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虐待防止委員会の開催回数と議事録|研修の範囲と未実施減算を整理

「虐待防止委員会は年に何回開けばいいのでしょうか」

これは、私たちが事業所の管理者様から最もよく伺うご質問のひとつです。そして、条文を読んでも「年○回」という数字は出てきません

虐待防止委員会は令和4年4月から必置となり、令和6年度の報酬改定では、未実施の場合に所定単位数の1%が減算される扱いになりました。にもかかわらず、開催回数も議事録の様式も国が数字で示していないため、「どこまでやれば足りるのか」が分かりにくい領域です。

この記事では、指定基準の条文と厚生労働省の資料を根拠に、何が義務で、何が裁量なのかを切り分けて整理します。あわせて、毎回の開催を軽くするための記録の持ち方についても触れます。

何が義務づけられているのか(条文の確認)

障がい福祉サービスの場合、根拠は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号)です。居宅介護について定めた第40条の2が、他のサービスにも準用されています。

指定居宅介護事業者は、虐待の発生又はその再発を防止するため、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。
一 当該指定居宅介護事業所における虐待の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。)を定期的に開催するとともに、その結果について、従業者に周知徹底を図ること。
二 当該指定居宅介護事業所において、従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること。
三 前二号に掲げる措置を適切に実施するための担当者を置くこと。

義務は次の3つです。

  1. 委員会を定期的に開催し、その結果を従業者に周知徹底する
  2. 従業者に対する研修を定期的に実施する
  3. 上記を適切に実施するための担当者を置く

条文にあるのは「定期的に」であって、回数の指定はありません。ここが「年何回」と検索される理由です。

介護保険と障がい福祉で、義務の数が違う

見落とされやすい点ですが、介護保険サービスの側は義務が4つあります。根拠は「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)第37条の2です。

指定訪問介護事業者は、虐待の発生又はその再発を防止するため、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。
一 当該指定訪問介護事業所における虐待の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。)を定期的に開催するとともに、その結果について、訪問介護員等に周知徹底を図ること。
二 当該指定訪問介護事業所における虐待の防止のための指針を整備すること。
三 当該指定訪問介護事業所において、訪問介護員等に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること。
四 前三号に掲げる措置を適切に実施するための担当者を置くこと。

義務の内容障がい福祉(省令171号 第40条の2)介護保険(省令37号 第37条の2)
委員会の定期開催+周知徹底
指針の整備規定なし
研修の定期実施
担当者の設置

介護保険側には「虐待の防止のための指針を整備すること」が入っていますが、障がい福祉側の条文にはありません。 高齢と障がいの両方を運営している法人様では、ここを取り違えると「介護側で指針が未整備」という指摘につながります。逆に、障がい側だけを見て「指針は要らない」と判断してしまうのも危険です。

なお、身体拘束等の適正化については、障がい福祉側も第35条の2第3項で指針の整備が義務とされています。「障がい側に指針は一切不要」ではない点にご注意ください。

「定期的に」は結局どう考えるか

回数の数字が条文にないため、実務では次の順で考えることになります。

  1. 自治体の集団指導資料・自己点検シートを確認する(多くの自治体が「年1回以上」など運用上の目安を示しています)
  2. 目安が示されていない場合も、年間計画を立てて実施する
  3. 開催した事実と検討内容が記録として残っている状態にする

厚生労働省の研修資料は、委員会の役割を「1回開いて終わり」ではなく回し続けるものとして説明しています。

1. 虐待防止のための計画づくり
2. 虐待防止のチェックとモニタリング
3. 虐待(不適切な対応事例)発生後の検証と再発防止策の検討

さらに、計画づくりについてはこう書かれています。

年間計画を作り組織的に運営し、進捗管理を行う

つまり、問われているのは回数そのものではなく、年間計画があり、進捗が管理され、記録が残っているかです。「年1回開催しました」という事実だけでは、進捗管理までは示せません。

事業所ごとに開かなくてよい(法人単位で設置できる)

小規模な事業所を複数持つ法人様にとって重要なのが、この取扱いです。厚生労働省の資料は、解釈通知の内容としてこう示しています。

虐待防止委員会の開催に必要となる人数は、事業所の管理者や虐待防止担当者(必置)が参画していれば、最低人数は問わない。事業所単位でなく、法人単位での委員会設置も可であるため、事業所の規模に応じた対応を検討すること。

ここから読み取れる運用は次のとおりです。

  • 法人単位で1つ設置してよい(事業所ごとに別々に開く必要はない)
  • 最低人数の定めはない(管理者と虐待防止担当者が参画していればよい)
  • 条文上、テレビ電話装置等を活用した開催が認められている(遠隔の事業所も参加できる)

