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ストレスチェック|50人未満の根拠は本則でなく附則第4条にある

「ストレスチェックは、職員が50人未満の事業所なら努力義務」。研修や顧問先からの案内で、そう聞いたことがある方は多いと思います。では、その「50人」という数字と「努力義務」という扱いは、労働安全衛生法のどこに書かれているのでしょうか。

実は、ストレスチェックを定めた本則の第66条の10を読んでも、50人という数字は出てきません。努力義務になる根拠も、本則ではなく附則にあります。そして50人という数字は、附則から別の条、さらに政令へと3つの条を辿って初めて姿を見せます。

この記事は、ストレスチェックのやり方や質問項目を解説する記事ではありません。条文を上から順に読んで、「50人未満は努力義務」という言い方が条文のどこからできているのかをほどきます。そのうえで、特別養護老人ホーム、デイサービス、グループホーム、法人本部と、複数の事業場を持つ社会福祉法人では、この構造がどう効いてくるのかを考えます。

先に、条文を読んで確かめられたことを並べます。

  • 本則の第66条の10第1項は、検査を「行わなければならない」と書くだけで、規模による限定が出てこない
  • 50人未満が努力義務になる根拠は、附則第4条。「行わなければ」を「行うよう努めなければ」に置き換える読替えでできている。義務が条文から消えるのではなく、文言が置き換わる形
  • 「五十人」という数字は、第66条の10にも附則第4条にも書かれていない。附則第4条 → 法第13条第1項 → 施行令第5条と辿って、「常時五十人以上の労働者を使用する事業場」に行き着く
  • 条文は事業場を単位にしている(第13条第1項は「事業場ごとに」と書く)
  • 検査を受ける労働者について解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、検査の実施の事務に従事してはならない(安衛則第52条の10第2項)
  • 労働基準監督署への報告は、規則に直接「常時五十人以上」と書かれている(安衛則第52条の21)。第66条の10の書きぶりとは対照的

附則第4条が「当分の間」と書いていることも、あとで確かめます。いつまで続くのかは、この記事で読んだ条文からは分かりません。

条文の地図:どの論点がどこに書かれているか

読む条文は、労働安全衛生法、同法施行令、労働安全衛生規則の3本にまたがります。先に地図を置きます。

論点書かれている条
検査と面接指導の義務労働安全衛生法 第66条の10(本則)
50人未満の扱い(努力義務への読替え)労働安全衛生法 附則(昭和47年法律第57号)第4条
「政令で定める規模の事業場」労働安全衛生法 第13条第1項
「常時五十人以上」という数字労働安全衛生法施行令 第5条
検査の実施方法・実施者・同意・申出・記録・報告労働安全衛生規則 第52条の9から第52条の21

この記事では、順に「安衛法」「安衛令」「安衛則」と短く呼びます。条文は、厚生労働省の法令等データベース(溶け込み版)から取得したものを読んでいます。

出発点:第66条の10第1項は、規模を限定していない

まず本則の第1項です。

事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。

読み取れることは次のとおりです。

  • 主語は事業者。語尾は「行わなければならない」で、義務の書き方になっている
  • 相手は労働者。「何人以上の事業場の」「常時何人を使用する」といった限定は、この項に書かれていない
  • 検査の担い手は「医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者」。具体的な範囲は規則に委ねられている

つまり、この第1項だけを読むと、規模にかかわらず義務のように読めます。「50人未満は努力義務」という扱いは、この条の中からは出てこないのです。ここが、この記事の出発点です。

あわせて、同じ条のほかの項も、何が書かれているかを確かめておきます。

項内容条文の語尾
第1項医師等による心理的な負担の程度を把握するための検査を行う行わなければならない
第2項検査の結果が、検査を行った医師等から労働者に通知されるようにする。医師等は、労働者の同意なしに結果を事業者に提供してはならない通知されるようにしなければならない
第3項通知を受けた労働者が面接指導を受けたい旨を申し出たとき、医師による面接指導を行う行わなければならない
第4項面接指導の結果を記録する記録しておかなければならない
第5項面接指導の結果に基づき、医師の意見を聴く聴かなければならない
第6項医師の意見を勘案し、必要があると認めるとき、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講じる講じなければならない

第6項には「衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置」も出てきます。衛生委員会の位置づけは、別の記事(衛生委員会|設置義務の条文を読む)で扱っています。

努力義務の根拠は、本則ではなく附則第4条

では、50人未満の事業場の扱いはどこに書かれているのか。答えは、安衛法の附則第4条です。全文を読みます。

第十三条第一項の事業場以外の事業場についての第六十六条の十の規定の適用については、当分の間、同条第一項中「行わなければ」とあるのは、「行うよう努めなければ」とする。

