「子どもの送迎のために午前中だけ休みたい」「通院で2時間だけ抜けたい」という職員の声を受けて、時間単位で年次有給休暇を取れるようにしたい。ところが、導入しようとすると「協定には何を書くのか」「日勤と夜勤で1日の時間数が違うがどうするのか」「30分単位や中抜けは認められるのか」と、決めることが次々に出てきます。
時間単位の年次有給休暇(以下「時間単位年休」)の根拠は、労働基準法(以下「法」)第39条第4項と、労働基準法施行規則(以下「則」)第24条の4です。この記事は、令和8年11月4日にe-Gov法令検索から取得した条文が根拠です。通達・Q&A・判例は扱っていません。
この記事では、条文だけを根拠に、次の3点を切り分けます。
- 時間単位年休を導入するために、条文が求めていること(協定と、協定で決める事項)
- 日勤・夜勤・短時間勤務が混ざる職場で、「1日の時間数」を条文からどこまで決められるか
- 30分単位、中抜け、夜勤の数え方など、条文からは決まらない点
条文から言えることと言えないことは分けて書きます。決まらない点は、所轄の労働基準監督署にご確認ください。
先に結論
- 時間単位年休を与えるには、過半数組合または過半数代表者との書面による協定が要ります(法第39条第4項)。就業規則だけでは足りない、と条文の構造から読めます。
- 協定で定めるのは、対象になる労働者の範囲、時間単位で与える日数(5日以内に限る)、厚生労働省令で定める事項の3つです。
- 省令で定める事項は、則第24条の4に2つあります。時間単位年休の「1日」の時間数と、1時間以外の時間を単位とする場合のその時間数です。
- 「1日」の時間数は、1日の所定労働時間数を下回らないことが条件です。日によって所定労働時間数が違う場合は、1年間における1日平均所定労働時間数が基準になります。
- 1時間以外の単位にする場合は、その時間数が1日の所定労働時間数に満たないことが条件です。30分単位が認められるかは、条文に「30分」の語がないため、この記事では断定しません。
- 「中抜け」の語は条文にありません。中抜けで時間単位年休を使えるかは、条文からは決まりません。
- 時間単位で取った分が、年5日の時季指定(第7項)の5日に数えられるかは、条文からは決まりません。
- 時間単位年休の時間についても、賃金の定めが要ります(第9項)。
第39条第4項:時間単位年休には協定が要る
第4項の前半は、次のとおりです。
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、
後半は、協定を結んだ場合の効果を定めています。
第一号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前三項の規定による有給休暇の日数のうち第二号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより時間を単位として有給休暇を与えることができる。
読み取れることは次の4つです。
- 協定の相手は、過半数で組織する労働組合があればその労働組合、なければ労働者の過半数を代表する者
- 協定は書面で結ぶ
- 時間単位で与えられるのは、協定で定めた労働者の範囲に属する労働者が、時間を単位として請求したとき
- 時間単位にできるのは、年次有給休暇の日数のうち、協定で定めた日数の分だけ
条文は、協定を結んだ場合に時間単位で与える「ことができる」と書いています。協定を結んだからといって、請求されたら必ず時間単位で与えなければならないのか、それとも使用者が時間単位での取得を認めるかどうかを選べるのかは、第4項の文言だけでは言い切れません。運用の方針を決めるときは、所轄の労働基準監督署に確認してください。
協定を労働基準監督署へ届け出る必要があるかどうかは、第4項には書かれていません。届出の要否や協定の様式も、同じく条文からは決まりません。
協定で決める3つの事項
第4項は、協定で定める事項を3つ挙げています。
時間を単位として有給休暇を与えることができることとされる労働者の範囲
時間を単位として与えることができることとされる有給休暇の日数(五日以内に限る。)
その他厚生労働省令で定める事項
整理すると、次の表のとおりです。
| 協定で決める事項 | 条文の文言 | 条文から言えること |
|---|---|---|
| 労働者の範囲 | 時間単位で与えることができる労働者の範囲 | 範囲を決めるのは協定。決め方の線引きは書かれていない |
