送迎車、複合機、介護ロボット、見守りセンサー。法人の事業所では、購入せずにリースで入れている物品が少なくありません。決算のたびに「これは資産に計上するのか、毎月のリース料を費用にするだけでよいのか」「300万円以下なら計上しなくてよいと聞いたが、何の金額が300万円なのか」と迷う経理担当の方は多いと思います。
この記事では、社会福祉法人会計基準の運用上の取扱い(以下「取扱い」)の8と、運用上の留意事項(以下「留意事項」)の20に書かれている範囲だけを使って、リース取引の判定、簡便的な取扱い、利息の配分、勘定科目、注記を整理します。送迎車や複合機などの例では、契約書のどこを見るかも書きます。
なお、取扱いと留意事項は、厚生労働省の法令等データベースに掲載されている平成28年掲載版を確認しました。その後の改正(企業会計で見直されたリース会計の基準への対応を含みます)がこの掲載版に反映されているかは確認できていません。決算で使う前に、所轄庁や顧問の会計士・税理士に、最新の版を確かめてください。
この記事で整理するのは、次の5点です。
- ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引は、どう定義され、契約書のどこで見分けるか
- 土地や建物など不動産のリースは、どう扱うか
- 300万円以下・1年以内のリースは、何を省略できるか
- 利息相当額を各期にどう配分するか。重要性が乏しい場合の2つの方法は何か
- 勘定科目と注記には、何が求められているか
数字を使った例は、すべて弊社が置いた仮の数字です。企業会計のリース会計基準にある判定の数値基準は、今回読んだ範囲には書かれていないので、この記事でも書きません。
先に結論
- 取扱い8は、リース取引をファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分けます。ファイナンス・リースは売買に準じて、オペレーティング・リースは賃貸借に準じて処理します。
- 留意事項20アは、リース取引の会計処理は企業会計のリース会計基準に準じて行うとしています。契約上は賃貸借になっている不動産も、判定の対象です。
- 土地は、所有権の移転条項や割安購入選択権の条項がある場合などを除き、オペレーティング・リースと推定されます。
- リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のもの、またはリース期間が1年以内のものは、資産計上や注記を省略できる簡便的な取扱いができます。
- ファイナンス・リースの資産とリース債務は、原則としてリース料総額から利息相当額を控除した額で計上し、利息相当額は原則として利息法で各期に配分します。
- リース資産総額に重要性が乏しい場合(未経過リース料の期末残高の割合が10%未満)は、利息を控除しない方法か、利息を定額法で配分する方法を使えます。
- 注記は、ファイナンス・リースならリース資産の内容と減価償却の方法、解約不能のオペレーティング・リースなら未経過リース料を1年以内と1年超に分けて書きます。
リース取引の2つの区分
取扱い8の定義
取扱い8は、会計基準第4条第1項(資産の評価)に関係する定めとして置かれています。まず、ファイナンス・リース取引の定義です。
「ファイナンス・リース取引」とは、リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引又はこれに準ずるリース取引で、借手が、当該契約に基づき使用する物件(以下「リース物件」という。)からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引をいう。
もう一方の、オペレーティング・リース取引は、次のとおりです。
「オペレーティング・リース取引」とは、ファイナンス・リース取引以外のリース取引をいう。
つまり、オペレーティング・リースは「ファイナンス・リースでないもの」という定義です。まず、ファイナンス・リースに当たるかどうかを判定し、当たらなければオペレーティング・リースになる、という順序です。
処理の違い
ファイナンス・リースの処理は、次のとおりです。
ファイナンス・リース取引については、原則として、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行うものとする。
オペレーティング・リースの処理は、次のとおりです。
オペレーティング・リース取引については通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うものとする。
