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協力歯科医療機関|定めるのは努力義務。掲示の扱いは施設の種類で違う

協力歯科医療機関について調べると、契約書のひな形や協定書の案内はたくさん見つかります。ところが、運営基準の条文がそれをどう定めているのかを、条の順に読んだものはあまり見当たりません。

この記事は、ひな形を作る記事ではありません。特別養護老人ホームと障害者支援施設の運営基準を条文のまま読んで、協力歯科医療機関についての義務の重さと、掲示との関係を整理します。報酬や加算の話には踏み込みません。運営基準の条文だけで成立する範囲に絞って、「条文はここまでしか定めていない」という線を引くことが、この記事の役割です。

先に、条文を読んで確かめられたことを並べます。

  • 協力医療機関は「定めておかなければならない」(義務)。協力歯科医療機関は「定めておくよう努めなければならない」(努力義務)。この差は、特別養護老人ホームの基準、指定介護老人福祉施設の基準、障害者支援施設の基準のいずれでも同じ
  • 特別養護老人ホームには基準が2本ある。協力医療機関等の条は、どちらにもある。読んで比べると、協力医療機関の要件の中身は同じで、届出先の書き方だけが違う
  • 協力医療機関の側は、項ごとに「義務」と「努力義務」が切り替わる。歯科は、そのなかの1項だけで努力義務として置かれている
  • 掲示の条は、施設の種類で書き方が違う。 障害者支援施設の基準第47条は、掲示する事項に「協力医療機関及び協力歯科医療機関」を並べている。一方、指定介護老人福祉施設の基準第29条が並べているのは「協力医療機関」だけで、協力歯科医療機関という言葉は条文に出てこない
  • 協力医療機関の名称等を都道府県知事に届け出る義務(年1回)は、条文のうえでは協力医療機関についてだけ書かれている。協力歯科医療機関の届出は、読んだ条文には書かれていない

つまり障害者支援施設には、「定めるのは努力義務なのに、定めた場合の掲示は条文に書かれている」という構造があります。介護の側は、同じ構造をそのまま当てはめることができません。どこまで条文が言っているのかを、順に見ていきます。

条文の地図:どの論点がどこに書かれているか

読む条文は、全部で3本の省令にまたがります。先に地図を置きます。

論点特別養護老人ホームの基準指定介護老人福祉施設の基準障害者支援施設等の基準
協力医療機関等第27条第28条第46条
掲示(この記事では読んでいません)第29条第47条

3本の正式名称は次のとおりです。

  • 特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準(平成十一年厚生省令第四十六号)
  • 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成十一年厚生省令第三十九号)
  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準(平成十八年厚生労働省令第百七十二号)

この記事では、順に「特養の基準」「指定介護老人福祉施設の基準」「障害者支援施設の基準」と短く呼びます。

特別養護老人ホームの基準は2本ある

特別養護老人ホームについて読むとき、まず押さえておきたいのは、基準が1本ではないことです。

名前の似た2本の省令に、協力医療機関等の条がそれぞれあります。

項目特養の基準指定介護老人福祉施設の基準
協力医療機関等の条第27条第28条
主語「特別養護老人ホーム」「指定介護老人福祉施設」
掲示の条この記事では読んでいない第29条

2本を並べて読んだ結果は、次のとおりです。

  • 第1項(協力医療機関を定める義務と3つの要件)、第3項から第5項、第6項(協力歯科医療機関)は、主語を除いて同じ文面になっている
  • 第2項の届出先の書き方だけが違う。特養の基準は「都道府県知事」、指定介護老人福祉施設の基準は「当該指定介護老人福祉施設に係る指定を行った都道府県知事(指定都市及び中核市にあっては、指定都市又は中核市の市長)」

第2項の違いを、条文の該当部分で確かめます。まず特養の基準です。

協力医療機関の名称等を、都道府県知事に届け出なければならない。

次が指定介護老人福祉施設の基準です。

協力医療機関の名称等を、当該指定介護老人福祉施設に係る指定を行った都道府県知事(指定都市及び中核市にあっては、指定都市又は中核市の市長)に届け出なければならない。

指定介護老人福祉施設の側は、指定を行った自治体が誰かによって、届出先が都道府県知事か、指定都市・中核市の市長かに分かれる書き方です。特養の基準には、かっこ書きがありません。

