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年5日の時季指定|年次有給休暇管理簿の保存は本則五年、附則で三年

職員ごとに入職日が違い、常勤と非常勤が混ざり、早番・遅番・夜勤のシフトで動いている。そのなかで「年5日の有給は、全員に与えられているか」と問われて、すぐに答えられる状態でしょうか。

年5日の時季指定は、解説記事の多い話題です。この記事は解説を繰り返すのではなく、労働基準法の第39条第7項と第8項、労働基準法施行規則(以下「労基則」)の第24条の5から第24条の7までを、条文の順に読みます。そのうえで、法人に複数の事業所があり、職員ごとに入職日が異なる福祉の現場で、何を決め、何を台帳に残す必要があるのかを整理します。

先に、条文を読んで確かめられたことを並べます。

  • 年5日の時季指定の義務は、労働基準法(以下「労基法」)第39条第7項にある。与えなければならない日数が十労働日以上の労働者に、基準日から一年以内に、労働者ごとに時季を定めて5日を与える
  • 本人の請求や計画的付与で与えた日数ぶんは、5日から差し引く(第39条第8項)。5日を超えるときは5日として数える
  • 時季を定めるときに、あらかじめ明らかにして意見を聴くのは義務、聴いた意見を尊重するのは努力義務(労基則第24条の6)
  • 年次有給休暇管理簿の保存は、労基則第24条の7の本則では五年間。ただし労基則の附則第71条で、当分の間三年間と読み替える
  • 罰則は、第119条が「第三十九条(第七項を除く。)」と書いて第7項を除き、第7項は第120条に置かれている。法定刑が違う

比例付与の日数表、賃金の額、時間単位年休の細かい運用、行政の運用などは、条文だけでは読めない、またはこの記事で確認していない論点です。後ろの「この記事で書いていないこと」にまとめています。

条文の地図:どの論点がどこに書かれているか

話が行ったり来たりしやすいので、先に地図を置きます。

論点置かれている条文
年5日の時季指定の義務労基法 第39条第7項
本人の請求・計画的付与との差し引き労基法 第39条第8項(第5項・第6項を受ける)
基準日より前から与える場合の扱い労基法 第39条第7項ただし書、労基則 第24条の5
時季を定めるときの意見聴取労基則 第24条の6
年次有給休暇管理簿の作成と保存労基則 第24条の7、同則 附則 第71条
就業規則に書く事項労基法 第89条
罰則労基法 第119条、第120条

労基法第39条第7項を、一文ずつ読む

年5日の義務の根拠は、第39条第7項です。条文は次のとおりです。

使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。

長いので、4つの部品に分けます。

部品条文の言葉読み取れること
誰に「与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者」付与される日数が10労働日以上の労働者が対象。正規・非正規といった区別は、第7項には書かれていない
何を「日数のうち五日」付与された日数のうち5日
いつまでに「基準日…から一年以内の期間に」基準日から1年の間
どうやって「労働者ごとにその時季を定めることにより」労働者1人ずつ、使用者が時季を定める

第7項の条文には、事業場の規模や、使用する労働者の人数による限定は書かれていません。就業規則の作成義務が「常時十人以上」で始まる(後ほど第89条で見ます)のとは、条文の組み立てが違います。

基準日は、職員ごとに動く

「基準日」は、第7項のかっこ書きで、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間の初日と定められています。「六箇月経過日」は、第2項に出てくる言葉です。

雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)

つまり基準日は、雇入れの日から数えて決まります。雇入れの日が違えば六箇月経過日も違い、基準日も違います。 入職日がばらばらな事業所では、職員の数だけ「1年の区切り」があることになります。年5日の期限が職員ごとに別々にやってくる、というのが条文どおりの構造です。

ただし書は、基準日より前から与える場合の定め

第7項にはただし書があります。

ただし、第一項から第三項までの規定による有給休暇を当該有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。

「厚生労働省令で定めるところにより」とあるので、細かい扱いは省令に委ねられています。その省令が、労基則第24条の5です(後ほど読みます)。

非常勤・パートの職員は対象になるのか:第3項の構造

福祉の事業所には、週の勤務日数が少ない職員が多くいます。第7項の対象は「与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者」なので、雇用形態ではなく、付与される日数が10日以上かどうかで決まります。