| 日数 | 時間単位で与えられる有給休暇の日数 | 5日以内に限る |
| 省令事項 | その他厚生労働省令で定める事項 | 則第24条の4に2つ定められている |
1つめの「労働者の範囲」は、全職員にするのか、職種や勤務の形で区切るのかを、協定で決めることになります。範囲を区切ってよいかどうか、どういう区切り方が許されるかは、第4項には書かれていません。たとえば「夜勤のある職員だけ」「パートタイム職員は除く」といった区切りが許されるかは、条文だけでは決まりません。
年5日以内:上限は「日数」で書かれている
第4項第2号は、時間単位で与えられる日数を「五日以内に限る」と定めています。ここで押さえたいのは、上限が時間数ではなく日数で書かれていることです。
時間数に直すには、則第24条の4第1項第1号の「1日の時間数」を使います。たとえば、1日の時間数を8時間と定めれば、5日以内は、条文の文言から計算すると40時間分までです。7時間なら35時間分です。これは条文の文言から計算した読みで、「何時間まで」と条文に直接書かれているわけではありません。
次の点は、第39条の条文には書かれていません。
- 前年に使い切れなかった有給休暇(繰越分)がある場合に、5日の枠をどう数えるか
- 時間単位で取った時間の合計が1日分に満たない端数が年度末に残ったときの扱い
これらは、今回の一次情報の範囲では決まりません。協定を結ぶ前に、所轄の労働基準監督署に確認してください。
年次有給休暇の付与日数そのものは、第39条第1項から第3項までで決まります。短時間勤務の職員への付与日数の考え方は、比例付与の記事で整理しています。
則第24条の4:「1日の時間数」の決め方
協定で決める「省令で定める事項」は、則第24条の4第1項に2つあります。1つめは、時間単位年休の「1日」を何時間と数えるかです。
時間を単位として与えることができることとされる有給休暇一日の時間数(一日の所定労働時間数(日によつて所定労働時間数が異なる場合には、一年間における一日平均所定労働時間数。次号において同じ。)を下回らないものとする。)
読み取れることは次の3つです。
- 協定で、時間単位年休の1日の時間数を決める
- その時間数は、1日の所定労働時間数を下回らないものとする
- 所定労働時間数が日によって異なる場合は、1年間における1日平均所定労働時間数が基準になる
端数が出るときは、下回らない時間数にする
条文の言葉は「下回らない」です。1日の所定労働時間が7時間30分の事業所を例にすると、時間単位年休の1日の時間数を7時間とすれば、所定労働時間数を下回ります。条文の言葉に沿って読むと、8時間以上にする必要があります。端数は切り上げる考え方になる、という読みです。
| 1日の所定労働時間数 | 条文の言葉での読み | 定められる1日の時間数 |
|---|---|---|
| 8時間 | 下回らないのは8時間以上 | 8時間以上 |
| 7時間30分 | 7時間では下回る | 8時間以上 |
| 6時間 | 下回らないのは6時間以上 | 6時間以上 |
上の表は、所定労働時間数がその数字だったと仮定した場合の、条文の言葉からの読みです。「以上」の上限、つまり8時間に対してどこまで大きくしてよいかは、条文に書かれていません。
日によって所定労働時間が違うときは、年間の平均
日勤・早番・遅番・夜勤が混在して、日によって所定労働時間数が異なる場合、条文は「一年間における一日平均所定労働時間数」を基準にしています。
たとえば、仮に1年間の所定労働日が240日で、所定労働時間数の合計が1,800時間なら、1日平均は7.5時間です。この場合は、上の読みと同じく、1日の時間数は8時間以上になります。計算の例であって、実際の職場では、シフトの組み方や年間の勤務日数によって数字は変わります。
ここで条文から決まらない点が2つあります。
- 所定労働時間数に休憩時間が入るか。 第24条の4には書かれていません。休憩時間の扱いは休憩時間の記事で整理していますが、それは休憩の与え方の話であり、「所定労働時間数の数え方」を定めた条文ではありません。
- 「一年間」をいつからいつまでとするか。 条文には書かれていません。
夜勤(日をまたぐ勤務)の1日は、条文から決まらない
則第24条の4第1項第1号の「1日の時間数」は、条文では1つの時間数として書かれています。日勤8時間と夜勤16時間が混ざる職場で、次の点が問題になります。