整理すると、次のとおりです。
| 区分 | 処理 | 貸借対照表への影響 |
|---|---|---|
| ファイナンス・リース | 売買に準じる | リース資産とリース債務を計上 |
| オペレーティング・リース | 賃貸借に準じる | 計上しない(リース料を費用処理) |
この記事の「貸借対照表への影響」の列は、「売買に準じる」「賃貸借に準じる」という処理から、弊社が分かりやすく書き直したものです。減価償却そのものの考え方は、減価償却の記事で整理しています。
判定は企業会計のリース会計基準に準じる
判定の細かい基準は、どこに書かれているのでしょうか。留意事項20アの冒頭は、次のように定めています。
企業会計においてはリース取引の会計処理はリース会計基準に従って行われる。社会福祉法人においてもリース取引の会計処理はこれに準じて行うこととなる。
つまり、社会福祉法人は、企業会計のリース会計基準に準じて判定します。リース期間や現在価値を使った具体的な数値基準は、今回読んだ取扱いと留意事項には書かれていません。ですので、判定が微妙なリースは、顧問の会計士・税理士に、基準の最新の内容も含めて確認してください。
契約書のどこを見て判定するか
定義に出てくる言葉を、契約書の確認ポイントに置き直します。これは弊社の読み方で、判定そのものは顧問の会計士・税理士と確認してください。
定義には、見るべき観点が3つあります。
- 中途で解約できるか(「契約を解除することができない」「これに準ずる」)
- 経済的利益を実質的に享受できるか(物件を、自分が購入して使うのと同じように使えるか)
- コストを実質的に負担するか(物件の使用に伴うコストを、借手が負うか)
契約書で、見る場所は次のようになります。
| 確認する場所 | 見るポイント | 判定の観点 |
|---|---|---|
| 解約の条項 | 中途解約の可否、解約時の支払い | 解除できるか |
| リース期間と料金 | 期間中の総支払額 | コストの負担 |
| 所有権・購入の条項 | 移転条項、購入選択権の有無 | 利益の享受(土地で特に重要) |
| 保守・メンテナンスの条項 | 料金に保守が含まれるか | 総額の内訳 |
送迎車の場合
送迎車のリースは、福祉施設で典型的です。契約書では、次の点を確かめます。
- 契約期間の途中で解約できるか。解約するときに、残りのリース料を支払う条項があるか
- 月額のリース料の中に、車検費用、税金、保険料、メンテナンス料が含まれているか
- リース期間の終了時に、車を買い取る条項や、割安で購入できる条項があるか
留意事項20アでは、維持管理費用相当額や通常の保守等の役務提供相当額の割合が重要な場合は、その合理的見積額をリース料総額から除くことができるとされています(詳しくは後述します)。ですので、月額の料金の内訳が分かる資料も、契約書と一緒に確認します。
複合機の場合
複合機は、月額の基本料金に、保守料や、印刷枚数に応じたカウンター料金が付く契約がよくあります。ここで確認するのは、次の点です。
- リース料と、保守・消耗品の料金が、契約書や見積書の上で分かれているか
- 中途解約の条項はどうなっているか
- 契約が、複合機本体と、周辺機器(ファクス・フィニッシャーなど)で1件なのか、別々なのか
「1件当たり」の金額で簡便的な取扱いを使うかを決めるため、契約の単位は重要です。契約の単位を分けるだけで簡便的な取扱いを使えるようにする、といった運用はお勧めしません。実態で判断してください。
介護ロボット・見守りセンサーの場合
介護ロボットや見守りセンサーは、機器代に、クラウド利用料や保守料が含まれる契約が増えています。契約書で見るのは、複合機とほぼ同じ観点です。
- 月額に含まれる内訳(機器、通信、サポート)が書かれているか
- 中途解約の可否と、解約時の費用
- 契約の単位(1台ごとか、事業所全体で1件か)
契約が事業所全体で1件の場合は、「1件当たり」のリース料総額で簡便的な取扱いの対象かを見ることになります。補助金を使って導入したときの扱いは、今回読んだ範囲には書かれていないので、この記事では触れません。
不動産・土地のリース
リース取引は、物品だけではありません。留意事項20アは、不動産についても次のように書いています。
土地、建物等の不動産のリース取引(契約上、賃貸借となっているものも含む。)についても、ファイナンス・リース取引に該当するか、オペレーティング・リース取引に該当するかを判定する。
つまり、建物の賃貸借契約も、判定の対象です。ただし、土地は特別に扱われます。
