(告示第551号 第6号ヘ)。分母が生活支援員に限られる点と、採用のたびに割合が動く点に注意
  • 中核的人材養成研修修了者の配置が加算に効くのは、生活介護(第6号ト)・短期入所(第7号ヘ)・施設入所支援(第9号ハ)・共同生活援助(第16号ホ)の4か所(告示第548号 第15号)
  • 法人が持つべきは、職員ごとの修了研修だけでなく、事業所ごとの職種別配置人数と、その突き合わせによる現在の要件充足状況

参考にした一次情報

※研修の開催回数・申込方法・推薦の手続きは都道府県ごとに異なります。受講の可否や他の研修からの読み替えについては、必ず所轄の都道府県・指定都市にご確認ください。本記事では単位数には触れていません。障害児支援に係る加算の要件は、こども家庭庁長官が定める施設基準に別途定めがあります。


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