お問合せ
note

社福

介護保険の給付制限|条文にない言葉と4つの措置の違いを条文で読む

利用者の被保険者証に、事業所が見慣れない記載があった。市町村から「給付制限がかかっている」と聞いた。そんな場面で、事務担当者やケアマネジャーが最初に困るのは、その「給付制限」が具体的に何を指すのかではないでしょうか。

実は、「給付制限」という言葉は、介護保険法の本則にも、介護保険法施行規則の本則にも、1回も出てきません(2026年10月14日にe-Gov法令検索の条文を数えた結果は、法0回・施行規則0回です。対照として、「滞納」は法に35回、施行規則に12回。「給付額減額」は法に13回、施行規則に16回。「一時差止」は法に4回、施行規則に6回、出てきます)。

世の中で「給付制限」とひとまとめにされているものは、条文の上では4つの別々の措置として置かれています。対象になる人も、きっかけも、効果も、それぞれ違います。この記事では、その違いを条文で整理します。

先に結論を書きます。

  • 保険料の滞納を理由にする措置は、第一号被保険者が対象の支払方法の変更(法第66条)と一時差止(法第67条)
  • 第二号被保険者が対象なのは、介護保険料ではなく医療保険の保険料などの未納を理由にする一時差止(法第68条)
  • 滞納そのものではなく、保険料を徴収する権利が時効で消滅した期間があることを理由にするのが、給付額の減額(法第69条)
  • 具体的な期間の月数は、条文には書かれていません。市町村の案内で確認する部分です

読むのは、介護保険法(以下「法」)と介護保険法施行規則(以下「施行規則」)の条文だけです。政令・厚生労働省令の中身までは読んでいません。

「給付制限」という見出しは、条文にはない

法第66条から第69条は、見出しだけを並べるとこうなっています。

条見出し
第66条保険料滞納者に係る支払方法の変更
第67条保険給付の支払の一時差止
第68条医療保険各法の規定による保険料等に未納がある者に対する保険給付の一時差止
第69条保険料を徴収する権利が消滅した場合の保険給付の特例

見出しの言葉は、「支払方法の変更」「一時差止」「特例」です。「制限」という語は、どこにも使われていません。

この区別が大事なのは、措置が違えば、事業所の請求や利用者への説明が変わるからです。「給付制限がかかっている」という一言だけでは、どの条の措置なのかが分かりません。まず、どの措置なのかを確かめる。これが最初の一手です。

4つの措置を並べて比べる

4つの措置を、条文から読み取れる範囲で一覧にします。

条措置対象きっかけ被保険者証への記載
第66条支払方法の変更第一号被保険者である要介護被保険者等介護保険料の滞納「支払方法変更の記載」
第67条保険給付の支払の一時差止第一号被保険者である要介護被保険者等介護保険料の滞納第1項・第2項には記載の語がない
第68条医療保険の未納に係る一時差止第二号被保険者である要介護被保険者等医療保険各法の保険料・掛金の未納「保険給付差止の記載」
第69条給付額の減額等第一号被保険者である要介護被保険者等保険料徴収権が時効で消滅した期間があること「給付額減額等の記載」

条文はいずれも、「災害その他の政令で定める特別の事情があると認める場合を除き」などの除外を置いています(第69条は第1項のただし書で、同じ趣旨を定めています)。この「特別の事情」の中身は政令に委ねられており、条文だけでは分かりません。

ここから、1つずつ読んでいきます。

第66条:支払方法の変更(第一号被保険者・保険料の滞納)

第66条第1項は、市町村が、保険料を滞納している第一号被保険者である要介護被保険者等に対して、被保険者証へ記載をする、という構造です。長い条文なので、前半部分を引用します。

市町村は、保険料を滞納している第一号被保険者である要介護被保険者等(原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成六年法律第百十七号)による一般疾病医療費の支給その他厚生労働省令で定める医療に関する給付を受けることができるものを除く。)が、当該保険料の納期限から厚生労働省令で定める期間が経過するまでの間に当該保険料を納付しない場合においては、当該保険料の滞納につき災害その他の政令で定める特別の事情があると認める場合を除き、

ここで押さえたい点は3つです。

1つ目は、対象が第一号被保険者であること。2つ目は、きっかけが「納期限から厚生労働省令で定める期間が経過するまでの間に」納付しなかったこと。この期間の具体的な月数は条文には書かれていません。3つ目は、括弧書きで、一定の医療に関する給付を受けることができる人が対象から除かれていること(この括弧書きは、条文に明記された除外です)。