ただし、土地については、所有権の移転条項又は割安購入選択権の条項がある場合等を除き、オペレーティング・リース取引に該当するものと推定することとなる。
ここで、「推定」という言葉が使われています。土地は、原則としてオペレーティング・リースと推定され、所有権の移転条項や割安購入選択権の条項がある場合などは、その推定が働かない、という構造です。事業所の土地を借りているときは、契約書に所有権の移転や購入選択の条項がないかを確かめます。
少額・短期のリースの簡便的な取扱い
300万円以下と1年以内
留意事項20アの続きは、次のとおりです。
なお、リース契約1件当たりのリース料総額(維持管理費用相当額又は通常の保守等の役務提供相当額のリース料総額に占める割合が重要な場合には、その合理的見積額を除くことができる。)が300万円以下のリース取引等少額のリース資産や、リース期間が1年以内のリース取引についてはオペレーティング・リース取引の会計処理に準じて資産計上又は運用上の取り扱い第8に記載されている注記を省略することができる等の簡便的な取扱いができるものとする。
読み取れることは、次の4つです。
- 金額は、リース契約1件当たりのリース料総額で見る
- 維持管理費用相当額や通常の保守等の役務提供相当額の割合が重要な場合は、その合理的な見積額を除いてよい
- 300万円以下の少額のリース資産と、リース期間が1年以内のリース取引が対象
- 内容は、オペレーティング・リースの処理に準じて資産計上を省略する、または取扱い8の注記を省略する
整理すると、次のとおりです。
| 条件 | できること | 根拠 |
|---|---|---|
| 1件300万円以下 | 資産計上や注記の省略 | 留意事項20ア |
| 期間が1年以内 | 資産計上や注記の省略 | 留意事項20ア |
ここで押さえたい点は2つです。
- 300万円は、リース物件の価格ではなく、リース契約1件当たりのリース料総額です。月額に期間を掛けた総額を見ます
- 保守料の見積りを除く場合は、「その割合が重要な場合」という条件があります。重要性の目安は書かれていません
仮の数字で、300万円の判定を確かめる
次の仮の契約で考えます(すべて弊社の例です)。
- 複合機のリース:月額5万円、期間5年(60か月)
- 月額のうち、保守料が1万円分と契約書に書かれている
リース料総額は、5万円 × 60か月 = 300万円です。ちょうど300万円なので、「300万円以下」に当たります。
別の仮の契約を考えます。
- 送迎車のリース:月額10万円、期間3年(36か月)
リース料総額は、10万円 × 36か月 = 360万円で、300万円を超えます。ここで、保守料を除く見積りが認められる場合を考えます。月額のうち、車検・メンテナンス相当が2万円と契約書で分かれているなら、その部分は2万円 × 36か月 = 72万円です。これを除くと、360万円 - 72万円 = 288万円で、300万円以下になります。ただし、この除き方が使えるのは、「維持管理費用相当額等の割合が重要な場合」です。2万円が月額の5分の1(20%)にあたる、という程度で重要といえるかは、条文から決まりません。法人が方針を決め、顧問の会計士・税理士と確認します。
重要性の原則での簡便処理
もう一つ、取扱い1の(5)にも、リースの簡便処理があります。
ファイナンス・リース取引について、取得したリース物件の価額に重要性が乏しい場合、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができる。
これは、重要性の原則の適用例として挙がっているものです。留意事項20ア(金額と期間の基準)と、取扱い1(5)(重要性が乏しい場合)の両方が、賃貸借に準じて処理する道を開いています。ただし、取扱い1(5)の「重要性が乏しい」の目安は、書かれていません。
ファイナンス・リースの資産と債務
取得価額とリース債務
ファイナンス・リースを資産に計上するとき、いくらで計上するのでしょうか。取扱い8の1の(5)です。
ファイナンス・リース取引におけるリース資産の取得価額及びリース債務の計上額については、原則として、リース料総額から利息相当額を控除するものとする。
つまり、リース資産の取得価額もリース債務も、リース料総額から利息相当額を引いた額で計上するのが原則です。
利息相当額の配分は、利息法
控除した利息相当額は、リース期間中の各期に配分します。取扱い8の2は、次のように定めています。