- 夜勤を1日として数えるのか、日をまたぐ勤務を暦日で区切って数えるのか
- 日勤と夜勤で、1日の時間数を別々に定めてよいのか(協定で勤務区分ごとに分けてよいか)
- 夜勤の1回分は、時間単位年休の何日分にあたるのか
いずれも、条文には書かれていません。「日によつて所定労働時間数が異なる場合には、一年間における一日平均所定労働時間数」という文言がそのまま夜勤を含む場合に当たるのかも、条文だけでは決まりません。
日勤・夜勤が混在する職場では、条文の文言から言える範囲で次の整理までにとどめ、協定を結ぶ前に所轄の労働基準監督署に確認するのが安全です。
- 条文は、1日の時間数を「所定労働時間数を下回らない」ことを条件に、協定で決めるとしている
- 夜勤の数え方と、勤務区分ごとに分けられるかは、条文には書かれていない
則第24条の4第1項第2号:「1時間以外の単位」と30分単位
時間単位年休は、1時間単位が基本ですが、則第24条の4第1項第2号は、1時間以外の単位で与える場合も定めています。
一時間以外の時間を単位として有給休暇を与えることとする場合には、その時間数(一日の所定労働時間数に満たないものとする。)
読み取れることは次の3つです。
- 1時間以外の時間を単位とする場合は、その時間数も協定で決める
- その時間数は、1日の所定労働時間数に満たないものとする
- 「満たない」ので、1日の所定労働時間数と同じ時間数を単位にすることはできない
30分単位は条文からは決まらない
「30分単位にできますか」という質問は多いのですが、条文には「30分」という語がありません。条文の言葉は「一時間以外の時間を単位として」です。
この文言が、1時間より短い時間(30分など)を許すのか、2時間や3時間のように1時間より長い時間を許すのか、あるいは両方を許すのかは、条文の文言だけでは決まりません。条文から言えるのは、次の2点までです。
- 1時間以外の単位にするときは、その時間数を協定で定める
- その時間数は、1日の所定労働時間数に満たないこと
1日の所定労働時間数を下回らない時間数を1日として定めたうえで(第1号)、その1日より短い時間数で単位を決める(第2号)、という二段の構造は読み取れます。1時間より短い単位が認められるかどうかは、所轄の労働基準監督署に確認してください。この記事では、認められるとも認められないとも書きません。
「中抜け」は条文に書かれていない
勤務の途中で数時間だけ抜けて戻ってくる「中抜け」を、時間単位年休として扱えるかどうかも質問が多い論点です。
第39条第4項と則第24条の4には、「中抜け」の語も、時間単位年休を取れる時間帯(始業時や終業時に限るのか、途中でもよいのか)についての定めもありません。
条文から言えるのは、次の点までです。
- 労働者が「時間を単位として請求した」ときに、協定の定めるところにより与えることができる(第4項)
- 時間単位の単位は、協定で決める時間数による(則第24条の4)
休憩時間と重なる時間帯に取ったとき、勤務の途中で複数回に分けて取ったときの扱いも、条文には書かれていません。運用のルールを作るときは、協定や就業規則に書く前に、所轄の労働基準監督署に確認してください。
第5項:時間単位年休にも時季変更権が及ぶ読み方
第5項は、年次有給休暇を与える時季について定めています。
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
第5項は「前各項の規定による有給休暇」と書いており、第4項の時間単位の有給休暇も、文言の上では「前各項」に含まれます。この読みからは、時間単位年休の請求にも、事業の正常な運営を妨げる場合に他の時季に与えることができる、という定めが及ぶと考えられます。
一方で、次の点は条文に書かれていません。
- 「事業の正常な運営を妨げる場合」に当たるのは、どのような場合か
- 時間単位の請求だから、変更できる場合が狭い(または広い)のか
介護や障がい福祉の事業所では、人員配置の基準があり、時間単位の欠勤が重なると配置に影響することがあります。ただし、それが第5項の「事業の正常な運営を妨げる場合」に当たるかは、条文だけでは決まりません。個別の判断は、所轄の労働基準監督署か社会保険労務士にご相談ください。
年5日の時季指定(第7項・第8項)との関係
時間単位年休を導入している事業所で、特に確認したいのが、年5日の時季指定との関係です。第7項は、次のとおりです。