この条文の続きは、被保険者証に「第四十一条第六項…の規定を適用しない旨の記載」をする、と書いています。この記載を、条文は「支払方法変更の記載」と呼んでいます。

第2項は、第1項の期間が経過していなくても、同じ記載を「することができる」と定めます。第1項は「するものとする」、第2項は「することができる」という書き分けです。

第3項は、記載を消除する場面を定めます。滞納している保険料を完納したとき、または滞納額の著しい減少や特別の事情があると認めるときです。施行規則第102条は、その特別の事情があるときの手続を、次のように書いています。

要介護被保険者等は、支払方法変更の記載を受けている場合において、法第六十六条第三項に規定する政令で定める特別の事情があるときは、被保険者証及び当該特別の事情のある旨を証する書類を市町村に提出して同項の規定による支払方法変更の記載の消除を受けるものとする。

そして、効果を定めているのが第4項です。長い条文なので、後半部分を引用します。

については、第四十一条第六項、第四十二条の二第六項、第四十六条第四項、第四十八条第四項、第五十一条の三第四項、第五十三条第四項、第五十四条の二第六項、第五十八条第四項及び第六十一条の三第四項の規定は適用しない。

この「適用しない」と書かれている規定は、条文を見るかぎり、支払の取扱いに関する各条の項です。第41条第6項は、市町村が、利用者に代わって事業者に費用を支払う仕組み(法定代理受領)の規定です。つまり、第66条の措置は、市町村が事業者へ直接支払う仕組みを適用しない、という形で効く条文です。

事業所の請求にどう響くかは、第41条第6項が何をしている規定なのかを知らないと読めません。この点は、同日公開の法定代理受領の記事で条文を追っています。本記事は第41条第6項の条文そのものは読んでいないので、請求の流れの詳細は、そちらをご覧ください。

第67条:保険給付の支払の一時差止(第一号被保険者・保険料の滞納)

第67条は、第66条と同じく、第一号被保険者の保険料の滞納を前提にしています。

第1項と第2項を読むと、第66条と同じく、期間の経過後は「するものとする」、期間の経過前でも「することができる」という2段の構造です。差し止められるのは、「保険給付の全部又は一部の支払」です。

第66条との違いで、実務に近いのは第3項です。

市町村は、前条第一項又は第二項の規定により支払方法変更の記載を受けている要介護被保険者等であって、前二項の規定による保険給付の全部又は一部の支払の一時差止がなされているものが、なお滞納している保険料を納付しない場合においては、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、当該要介護被保険者等に通知して、当該一時差止に係る保険給付の額から当該要介護被保険者等が滞納している保険料額を控除することができる。

つまり、支払方法変更の記載を受けた人が、一時差止もされたうえで、なお滞納を納付しないときに、市町村は、あらかじめ通知して、差し止めた保険給付の額から滞納保険料額を控除できます。第66条と第67条は別々の措置ですが、第3項で段階的につながっています。

なお、第67条第1項・第2項には、被保険者証への記載という言葉が出てきません。事業所が被保険者証で気づける措置は、第66条・第68条・第69条です。

第68条:医療保険の未納に係る一時差止(第二号被保険者)

第66条・第67条とは、対象もきっかけも違うのが第68条です。対象は第二号被保険者、きっかけは介護保険料ではなく、医療保険各法の保険料や掛金の未納です。

市町村は、保険給付を受けることができる第二号被保険者である要介護被保険者等について、医療保険各法の定めるところにより当該要介護被保険者等が納付義務又は払込義務を負う保険料(地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の規定による国民健康保険税を含む。)又は掛金であってその納期限又は払込期限までに納付しなかったもの(以下この項及び次項において「未納医療保険料等」という。)がある場合においては、

この条文の続きで、市町村は被保険者証の提出を求め、被保険者証に記載をすることが「できる」とされています。この記載を、条文は「保険給付差止の記載」と呼んでいます。

支払の一時差止は、第4項に書かれています。

市町村は、第一項の規定により保険給付差止の記載を受けた要介護被保険者等について、保険給付の全部又は一部の支払を一時差し止めるものとする。

第1項は記載を「することができる」、第4項は、記載を受けた人の支払の一時差止を「するものとする」という書き分けです。

第2項は、未納医療保険料等を完納したときなどに、記載を消除すると定めます。第3項は、第66条第4項(支払方法変更の記載を受けた場合に、第41条第6項などを適用しない旨の規定)を準用します。第5項は、市町村が、加入する医療保険者に、納付状況などの情報の提供を求めることができると書いています。

つまり、第二号被保険者の場合、事業所の目の前の被保険者証に記載があっても、原因は介護保険料の滞納ではなく、医療保険の側にあるということです。利用者への説明や、市町村への問い合わせの先を間違えないために、第1項の「未納医療保険料等」という言葉を押さえておく価値があります。