厚生労働省の資料は、既存の会議体との併催も効果的な取組として挙げています。

⑥既存の会議体や委員会(定期的な事業所での会議やケースカンファレンス等)の開催に併せて虐待防止委員会を実施する。

身体拘束適正化委員会と一体で運営できる

もうひとつ、事務負担に直結する取扱いです。

虐待防止委員会において、身体拘束等の適正化について 検討することも差し支えない。

虐待防止委員会と身体拘束適正化委員会を別々に招集する必要はありません。ひとつの会議で両方の議題を扱い、議事録上でどちらの検討を行ったかが分かるようにしておけば足ります。

実際の設置状況を見ると、法人単位が過半数です。令和5年度の厚生労働省の検証調査(n=1,558)では、虐待防止委員会の設置状況は法人単位で設置53.3%/事業所単位で設置40.2%/未設置5.6%でした。虐待防止責任者は事業所・施設の管理者(施設長等)が74.1%を占めています。

研修は「外部研修への参加」でも足りる

研修についても、事業所内で自前開催しなければならないわけではありません。

研修の実施は、施設内で行う職員研修及び協議会又は基幹相談支援センター等が実施する研修に事業所が参加した場合でも差し支えない。

厚生労働省の資料は、小規模事業所向けの工夫として次の点も挙げています。

  • 行政機関や基幹相談支援センター等から研修情報を収集し、その機関が実施する研修機会を活用する
  • 地域で研修を行っている大規模な事業所・法人があれば、合同研修に参加する
  • 参加できなかった職員には研修を録画して視聴を促す、または参加者による伝達研修を実施する

研修の対象者についても、資料は範囲を広く取るよう促しています。

・支援員のみならず調理員や運転手、事務職員も対象に
・短時間労働者も対象
・夜勤等の交代制勤務者が参加できる開催方法

「常勤の支援員だけに実施した」という運用では、指摘を受ける余地が残ります。誰が受講し、誰が未受講なのかが名簿で追える状態にしておくことが要点です。

議事録には何を残すか

議事録の様式は国が定めていません。ただし、厚生労働省の資料には、会議体を形骸化させないための具体的な指摘があります。

会議体も適切にPDCAが回るように行わないと、同じことが起きる→最低でも、決定事項、担当、期日は議事録で共有する

「決定事項・担当・期日」の3点が、議事録の最低ラインとして示されているわけです。これを踏まえると、議事録に含めておきたい項目は次のようになります。

項目内容
開催日時・場所(開催方法)オンライン併用ならその旨も記載
出席者管理者・虐待防止責任者が参画していることが分かるように
議題身体拘束適正化を併せて扱った場合はその旨も明記
検討内容チェックリストの集計結果、ヒヤリハット事例の分析など
決定事項何をどう変えるのか
担当誰が実行するのか
期日いつまでに行うのか
従業者への周知方法・周知日条文上の「周知徹底」を満たしたことの記録
前回決定事項の進捗年間計画の進捗管理にあたる部分

最後の2つが抜けやすい項目です。条文は委員会の開催だけでなく「その結果について、従業者に周知徹底を図ること」まで求めています。開催記録はあるが、周知した記録がないという状態は、条文の後半を満たしていないことになります。

未実施だと所定単位数の1%が減算される

令和6年度の報酬改定で、未実施の場合の減算が新設されました。障がい福祉サービス側の内容は次のとおりです。

≪虐待防止措置未実施減算【新設】≫
次の基準を満たしていない場合に、所定単位数の1%を減算する。
① 虐待防止委員会を定期的に開催するとともに、その結果について従業者に周知徹底を図ること
② 従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること
③ 上記措置を適切に実施するための担当者を置くこと

対象は全サービスです。減算要件は指定基準の3つの義務とそのまま対応しています。

介護保険側にも同様の減算があります。

 障がい福祉介護保険
減算の名称虐待防止措置未実施減算高齢者虐待防止措置未実施減算
減算率所定単位数の1%所定単位数の100分の1
要件の数3つ(委員会・研修・担当者)4つ(委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者を定めること)
対象全サービス全サービス(居宅療養管理指導、特定福祉用具販売を除く)

介護保険側の算定要件は、指針の整備を含む4つです。介護保険側の資料では、要件がこう書かれています。

虐待の発生又はその再発を防止するための措置(虐待の発生又はその再発を防止するための委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者を定めること)が講じられていない場合

なお、介護保険側では福祉用具貸与について3年間の経過措置期間が設けられています。

減算率は1%と小さく見えますが、基本報酬の全期間にかかる減算です。年間の給付費が1億円規模の事業所であれば、影響は年間100万円規模になります。「議事録が残っていない」という理由で毎月削られる性質のものだとご理解ください。