利息相当額をリース期間中の各期に配分する方法は、原則として、利息法(各期の支払利息相当額をリース債務の未返済元本残高に一定の利率を乗じて算定する方法)によるものとする。
利息法は、リース債務の未返済元本残高に一定の利率を掛けて、各期の支払利息相当額を出す方法です。残高が減るので、支払利息は期が進むほど小さくなります。利率をどう置くか(リースの内訳が契約書に書かれているか、見積りかなど)は、今回読んだ範囲には書かれていません。
仮の数字で、計上額を確かめる
ここでは、利息法の細かい計算には入らず、計上額の考え方だけを仮の数字で確かめます(すべて弊社の例です)。
- リース料総額:360万円(月額10万円 × 36か月)
- 利息相当額の見積り:36万円
リース資産の取得価額とリース債務は、360万円 - 36万円 = 324万円です。
この324万円の資産と債務のうち、毎期の元本の返済に当たる部分は、利息の配分方法で変わります。次の節で、重要性が乏しい場合の方法を見たあとで、一つの例で確かめます。
リース資産総額に重要性が乏しい場合
2つの方法
利息法は、リース1件ごとに利息の計算が必要です。留意事項20イは、リース資産総額に重要性が乏しいと認められる場合に、次のいずれかの方法を使えるとしています。
運用上の取り扱い第8の定めによらず、リース料総額から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法によることができる。この場合、リース資産及びリース債務は、リース料総額で計上され、支払利息は計上されず、減価償却費のみが計上される。
これが、①の方法(利息を控除しない方法)です。もう一つの②は、次のとおりです。
運用上の取り扱い第8の定めによらず、利息相当額の総額をリース期間中の各期に配分する方法として、定額法を採用することができる。
整理すると、次のとおりです。
| 方法 | 資産・債務の額 | 支払利息 |
|---|---|---|
| 原則(利息法) | リース料総額 - 利息相当額 | 残高に応じて変わる |
| ①利息を控除しない | リース料総額 | 計上しない |
| ②利息を定額法で配分 | リース料総額 - 利息相当額 | 毎期同額 |
何を「重要性が乏しい」とするか
「重要性が乏しい」の意味は、留意事項20イの最後の文が、数字で定めています。
なお、リース資産総額に重要性が乏しいと認められる場合とは、未経過リース料の期末残高(運用上の取り扱い第1で通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うこととしたものや、運用上の取り扱い第8に従い利息相当額を利息法により各期に配分しているリース資産に係るものを除く。)が、当該期末残高、有形固定資産及び無形固定資産の期末残高の法人全体の合計額に占める割合が10%未満である場合とする。
読み取れることは、次の3つです。
- 見るのは、未経過リース料の期末残高
- 取扱い1で賃貸借に準じて処理したものと、取扱い8で利息法を適用しているものは、この残高から除く
- 割合は、「未経過リース料の期末残高」と「有形固定資産及び無形固定資産の期末残高の法人全体の合計額」の関係で見て、10%未満かどうかを判定する
仮の数字で、10%判定を確かめる
文の読み方として、弊社は「未経過リース料の期末残高」と「有形固定資産及び無形固定資産の期末残高(法人全体)」を合わせた額に占める、未経過リース料の割合、と読みます。この読み方が正しいかは、顧問の会計士・税理士に確認してください。この読み方で、仮の数字を当てはめます(すべて弊社の例です)。
例1:10%未満になる場合
- 対象となる未経過リース料の期末残高:5,000万円
- 有形固定資産及び無形固定資産の期末残高(法人全体):10億円
割合は、5,000万円 ÷(5,000万円 + 10億円)= 5,000万円 ÷ 10億5,000万円 ≒ 4.8%です。10%未満なので、重要性が乏しいと認められる場合に当たります。
例2:10%以上になる場合
- 対象となる未経過リース料の期末残高:2億円
- 有形固定資産及び無形固定資産の期末残高(法人全体):10億円
割合は、2億円 ÷(2億円 + 10億円)= 2億円 ÷ 12億円 ≒ 16.7%です。10%未満ではないので、①や②は使えず、原則どおり利息法で配分します。
どちらの例でも、分子から取扱い1や取扱い8の利息法で処理しているリースに係るものを除いた残高を使います。除くものがあるときは、その金額も整理してから割合を出します。
仮の数字で、②(定額法)の毎期の利息を確かめる
