お問合せ
note

社福

労働者死傷病報告|電子申請で報告。休業4日未満は四半期にまとめる

職員が移乗介助で腰を痛めて、数日休んだ。送迎の途中で事故にあって、1週間休んだ。これは労働基準監督署に報告するものなのか、するとしたらいつ、何を、どうやって出すのか。そう迷う場面は、複数の事業所を持つ社会福祉法人の現場にあるのではないでしょうか。

この記事は、労働者死傷病報告を定めた労働安全衛生規則(以下「安衛則」)の第97条を、条文のまま順に読みます。入力画面の操作方法や、労災保険の給付の手続きには踏み込みません。条文が何を書いていて、どこから先は書いていないのかに線を引くことが、この記事の役割です。

先に、条文を読んで確かめられたことを並べます。

  • 第97条第1項は、死亡または休業したときの報告の方法を「電子情報処理組織を使用して」と書いている。同じ抜粋にある第96条(事故報告)は「様式第二十二号による報告書を…提出しなければならない」で、書き方が対照的
  • 第97条第1項は、報告する事項を第一号から第十二号まで並べている。何を報告するのかは、条文に全部書いてある
  • 休業の日数が4日に満たないときは、第2項により、1月から3月まで、4月から6月まで、7月から9月まで、10月から12月までの期間ごとに、それぞれの期間の最後の月の翌月末日までにまとめて報告する。このとき報告するのは、第九号を除く各号の事項と休業日数
  • 第96条第2項は、事故報告と死傷病報告を併せて出すときに、重複する部分の記入は要しないと書いている
  • 報告をしない、または虚偽の報告をしたときの罰則は、安衛法第120条第5号の五十万円以下の罰金。ただし、第97条の報告とこの罰則の結びつきは、条文を順にたどって読む必要がある

一方で、移乗介助や送迎中の事故などが「労働災害等」に当たるかどうかは、読んだ条文からは決められません。この記事では、決められないところを決められないまま残します。

目次

条文の地図:どの論点がどこに書かれているか

読む条文は、安衛則と労働安全衛生法(以下「安衛法」)にまたがります。先に地図を置きます。

条法令内容(抜粋で読んだ範囲)この記事での役割
第96条安衛則事故報告様式第二十二号による報告。死傷病報告との対比
第97条安衛則労働者死傷病報告本題。第1項(死亡・休業)と第2項(休業4日未満)
第98条安衛則報告安衛法第100条第1項で報告を求めるときの通知事項
第100条安衛法報告等厚生労働省令で定めるところにより報告させる根拠
第103条安衛法書類の保存等書類の保存義務の根拠
第120条安衛法五十万円以下の罰金第5号が、第100条第1項の報告に関する違反

第96条と第97条は、書き方が対照的

死傷病報告を読む前に、隣の第96条を見ておきます。第96条は「事故報告」で、第97条の1つ手前の条です。第1項の書き出しは次のとおりです。

事業者は、次の場合は、遅滞なく、様式第二十二号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

第96条が対象にするのは、「次の場合」として各号に挙げた事故です。第一号には「火災又は爆発の事故」「遠心機械、研削といしその他高速回転体の破裂の事故」などが並び、そのあとにボイラー、クレーン、エレベーター、ゴンドラといった機械の事故が続きます。福祉の現場で身近な事故が、この列挙のどれに当たるかは、条文の語を1つずつ確かめる話です。この記事では踏み込みません。

注目したいのは、報告の方法です。第97条第1項と並べると、違いがはっきりします。

第96条第1項(事故報告)第97条第1項(労働者死傷病報告)
報告する人事業者事業者
時期遅滞なく遅滞なく
宛先所轄労働基準監督署長所轄労働基準監督署長
方法様式第二十二号による報告書を提出電子情報処理組織を使用して報告

主語も、時期の書き方も、宛先も同じです。違うのは方法だけです。第96条は紙の様式を前提にした書き方で、第97条は「電子情報処理組織を使用して」と書いています。条文の上で、死傷病報告は電子で出す形で書かれているということです。

ここで、読みすぎないための注意を置きます。

  • 条文は「電子情報処理組織を使用して」と書いています。書面で出せる場合があるのかどうかは、この抜粋の本則からは読み取れません。経過措置などがあるかどうかも、この記事では確認していません
  • 電子で出すときの入力の仕方、ログインの方法、各項目に入れるコードの表は、条文には出てきません。この記事では扱いません

