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社会福祉法人の登録免許税|非課税になる登記の範囲と書類添付の条件

施設の建物を取得することになり、登記にかかる費用を見積もっていたときのことです。関係者から「社会福祉法人は登録免許税が非課税ですよね」と言われ、そのまま予算を組みかけた。ところが、理事会で「それはどの条文の、どの登記のことですか」と聞かれて、答えに詰まってしまった。

法人本部の事務長さんや経理担当の方から、こうした場面のお話を伺うことがあります。「社会福祉法人は非課税」という言い方は広く通っていますが、根拠の条文を開いたことがある方は意外と少ないように思います。

この記事では、登録免許税法の第4条と別表第二・別表第三の原文を読み、「社会福祉法人の登録免許税の非課税」がどういう作りになっているのかを整理します。結論を先にお伝えすると、次の3点です。

  • 社会福祉法人は、法人が受ける登記なら何でも非課税、という書かれ方ではない
  • 非課税になるのは、別表第三の第十号が挙げている登記に限られる
  • しかも書類を添付して受けるものに限る、という条件が付いている

制度の解説ではなく、「根拠がどこにあって、実務で何を確認すればよいか」を中心に書きます。なお、この記事で参照した一次情報は登録免許税法の第4条、別表第二、別表第三(第十号)の原文だけです。税率や特例など、それ以外の規定は確認していないので触れません。触れなかった論点は、記事の最後にまとめています。

第4条は第1項と第2項で仕組みが違う

登録免許税の非課税の入口は、登録免許税法の第4条です。「公共法人等が受ける登記等の非課税」という見出しの条文で、2つの項からできています。まず第1項です。

国及び別表第二に掲げる者が自己のために受ける登記等については、登録免許税を課さない。

次に第2項です。

別表第三の第一欄に掲げる者が自己のために受けるそれぞれ同表の第三欄に掲げる登記等(同表の第四欄に財務省令で定める書類の添附があるものに限る旨の規定がある登記等にあつては、当該書類を添附して受けるものに限る。)については、登録免許税を課さない。

同じ「非課税」でも、書き方はまったく違います。違いを表にすると次のとおりです。

 第1項第2項
誰が国、および別表第二に掲げる者別表第三の第一欄に掲げる者
どの登記か自己のために受ける登記等(限定なし)別表第三の第三欄に掲げる登記等だけ
書類の添付条文上の条件はない第四欄に書類の添付の定めがある登記は、書類を添付して受けるものに限る

第1項は、対象の法人を名指ししたうえで、その法人が自己のために受ける登記等を広く非課税にする作りです。これに対して第2項は、「誰が」に加えて「どの登記か」まで表で指定し、さらに書類の添付を条件にできる作りになっています。

社会福祉法人は別表第二ではなく別表第三に載っている

では、社会福祉法人はどちらの項の対象なのでしょうか。

別表第二(非課税法人の表)の名称欄を確認すると、並んでいるのは、たとえば次のような法人です。

  • 国立大学法人
  • 地方公共団体
  • 地方独立行政法人
  • 日本年金機構
  • 日本中央競馬会

この表に「社会福祉法人」は載っていません。 つまり、社会福祉法人は第1項の「別表第二に掲げる者」ではないということです。

社会福祉法人が載っているのは、第2項が指す別表第三のほうです。別表第三は「非課税の登記等の表」で、第一欄が名称、第二欄が根拠法、第三欄が非課税の登記等、第四欄が備考という4つの欄でできています。このうち第十号が「社会福祉法人」で、根拠法の欄には社会福祉法が書かれています。

ここが、この記事のいちばん大事なところです。

「社会福祉法人は登録免許税が非課税」という言い方は、条文の作りからみると正確ではありません。 社会福祉法人の非課税は、第1項の「丸ごと非課税」ではなく、第2項の「別表第三の第三欄に掲げる登記等だけ、書類を添付して受けるなら非課税」という、条件付きの仕組みだからです。

別表第三 第十号が挙げる4つの登記

それでは、第十号の第三欄には何が書かれているのでしょうか。第三欄は4つの号に分かれています。まず第一号を、原文のまま引用します。

社会福祉法第二条第一項(定義)に規定する社会福祉事業の用に供する建物の所有権の取得登記又は当該事業の用に供する土地の権利の取得登記(第三号に掲げる登記を除く。)