先ほどの、リース料総額360万円、利息相当額36万円の契約で、②の定額法を使う場合を考えます(弊社の例です。期間は3年)。
- リース資産・リース債務の計上額:324万円
- 毎期の支払利息相当額:36万円 ÷ 3年 = 12万円
- 毎期の支払リース料:360万円 ÷ 3年 = 120万円
- 毎期の元本の返済に当たる額:120万円 - 12万円 = 108万円
3年間の元本の合計は、108万円 × 3年 = 324万円で、計上額と一致します。
①の方法なら、リース資産とリース債務は360万円で計上され、支払利息は計上されません。計上されるのは減価償却費のみです。
利息法の場合は、この例と違い、支払利息が1年目に大きく、3年目に小さくなります。利息法で使う利率の置き方は、今回読んだ範囲には書かれていません。
勘定科目の整理
留意事項の別添「勘定科目の説明」には、リースに関する科目が載っています。
有形リース資産
有形固定資産のうちリースに係る資産をいう。
ファイナンス・リースの資産は、取扱い8の1の(3)により、原則として、有形固定資産と無形固定資産ごとに、リース資産として一括して表示します。
ファイナンス・リース取引のリース資産については、原則として、有形固定資産、無形固定資産ごとに、一括してリース資産として表示する。ただし、有形固定資産又は無形固定資産に属する各科目に含めることもできるものとする。
「一括してリース資産として表示」する方法のほかに、車両運搬具などの各科目に含めることもできる、という構造です。貸借対照表の表示の全体像は、貸借対照表の記事で確認できます。
リース債務と1年以内返済予定リース債務
リース債務は、次のように説明されています。
リース料総額から利息相当額を控除した金額で、貸借対照表日の翌日から起算して支払の期限が1年を超えて到来するものをいう。
1年以内に支払の期限が来る部分は、別の科目です。
リース債務のうち、貸借対照表日の翌日から起算して1年以内に支払の期限が到来するものをいう。
つまり、リース債務は、貸借対照表日の翌日から1年以内に支払いが来る部分と1年を超えて来る部分に分けます。前者が「1年以内返済予定リース債務」、後者が「リース債務」です。長期の資金調達である借入金でも、1年以内の返済予定の部分を分ける考え方があります。借入金との違いは、借入金の記事で整理しています。
ファイナンス・リース債務の返済支出
資金収支計算書には、返済の科目があります。
ファイナンス・リース取引に係る支払リース料のうち、元本相当額をいう(1年以内返済予定リース債務の返済額を含む。)。
つまり、支払リース料のうち利息を除いた元本相当額が、この科目の対象です。
仮の数字で、科目への振り分けを確かめる
先ほどの定額法の例(計上額324万円、毎期の元本の返済108万円)で、契約の初日にすべて計上したとします(弊社の例です)。
| 借方 | 貸方 | 金額(弊社の例) |
|---|---|---|
| 有形リース資産 | 1年以内返済予定リース債務 | 108万円 |
| 有形リース資産 | リース債務 | 216万円 |
借方の合計は324万円で、貸方の合計も、108万円 + 216万円 = 324万円です。次の期の支払い(元本108万円、利息12万円)が来る1年以内の部分が108万円、1年を超える部分が216万円、という分け方です。
この例は、②の定額法を使う場合の考え方で置いた数字です。利息法の場合は、毎期の元本の額が、同じ契約でもこの例とは違ってきます。
注記
取扱い8の3は、リース取引について、計算書類に注記する項目を定めています。
ファイナンス・リース取引の場合、リース資産について、その内容(主な資産の種類等)及び減価償却の方法を注記する。
オペレーティング・リース取引のうち解約不能のものに係る未経過リース料は、貸借対照表日後1年以内のリース期間に係るものと、貸借対照表日後1年を超えるリース期間に係るものとに区分して注記する。
整理すると、次のとおりです。
| 区分 | 注記する内容 |
|---|---|
| ファイナンス・リース | リース資産の内容と減価償却の方法 |
| 解約不能のオペレーティング・リース | 未経過リース料(1年以内と1年超に区分) |
300万円以下や1年以内の簡便的な取扱いを使うと、取扱い8の注記を省略できる場合があります(留意事項20ア)。注記全体の整理は、計算書類の注記の記事で行っています。
条文・通知から決まらないこと
次の点は、今回読んだ範囲には書かれていません。
| 論点 | 一次情報での扱い | 決め方 |