この1文は、見出しに「心理的な負担の程度を把握するための検査等に関する特例」と付いています。読み取れることを、順に整理します。

  1. 対象は「第十三条第一項の事業場以外の事業場」。第13条第1項の事業場(あとで読みます)ではない事業場、という書き方で、「五十人未満」とは書いていません
  2. 「同条第一項中『行わなければ』とあるのは、『行うよう努めなければ』とする」。第66条の10第1項の語句を置き換える読替えです
  3. 「当分の間」。期限は書かれていない

読替えの結果、対象の事業場では、第66条の10第1項は次のような文になります。語句の置き換えをそのまま当てはめた形です。

本則の第1項附則第4条の読替え後
検査について検査を行わなければならない検査を行うよう努めなければならない

ここで大切なのは、義務が条文から消えるわけではないことです。第66条の10はそのままあり、附則第4条はその第1項の語句を、対象の事業場について置き換えているだけです。「50人未満はストレスチェックの規定が適用されない」という書き方ではありません。「努めなければならない」という語尾が残っています。

また、附則第4条が置き換えているのは、第66条の10第1項の中の語句です。附則第4条には、第2項以下(結果の通知、面接指導など)への言及がありません。この文面が第3項以下の運用にどう響くのかは、この記事で読んだ条文からは決められません。

「五十人」はどこから出てくるのか:3つの条を辿る

附則第4条には「第十三条第一項の事業場以外」としか書かれていません。50人という数字を知るには、さらに辿ります。

第13条第1項:「政令で定める規模の事業場」

安衛法第13条は、産業医についての条です。第1項を読みます。

事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。

ここにも、人数は書かれていません。書かれているのは「政令で定める規模の事業場ごとに」です。数字は政令に委ねられています。もう1つ、事業場ごとにと書かれていることを覚えておいてください。あとで福祉の法人に引き寄せるときに効いてきます。

施行令第5条:「常時五十人以上の労働者を使用する事業場」

政令にあたる安衛令の第5条は、見出しが「産業医を選任すべき事業場」で、短い条です。全文を読みます。

法第十三条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。

ここで初めて「常時五十人以上の労働者を使用する事業場」という数字が出てきます。

辿った結果を表にする

3つの条を辿った流れを表にします。

段階条書かれていること数字は出るか
1安衛法 第66条の10第1項事業者は検査を行わなければならない出ない
2安衛法 附則第4条「第十三条第一項の事業場以外の事業場」について、「行わなければ」を「行うよう努めなければ」と読み替える出ない
3安衛法 第13条第1項「政令で定める規模の事業場ごとに」産業医を選任する出ない
4安衛令 第5条政令で定める規模は「常時五十人以上の労働者を使用する事業場」出る

整理すると、条文の構造は次のようになっています。

  • 常時五十人以上の労働者を使用する事業場(安衛令第5条)は「第十三条第一項の事業場」にあたる
  • 附則第4条は、第十三条第一項の事業場以外の事業場について、第66条の10第1項を読み替える
  • したがって、条文を辿る限り、読替えの対象になるのは、安衛令第5条の事業場(常時五十人以上)に当たらない事業場

ここから、世の中で「50人未満は努力義務」と言われる扱いが説明できます。ただし、条文が直接「五十人未満」と書いているわけではなく、産業医を選任すべき事業場かどうかという別の条の線引きを借りている、という構造です。

産業医の選任の条を借りて線を引いているため、ストレスチェックの条文を探すだけでは50人という数字にたどり着けません。研修資料などで数字だけが書かれているときは、どの条を辿った結果なのかを、一度条文で確かめておくと安心です。

数えるのは法人全体ではなく、事業場ごと

第13条第1項は「事業場ごとに」と書いていました。附則第4条も「事業場以外の事業場」と書いています。条文は、法人や事業者の全体ではなく、事業場を単位に当てはめる書き方になっています。

社会福祉法人は、1つの法人が複数の事業場を持つのが普通です。たとえば次のような場合を考えます。

事業場(仮の例)常時使用する労働者のイメージ条文の当てはめ(構造のみ)
特別養護老人ホーム50人以上安衛令第5条の事業場に当たる。附則第4条の読替えの対象にならない
デイサービス50人未満附則第4条の読替えの対象になる
グループホーム50人未満附則第4条の読替えの対象になる
法人本部50人未満附則第4条の読替えの対象になる