第69条:保険料の徴収権が時効で消滅した場合の給付額の減額

第69条は、ほかの3つとは、きっかけがまったく違います。

滞納しているかどうかではなく、保険料を徴収する権利が時効によって消滅した期間があるかです。条文は、これを「保険料徴収権消滅期間」と呼び、次のように定義しています。

当該期間に係る保険料を徴収する権利が時効によって消滅している期間につき政令で定めるところにより算定された期間

第1項は、市町村が、要介護認定や要支援認定などをしたときに、第一号被保険者である要介護被保険者等に保険料徴収権消滅期間があれば、被保険者証に、認定の結果の記載に併せて、給付額減額等の記載をするものとする、と書いています(ただし、災害などの特別の事情があると認めるときは、この限りではありません)。

つまり、第69条は、認定のタイミングで記載される措置です。施行規則第112条も、この記載は認定の結果を被保険者証に記載する際に行う、と定めています。

減額される給付と、支給されない給付

第69条第1項の記載には、2つの内容が含まれています。給付額の減額と、一部の給付を行わないことです。条文の書き方が少し込み入っているので、該当部分を引用します。

介護給付等(居宅介護サービス計画費の支給、特例居宅介護サービス計画費の支給、介護予防サービス計画費の支給及び特例介護予防サービス計画費の支給、高額介護サービス費の支給、高額医療合算介護サービス費の支給、高額介護予防サービス費の支給及び高額医療合算介護予防サービス費の支給並びに特定入所者介護サービス費の支給、特例特定入所者介護サービス費の支給、特定入所者介護予防サービス費の支給及び特例特定入所者介護予防サービス費の支給を除く。)の額の減額を行う旨並びに高額介護サービス費、高額医療合算介護サービス費、高額介護予防サービス費及び高額医療合算介護予防サービス費並びに特定入所者介護サービス費、特例特定入所者介護サービス費、特定入所者介護予防サービス費及び特例特定入所者介護予防サービス費の支給を行わない旨

整理すると、次のようになります。

区分条文の扱い
居宅介護サービス計画費・介護予防サービス計画費(特例を含む)減額の対象を示す括弧書きの「除く」に入っている。「行わない旨」の列挙には出てこない
高額介護サービス費・高額医療合算介護サービス費など(予防を含む)減額の対象から除かれ、支給を行わない旨の列挙に入っている
特定入所者介護サービス費など(特例・予防を含む)減額の対象から除かれ、支給を行わない旨の列挙に入っている
それ以外の介護給付等減額の対象

居宅介護支援の事業所にとって関係が深い「居宅介護サービス計画費」は、括弧書きで減額の対象から除かれています(これは条文に明記された除外です)。その一方で、どの条で、どのように扱われるかは、条文の別の箇所を読まないと分かりません。この記事では、居宅介護サービス計画費の支給の仕組みそのものは読んでいません。

「百分の九十」が「百分の七十」になる

減額の中身は、第3項に書かれています。記載を受けた日の属する月の翌月の初日から、給付額減額期間が経過するまでの間の利用が対象で、各号に定める規定を適用する場合に、読み替えが行われます。

これらの規定中「百分の九十」とあるのは、「百分の七十」とする。

給付の割合を示す「百分の九十」が「百分の七十」に読み替えられる、という構造です。第4項と第5項は、別の条で読み替えて適用される場合の読み替えを、それぞれ定めています。

第四十九条の二第一項又は第五十九条の二第一項の規定により読み替えて適用するこれらの規定中「百分の八十」とあるのは、「百分の七十」とする。

第四十九条の二第二項又は第五十九条の二第二項の規定により読み替えて適用するこれらの規定中「百分の七十」とあるのは、「百分の六十」とする。

第4項は「百分の八十」を「百分の七十」に、第5項は「百分の七十」を「百分の六十」に読み替えます。いずれも、第3項の「百分の九十」→「百分の七十」とは別の読み替えです。第49条の2・第59条の2が何を定める条なのか、今回は読んでいません。

給付割合の仕組みと、利用できる額の上限は別の話です。サービスの種類ごとの支給限度の考え方は、区分支給限度基準額の記事で整理しています。ただし、第69条の読み替えが支給限度額の計算にどう影響するかは、今回読んだ条文からは分かりません。

給付額減額期間の算定

給付額減額期間とは、条文の定義では、市町村が、政令で定めるところにより、保険料徴収権消滅期間に応じて定める期間です。算定の細目は、施行規則第111条に書かれています。たとえば、施行規則第111条第1項は、すでに記載が行われている人について認定を行った場合で、減額期間が経過していないときは、新しい記載を行わないものとする、と定めています。また、第5項は、月数を算定する際に、1に満たない端数があるときは、切り捨てると書いています。