|---|---|---|
| 判定の数値基準 | 書かれていない | リース会計基準の最新版を確認 |
| 保守料が重要な割合 | 「重要な場合」とのみある | 法人の方針を決めて記録 |
| 利息法の利率の置き方 | 書かれていない | 顧問の会計士・税理士と確認 |
| 分母の読み方 | 10%の文言のみ | 顧問の会計士・税理士と確認 |
| 最新版への改正 | 掲載版は確認済み | 所轄庁・会計士に確認 |
経理担当が、決算前にそろえておくこと
条文と通知の構造から、決算前に整理しておくとよい点は次の5つです。個別の判断は、顧問の会計士・税理士と所轄庁にご確認ください。
- リース契約を、拠点区分ごとに一覧にする。 物件、契約期間、月額、リース料総額、解約の条項を並べる
- 月額の内訳を確かめる。 保守料や通信料が分かれているかを、契約書や見積書で見る
- 1件ごとに、判定と簡便的な取扱いの対象かを決める。 300万円以下か、1年以内か、ファイナンス・リースに当たるか
- 未経過リース料の残高を集計し、10%の判定を行う。 取扱い1や利息法を適用したリースは除いて集計する
- 注記の金額と、貸借対照表の科目を突き合わせる。 リース資産、リース債務、1年以内返済予定リース債務の金額を確認する
契約の台帳を1つ作り、判定の理由と簡便処理を使った根拠を残しておくと、毎年同じ方法で適用していることを説明しやすくなります。
この記事で書いていないこと
- 企業会計のリース会計基準にある判定の数値基準:今回の一次情報に入っていません
- 利息法の具体的な計算と利率の置き方:書かれていません
- 補助金で導入した物件のリースの扱い:書かれていません
- 税務上の取扱い:今回の一次情報に入っていません
- 取扱い・留意事項の改正の反映状況:掲載版は確認しましたが、最新版かは未確認です
まとめ
- リース取引は、ファイナンス・リース(売買に準じる)とオペレーティング・リース(賃貸借に準じる)に分かれ、後者は「前者以外」という定義
- 判定は、企業会計のリース会計基準に準じる。契約書では、解約の条項、月額の内訳、所有権や購入選択の条項を確認する
- 土地は、所有権の移転条項や割安購入選択権の条項がある場合などを除き、オペレーティング・リースと推定される
- リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下、またはリース期間が1年以内なら、資産計上や注記の省略ができる
- 資産とリース債務は、リース料総額から利息相当額を控除した額が原則。利息の配分は原則利息法
- 未経過リース料の期末残高の割合が10%未満なら、利息を控除しない方法か、利息を定額法で配分する方法を使える
- 科目は、有形リース資産、リース債務、1年以内返済予定リース債務、ファイナンス・リース債務の返済支出
- 注記は、ファイナンス・リースならリース資産の内容と減価償却の方法、解約不能のオペレーティング・リースなら未経過リース料を1年以内と1年超に区分
参考にした一次情報
- 社会福祉法人会計基準|e-Gov法令検索:第四条
- 社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の取扱いについて|厚生労働省 法令等データベース:1 重要性の原則の適用について、8 リース取引に関する会計
- 社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について|厚生労働省 法令等データベース:20 リース会計について、別添 勘定科目の説明(リースに関する科目)
会計基準は2026年11月7日にe-Govから取得した条文によります。取扱いと留意事項は、同日に厚生労働省の法令等データベースから取得した、平成28年の通知の掲載版です。その後の改正(企業会計のリース会計基準の見直しへの対応を含みます)がこの掲載版に反映されているかは確認していません。本記事は条文の構造を整理したもので、個別の法人の会計処理が適切かどうかを判断するものではありません。具体的な判断は、顧問の会計士・税理士や所轄庁にご確認ください。
拠点ごとのリース契約と判定の根拠を、決算のたびに集め直していませんか
パレットテクノロジーズは、社会福祉法人様のデジタル化を「現地現物」で伴走支援しています。拠点ごとのリース契約の一覧、判定と簡便処理の根拠、未経過リース料の残高を、決算前に同じ様式で集め、注記や貸借対照表の確認に使える状態に整えるところからご一緒します。ITに詳しい職員がいらっしゃらなくても大丈夫です。