使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。
第8項は、すでに労働者の請求などで与えた分を、5日から差し引ける旨を定めています。
前項の規定にかかわらず、第五項又は第六項の規定により第一項から第三項までの規定による有給休暇を与えた場合においては、当該与えた有給休暇の日数(当該日数が五日を超える場合には、五日とする。)分については、時季を定めることにより与えることを要しない。
年5日の時季指定の全体像(対象者・基準日・意見聴取)は、年5日の時季指定の記事で整理しています。ここでは、時間単位年休との関係だけを見ます。
時間単位で取った分が5日に数えられるかは、条文からは決まらない
第7項と第8項の文言を、時間単位年休の観点で見ると、次のことが分かります。
- 第7項が対象にしているのは、「第一項から第三項までの規定による有給休暇」。第4項は、この括弧の中に出てこない
- 第8項が差し引けるとしているのは、「第五項又は第六項の規定により第一項から第三項までの規定による有給休暇を与えた場合」の日数。ここでも、第4項は文言に出てこない
- 時間単位で取った時間を、日数に換算して5日に数えるかどうかを書いた文言は、今回の一次情報にはない
つまり、時間単位で取った分が年5日の時季指定の5日に数えられるのか、数えられないのかを、条文の文言だけで決めることはできません。この記事では、数えられるとも数えられないとも書きません。
年5日の時季指定の対象である職員(年10日以上付与される職員)に時間単位年休を認めている事業所は、時間単位で取った分が5日に含まれるかどうかを、所轄の労働基準監督署に確認したうえで、年次有給休暇管理簿の付け方を決めてください。
年次有給休暇管理簿の書き方も、条文からは決まらない
則第24条の7は、年次有給休暇管理簿を定めています。
使用者は、法第三十九条第五項から第七項までの規定により有給休暇を与えたときは、時季、日数及び基準日(第一基準日及び第二基準日を含む。)を労働者ごとに明らかにした書類(第五十五条の二及び第五十六条第三項において「年次有給休暇管理簿」という。)を作成し、当該有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後五年間保存しなければならない。
読み取れることは、記載する事項が時季、日数及び基準日であること、保存期間が有給休暇を与えた期間中と、その満了後5年間であることです。第5項から第7項までの規定により与えたときと書かれており、第4項は列挙に出てきません。時間単位で取った分を管理簿にどう書くか(時間数で書くのか、日数に換算するのか)は、則第24条の7には書かれていません。
あわせて、則第24条の6は、第7項で時季を定めるときの手続を定めています。
使用者は、法第三十九条第七項の規定により労働者に有給休暇を時季を定めることにより与えるに当たつては、あらかじめ、同項の規定により当該有給休暇を与えることを当該労働者に明らかにした上で、その時季について当該労働者の意見を聴かなければならない。
則第24条の5は、基準日より前に有給休暇を与えた場合などの期間の数え方を定めています。時間単位年休の導入そのものとは別の論点なので、この記事では扱いません。
第9項:時間単位年休の時間の賃金
第9項は、年次有給休暇の期間と、時間単位年休の時間の賃金について定めています。
使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇の期間又は第四項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。
読み取れることは次の3つです。
- 時間単位年休の時間についても、賃金を支払わなければならない
- どの方法で支払うかは、就業規則その他これに準ずるもので定める
- 支払い方の選択肢は、平均賃金、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、またはこれらを基準として省令で算定した額
第9項のただし書は、健康保険法の標準報酬月額の30分の1に相当する金額を支払う旨を、書面による協定で定めた場合の扱いを定めています。その算定は、則第25条第3項が、標準報酬月額の30分の1に相当する金額を「その日の所定労働時間数」で除して得た金額と定めています。