第96条第2項:併せて出すときは、重複部分の記入が要らない

第96条には第2項があります。事故報告と死傷病報告を一緒に出すときの定めです。

次条第一項の規定による報告と併せて前項の報告書の提出をしようとする場合にあつては、当該報告書の記載事項のうち次条第一項各号(第十二号を除く。)に掲げる事項と重複する部分の記入は要しないものとする。

読み取れることは次のとおりです。

  • 「次条第一項」は第97条第1項。事故報告の報告書の記載事項のうち、第97条第1項の各号の事項と重なる部分は、記入しなくてよい
  • 重なりの対象から外れているのは第十二号(報告年月日並びに事業者及び報告者の職氏名)。第十二号に当たる事項は、事故報告の側でも書く、という書き方になっている

同じ出来事で事故報告と死傷病報告の両方が要る場面があること自体は、この条文が前提にしています。ただ、どんな出来事がその両方に当たるのかは、この条の列挙と第97条の対象を、それぞれ確かめる必要があります。

第97条第1項:誰が、いつ、何を、誰に報告するのか

第97条第1項の前半は、次のとおりです。

事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒(以下「労働災害等」という。)により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、電子情報処理組織を使用して、次に掲げる事項を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。

1文が長いので、部品に分けます。

部品条文の言葉
誰が事業者
どんなときに労働者が「労働災害等」により死亡し、または休業したとき
労働災害等とは労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒
いつ遅滞なく
どうやって電子情報処理組織を使用して
何を次に掲げる事項(第一号から第十二号)
誰に所轄労働基準監督署長

「労働災害等」の定義は、括弧書きで条文自身が置いています。「負傷、窒息又は急性中毒」が、労働災害その他就業中、または事業場内もしくはその附属建設物内で起きたもの、という組み立てです。

「労働災害等」に当たるかは、条文からは決められない

福祉の現場では、次のような場面が思い浮かびます。

  • 移乗介助や入浴介助のあとに、腰を痛めた
  • 送迎の途中で、事故にあった
  • 利用者から暴力を受けて、負傷した

これらが「労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒」に当たるかどうかを、この条文は書いていません。条文が書いているのは、この言葉までです。個別の事案を当てはめる基準や、腰痛のような場合の扱いは、抜粋の条文にはありません。判断に迷うときは、所轄の労働基準監督署などにご確認ください(この記事は条文の構造を整理するもので、個別の事案の判断を示すものではありません)。

同じように、次の点も条文には書かれていません。

  • 「休業」とは何日目から、どの状態を指すのか
  • 「遅滞なく」とは、具体的に何日以内なのか
  • 「所轄」の労働基準監督署が、複数の事業場を持つ法人のどの事業場の所在地で決まるのか

第1項の各号:報告する事項は12個ある

第1項は「次に掲げる事項」として、第一号から第十二号までを並べています。何を報告するのかが、条文に全部書いてあります。要点を表にします(文言の要約です。正確な言い回しは、各号の本文でご確認ください)。

号報告する事項条件
第一号労働保険番号建設工事の請負人の労働者のときは、元方事業者の労働保険番号
第二号事業の種類、事業場の名称、所在地、電話番号なし
第三号常時使用する労働者の数なし
第四号工事の名称建設工事の作業に従事する労働者のとき
第五号事業場の名称事業場の構内で作業する請負人の労働者のとき
第六号元方事業者の事業場の名称建設工事の請負人の労働者のとき
第七号派遣先か派遣元かの別、派遣先の事業場の名称と郵便番号派遣労働者のとき
第八号労働者の氏名、生年月日、年齢、性別、職種、経験期間、傷病の名称と部位なし
第九号休業見込期間または死亡日時なし
第十号国籍または地域の名称、在留資格の区分外国人のとき
第十一号発生日時、発生場所の所在地、発生状況とその略図、原因なし
第十二号報告年月日、事業者と報告者の職氏名なし

第四号から第六号は、建設工事や請負人の労働者が絡む場合の事項です。条件つきの号なので、自法人が当てはまる場面があるかどうかは、事案ごとの確認になります。ここでは、福祉の現場で迷いやすい号を拾います。

第一号から第三号:事業場の情報と、人数

第一号から第三号は、報告する事業場の基本情報です。

労働保険番号(建設工事の作業に従事する請負人の労働者が労働災害等により死亡し、又は休業した場合は法第十五条第一項の元方事業者(以下「元方事業者」という。)の労働保険番号)