この違いは、法人本部が施設の届出先を整理するときに効いてきます。「協力医療機関の届出は都道府県」と一括りにせず、施設の所在地が指定都市や中核市かどうかを、施設ごとに確かめる必要があります(どちらの基準が個別の施設にどう適用されるかは、この記事の条文からは読めません。後ろの「この記事で書いていないこと」に書きました)。

協力医療機関の側は、項ごとに義務と努力義務が切り替わる

歯科を読む前に、協力医療機関の側の構造を見ておきます。歯科が置かれた位置が、これで見やすくなります。協力医療機関そのものの詳しい読み方は、別の記事(介護の協力医療機関|経過措置の対象は一部だけ。年1回の届出は義務)で扱っています。ここでは、語尾がどう切り替わるかだけを項の順に確かめます。

特養の基準第27条の第1項は、次のように始まります。

特別養護老人ホームは、入所者の病状の急変等に備えるため、あらかじめ、次の各号に掲げる要件を満たす協力医療機関(第三号の要件を満たす協力医療機関にあっては、病院に限る。)を定めておかなければならない。

ここまでの項を、表にします(指定介護老人福祉施設の基準第28条も、主語を除いて同じです)。

項内容条文の語尾区分
第1項3つの要件を満たす協力医療機関を、あらかじめ定める定めておかなければならない義務
第1項ただし書複数の医療機関を定めて各号の要件を満たしてもよい差し支えない許容
第2項年1回以上、病状が急変した場合等の対応を確認し、協力医療機関の名称等を届け出る届け出なければならない義務
第3項第二種協定指定医療機関との間で、新興感染症の発生時等の対応を取り決める取り決めるように努めなければならない努力義務
第4項協力医療機関が第二種協定指定医療機関である場合に、新興感染症の発生時等の対応を協議する協議を行わなければならない義務(条件つき)
第5項入院した入所者が退院できる状態になったとき、速やかに再入所させられるようにする入所させることができるように努めなければならない努力義務
第6項あらかじめ、協力歯科医療機関を定める定めておくよう努めなければならない努力義務

読み取れることは4つです。

  1. 第1項の3つの要件は、(一)相談対応の体制を常時確保、(二)診療の求めに応じる体制を常時確保、(三)入院を要する場合に原則として受け入れる体制の確保、です。第三号の要件を満たす協力医療機関は、病院に限られます
  2. 第2項の年1回の確認と届出は義務です。主語は施設で、相手は「協力医療機関」。条文に協力歯科医療機関は出てきません
  3. 第3項は努力義務、第4項は義務と、隣り合う項で語尾が違います。第4項は「協力医療機関が第二種協定指定医療機関である場合においては」という条件がついています
  4. 第6項の協力歯科医療機関は、この条の最後の項で、努力義務として置かれています

「協力医療機関を定める」と「協力歯科医療機関を定める」は、同じ条のなかで、同じ「あらかじめ…定める」という形で並んでいますが、語尾は違います。次の節で、この差を歯科の側から読みます。

協力歯科医療機関は、特養の2本の基準とも「努力義務」

特養の基準第27条第6項の全文です。

特別養護老人ホームは、あらかじめ、協力歯科医療機関を定めておくよう努めなければならない。

指定介護老人福祉施設の基準第28条第6項の全文です。

指定介護老人福祉施設は、あらかじめ、協力歯科医療機関を定めておくよう努めなければならない。

2つは、主語が違うだけで、文面は同じです。

語尾に注目します。協力医療機関を定める第1項は「定めておかなければならない」でした。協力歯科医療機関を定める第6項は「定めておくよう努めなければならない」です。

協力医療機関協力歯科医療機関
置かれた項第1項(冒頭)第6項(最後)
条文の語尾定めておかなければならない定めておくよう努めなければならない
区分義務努力義務
要件の書き込み各号で3つの要件。第三号の要件を満たすものは病院に限る要件の定めは、この項には書かれていない
年1回の確認・届出第2項で義務条文には書かれていない

条文が書いているのは、歯科について「あらかじめ定めておくよう努める」ところまでです。どんな機関でなければならないか、何をしてもらうのか、どのくらいの頻度で確認するのか、といったことは、第6項には書かれていません。