これは、条文の構造を示す仮の例です。法人全体の職員が100人を超えていても、各事業場が常時五十人以上でなければ、条文の当てはめとしては附則第4条の側に入る、という読み方になります。逆に、同じ法人のなかで義務の書きぶりの事業場と、努力義務の書きぶりの事業場が混在することも、条文の構造としてはありえます。

注意したい点が2つあります。

  • 「事業場」とは何かの定義は、この記事で読んだ条文には書かれていません。特別養護老人ホームとその併設のデイサービスが1つの事業場なのか別々なのか、といった線引きは、条文だけでは決められません
  • 常時使用する労働者の数え方(非常勤、パート、夜勤専従などをどう数えるか)も、読んだ条文には書かれていません

この2点は、個別の事業場ごとに、所管の労働基準監督署や社会保険労務士などの専門家にご確認ください。

法人としてどちらに揃えるか

混在が生じたとき、法人としてどう構えるかは、条文が決めることではなく経営判断です。たとえば次のような整理が考えられます(いずれも提案で、条文が求めているものではありません)。

考え方内容運用上の見方(提案)
事業場ごとに条文どおりに分ける義務の事業場は義務として、それ以外は努めるものとして扱う条文には沿うが、法人内で職員の扱いが分かれる
法人として全事業場に揃える条文上は努力の事業場も含めて、同じ年間計画で実施する運用はそろうが、費用や事務の負担が増える
まず事務の流れだけ全事業場で揃える実施の案内・同意・通知の経路を共通にする小さく始められる。実施の範囲は別途決める

どれが正しいという条文はありません。大切なのは、事業場ごとに条文上の位置づけを一覧にしたうえで、法人としてどう扱うかを決めておくことです。

実施の枠組み:安衛則が定める流れ

ここからは、検査の実施の枠組みを安衛則で確かめます。努力義務の事業場がどこまで取り入れるかは別として、条文が想定している流れを知っておくと、事務の設計がしやすくなります。

検査の頻度と対象:第52条の9

事業者は、常時使用する労働者に対し、一年以内ごとに一回、定期に、次に掲げる事項について法第六十六条の十第一項に規定する心理的な負担の程度を把握するための検査(以下この節において「検査」という。)を行わなければならない。

読み取れることは次のとおりです。

  • 対象は「常時使用する労働者」。誰がこれに当たるかは、読んだ条文には書かれていない
  • 頻度は「一年以内ごとに一回、定期に」
  • 検査の項目は3つの号で書かれている。(一)職場における心理的な負担の原因に関する項目、(二)心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目、(三)職場における他の労働者による支援に関する項目

具体的な質問票の名前や設問は、条文には出てきません。この記事でも扱いません。

誰が実施し、誰が事務に関われないか:第52条の10

第1項は、第66条の10第1項の「厚生労働省令で定める者」(医師等)を、医師、保健師、そして研修を修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士又は公認心理師と定めています。実施者の選び方の実務は、この記事では扱いません。

この記事で押さえたいのは、第2項です。

検査を受ける労働者について解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、検査の実施の事務に従事してはならない。

読み取れることは次のとおりです。

  • 対象は、検査を受ける労働者について「解雇、昇進又は異動」に関して直接の権限を持つ監督的地位の者
  • その者は、検査の実施の事務に従事してはならない。語尾は禁止の書き方
  • 「実施の事務」の範囲を、この条文自身は列挙していない

小規模な事業所では、管理者が採用や異動の権限を持っていることが少なくありません。職員数が少ないと、事務を担当できる人が限られます。そのとき、事務を誰に任せるかが現実の論点になります。管理者が人事の権限を持つ事業所では、管理者自身は検査の実施の事務に関われない、という整理になります。事務担当者、法人本部の担当者、外部の機関などのうち、条文が定める条件に合う人を、事業場ごとに考える必要があります。

なお、第52条の11は、検査の結果の記録の作成や保存の事務が適切に行われるよう、事業者が必要な措置を講じることを求めています。誰が結果に触れられるのかは、事務の設計と一体で考えるところです。

結果の通知と同意:第52条の12、第52条の13

結果は、検査を行った医師等から、労働者に遅滞なく通知されるようにします(第52条の12)。第66条の10第2項は、医師等が労働者の同意を得ないで結果を事業者に提供してはならない、と書いていました。その同意の取り方は、安衛則第52条の13第1項が定めています。

法第六十六条の十第二項後段の規定による労働者の同意の取得は、書面又は電磁的記録によらなければならない。

読み取れることは次のとおりです。

  • 同意の取得は書面又は電磁的記録による。口頭だけでは足りない書き方
  • 同意を得て医師等から結果の提供を受けたとき、事業者は結果の記録を作成して五年間保存する(同条第2項)