事業の種類並びに事業場の名称、所在地及び電話番号

常時使用する労働者の数

特別養護老人ホーム、デイサービス、グループホーム、法人本部など、1つの法人が複数の事業場を持っている場合に、どの事業場の情報で出すのかは、現場が取り違えやすいところです。

条文から確かめられるのは、第二号が「事業場の名称、所在地及び電話番号」を挙げていることです。一方、次の点は、抜粋の条文からは決められません。

  • 第一号の労働保険番号が、事業場ごとの番号なのか、法人単位の番号なのか(条文が番号の種類を書き分けているのは、建設工事の請負人の労働者のときに元方事業者の番号を使う、という場面だけです)
  • 第三号の「常時使用する労働者の数」を、事業場単位で数えるのか法人単位で数えるのか。パートや非常勤、シフト制の職員をどう数えるのか

これらは、報告のたびに現場が迷う点になりえます。判断が必要な点は、条文では決まらないので、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士などにご確認ください。

第七号:派遣労働者のときは、派遣先か派遣元かの別を書く

派遣職員を受け入れている施設、あるいは自法人の職員を他の施設へ派遣している法人では、第七号が関わります。

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)第二条第二号に規定する派遣労働者が労働災害等により死亡し、又は休業した場合は、当該報告を行う事業者が当該派遣労働者に係る同条第四号に規定する派遣先又は同号に規定する派遣元事業主のいずれに該当するかの別並びに当該派遣先の事業場の名称及び郵便番号

読み取れることは次のとおりです。

  • 対象は、労働者派遣法に定める派遣労働者が労働災害等により死亡し、または休業した場合
  • 書くのは、「当該報告を行う事業者」が派遣先か派遣元事業主のどちらに当たるかの別と、派遣先の事業場の名称および郵便番号
  • 条文の書き方からは、派遣先の事業者も派遣元事業主も、この報告を行う場面がある前提だと読める

一方で、派遣労働者が負傷したときに、派遣先と派遣元のどちらが、いつまでに報告を出すのかは、抜粋の条文には書かれていません。どちらが出すのかは、条文のこの部分だけでは決められません。

第十号:外国人職員のときは、国籍と在留資格の区分

外国人職員が増えている法人では、第十号が実務に直結します。

労働災害等により死亡し、又は休業した労働者が外国人(出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)別表第一の一の表の外交又は公用の在留資格をもつて在留する者及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成三年法律第七十一号)に定める特別永住者を除く。)である場合はその国籍又は地域の名称及び在留資格の区分

読み取れることは次のとおりです。

  • 報告するのは、国籍または地域の名称と、在留資格の区分
  • 括弧書きで外国人から除かれているのは、外交または公用の在留資格で在留する者と、特別永住者
  • 技能実習や特定技能といった在留資格の名前は、この号には出てきません。除外の括弧書きに入っていない、というところまでが、読んで確かめられたことです

在留資格の区分をどう書き分けるか(コードの表など)は、条文には出てきません。外国人職員の在留資格を、人事の台帳で把握しているかどうかが、実際の報告のときに効いてくる、という順番になります(これは条文の求めではなく、運用の見方です)。

第十一号:発生状況と略図

第十一号は、何が起きたかを書く部分です。

労働災害等の発生日時、発生場所の所在地、発生状況及びその略図並びに原因

読み取れることは次のとおりです。

  • 書くのは、発生日時、発生場所の所在地、発生状況、その略図、原因
  • 「発生場所の所在地」を書くので、施設の中で起きたのか、施設の外で起きたのかが、報告の中身に表れる
  • 略図は、発生状況とセットで書かれている

送迎中の事故のように、施設の外で起きたものは、発生場所の所在地をどう書くのか、という実務上の疑問が出ます。条文は所在地としか書いておらず、書き方の細かな決まりは抜粋にはありません。現場から上がってくる事故の記録に、発生日時、場所、状況、原因、略図に使える情報が最初から入っていれば、報告のときに書き直す手間が減ります(条文の求めではなく、運用の提案です)。

第八号と第九号:労働者の情報と、休業見込期間

第八号は、労働者の氏名、生年月日および年齢、性別、職種、その職種における経験期間、傷病の名称および部位です。

労働災害等により死亡し、又は休業した労働者の氏名、生年月日及び年齢、性別、職種、当該職種における経験期間並びに傷病の名称及び部位

第九号は短い号です。

休業見込期間又は死亡日時

この第九号は、次に読む第2項で、報告の事項から外れる号です。

第97条第2項:休業の日数が4日に満たないときは、四半期ごと

第2項は、第1項の例外です。

前項の場合において、休業の日数が四日に満たないときは、事業者は、同項の規定にかかわらず、一月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで及び十月から十二月までの期間における当該事実について、それぞれの期間における最後の月の翌月末日までに、電子情報処理組織を使用して、同項各号(第九号を除く。)に掲げる事項及び休業日数を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。