ここで、読みすぎないための注意を3つ置きます。

  • 「努力義務だから、定めなくてよい」とは、条文は言っていません。 条文の語尾は「努めなければならない」です。「義務」と書かれていないことと、「何もしなくてよい」ことは別の話です。努力義務をどう受け止めるかは、法人の判断と、個別の施設に対する指導や通知の読み方が絡むため、条文だけでは決められません
  • 「協力歯科医療機関を定めておく」の中身は、第6項からは読めません。契約書や協定書をどういう形にするか、診療や口腔の管理をどこまでしてもらうかは、この条文に出てこない話です
  • 協力歯科医療機関と報酬の関係(加算など)は、この記事では扱いません。運営基準の条文の外の話です

障害者支援施設の基準第46条:第1項が義務、第2項が努力義務

障害者支援施設の側も、同じ構造です。第46条の第1項は協力医療機関です。

指定障害者支援施設等は、利用者の病状の急変等に備えるため、あらかじめ、協力医療機関を定めておかなければならない。

続く第2項が、協力歯科医療機関です。

指定障害者支援施設等は、あらかじめ、協力歯科医療機関を定めておくよう努めなければならない。

第1項は「定めておかなければならない」、第2項は「定めておくよう努めなければならない」。介護の2本の基準と同じく、協力医療機関が義務、協力歯科医療機関が努力義務です。

ただし、条の組み立ては介護の基準とかなり違います。

特養の基準・指定介護老人福祉施設の基準障害者支援施設の基準(第46条)
協力歯科医療機関の位置第6項(最後)第2項(協力医療機関のすぐ後)
協力医療機関を定める項の書き方3つの要件を各号で書く「協力医療機関を定めておかなければならない」と、要件を書き込まずに述べる
年1回の確認と届出第2項に書かれているこの条には書かれていない
新興感染症に関する定め第3項(努力義務)、第4項(協議の義務)第3項(努力義務)、第4項(協議の義務)。文面は同じ構造
退院後の再入所第5項(努力義務)この条には書かれていない

障害者支援施設の第46条は、4つの項でできています。第3項と第4項は、介護の基準の第3項と第4項と同じ構造です。

指定障害者支援施設等は、協力医療機関が第二種協定指定医療機関である場合においては、当該第二種協定指定医療機関との間で、新興感染症の発生時等の対応について協議を行わなければならない。

読み取れることは次のとおりです。

  • 協力医療機関の要件の書き込み(3つの号)、年1回の確認、都道府県知事への届出は、この第46条には書かれていません。介護の基準との大きな違いです
  • 協力歯科医療機関は、協力医療機関の直後の第2項にあります。介護の基準のように、最後の項に置かれてはいません
  • 新興感染症に関する第3項(努力義務)と第4項(条件つきの義務)は、介護の基準と同じ構造です

障害者支援施設の別の条文に、ここで読んだ内容を補う定めがあるかどうかは、この記事では確認していません(第46条だけを読んだ結果です)。

掲示:障害者支援施設の基準第47条は協力歯科医療機関を挙げている

ここが、この記事でいちばん確かめたい点です。協力歯科医療機関を定めるのは努力義務でした。では、掲示はどうなっているでしょうか。

まず、障害者支援施設の基準第47条の第1項です。

指定障害者支援施設等は、指定障害者支援施設等の見やすい場所に、運営規程の概要、従業者の勤務の体制、前条の協力医療機関及び協力歯科医療機関その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を掲示しなければならない。

「前条」は第46条です。この文で読み取れることは次のとおりです。

  • 掲示は「掲示しなければならない」と、義務の語尾で書かれている
  • 掲示する事項として、条文は具体的に 「運営規程の概要」「従業者の勤務の体制」「前条の協力医療機関及び協力歯科医療機関」 を挙げ、そのあとに「その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項」と続ける
  • つまり、協力歯科医療機関は、条文の中で名前が挙げられた掲示事項になっている

第46条第2項は「定めておくよう努めなければならない」でした。第47条第1項は、第46条の協力医療機関と協力歯科医療機関を掲示する事項に入れています。ここから、定めるのは努力義務、掲示は義務の語尾という、語尾のずれが見えます。