面接指導と申出:第66条の10第3項、安衛則第52条の15、第52条の16

面接指導は、労働者が申し出たときに行うものです。第66条の10第3項の後半を読みます。

当該申出をした労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。この場合において、事業者は、労働者が当該申出をしたことを理由として、当該労働者に対し、不利益な取扱いをしてはならない。

読み取れることは次のとおりです。

  • 事業者が面接指導を行う義務が生じるのは、労働者が希望して申し出たとき
  • 申出をしたことを理由とする不利益な取扱いは禁止されている

安衛則はこれを受けて、面接指導の対象を「検査の結果、心理的な負担の程度が高い者であつて、面接指導を受ける必要があると検査を行つた医師等が認めたもの」と定めています(第52条の15)。申出のタイミングは、第52条の16第1項が「検査の結果の通知を受けた後、遅滞なく行うもの」と書いています。日数の期限は書かれていません。「遅滞なく」です。

第52条の16第3項は、検査を行った医師等が、対象の労働者に申出を行うよう勧奨することができると書いています。申出は労働者本人の意思ですが、医師等からの勧奨の道は条文に用意されています。

面接指導の結果の記録:第52条の18

事業者は、面接指導の結果に基づき、当該面接指導の結果の記録を作成して、これを五年間保存しなければならない。

記録には、実施年月日、労働者の氏名、面接指導を行った医師の氏名、そして第66条の10第5項の医師の意見を記載します(同条第2項)。

報告の条は、規則に直接「常時五十人以上」と書いている

ここで、第66条の10の書きぶりと対照的な条文があります。安衛則第52条の21です。第1項の冒頭を読みます。

常時五十人以上の労働者を使用する事業者は、一年以内ごとに一回、定期に、電子情報処理組織を使用して、検査及び面接指導の結果等について、次に掲げる事項を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。

読み取れることは次のとおりです。

  • この条には、「常時五十人以上の労働者を使用する」と直接書かれている。第66条の10のように、他の条を辿らなくても数字が分かる
  • 報告は一年以内ごとに一回、定期に、電子情報処理組織を使用して行う
  • 報告先は所轄労働基準監督署長
  • 報告する事項は、労働保険番号、事業の種類並びに事業場の名称・所在地・電話番号、常時使用する労働者の数、検査を受けた労働者の数及び面接指導を受けた労働者の数、検査を実施した者の区分、集団ごとの分析の実施の有無、産業医の氏名などが並ぶ

ここで気をつけたいのは、条文の主語が「事業者」で、数字の対象も「労働者を使用する事業者」と書かれている点です。一方、報告する事項には「事業場の名称、所在地及び電話番号」が含まれます。複数の事業場を持つ法人が、この条をどう当てはめて、事業場ごとに数え、報告するのかは、この記事で読んだ条文から決まりません。また、50人に満たない事業場が、この条との関係でどうなるのかも、読んだ範囲には書かれていません。

対比を表にします。

第66条の10(本則)・附則第4条安衛則 第52条の21
人数の数字条文自体には書かれていない。第13条第1項、安衛令第5条を辿って出てくる条文に直接「常時五十人以上」と書かれている
数字の出てくる主語「事業場」(第13条第1項、安衛令第5条)「事業者」
語尾本則は「行わなければならない」。附則第4条の読替えで「行うよう努めなければならない」「報告しなければならない」

この対比から、検査を行うことと、結果を監督署に報告することは、別の条で別の数字の引き方をしていることが分かります。報告の条のほうが、人数による線引きが条文に出ています。

福祉法人での運用:条文の構造から考えた整理

ここからは、条文が書いていることではなく、条文の構造から考えた運用の整理です。提案であることを、そのつど書きます。

夜勤・交代制では、案内と通知の経路づくりが論点になる

特別養護老人ホームやグループホームでは、夜勤や交代制の職員が多く、全員が同じ時間帯に集まる機会は限られます。条文が求めている流れを、事務に置き換えて並べます。

流れ条文の根拠事務で考えること(提案)
検査を年1回、定期に行う安衛則第52条の9年間予定にいつ入れるか。夜勤明けの日・休みの日にも案内が届く方法
結果は検査をした医師等から労働者に通知される第66条の10第2項、安衛則第52条の12事業者側が結果の中身を見られない前提で、通知の経路を作る
結果を事業者に提供するには同意が要る。同意は書面又は電磁的記録第66条の10第2項、安衛則第52条の13第1項紙で配るのか、電磁的な方法を使うのか。夜勤者にも同じ方法で届くか
面接指導は本人が申し出たとき第66条の10第3項、安衛則第52条の16第1項申出の窓口を誰にするか。申出が不利益につながらないことの周知
面接指導の記録は五年間保存安衛則第52条の18第1項保存場所と、見られる人の範囲