こちらも、部品に分けます。

部品条文の言葉
どんなとき前項の場合において、休業の日数が四日に満たないとき
第1項との関係同項の規定にかかわらず
まとめる単位一月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで、十月から十二月まで
期限それぞれの期間における最後の月の翌月末日まで
方法電子情報処理組織を使用して
何を第1項各号(第九号を除く)の事項、および休業日数
誰に所轄労働基準監督署長

期限を、暦に直す

条文の「それぞれの期間における最後の月の翌月末日まで」を、暦に直します(条文から計算した結果です)。

休業した期間期間の最後の月報告の期限
1月から3月まで3月4月末日
4月から6月まで6月7月末日
7月から9月まで9月10月末日
10月から12月まで12月翌年1月末日

期限は年に4回です。4月末、7月末、10月末、1月末、と覚えておくと分かりやすくなります。

第1項と第2項の違いを並べる

第1項第2項
対象労働者が死亡し、または休業したとき第1項の場合で、休業の日数が四日に満たないとき
時期遅滞なく四半期ごとの期間の、最後の月の翌月末日まで
報告する事項第一号から第十二号第九号を除く各号の事項と、休業日数
方法電子情報処理組織を使用して電子情報処理組織を使用して

この表から読み取れることは次のとおりです。

  • 死亡したときは第1項。第2項の対象は「休業の日数が四日に満たないとき」だけ
  • 休業が4日以上になるときは、第2項の対象になりません。 条文は「四日に満たないとき」と書いているので、4日以上は第1項のまま、遅滞なく報告する形になる
  • 第2項では、第九号の休業見込期間は要らず、代わりに休業日数を報告する。見込みではなく、実際の日数を書く形になっている

福祉の現場では、「数日休んで戻ってきた」という軽い負傷が起こりえます。第2項は、そのような場合に使う仕組みですが、四半期ごとに期限が来る分、事務の担当者が忘れやすいところでもあります。

第2項の、条文が決めていないところ

第2項を読んでも、決まらない点があります。

  • 休業が2つの期間をまたぐとき(たとえば3月末から4月にかけて休んだとき)に、どちらの期間にまとめるのか。条文は「当該事実について」としか書いていません
  • 「休業の日数が四日に満たない」かどうかを、休業を始めた時点の見込みで判断するのか、終わってからの実際の日数で判断するのか。休業の日数の数え方(初日をどう数えるか、土日や休日を含むのか)も、書かれていません
  • 期間のあいだに該当する休業が1件もなかったときに、何か出すのか。条文は、該当する事実があるときの報告を書いているだけです

こうした点は、条文だけでは決まらないので、個別の事案では所轄の労働基準監督署にご確認ください。

根拠と罰則:第98条、安衛法第100条、第120条、第103条

ここまでは、報告の中身でした。ここからは、なぜ報告しなければならないのか、報告しなかったらどうなるのか、を条文でたどります。

安衛法第100条第1項:省令で定めるところにより報告させる

報告を求める根拠は、安衛法第100条第1項にあります。

厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者、労働者、機械等貸与者、建築物貸与者、通知対象物譲渡者等又はコンサルタントに対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。

読み取れることは次のとおりです。

  • 報告を求めるのは、厚生労働大臣、都道府県労働局長または労働基準監督署長
  • 報告させる対象には事業者が入っている
  • 「厚生労働省令で定めるところにより」とあるので、報告の中身や形は省令に委ねられている

安衛則の第98条は、この第100条第1項の報告を求めるときの通知について定めています。

厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、法第百条第一項の規定により、事業者、労働者、機械等貸与者、建築物貸与者又は通知対象物譲渡者等に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずるときは、次の事項を通知するものとする。

通知する事項は、「報告をさせ、又は出頭を命ずる理由」と、出頭を命ずる場合の「聴取しようとする事項」です。この第98条が、第97条の死傷病報告にもそのまま当てはまるのかどうかは、条文に書かれていません。