1時間あたりの額の算定(則第25条)
時間単位年休では、1時間あたりの額が必要になります。則第25条第2項は、次のとおり定めています。
法第三十九条第九項本文の厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金は、平均賃金又は前項の規定により算定した金額をその日の所定労働時間数で除して得た額の賃金とする。
則第25条第1項は、通常の賃金の算定方法を賃金の定め方ごとに挙げています。たとえば、時間によって定められた賃金(時給)は、次のとおりです。
時間によつて定められた賃金については、その金額にその日の所定労働時間数を乗じた金額
時給に所定労働時間数を乗じた金額を、第2項でその日の所定労働時間数で除すので、時給の職員は、条文の文言から計算すると、時給そのものが1時間あたりの額になります。月給制の職員は、第1項第4号に「月によつて定められた賃金については、その金額をその月の所定労働日数で除した金額」とあり、さらにその日の所定労働時間数で除すことになります。
ここでも、日勤と夜勤で「その日の所定労働時間数」が違う場合、夜勤の日に取った時間単位年休の1時間あたりの額をどう計算するかは、条文には書かれていません。則第25条の「その日の所定労働時間数」と、則第24条の4の「1日の時間数」は、別の言葉で書かれています。賃金の計算を就業規則に書くときは、社会保険労務士に確認してください。
第115条:時効
第115条は、請求権の時効を定めています。
この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
条文の言葉は、賃金の請求権が5年、賃金の請求権を除くその他の請求権が2年です。年次有給休暇の請求権が、このどちらに当たるのか、時間単位年休として取る権利がどうなるかは、この条文には書かれていません。時効の取扱いは、所轄の労働基準監督署に確認してください。
罰則:第119条と第120条
第119条の柱書は、次のとおりです。
次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
第1号の条番号の並びには、次の記載があります。
第三十九条(第七項を除く。)
つまり、第39条の規定に違反した者は、第7項を除いて、第119条の罰則の対象に入っています。第5項(請求された時季に与える)や第9項(賃金の支払い)も、この中に含まれます。一方、第7項(年5日の時季指定)は、第120条第1号に入っています。
次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
第120条第1号の条番号の並びには、次の記載があります。
第三十九条第七項
条文から言えるのは、ここまでです。次の点は、今回の一次情報に入っていません。
- 法人に対する罰則(いわゆる両罰規定)があるか
- どのような場合に、誰が処罰の対象になるか
- 時間単位年休の導入そのもの(第4項の協定)に違反した場合に、罰則がどう当たるか
第4項は「与えることができる」という形の条文で、協定を結ぶこと自体を義務づけてはいません。罰則の当てはめは、個別の事案で変わりますので、社会保険労務士や所轄の労働基準監督署にご相談ください。
条文には書かれていないこと
実務で質問が多い点のうち、今回読んだ条文に書かれていないものを整理します。
| 論点 | 条文での扱い | 決め方 |
|---|---|---|
| 30分単位 | 「一時間以外の時間」とあるだけで、30分の語がない | 所轄の労働基準監督署に確認 |
| 中抜け | 語も、取れる時間帯の定めもない | 所轄の労働基準監督署に確認 |
| 夜勤の1日の数え方 | 日をまたぐ勤務の数え方がない | 所轄の労働基準監督署に確認 |
| 勤務区分ごとの時間数 | 1日の時間数は1つの時間数として書かれている | 所轄の労働基準監督署に確認 |
| 5日への算入 | 第7項・第8項に第4項が出てこない | 所轄の労働基準監督署に確認 |
| 繰越分と端数 | 第39条に定めがない | 所轄の労働基準監督署に確認 |
| 協定の届出と様式 | 第4項に定めがない | 所轄の労働基準監督署に確認 |
| 夜勤日の1時間の額 | 則第25条は「その日の所定労働時間数」で除す | 社会保険労務士に確認 |
通達や判例、行政の解釈は、この記事では扱っていません。実際の運用では、そうした解釈が示されている場合があるので、個別の判断の前に所轄の労働基準監督署か社会保険労務士に確認してください。