第二号から第四号までは、条文が長いので、要点を表にまとめます。表の右の列は原文の言い換えなので、正確な文言は原文でご確認ください。

号対象になる施設・事業挙げられている登記
一社会福祉法第二条第一項に規定する社会福祉事業の用に供するもの(第三号に掲げる登記を除く)建物の所有権の取得登記、または土地の権利の取得登記
二自己の設置運営する学校(学校教育法第一条に規定する幼稚園に限る)校舎等の所有権の取得登記、またはその敷地・運動場・実習用地その他の直接に保育もしくは教育の用に供する土地の権利の取得登記
三自己の設置運営する保育所もしくは家庭的保育事業等建物の所有権の取得登記、またはその敷地その他の直接に保育の用に供する土地の権利の取得登記
四自己の設置運営する認定こども園建物の所有権の取得登記、またはその敷地その他の直接に保育もしくは教育の用に供する土地の権利の取得登記

表を見て気づく点が2つあります。

1つめは、対象が「事業の用途」で切られていることです。第一号は「社会福祉事業の用に供する」建物や土地と書かれています。法人の名前だけで決まるのではなく、その不動産が何の用に供されるのかが条件に入っています。法人が持つ不動産のすべてが対象になる、という書き方ではありません。どの事業がここでいう社会福祉事業に当たるかは、条文が指している社会福祉法第二条第一項で確認する必要があります。

2つめは、第一号には「(第三号に掲げる登記を除く。)」という括弧書きがあることです。保育所などの登記は第三号に別立てされているので、第一号の読み方でも第三号の読み方でも迷わないよう、順に見ていく必要があります。

なお、第二号から第四号は、幼稚園、保育所や家庭的保育事業等、認定こども園に関するものです。高齢者福祉や障がい福祉の法人本部にとって直接の関係は薄いかもしれませんが、条文がこう区分されていることは知っておくと、第一号の読み方が整理しやすくなります。

並んでいるのは「取得登記」。抵当権の設定登記は?

サジェストなどを見ると、「社会福祉法人 抵当権設定 登録免許税」という検索がよく行われています。施設整備で金融機関から借入れをして、不動産に抵当権を設定する場面を想定したものでしょう。

この点について、原文から言えることを整理します。

  • 第三欄の第一号から第四号までに挙げられているのは、建物の所有権の取得登記と土地の権利の取得登記である
  • 第三欄の原文に「抵当権」という語は書かれていない

つまり、抵当権の設定登記は、別表第三の第十号の第三欄に、抵当権の設定登記として掲げられてはいません。

ただし、ここで「だから課税される」と断定はできません。理由は2つあります。

  1. 「取得登記」という語の定義は、別表第三の別の行(第一号)に括弧書きで置かれており、「以下同じ」とされています。この記事の抜粋で確認したのはその一部で、社会福祉法人の行に適用されたときに、具体的にどの登記までを含むのかを、私たちは確かめきれていません
  2. 抵当権の設定登記の税額や、別の規定による特例があるかどうかは、この記事で参照した条文の外にあります。租税特別措置法などの規定は確認していません

ですから、借入れに伴う抵当権の設定登記の登録免許税については、「非課税だろう」とも「課税されるだろう」とも決めつけずに、条文の作りを踏まえて、司法書士や所轄庁などに確認するのが実務的です。少なくとも、「社会福祉法人だから、施設に関する登記は全部非課税」という理解のまま予算を組むと、あとで数字が合わなくなるおそれがあります。

施設整備の借入れと抵当権の場面については、社会福祉法人の借入金と多額の借財の記事で、借入れそのものの手続きを整理しています。あわせて確認しておくと、登記費用と借入手続きを同じスケジュールで見通せます。

非課税は自動では効かない。第四欄の「書類の添付」

第4条第2項には、括弧書きで「同表の第四欄に財務省令で定める書類の添附があるものに限る旨の規定がある登記等にあつては、当該書類を添附して受けるものに限る」とありました。では、社会福祉法人の第四欄には何が書かれているのでしょうか。

第三欄の第一号から第四号までのいずれかの登記に該当するものであることを証する財務省令で定める書類の添付があるものに限る。

これが、第十号の第四欄の原文です。読み解くと、こうなります。

  • 第三欄の第一号から第四号までのいずれかの登記に該当することを
  • 証する書類(財務省令で定めるもの)を
  • 添付して受けるものに限って、非課税になる

非課税は、社会福祉法人であれば自動的に適用されるものではありません。書類を添付して登記を受けて、はじめて効く仕組みです。 世に言う「登録免許税の非課税証明書」は、この第四欄の書類のことを指して使われている言葉だと考えられます。

なお、この書類を誰が発行するのか、どんな様式か、いつまでに申請するのか、といった点は、この記事で参照した原文には書かれていません。自治体や場面によって扱いが異なる可能性もありますので、ここでは書きません。所轄庁など関係する窓口に、早めに確認してください。