付与日数の決め方は、第1項と第2項が基本です。第1項は、雇入れの日から六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に、十労働日の有給休暇を与えると定めます。第2項は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に、継続勤務年数に応じて日数を加算すると定めます。

そして第3項が、勤務日数の少ない労働者の例外です。

前二項の規定にかかわらず、これらの規定による有給休暇の日数を基準とし、通常の労働者の一週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数(第一号において「通常の労働者の週所定労働日数」という。)と当該労働者の一週間の所定労働日数又は一週間当たりの平均所定労働日数との比率を考慮して厚生労働省令で定める日数とする。

読み取れることは次のとおりです。

  • 第3項の対象は、一週間の所定労働日数が通常の労働者より相当程度少ない労働者(第一号)などで、条文の頭に「次に掲げる労働者」と書かれている
  • ただし、一週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間以上の者は、第3項の対象から除かれる(条文のかっこ書き)
  • 日数は、第1項・第2項の日数を基準に、所定労働日数の比率を考慮して省令で定める日数になる

ここから言える構造は、次の2点です。

  1. 比例付与の結果が10日以上になる職員は、第7項の対象になる。10日に届かない職員は、第7項の対象にならない
  2. 週の所定労働日数が少なくても、一週間の所定労働時間が省令の時間以上なら第3項の対象から除かれ、第1項・第2項の日数になる

どの勤務日数・勤続年数のときに何日になるか、また省令で定める時間が何時間かは、省令の表にあり、この記事では扱いません。事業所の側でできるのは、職員ごとの付与日数を台帳に持っておくことです。「非常勤だから対象外」と決めつけず、付与日数で判定する形にしておくと、判定の根拠が残ります。

勤務形態の整理や常勤換算の考え方は、別の記事(勤務形態一覧表と常勤換算)で扱っています。

第8項:自分で取った日数と計画年休は、5日から差し引く

第7項だけを読むと、「使用者が5日を指定しなければならない」と読めます。ところが第8項が、差し引きの仕組みを置いています。

前項の規定にかかわらず、第五項又は第六項の規定により第一項から第三項までの規定による有給休暇を与えた場合においては、当該与えた有給休暇の日数(当該日数が五日を超える場合には、五日とする。)分については、時季を定めることにより与えることを要しない。

ここに出てくる第5項と第6項は、次の規定です。

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。

第5項は、労働者が請求した時季に与える原則です。第5項にはただし書があり、請求された時季に与えることが事業の正常な運営を妨げる場合は、他の時季に与えることができるとされています。

第6項は、過半数組合または過半数代表者との書面による協定で、時季に関する定めをした場合の規定です。核心は次の部分です。

これらの規定による有給休暇の日数のうち五日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。

計画的付与にできるのは、付与日数のうち5日を超える部分だけです。付与日数が10日なら、計画的付与にできるのは5日が上限です。

3つの経路を並べます。

経路条文時季を決めるのは第8項の差し引き
労働者の請求第39条第5項労働者与えた日数ぶんを差し引く
計画的付与第39条第6項労使協定の定め与えた日数ぶんを差し引く
使用者の時季指定第39条第7項使用者(差し引いた残りを指定する)

仮の例で確かめます。付与日数が10日の職員で、同じ基準日からの1年の中の話として数えます。

ケース請求で取得(第5項)計画的付与(第6項)時季を定めて与える必要がある日数
A0日0日5日
B3日0日2日
C2日3日0日
D8日0日0日(5日を超える場合は5日として数える)

差し引きの計算は、5日から「請求と計画的付与で与えた日数(5日が上限)」を引いた残りです。事業所の側から見ると、年度の終わりに慌てて指定するのではなく、基準日から数か月たった時点で、取得日数が少ない職員の一覧を出すことが、条文の構造に沿った見方になります。この一覧づくりは条文が求めるものではなく、運用の提案です。