ただし、算定のもとになる政令(令第33条・令第34条)の中身は、今回の抜粋には含めていません。減額期間が実際に何か月になるのかは、条文からは分かりません。

4つの措置は、いつ・どこで事業所に見えるか

ここまでを、事務担当者の視点でまとめ直します。

  • 被保険者証の記載という形で条文に出てくるのは、第66条(支払方法変更の記載)、第68条(保険給付差止の記載)、第69条(給付額減額等の記載)の3つです。第67条の第1項・第2項は、記載ではなく、市町村が支払を差し止める措置として書かれています
  • 事業所が被保険者証を確認する場面(サービス開始時、更新や変更の認定の後)が、最初に気づく機会になります。ただし、いつ・どの場面で確認すべきかを定めた条文は、今回読んだ範囲にはありません
  • 被保険者証の記載の名前(支払方法変更の記載、保険給付差止の記載、給付額減額等の記載)を読めば、どの条の措置かが特定できます

記載の名前から措置を特定できることは、利用者・家族への説明や、市町村への問い合わせのときに役立ちます。「給付制限と書いてあるのですが」ではなく、「支払方法変更の記載がありますが、請求の扱いはどうなりますか」と聞くことができるからです。

条文に書かれていないこと

ここまで読んだ条文には、次の内容は書かれていません。

  • 滞納から措置までの具体的な期間の月数:法第66条・第67条は「厚生労働省令で定める期間」と書くだけです。数字は厚生労働省令の側にあります。今回は厚生労働省令の該当部分を読んでいません。具体的な期間は、所管の市町村の案内で確認してください
  • 「災害その他の政令で定める特別の事情」の中身:各条は政令に委ねています。今回は政令を読んでいません
  • 給付額減額期間が実際に何か月になるか:算定の細目は施行規則第111条と政令にあります。条文の抜粋だけでは月数は分かりません
  • 市町村ごとの手続・様式:被保険者証の提出を求める方法や通知の書式などは、条文からは分かりません
  • 償還払いの申請方法:介護保険法の本則に「償還払い」という語は出てきません(「償還」は22回)。支払方法の変更を受けた場合に、事業所と利用者の間で費用をどのように精算するかの実務は、条文からは分かりません
  • 請求の実務への影響の詳細:第41条第6項などの条文は今回読んでいないため、各措置が事業所の請求にどう響くかの細部は確かめていません

これらは、所管の市町村の案内や、政令・厚生労働省令、通知で確認する部分です。

まとめ

  • 「給付制限」という語は、介護保険法の本則にも施行規則の本則にも出てこない(実測でどちらも0回)
  • 条文には4つの別々の措置がある。第66条(支払方法の変更)と第67条(一時差止)は第一号被保険者・介護保険料の滞納、第68条(一時差止)は第二号被保険者・医療保険の未納、第69条(給付額の減額等)は保険料徴収権の時効消滅
  • 第66条は、被保険者証に「支払方法変更の記載」をし、第41条第6項などの規定を適用しない。完納などにより消除される(第3項)
  • 第67条第3項は、あらかじめ通知して、一時差止に係る保険給付の額から滞納保険料額を控除できると定める
  • 第68条は、被保険者証に「保険給付差止の記載」をする。きっかけは医療保険の保険料・掛金の未納
  • 第69条は、認定の結果の記載に併せて「給付額減額等の記載」をする。「百分の九十」を「百分の七十」などに読み替え、高額介護サービス費や特定入所者介護サービス費などは支給を行わない旨が書かれている
  • 具体的な期間の月数、特別の事情の中身、市町村ごとの手続、償還払いの申請方法は、条文からは分からない

参考(一次情報)

本記事は法令の条文の構造を整理したもので、個別の利用者への措置の有無や、事業所の請求・運営の判断を示すものではありません。期間、特別の事情、手続の様式などは、所管の市町村の最新の案内と、政令・厚生労働省令・通知をご確認ください。


被保険者証の記載と請求の扱い、利用者ごとに追えていますか

パレットテクノロジーズは、社会福祉法人様のデジタル化を「現地現物」で伴走支援しています。被保険者証の記載の有無と、請求・照会の記録を1つの台帳で管理できる状態に整えるところからご一緒します。ITに詳しい職員がいらっしゃらなくても大丈夫です。

▶ 社会福祉専門IT|社会福祉法人様向けのDX伴走支援

▶ ご相談・お問い合わせはこちら

関連記事

お問い合わせ