実務での段取り:登記の直前ではなく、手前で動き出す

条文の作りから、実務で言えることが1つあります。

第四欄の書類は、「添付して受けるものに限る」という条件です。ということは、登記を申請する時点で、その書類が手元にそろっている必要があるということです。書類が間に合わなければ、非課税の条件を満たさないまま申請することになりかねません。

そこで、建物を取得する、土地の権利を取得する、というスケジュールを組むときは、次のような順番で確認しておくと安全です。

確認すること見るところ
取得する不動産は建物の所有権か、土地の権利か別表第三 第十号 第三欄
その不動産は、社会福祉事業の用に供するものか(第一号)、幼稚園・保育所等・認定こども園のものか(第二号〜第四号)第三欄の各号、社会福祉法第二条第一項
添付する書類は何か、誰がいつまでに用意するか第四欄(原文に様式等の記載はないため、所轄庁など窓口に確認)
登記の申請日はいつか取得の契約や引渡しの日程

このなかで、とくに時間が読みにくいのが3行目です。所要期間は条文からは分かりません。ですから、登記の日程が決まってから動くのではなく、取得の話が具体化した段階で、窓口に「何を、いつまでに」と聞いておくことをお勧めします。

この条文の射程の外にあるもの

もう1点、念のため確認しておきます。

別表第三の第十号の第三欄が挙げているのは、先ほどのとおり、建物の所有権や土地の権利の取得登記だけです。法人自体の登記事項に関する変更登記、たとえば資産の総額の変更登記や役員の変更登記は、この第三欄には書かれていません。

これらの登記に登録免許税がかかるのか、かからないのかについては、この記事で参照した原文だけでは確認できないので、書きません。「社会福祉法人の登録免許税は非課税」という言葉を、第三欄に書かれていない登記にまで広げて使わないよう、注意が必要だという事実の指摘にとどめます。

また、不動産を取得する話は、法人の財産の持ち方とも関わってきます。取得する土地や建物を基本財産にするかどうかの検討は、社会福祉法人の基本財産の記事もあわせてご覧ください。

一次情報で確認できなかったため、この記事で書いていないこと

誤解を避けるために、書いていない論点を明示しておきます。

  • 非課税証明書の様式、申請先、添付書類の詳細、処理期間
  • 登録免許税の税率(別表第一の内容)
  • 租税特別措置法などによる特例
  • 抵当権の設定登記や、資産の総額・役員の変更登記に対する登録免許税の取扱い

ここは自治体や状況によって異なる部分ですので、実際に手続きを進める際は、必ず所轄庁や専門家に確認してください。

つまずくのは条文の読み方より「書類と段取りの管理」

条文の作り自体は、表に整理すればそれほど難しくありません。実務で困るのは、むしろそのあとです。

  • 取得予定の不動産が、どの号の登記に当たるのかを、誰がいつ判断したのか記録がない
  • 非課税に必要な書類をいつまでに誰が準備するのかが、担当者の頭の中にしかない
  • 登記の日程、借入れの日程、理事会の決議の日程がばらばらに管理されていて、全体の段取りが見えない
  • 担当者が異動すると、前回どうしたのか誰も分からない

こうした状況は、制度を知らないから起きるのではなく、判断の根拠と期限が一か所にまとまっていないから起きます。施設整備のように、数年に一度しか経験しない手続きほど、この傾向が強くなります。

取得ごとに「対象の不動産」「該当する号」「必要な書類」「担当者」「期限」を一覧で記録しておくだけでも、次の担当者にとっては大きな手がかりになります。

まとめ

  • 「社会福祉法人は登録免許税が非課税」は、条文の作りからは正確ではない。社会福祉法人は別表第二ではなく別表第三の第十号に載っている
  • 第4条第1項は「別表第二に掲げる者が自己のために受ける登記等」を広く非課税にする。第2項は「別表第三の第三欄に掲げる登記等」だけを、書類の添付を条件に非課税にする
  • 第十号の第三欄が挙げているのは、社会福祉事業の用に供する建物の所有権や土地の権利の取得登記(第一号)と、幼稚園・保育所等・認定こども園に関する取得登記(第二号〜第四号)
  • 抵当権の設定登記は、第三欄に掲げられていない。ただし課税されると断定はせず、窓口や専門家に確認する
  • 第四欄は、第三欄のいずれかの登記に該当することを証する書類の添付を条件にしている。非課税は自動では効かない
  • 書類が必要なので、登記の直前ではなく、取得の話が具体化した段階で確認を始める

参考(一次情報)


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