労基則第24条の5:基準日を法人で揃えている場合

入職日がばらばらな事業所では、「付与日を年に1回、法人で統一したい」という運用が考えられます。第7項ただし書が扱うのは、基準日より前から与えることとした場合です。条文の言葉は「基準日より前の日」で、「入職日より前」とは書かれていません。基準日は雇入れの日ではなく、六箇月経過日から一年ごとの区切りの初日だからです。

第1項:第一基準日から1年以内に5日

使用者は、法第三十九条第七項ただし書の規定により同条第一項から第三項までの規定による十労働日以上の有給休暇を与えることとしたときは、当該有給休暇の日数のうち五日については、基準日(同条第七項の基準日をいう。以下この条において同じ。)より前の日であつて、十労働日以上の有給休暇を与えることとした日(以下この条及び第二十四条の七において「第一基準日」という。)から一年以内の期間に、その時季を定めることにより与えなければならない。

基準日より前に10日以上を与えた場合、その与えた日が「第一基準日」で、そこから1年以内に5日を与える、という形になります。

第2項:履行期間と、月数÷12×5の計算

第2項は、基準日(または第一基準日)に10日以上を与え、さらに1年以内の特定の日に新たに10日以上を与える場合を定めています。

前項の規定にかかわらず、使用者が法第三十九条第一項から第三項までの規定による十労働日以上の有給休暇を基準日又は第一基準日に与えることとし、かつ、当該基準日又は第一基準日から一年以内の特定の日(以下この条及び第二十四条の七において「第二基準日」という。)に新たに十労働日以上の有給休暇を与えることとしたときは、履行期間(基準日又は第一基準日を始期として、第二基準日から一年を経過する日を終期とする期間をいう。以下この条において同じ。)の月数を十二で除した数に五を乗じた日数について、当該履行期間中に、その時季を定めることにより与えることができる。

ポイントは3つです。

  • 履行期間は、第一基準日(または基準日)から、第二基準日の1年後までの期間
  • 与えなければならない日数は、履行期間の月数を12で除して5を乗じた日数
  • 条文の語尾は「与えることができる」で、第1項の「与えなければならない」とは語尾が違う

仮の例で計算します。入職日に10日を与えた(これが第一基準日)、その6か月後に、法人の統一付与日として新たに10日を与えた(これが第二基準日)、という場合です。

区間月数
第一基準日から第二基準日まで6か月
第二基準日から1年12か月
履行期間(合計)18か月

18 ÷ 12 × 5 = 7.5日。履行期間が18か月なら、7.5日ぶんの時季を、その18か月の間に定めて与えることになります。条文は、小数になった日数の端数の扱いについて、ここには書いていません。

第3項:履行期間が終わったあとは、また1年ごと

第一項の期間又は前項の履行期間が経過した場合においては、その経過した日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日を基準日とみなして法第三十九条第七項本文の規定を適用する。

第1項の期間や履行期間が過ぎたら、その日から1年ごとの区切りの初日が、第7項本文の基準日とみなされます。揃えた付与日を一度だけ前倒しして終わり、ではなく、その後の区切りも条文が用意しています。

第4項:10日未満を分けて与えた場合

使用者が法第三十九条第一項から第三項までの規定による有給休暇のうち十労働日未満の日数について基準日以前の日(以下この項において「特定日」という。)に与えることとした場合において、特定日が複数あるときは、当該十労働日未満の日数が合わせて十労働日以上になる日までの間の特定日のうち最も遅い日を第一基準日とみなして前三項の規定を適用する。

仮の例です。入職日に5日、その3か月後にさらに5日を与えたとします。合わせて10日以上になるのは3か月後の付与の日なので、その日までの特定日のうち最も遅い日、つまり3か月後の付与日が第一基準日とみなされると読めます。

続く文には、次の定めもあります。

この場合において、第一基準日とみなされた日より前に、同条第五項又は第六項の規定により与えた有給休暇の日数分については、時季を定めることにより与えることを要しない。