このずれをどう読むかには、慎重さが要ります。

  • 条文に書かれているのは、「掲示する事項に協力歯科医療機関を挙げている」ことまで
  • 協力歯科医療機関を定めていない施設が、掲示をどう扱うのかは、第47条には書かれていません。定めた場合に掲示する、と読むのが素直に見えますが、条文は「定めた場合に」という限定を書いていません
  • 定めていない場合の記載の仕方(「なし」と書くのか、欄ごと省くのか)は、条文からは読めません

第2項は、備え付けと閲覧による代替です。

指定障害者支援施設等は、前項に規定する事項を記載した書面を当該指定障害者支援施設等に備え付け、かつ、これをいつでも関係者に自由に閲覧させることにより、同項の規定による掲示に代えることができる。

読み取れることは次のとおりです。

  • 掲示に代えて、書面を備え付けて自由に閲覧させる方法が認められている
  • 代えられるのは「前項に規定する事項」。協力歯科医療機関も、前項の事項に含まれている
  • 抜粋した第47条は第2項までで、ウェブサイトへの掲載を定める項は読んだ範囲に見当たりません

障害福祉サービスの重要事項説明書と掲示の関係は、別の記事(障害福祉サービスの重要事項説明書|記載事項・掲示・変更時の届出)で扱っています。そちらの記載事項の話と、この第47条の掲示の話は、同じ事項を別の場面で求める形になっていて、法人本部が書類を整えるときに突き合わせたい関係です。

掲示:指定介護老人福祉施設の基準第29条は「協力医療機関」だけを挙げている

次に、介護の側です。掲示を定める条は、指定介護老人福祉施設の基準第29条にあります。

指定介護老人福祉施設は、当該指定介護老人福祉施設の見やすい場所に、運営規程の概要、従業者の勤務の体制、協力医療機関、利用料その他のサービスの選択に資すると認められる重要事項(以下この条において単に「重要事項」という。)を掲示しなければならない。

障害者支援施設の第47条と見比べると、構造はよく似ています。「運営規程の概要」「従業者の勤務の体制」と続くところまでは同じです。ところがその次が違います。

障害者支援施設の基準 第47条第1項指定介護老人福祉施設の基準 第29条第1項
運営規程の概要挙げている挙げている
従業者の勤務の体制挙げている挙げている
協力医療機関「前条の協力医療機関」「協力医療機関」
協力歯科医療機関「及び協力歯科医療機関」と挙げている条文に出てこない
利用料条文に挙げていない挙げている
末尾の包括的な言い方「その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項」「その他のサービスの選択に資すると認められる重要事項」(「重要事項」と定義)

読み取れることは次のとおりです。

  • 協力歯科医療機関は、第29条第1項が名指しで挙げた事項に入っていません。 挙げられているのは「協力医療機関」だけです
  • 一方、末尾に「その他のサービスの選択に資すると認められる重要事項」という包括的な言い方があります。協力歯科医療機関がこの「重要事項」に当たるのかどうかは、第29条の条文からは決められません。 条文は、当たるとも当たらないとも書いていません
  • 指定介護老人福祉施設の側にあって障害者支援施設の側にない事項として、利用料があります

つまり、指定介護老人福祉施設の基準では、「協力歯科医療機関を掲示しなければならない」と条文から言うことはできません。かといって「掲示してはならない」わけでもありません。条文が名前を挙げていない、というところまでが、読んで確かめられたことです。

第2項と第3項も確認します。第2項は、書面の備え付けと閲覧による代替です(文面は障害者支援施設の第47条第2項と同じ構造で、代えられる対象は「前項の規定による掲示」です)。第3項が、障害者支援施設の側にない定めです。

指定介護老人福祉施設は、原則として、重要事項をウェブサイトに掲載しなければならない。

読み取れることは次のとおりです。

  • 指定介護老人福祉施設は、原則として重要事項をウェブサイトに掲載する義務がある(語尾は「掲載しなければならない」)
  • ここでいう重要事項は、第1項で定義された事項です。協力医療機関は含まれている。協力歯科医療機関は、先に見たとおり第1項に名前が挙がっていないので、含まれるかどうかは条文からは決まりません
  • 「原則として」とあるので、例外がありうる書き方ですが、どんな例外があるかは第3項には書かれていません