運営指導では、どう見られるか

虐待防止の取組は、運営指導の確認項目に含まれています。令和8年6月に厚生労働省が公表した運営指導マニュアルは、確認項目の性質をこう説明しています。

確認項目と確認文書には、個別サービスの質を確認する事項(利用者への適切なケアマネジメント・プロセスに基づいたサービスが提供されているか、虐待・不当な身体的拘束がないかなど)と、個別サービスの質を確保するための事業者等における必要な体制状況(サービスを適切に提供できる組織づくり)という2つの種類があります。

つまり虐待防止は、「書類が揃っているか」(体制)と「現場がどうなっているか」(質)の両面から見られます。同マニュアルには、施設内巡回時に目視で確認するポイントとして「四肢を紐等で縛られていないか」「昼間なのにパジャマのままでいないか」といった項目が具体的に列挙されています。

運営指導の全体の流れと、当日に何を確認されるのかについては、障害福祉サービスの運営指導|令和8年6月の新マニュアルで読む準備で詳しく整理しています。

また、記録の残し方という観点では、個別支援計画のモニタリングと同じ論点が出てきます。あわせて個別支援計画のモニタリング|頻度・記録・未作成減算を条文から整理もご覧ください。

毎年の負担を軽くするための考え方

ここまで整理すると、虐待防止委員会の運営で本当に手間がかかっているのは、委員会そのものではなくその周辺の記録だと分かります。

私たちが伴走支援でお伺いする事業所様では、次のような状態がよく見られます。

  • 議事録はWordファイルで、事業所ごとの共有フォルダに散在している
  • 研修の受講記録は紙の出席簿で、誰が未受講かを数えるのに毎回時間がかかる
  • 職員セルフチェックリストは紙で回収し、集計を手作業でExcelに入力している
  • 前回の決定事項が今どうなっているかは、前回の議事録を開かないと分からない

いずれも「委員会を開く」ことより、「開いたことを示せる状態にしておく」ことに時間を取られている状態です。ここは仕組みで軽くできる部分です。

取り組む順番としては、次の順がおすすめです。

  1. 議事録の置き場所を法人で1か所に決める。年度・事業所・議題で絞り込めるようにする。法人単位で委員会を設置しているなら、置き場所も1か所であるのが自然です
  2. 研修の受講記録を職員名簿と紐づける。「誰が未受講か」が一覧で出るようにする。研修を録画して視聴で代替した場合も、同じ名簿に記録します
  3. セルフチェックリストの回収を紙からフォームに変える。集計が自動になり、経年比較もできるようになります
  4. 決定事項・担当・期日を、議事録本文とは別に一覧で持つ。次回の委員会で進捗をそのまま確認でき、年間計画の進捗管理が成立します

4つ目が、実は最も効果が大きい部分です。厚生労働省の資料が「決定事項、担当、期日は議事録で共有する」と書いているのは、次の会議でその進捗を確認できるようにするためです。議事録の中に埋もれた決定事項は、次回に引き継がれません。

なお、運営指導マニュアルには、ICTで書類を管理している事業者への配慮も明記されています。

ICT で書類管理している事業者等の場合については、電子管理の文書の印刷をもとめることなく、パソコン画面上で確認するなど、事業者等に配慮した方法で文書確認を行います。

電子化しておけば、運営指導のために大量に印刷する必要はありません。 紙で保管しているほうが、かえって当日の準備が重くなる時代になっています。

まとめ

論点結論
開催回数条文は「定期的に」のみ。数字の指定はない。自治体の目安を確認し、年間計画と記録で示す
設置単位法人単位でよい。最低人数の定めもない。テレビ電話装置等の活用も条文上可
身体拘束適正化委員会一体で運営してよい(虐待防止委員会で身体拘束の適正化を検討して差し支えない)
研修事業所内開催に限らず、協議会・基幹相談支援センター等の外部研修への参加でも足りる。対象は調理員・運転手・事務職員・短時間労働者も含む
議事録様式の定めはないが、決定事項・担当・期日が最低ライン。加えて従業者への周知の記録を残す
未実施の場合障がい福祉は所定単位数の1%を減算(虐待防止措置未実施減算)。介護保険は100分の1(要件は指針の整備を含む4つ)
介護と障がいの違い介護保険側は「指針の整備」が義務。障がい福祉側の第40条の2にはない(ただし身体拘束等の適正化については障がい側も指針が義務)

参考にした一次情報

※開催回数の運用上の目安、自己点検シートの様式、提出を求められる書類は自治体ごとに異なります。実際の対応は、必ず指定権者(都道府県・政令市・中核市等)が公表している最新の集団指導資料をご確認ください。


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