みなされた第一基準日より前に、本人の請求や計画的付与で与えた日数ぶんは、時季を定める対象から差し引けます。

職員ごとの基準日と、法人で揃える場合の比較

ここまでを、法人の運用の二択として整理します。後半の「運用上の見方」は、条文が書いていることではなく、条文の構造から考えた整理です。

 職員ごとの基準日(法定の区切り)基準日より前の日に付与日を揃える
1年の区切り六箇月経過日から1年ごと。入職日が違えば区切りも違う揃えた付与日。第一基準日・第二基準日が条文に出てくる
5日を与える期間基準日から1年以内(第7項)第一基準日から1年以内(第24条の5第1項)。または履行期間(同条第2項)
条文で追加で読むものなし(第7項本文のみ)労基則第24条の5の第1項から第4項
運用上の見方職員の数だけ区切りがある。管理簿の基準日も職員ごと区切りが揃うので一覧にしやすい。ただし履行期間の月数計算が要る

揃えた場合、管理簿に書く基準日には、第24条の7のかっこ書きのとおり第一基準日と第二基準日も含まれます。

労基則第24条の6:時季を定めるときは、先に伝えて意見を聴く

使用者が時季を定めるとき、いきなり「この日に休んでください」とはできません。条文はこう書いています。

使用者は、法第三十九条第七項の規定により労働者に有給休暇を時季を定めることにより与えるに当たつては、あらかじめ、同項の規定により当該有給休暇を与えることを当該労働者に明らかにした上で、その時季について当該労働者の意見を聴かなければならない。

使用者は、前項の規定により聴取した意見を尊重するよう努めなければならない。

条文の語尾を並べます。

項条文の語尾性格
第1項「意見を聴かなければならない」義務
第2項「尊重するよう努めなければならない」努力義務

意見を聴くことは義務、聴いた意見を尊重することは努力義務です。手順の順序も条文から読めます。

  1. あらかじめ(時季を定める前に)
  2. 第7項の規定により有給休暇を与えることを、労働者に明らかにする
  3. その時季について、労働者の意見を聴く

なお、第7項の条文には、第5項ただし書にあるような「事業の正常な運営を妨げる場合」の文言はありません。第7項の側で、事業の都合による時季の変更がどう扱われるかは、条文からは読めないので、この記事では判断しません。

意見をどの方法で聴くか(書面か口頭か)、聴いた内容を記録するかどうかは、第24条の6には書かれていません。管理簿に求められるのは、次に見るとおり時季、日数、基準日で、聴いた意見は含まれていません。意見を聴いた日を残すかは、事業所の運用の判断になります(提案としては、シフトの作成の前に聴く手順を組み込んでおくと、順序を後から確かめられます)。

労基則第24条の7:年次有給休暇管理簿と、保存期間の「五年」と「三年」

管理簿に何を書くか

使用者は、法第三十九条第五項から第七項までの規定により有給休暇を与えたときは、時季、日数及び基準日(第一基準日及び第二基準日を含む。)を労働者ごとに明らかにした書類(第五十五条の二及び第五十六条第三項において「年次有給休暇管理簿」という。)を作成し、当該有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後五年間保存しなければならない。

読み取れることは次のとおりです。

  • 管理簿に明らかにするのは、時季、日数、基準日の3つ。これを労働者ごとに
  • 基準日には、第一基準日と第二基準日を含む
  • 対象は、第39条の第5項から第7項までで有給休暇を与えたとき。つまり使用者が時季を定めた分だけでなく、本人の請求で与えた分と、計画的付与で与えた分も含む
  • 保存は、有給休暇を与えた期間中と、その期間の満了後

保存期間は、本則は五年間。しかし附則で「三年間」と読み替える

この記事で最も見落としやすい点です。第24条の7の本則には、はっきり「五年間」と書かれています。ところが、労基則の附則第71条が、この「五年間」を当分の間「三年間」と読み替えると定めています。

第二十四条の七及び第三十四条の二第十五項第四号の規定の適用については、当分の間、これらの規定中「五年間」とあるのは、「三年間」とする。

条文の頭には、ほかにも読み替えの対象となる規定が並んでいますが、第24条の7が含まれているのは確かです。整理するとこうなります。

どこに書かれているか内容位置づけ
労基則 第24条の7(本則)管理簿を、与えた期間中と満了後に五年間保存本則
労基則 附則 第71条第24条の7の「五年間」を、当分の間「三年間」とする附則(経過措置)