特養の基準の側に、これに当たる掲示の条があるかどうかは、この記事では読んでいません。

3本の基準の読み取りを、1つの表にする

ここまでの読み取りを、1つの表にまとめます。

特養の基準指定介護老人福祉施設の基準障害者支援施設の基準
協力医療機関を定める第27条第1項(義務。3つの要件)第28条第1項(義務。3つの要件)第46条第1項(義務。要件の書き込みなし)
協力歯科医療機関を定める第27条第6項(努力義務)第28条第6項(努力義務)第46条第2項(努力義務)
年1回の確認と届出第27条第2項(義務。届出先は都道府県知事)第28条第2項(義務。届出先は指定を行った都道府県知事、指定都市・中核市は市長)この条には書かれていない
新興感染症の取決め・協議第3項(努力)、第4項(義務)第3項(努力)、第4項(義務)第3項(努力)、第4項(義務)
退院後の再入所第5項(努力義務)第5項(努力義務)この条には書かれていない
掲示この記事では読んでいない第29条第1項(義務)。協力医療機関は挙げているが、協力歯科医療機関は挙げていない第47条第1項(義務)。協力医療機関と協力歯科医療機関の両方を挙げている
書面の備え付けによる代替この記事では読んでいない第29条第2項第47条第2項
ウェブサイトへの掲載この記事では読んでいない第29条第3項(原則として義務)読んだ範囲に定めなし

この表を見て、法人本部が押さえておきたいことは次の3つです。

  1. 協力歯科医療機関を「定める」ことは、3本の基準すべてで努力義務。ここは種別によらず共通
  2. 掲示の条は、種別で違う。 障害者支援施設は協力歯科医療機関を名指しで挙げ、指定介護老人福祉施設は挙げていない
  3. 都道府県知事等への年1回の届出は、協力医療機関の名称等。協力歯科医療機関は、読んだ条文のなかで届出の対象として書かれていない

福祉法人での運用:1つの法人でも、施設の種類で台帳の持ち方が変わる

ここからは条文が書いていることではなく、条文の構造から考えた運用の整理です。提案であることを、そのつど書きます。

特養と障害者支援施設を持つ法人では、掲示の確認項目が違う

特別養護老人ホームと障害者支援施設の両方を運営している法人は、少なくありません。条文を読む限り、施設の種類によって掲示の確認項目が異なります。

確認する項目障害者支援施設指定介護老人福祉施設
協力医療機関の名称等掲示の対象(第47条第1項)掲示の対象(第29条第1項)
協力歯科医療機関の名称等掲示の対象として名前が挙がっている(第47条第1項)名前は挙がっていない。重要事項に当たるかは条文から決まらない
利用料条文に名前は挙がっていない掲示の対象(第29条第1項)
ウェブサイト掲載読んだ範囲に定めなし原則として義務(第29条第3項)

どちらの施設でも、「協力歯科医療機関の名称を掲示物に載せておく」こと自体は、条文に反しません。種別ごとに掲示物のひな形を持つのではなく、法人として共通の項目を決めたうえで、種別で追加・省略する項目を管理するやり方は、考えられる整理の1つです(条文の求めではなく、提案です)。

協力歯科医療機関を定めていない施設の掲示をどうするか

協力歯科医療機関は努力義務なので、定めていない施設がありえます。このとき、

  • 障害者支援施設の第47条は、協力歯科医療機関を挙げています。定めていない場合の書き方は、条文に書かれていません
  • 指定介護老人福祉施設の第29条は、協力歯科医療機関を挙げていません

条文が決めていない部分なので、法人としてどう書くのかを決めておく必要があります。たとえば次のような整理が考えられます(いずれも提案で、条文が指定しているものではありません)。

考え方掲示のイメージ運用上の見方(提案)
欄を残して「定めていません」と書く協力歯科医療機関:定めていません定めていないことが読み手に分かる。定めた時に書き換える手間が出る
欄ごと省く(記載なし)読み手には、定めていないのか載せ忘れなのかが分からない
定めるよう努めている旨を添える協力歯科医療機関:現在、選定中です努力義務の趣旨に沿った表現にできる。「選定中」のまま放置されやすい