夜勤者の健康診断は、別の条文の話になります。夜勤に従事する職員の年2回の健診については、別の記事(特定業務従事者の健康診断|年2回の条文を読む)で扱っています。ストレスチェックの案内の経路を作るときに、健診の案内と一緒に整理しておくと、事務が重なりにくくなります。

小規模事業所では、事務の担当者を条文から逆算する

第52条の10第2項があるため、事業場の管理者が人事の権限を持っている場合、その管理者は検査の実施の事務に従事できません。次のように整理しておくと、迷いが減ります(提案です)。

確認すること見るところ
事務を担う予定の人が、検査を受ける労働者の解雇・昇進・異動に直接の権限を持っていないか第52条の10第2項
持っているなら、別の人に担当を切り替える。法人本部の担当者が引き受けるのか、外部に任せるのか事業場ごとに決める(条文は誰がよいかまでは書いていない)
検査の記録の作成・保存の事務が、適切に行われる体制か第52条の11

人事の権限がどこにあるかは、法人の組織によって違います。事業場ごとに洗い出すところから始めると、現実的です。

この記事で書いていないこと

条文の範囲では、次のことは書かれていない、またはこの記事で確認していません。

  • 附則第4条がいつまで続くのか:附則第4条は「当分の間」と書いているだけです。この記事で読んだ条文には、この附則を改める条文や、施行の時期を定めた規定は含まれていません。今後の扱いは、条文の最新の状況を所管の機関でご確認ください
  • 「事業場」の定義:条文は事業場を単位にしていますが、何を1つの事業場と数えるかは、読んだ条文には書かれていません
  • 常時使用する労働者の数え方:非常勤、パート、夜勤専従などをどう数えるかは、読んだ条文には書かれていません
  • 附則第4条の読替えが、第66条の10の第2項以下の運用にどう響くか:附則第4条が置き換えているのは第1項の語句です
  • 50人未満の事業場が、安衛則第52条の21の報告との関係でどうなるか:読んだ範囲には書かれていません。複数の事業場を持つ法人が、報告をどの単位で行うかも同じです
  • 「努めなければならない」をどこまで尽くせば足りるか:条文は語尾を示すだけで、基準は書いていません
  • ストレスチェックの具体的な質問項目、調査票の名前:条文には出てきません
  • 厚生労働省の指針やマニュアルの中身:この記事では確認していません
  • 実施者の選び方、外部委託の費用:この記事では扱いません
  • 助成金:この記事では扱いません

個別の事業場への当てはめや、努力義務の事業場の対応の水準は、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士などの専門家にご確認ください。

まとめ

  • 本則の第66条の10第1項は、検査を「行わなければならない」と書くだけで、規模の限定が出てこない。ここが出発点
  • 50人未満が努力義務になる根拠は、本則ではなく附則第4条。「行わなければ」を「行うよう努めなければ」と置き換える読替えで、義務が条文から消えるわけではない
  • 「五十人」は、第66条の10にも附則第4条にも書かれていない。 附則第4条 → 安衛法第13条第1項 → 安衛令第5条(産業医を選任すべき事業場)と3つの条を辿って初めて「常時五十人以上の労働者を使用する事業場」に行き着く
  • 条文は事業場を単位にしている。法人全体の職員数ではなく、事業場ごとに当てはめる構造で、同じ法人のなかに義務の書きぶりの事業場と努力義務の書きぶりの事業場が混在しうる。どちらに揃えるかは経営判断
  • 検査を受ける労働者の解雇・昇進・異動に直接の権限を持つ監督的地位の者は、検査の実施の事務に従事してはならない(安衛則第52条の10第2項)。小規模な事業所では、事務の担当者を条文から逆算して決める
  • 実施の枠組みは、年1回の定期の検査(第52条の9)、書面又は電磁的記録による同意(第52条の13第1項)、本人の申出による面接指導と不利益取扱いの禁止(第66条の10第3項)、五年間の記録の保存(第52条の18)。申出は「遅滞なく」で、日数の期限は書かれていない
  • 監督署への報告の条(第52条の21)には、規則に直接「常時五十人以上」と書かれている。第66条の10とは数字の出し方が違う
  • 附則第4条は「当分の間」。いつまで続くのかは、この記事で読んだ条文からは分からない

参考にした一次情報

いずれも条文によります。本記事は条文の構造を整理したもので、個別の事業場への適用や、行政の運用を示すものではありません。


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