本則だけを読むと五年、附則を合わせて読むと当分の間は三年です。「当分の間」には終わりの日付が書かれていないので、保存期間を決める前に、現行の条文を確認し直してください。

「満了後三年間」の数え方(仮の例)

条文は「当該有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後」と書き、その「期間」の範囲を定義していません。たとえば、4月1日が基準日の職員について、その年度1年間(2026年4月1日から2027年3月31日)を「与えた期間」と置くと、満了は2027年3月31日です。そこから三年間なら、2030年3月31日まで保存する、という計算になります。「与えた期間」の範囲の読み方は条文だけでは確定できないので、これは考え方の例です。

退職した職員の分については、第24条の7の条文に、退職者を保存の対象から除く文言は見当たりません。退職者の分も含めて、いつまで残すかを決めておく必要があります。

第109条とは、別の規定

労働者名簿、賃金台帳などの保存を定める第109条も、五年間と書いています。

使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。

第109条は労基法の条文、第24条の7は労基則の条文で、別の規定です。附則第71条が読み替えているのは、第24条の7などで、第109条はこの附則の読み替えの対象として列挙されていません。第109条の保存期間に、労基法側の経過措置があるかどうかは、この記事では確認していません。

就業規則に書く必要はあるのか:第89条

時季指定を就業規則に書くかどうかを考えるには、第89条を読みます。

常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。

第1号は、次のとおりです。

始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項

第1号には「休暇」が入っています。ただし、条文は「時季指定」を名指ししていません。 年次有給休暇も休暇の一つなので、第1号の「休暇に関する事項」に当たると読むのが自然ですが、時季指定の方法まで就業規則に書く必要があるのかは、条文だけでは確定できません。

押さえておきたいのは次の3点です。

  • 第89条の義務は「常時十人以上の労働者を使用する使用者」に課されている。一方、第39条第7項には、使用する労働者の人数による限定は書かれていない
  • 第89条の条文には「事業場」の語が出てこない。人数をどの単位で数えるかは、条文からは読めない
  • 第89条の違反は、第120条第1号の列挙に入っている

就業規則の作成・変更の手続そのものは、別の記事(社会福祉法人の就業規則の変更手続)で扱っています。

罰則:第119条と第120条で、第7項だけが別の条に置かれている

罰則の条文の置かれ方に、年5日の時季指定の特徴が出ています。まず第119条です。

次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。

この第1号の列挙に、「第三十九条(第七項を除く。)」とあります。第39条のうち、第7項だけを明示的に除いています。 一方、第120条は次のとおりです。

次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

この第1号の列挙に、「第三十九条第七項」が入っています。

条法定刑第39条の扱い
第119条六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金「第三十九条(第七項を除く。)」
第120条三十万円以下の罰金「第三十九条第七項」

第39条の他の項と、年5日の時季指定(第7項)とで、罰則の条が分けられています。第119条の法定刑には「六月以下の拘禁刑」が入り、第120条は罰金だけです。条文のうえでは、第7項の違反の法定刑は罰金のみで、第39条の他の項とは別の条に置かれています。

第120条の列挙には、ほかに第89条(就業規則)や第109条(記録の保存)も入っています。ただし、第119条と第120条の条文に、労基則の第24条の6や第24条の7を名指しした文言は見当たりません。省令の違反に罰則がどう働くかは、この記事では判断しません。実際の罰金の運用や、是正勧告の流れも扱いません。

法人本部で、1つの台帳に何を持つか

事業所が複数ある法人では、事業所ごとに管理簿を作ると、法人としての全体像が見えにくくなります。そこで、法人本部で全事業所分をまとめた台帳を持つことを考えます。条文が求める項目と、運用上持っておくと便利な項目を、分けて整理します。