安衛法第120条第5号:五十万円以下の罰金

罰則は、安衛法第120条です。柱書は次のとおりです。

次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、五十万円以下の罰金に処する。

そのうち第五号が、報告についての号です。

第百条第一項又は第三項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつたとき。

読み取れることは次のとおりです。

  • 罰則の対象は、第100条第1項または第3項の規定による報告をせず、もしくは虚偽の報告をし、または出頭しなかったとき
  • 罰金の額は、五十万円以下

ここで、つなぎ方を確かめます。安衛法第100条第1項は「厚生労働省令で定めるところにより」報告させるとし、安衛則第98条は同項に触れています。第97条の死傷病報告は、この省令の側の報告の定めとして読むのが、条文を順にたどった自然な読み方です。ただし、第97条自身は、根拠となる法の条を書いていません。 第97条の報告をしなかったときに、第120条第5号がどのように当てはまるのかは、この抜粋だけで言い切ることはしません。「報告をしなければ罰則がある」という方向で受け止めておくのが安全、というところまでが、条文から言えることです。

なお、報告をした事業者以外に、誰がどのように責任を負うのか(法人としての扱いなど)は、抜粋には書かれていません。

安衛法第103条:書類の保存

報告の控えを、どのくらいの期間保存しておくのか、という疑問も出ます。関係しそうな条として、安衛法第103条第1項を読みます。

事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、この法律又はこれに基づく命令の規定(第五十七条の二第四項及びこれに基づく命令の規定を除く。)に基づいて作成した書類(次項及び第三項の帳簿を除く。)を、保存しなければならない。

読み取れることは次のとおりです。

  • 事業者は、法またはこれに基づく命令に基づいて作成した書類を、保存しなければならない
  • 保存の仕方は、「厚生労働省令で定めるところにより」とされている
  • 第120条第1号には、第103条第1項の規定に違反したときが入っている(第百一条第一項又は第百三条第一項若しくは第四項の規定に違反したとき)

ただし、死傷病報告そのもの(または報告の控え)が、この第103条第1項の「書類」に当たるのか、保存の期間は何年なのかは、抜粋の条文から読み取れません。保存の期間は省令に委ねられており、その省令は、この記事では確認していません。報告そのものの保存義務が条文にあると、この記事では言えません。

福祉法人での運用:複数の事業場と年4回の期限を、どう持つか

ここからは、条文が書いていることではなく、条文の構造から考えた運用の整理です。提案であることを、そのつど書きます。

第1項と第2項の振り分けを、最初に決める

労働災害等で職員が休んだとき、まず振り分けるのは次の3つです。

状況使う項報告の時期
死亡した第1項遅滞なく
休業した。休業の日数は4日以上第1項遅滞なく
休業した。休業の日数は4日に満たない第2項四半期ごとの期限(4月末、7月末、10月末、1月末)

休業が長引いて4日以上になるかどうかが、現場では途中まで分からないこともあります。条文が見込みと実際のどちらで判断するのかを書いていない以上、休業が続いているあいだは、第1項で出す可能性を意識しておく、という構えが、事務としては安全です(提案です)。

事業場ごとに、記録を持つ

法人が複数の事業場を持っているとき、第二号(事業場の名称、所在地、電話番号)と第三号(常時使用する労働者の数)は、どの事業場の報告かを示す情報です。法人本部が事業場ごとの記録を持つなら、次の項目が考えられます。

項目条文との関係持っておく理由
事業場の名称、所在地、電話番号第二号が求める報告の都度、同じ内容を入れる
常時使用する労働者の数第三号が求める。数え方は条文にない法人として数え方を決め、毎回同じ基準にする(提案)
労働保険番号第一号が求める。事業場ごとか法人単位かは条文にないどの番号で出すのかを、確認したうえで台帳に書いておく(提案)
労働者の氏名、職種、経験期間第八号が求める人事の台帳から引けるようにする
外国人職員の国籍または地域、在留資格の区分第十号が求める人事の台帳に持っておく(提案)
派遣職員の受け入れ、派遣の有無第七号が関係する派遣先か派遣元かを、事案ごとに確かめる
発生日時、場所、状況、原因、略図第十一号が求める事故の記録にこの情報を最初から入れる(提案)
休業した日数第2項が求める第1項か第2項かの振り分けに使う

事務担当者が1人の体制では、四半期の期限を年間予定に入れる

第2項の期限は、年に4回、決まった月末に来ます。法人本部の事務担当者が1人の体制では、日々の業務のなかで、四半期ごとの報告は忘れやすい仕事になりかねません。次のような運用が考えられます(いずれも提案です)。