どれが正しいという条文はありません。大切なのは、施設ごとにバラバラな書き方にならないことと、書いた内容と実態が一致していることです。

台帳に持っておきたい項目

法人本部が、施設をまたいで協力医療機関・協力歯科医療機関の情報を持つとき、条文から読める項目と、持っておくと便利な項目を分けます。

項目条文が求めるか持っておく理由
協力医療機関の名称求める(定める義務、第27条・第28条・第46条の第1項)施設ごとに定めたものを一覧にする
協力医療機関に関する年1回の確認の日求める(特養の基準・指定介護老人福祉施設の基準の第2項)確認が年1回以上あるかを追う
都道府県知事等への届出の日と届出先求める(同項。届出先は指定の主体で変わる)指定都市・中核市の施設は届出先が異なる
協力歯科医療機関の名称定めるよう努める(努力義務)施設ごとの有無を把握する
協力歯科医療機関の確認の日条文は求めていない(提案)協力関係が今も続いているかを確かめる
掲示している内容と掲示した日掲示は求める。日付の記録は条文にない(提案)変更があったとき、掲示物が古いままにならないようにする
書面の備え付けで代えている施設の把握代替を認める(第29条第2項・第47条第2項)。記録は条文にない(提案)掲示の代わりにどの方法を取っているかを施設ごとに揃える

協力医療機関や協力歯科医療機関を変更したとき、法人として何をどの順で直すかも、決めておきたい点です。届出が必要な協力医療機関の変更と、届出が条文に書かれていない協力歯科医療機関の変更では、直す先が違います。ただし、変更したときの届出の要否は、この記事の条文では確認していません。

この記事で書いていないこと

条文の範囲では、次のことは書かれていない、またはこの記事で確認していません。

  • 協力歯科医療機関の役割や、連携の内容:第6項(第2項)は、定めておくよう努めることしか書いていません
  • 契約書や協定書のひな形、記載事項:この記事では扱いません
  • 報酬や加算との関係:運営基準の条文の外の話です
  • 経過措置の期限:読んだ条文には出てきません
  • 厚生労働省の通知やQ&Aの内容:この記事では確認していません
  • 特養の基準に、指定介護老人福祉施設の基準第29条に当たる掲示の条があるか:この記事では読んでいません
  • 特養の基準と指定介護老人福祉施設の基準のそれぞれが、個別の施設にどう適用されるか:2本の関係は、条文の文面の比較までにとどめています
  • 協力歯科医療機関を定めていない場合の掲示の書き方:条文に書かれていません
  • 障害者支援施設の基準の、第46条以外の条にある補足の定め:この記事では確認していません
  • 努力義務をどこまで尽くせば足りるか:条文は「努めなければならない」と書くだけです。個別の判断は、所管の自治体や専門家にご確認ください

まとめ

  • 協力医療機関は義務、協力歯科医療機関は努力義務。 特養の基準(第27条)、指定介護老人福祉施設の基準(第28条)、障害者支援施設の基準(第46条)の3本とも同じ
  • 特別養護老人ホームには基準が2本ある。 協力医療機関の要件の中身は同じで、第2項の届出先の書き方だけが違う(指定を行った自治体が指定都市・中核市なら市長)
  • 協力医療機関の側は、項ごとに義務と努力義務が切り替わる。協力歯科医療機関は、特養の基準・指定介護老人福祉施設の基準では最後の項、障害者支援施設の基準では協力医療機関の直後の第2項に、努力義務として置かれている
  • 年1回の確認と届出は、条文のうえでは協力医療機関についてだけ。協力歯科医療機関の届出は書かれていない
  • 掲示は施設の種類で違う。 障害者支援施設の基準第47条は、掲示する事項として協力医療機関と協力歯科医療機関の両方を挙げている。指定介護老人福祉施設の基準第29条が挙げているのは協力医療機関だけで、協力歯科医療機関は条文に出てこない(重要事項に当たるかは条文から決まらない)
  • 指定介護老人福祉施設の基準第29条には、重要事項を原則としてウェブサイトに掲載する義務(第3項)がある。障害者支援施設の基準第47条には、読んだ範囲でこれに当たる項がない
  • 条文はここまでしか定めていない。協力歯科医療機関を定めていない場合の掲示の書き方は、法人で決めておく必要がある

参考にした一次情報

いずれも条文によります。本記事は条文の構造を整理したもので、個別の施設への適用や、行政の運用を示すものではありません。


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