項目条文が求めるか持っておく理由
職員を特定する情報求める(「労働者ごとに」第24条の7)労働者ごとに明らかにする書類のため
基準日(第一基準日・第二基準日を含む)求める(第24条の7)5日を与える1年の起点
日数求める(第24条の7)与えた日数
時季求める(第24条の7)与えた日
付与日数条文は求めていない(提案)第7項の対象(10労働日以上)かどうかの判定
所属事業所条文は求めていない(提案)法人全体の一覧から事業所ごとに絞るため
取得の区分(請求・計画的付与・時季指定)条文は求めていない(提案)第8項の差し引きの計算
意見を聴いた日条文は求めていない(提案)第24条の6の手順を後から確かめるため

計画的付与の労使協定(第39条第6項)は、「当該事業場に」労働者の過半数で組織する労働組合があればその組合、なければ労働者の過半数を代表する者と結ぶ、と条文に書かれています。事業所が複数ある法人では、協定の相手が事業場ごとに変わりうるので、協定の有無も台帳の事業所の列とあわせて見ておくと整理しやすくなります。どの施設を1つの事業場と数えるかは、条文からは読めません。

育児休業や介護休業をした期間などについて、第10項は次のように書いています。

第一項及び第二項の規定の適用については、これを出勤したものとみなす。

これは、第1項・第2項の出勤率の計算に関する規定です。休業中の職員に年5日の時季指定をどう行うかといった運用は、条文の範囲を超えるため、この記事では扱いません。

この記事で書いていないこと

条文の範囲では、次のことは書かれていない、またはこの記事で確認していません。

  • 比例付与の具体的な日数表:第39条第3項が省令に委ねています(労基則の表はこの記事で確認していません)
  • 第3項の除外に使われる「一週間の所定労働時間」の具体的な時間:省令で定める時間で、この記事で確認していません
  • 有給休暇の賃金の額の計算:第39条第9項の話で、この記事の主題から外れます
  • 時間単位年休の細かい運用:第4項の話です。時間単位で取った分が5日に数えられるかは、第8項の条文からは読めません
  • 育児休業・介護休業中の職員への時季指定の実務:第10項の出勤みなしは出勤率の規定で、5日の指定の実務までは条文から読めません
  • 履行期間の月数から出た日数の端数の扱い:第24条の5第2項には書かれていません
  • 基準日より後の日に付与日を揃える場合の扱い:第24条の5が扱うのは「基準日より前の日」の場合です
  • 「与えた期間」の範囲:第24条の7は定義を置いていません
  • 第109条の保存期間に労基法側の経過措置があるか:この記事では確認していません
  • 第89条の人数をどの単位で数えるか:条文に「事業場」の語がありません
  • 時季指定の方法を就業規則に書く必要があるか:条文は名指ししていません
  • 意見聴取の方法と、聴いた内容の記録:第24条の6に書かれていません
  • 罰金の実際の運用、是正勧告の流れ:条文からは読めません
  • 個別の職員が対象になるかの判断:この記事は条文の構造の整理で、個別の判断は労働基準監督署や社会保険労務士などにご確認ください

まとめ

  • 年5日の義務は労基法第39条第7項。与えなければならない日数が10労働日以上の労働者に、基準日から1年以内に、労働者ごとに時季を定めて5日を与える
  • 非常勤・パートも、付与日数が10日以上(比例付与の結果を含む)になれば対象。日数表は省令にある
  • 本人の請求と計画的付与の日数は、第8項で5日から差し引く。5日を超えるときは5日。計画的付与にできるのは5日を超える部分だけ
  • 基準日より前に付与日を揃える場合は、労基則第24条の5の第一基準日・第二基準日・履行期間。履行期間の月数÷12×5の日数を与える
  • 時季を定めるとき、意見を聴くのは義務、尊重は努力義務(労基則第24条の6)
  • 管理簿は時季・日数・基準日を労働者ごとに。保存は第24条の7の本則で五年間、附則第71条で当分の間三年間
  • 罰則は第7項だけが第120条(罰金のみ)、他の項は第119条(拘禁刑を含む)

参考にした一次情報

いずれも条文によります。本記事は条文の構造を整理したもので、個別の職員への適用や、行政の運用を示すものではありません。


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