法人本部・事業所で整理しておくこと
条文の構造から、法人本部や管理者が手元でそろえておくとよい整理は次の6つです。条文から導いた弊社の整理で、個別の判断は所轄の労働基準監督署にご確認ください。
- 対象にする職員の範囲を決める。 全職員か、職種・勤務の形で区切るかを、協定の案として書き出す。区切り方が許されるかは、監督署に確認する
- 事業所の所定労働時間数を、勤務区分ごとに一覧にする。 日勤・早番・遅番・夜勤・短時間勤務ごとに、所定労働時間数を書く
- 「1日の時間数」の案を出す。 日によって所定労働時間数が違うなら、年間の1日平均を計算し、それを下回らない時間数にする。端数は上に寄せる
- 単位を決める。 1時間単位にするのか、1時間以外の単位にするのか。1時間以外なら、その時間数が1日の所定労働時間数に満たないかを確かめる
- 日数を決める。 5日以内の範囲で、何日分を時間単位にするかを協定に書く。時間数に直した上限も手元に置く
- 賃金の算定方法を、就業規則その他これに準ずるもので定める。 平均賃金、通常の賃金、標準報酬月額の30分の1のどれにするかを決め、後者なら協定が要る
協定の相手方は、過半数で組織する労働組合があればその労働組合、なければ労働者の過半数を代表する者です。協定は書面で結びます。夜勤・日勤の別なく、事業場の全体の労働者の過半数で見ることになります。
この記事で書いていないこと
次のことは、今回確認した条文には書かれていません。この記事でも書きません。
- 30分単位など1時間未満の単位が認められるか:条文に「30分」の語がありません
- 中抜けを時間単位年休として扱えるか:条文に書かれていません
- 夜勤の1日の数え方、勤務区分ごとの時間数の分け方:条文に書かれていません
- 時間単位で取った分が年5日の時季指定の5日に数えられるか:条文の文言から決まりません
- 繰越分の扱い、年度末の端数の扱い:今回の一次情報に入っていません
- 協定の届出の要否、協定の様式:第4項に書かれていません
- 事業の正常な運営を妨げる場合の具体的な範囲:第5項に書かれていません
- 年次有給休暇の請求権の時効がどちらの期間か:第115条の文言から決まりません
- 法人に対する罰則:今回の一次情報に入っていません
- 通達・Q&A・判例・行政解釈:今回の一次情報に入っていません
まとめ
- 時間単位年休には、過半数組合または過半数代表者との書面による協定が要る(法第39条第4項)
- 協定で決めるのは、労働者の範囲、日数(5日以内に限る)、省令で定める事項の3つ
- 省令で定める事項は、1日の時間数(1日の所定労働時間数を下回らない。日によって違うなら1年間の1日平均)と、1時間以外の単位をとるならその時間数(1日の所定労働時間数に満たない)(則第24条の4)
- 7時間30分の所定労働時間なら、条文の言葉に沿うと、1日の時間数は8時間以上になる(端数は切り上げる考え方)
- 30分単位、中抜け、夜勤の数え方は、条文からは決まらない。所轄の労働基準監督署に確認する
- 時間単位年休も第5項の時季変更権が及ぶ読み方ができるが、「事業の正常な運営を妨げる場合」の範囲は条文に書かれていない
- 時間単位で取った分が年5日の時季指定(第7項)の5日に数えられるかは、条文の文言から決まらない
- 時間単位年休の時間の賃金は、就業規則その他これに準ずるもので定め、1時間あたりの額は則第25条で算定する(第9項)
- 第39条の違反は第119条第1号の罰則の対象(第7項を除く)。第7項は第120条第1号
参考にした一次情報
- 労働基準法|e-Gov法令検索:第三十九条、第百十五条、第百十九条、第百二十条
- 労働基準法施行規則|e-Gov法令検索:第二十四条の四から第二十四条の七、第二十五条
いずれも2026年11月4日にe-Govから取得した条文によります。本記事は条文の構造を整理したもので、個別の事業所の時間単位年休の制度設計が適法かどうかを判断するものではありません。具体的な判断は、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士にご確認ください。
勤務区分ごとの所定労働時間と有給休暇の残りを、手作業で数えていませんか
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