  • 年間予定に、4月末、7月末、10月末、1月末の期限を入れておく
  • 各期限の1か月前に、事業場ごとに「その期間に4日未満の休業をした職員がいないか」を確かめる
  • 事業場から本部に上がる事故の記録を、休業日数が分かる形にしておく
  • 担当者が不在でも出せるよう、報告の手順を、誰が見ても分かる形にまとめておく

法人内の安全衛生の体制づくりは、別の記事で扱っています。衛生委員会と、衛生推進者・安全衛生推進者も、あわせてご覧ください。

この記事で書いていないこと

条文の範囲では、次のことは書かれていない、またはこの記事で確認していません。

  • 電子申請の具体的な操作:入力の仕方、ログインの方法、項目に入れるコードの表は、条文に出てきません
  • 書面による報告が認められる場合:経過措置などがあるかどうかは、抜粋した本則からは読み取れません
  • 改正の時期や経緯:抜粋には改正履歴の行を入れていません
  • 労災保険の給付の手続き:別の法律の話です
  • どこまでが労働災害等に当たるか:移乗介助や入浴介助での腰痛、送迎中の事故、利用者からの暴力による負傷が当たるかどうかは、条文の「労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒」の言葉以上のことは書かれていません
  • 「休業」の意味と日数の数え方:何日目から休業なのか、休日を含むのか、見込みで判断するのか実際の日数で判断するのか
  • 「遅滞なく」の具体的な日数
  • 第一号の労働保険番号が事業場ごとか法人単位か、第三号の人数の数え方:パートや非常勤、シフト制の職員をどう数えるかを含みます
  • 派遣労働者のとき、派遣先と派遣元のどちらが報告を出すのか
  • 休業が複数の期間をまたぐときの、第2項の扱い
  • 第97条の報告と安衛法第120条第5号の結びつきの細部:第97条自身は根拠となる法の条を書いていません。法人としての責任の負い方も、抜粋にはありません
  • 報告そのものの保存義務と保存期間:安衛法第103条第1項は、保存の仕方を省令に委ねています。その省令は、この記事では確認していません
  • 厚生労働省の通知やQ&Aの内容:この記事では確認していません

個別の事案の判断は、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士などにご確認ください。

まとめ

  • 第97条第1項は、死亡または休業したときの報告を「遅滞なく、電子情報処理組織を使用して」行うと書いている。 事故報告の第96条が「様式第二十二号による報告書を提出」としているのと、書き方が対照的
  • 第1項は、報告する事項を第一号から第十二号まで並べている。派遣労働者は第七号、外国人は第十号、発生状況と略図は第十一号で書く
  • 休業の日数が四日に満たないときは第2項。1月から3月、4月から6月、7月から9月、10月から12月の期間ごとに、最後の月の翌月末日までに、第九号を除く各号の事項と休業日数を報告する。暦に直すと、4月末、7月末、10月末、1月末
  • 休業が4日以上になるときや死亡のときは、第2項の対象にならず、第1項のまま
  • 第96条第2項は、事故報告と併せて出すときに、重複する部分の記入は要しないと書いている
  • 根拠は安衛法第100条第1項、罰則は第120条第5号の五十万円以下の罰金。ただし、第97条自身は根拠となる法の条を書いていないので、結びつきは条文を順にたどって読む
  • 条文は、どこまでが労働災害等か、休業の数え方、事業場ごとの番号の扱い、報告の保存期間までは書いていない。判断が必要なところは、所轄の労働基準監督署などにご確認ください
  • 複数の事業場を持つ法人は、事業場ごとの記録を持ち、4月末、7月末、10月末、1月末の期限を年間予定に入れておくと、忘れにくくなる(提案)

参考にした一次情報

いずれも条文によります。本記事は条文の構造を整理したもので、個別の事案への適用や、行政の運用を示すものではありません。


事業場ごとの労働災害の記録と、四半期の期限を、法人本部で1つの台帳に持てていますか

パレットテクノロジーズは、社会福祉法人様のデジタル化を「現地現物」で伴走支援しています。事業場ごとの事故の記録と休業日数、四半期ごとの報告の期限を、施設をまたいで法人本部で1つの台帳にして追える状態に整えるところからご一緒します。ITに詳しい職員がいらっしゃらなくても大丈夫です。

▶ 社会福祉専門IT|社会福祉法人様向けのDX伴走支援

▶ ご相談・お問い合わせはこちら

関連記事

お問い合わせ