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新高額給付費|法76条の2の1本だけで、条見出しも付いていません

利用者が65歳に近づくと、「新高額障害福祉サービス等給付費の対象になるのでは」という話が出ることがあります。自治体の案内ページでよく見かける名前です。

ところが、この名前を障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下「法」)にも、同施行令(以下「令」)にも、同施行規則にも、本則で探して見つけることができません。 2026年10月16日にe-Govから取得した3つの本則(附則は含みません)で数えると、次のとおりです。

探した語法令施行規則
新高額障害福祉サービス等給付費0回0回0回
介護保険優先0回0回0回
高額障害福祉サービス等給付費(対照)7回14回5回

最後の行は、数える作業が機能していることを確かめるための対照です。「新高額」も「介護保険優先」も通称で、条文の言葉ではありません。 では、条文のどこに書かれているのか。答えは法第76条の2の1本だけで、しかもこの条には条見出しが付いていません。見出しで法令を探す読み方では、たどり着けない条です。

利用者に制度をご案内する立場として、条文で何を確かめておけばよいか。条文の構造から順に見ていきます。

条見出しが無いので、見出しで探すと見つからない

まず、関係する条の見出しを並べます。

条条見出し
法第七十六条の二なし
法第七条(他の法令による給付等との調整)
法第九十二条(市町村の支弁)
令第四十六条(高額障害福祉サービス等給付費の対象となるサービス及び介護給付費等)
令第四十七条(高額障害福祉サービス等給付費の支給要件及び支給額等)
令第四十八条(高額障害福祉サービス等給付費算定基準額)

法の側の本体の条だけが無題で、政令の3か条にはすべて「高額障害福祉サービス等給付費」を含む見出しが付いています。 政令の条文は本文で「法第七十六条の二第一項」と呼び出しているので、見出しの付いた令の側から読み始めると、法第76条の2に行き着きます。

1つの条に、2つの号が同居している

法第76条の2第1項の柱書です。

市町村は、次に掲げる者が受けた障害福祉サービス及び介護保険法第二十四条第二項に規定する介護給付等対象サービスのうち政令で定めるもの並びに補装具の購入等に要した費用の合計額(それぞれ主務大臣が定める基準により算定した費用の額(その額が現に要した費用の額を超えるときは、当該現に要した額)の合計額を限度とする。)から当該費用につき支給された介護給付費等及び同法第二十条に規定する介護給付等のうち政令で定めるもの並びに補装具費の合計額を控除して得た額が、著しく高額であるときは、当該者に対し、高額障害福祉サービス等給付費を支給する。

支給するのは市町村です。費用の合計額から、すでに支給された介護給付費等と介護保険法の介護給付等のうち政令で定めるものなどを控除し、残りが著しく高額なときに支給する、という建て付けです。そして「次に掲げる者」は2つの号で示されています。

号条文の書き方通称(自治体の案内での呼び方)
第一号支給決定障害者等「高額」
第二号六十五歳に達する前に長期間にわたり…(下記)「新高額」

「高額」と「新高額」は2つの制度ではなく、同じ第1項にある第一号と第二号です。 第二号は次のように書かれています。

六十五歳に達する前に長期間にわたり障害福祉サービス(介護保険法第二十四条第二項に規定する介護給付等対象サービスに相当するものとして政令で定めるものに限る。)に係る支給決定を受けていた障害者であって、同項に規定する介護給付等対象サービス(障害福祉サービスに相当するものとして政令で定めるものに限る。)を受けているもの(支給決定を受けていない者に限る。)のうち、当該障害者の所得の状況及び障害の程度その他の事情を勘案して政令で定めるもの

長い1文ですが、区切ると次の5つになります。ほぼすべてに「政令で定める」が付いています。

条文の語中身を決めている先
六十五歳に達する前に長期間にわたり…支給決定を受けていた「長期間」という語を定義する文言は、今回読んだ令には出てきません。令第46条第5項第一号に「五年間」があります
障害福祉サービス(…に相当するものとして政令で定めるものに限る。)令第46条第3項
介護給付等対象サービス(…として政令で定めるものに限る。)を受けている令第46条第4項
(支給決定を受けていない者に限る。)条文にそのまま書かれています
所得の状況及び障害の程度その他の事情を勘案して政令で定めるもの令第46条第5項

要件は政令に丸投げされている:令第46条第5項

法第76条の2第2項は、中身を政令に委ねる条文です。

前項に定めるもののほか、高額障害福祉サービス等給付費の支給要件、支給額その他高額障害福祉サービス等給付費の支給に関し必要な事項は、障害福祉サービス及び補装具の購入等に要する費用の負担の家計に与える影響を考慮して、政令で定める。

「政令で定める障害者」の中身は、令第46条第5項にあります。よく「第47条」と覚えられていますが、要件が書かれているのは第46条です。

法第七十六条の二第一項第二号に規定する当該障害者の所得の状況及び障害の程度その他の事情を勘案して政令で定める障害者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する者とする。

4つの号のすべてに該当する必要があります。 各号を、条文のとおりに並べます。

号条文
一六十五歳に達する日前五年間(入院その他やむを得ない事由により介護保険相当障害福祉サービスに係る支給決定を受けていなかった期間を除く。)引き続き介護保険相当障害福祉サービスに係る支給決定を受けていたこと。
二(下記)
三六十五歳に達する日の前日において障害の程度が厚生労働省令で定めるものに該当していたこと。
四六十五歳に達するまでに介護保険法による保険給付を受けていなかったこと。

第二号は長いので、前半部分を引用します。

障害者及び当該障害者と同一の世帯に属するその配偶者が、当該障害者が六十五歳に達する日の前日の属する年度(当該障害者が六十五歳に達する日の前日の属する月が四月から六月までの場合にあっては、前年度)分の地方税法の規定による市町村民税を課されない者

この後に、市町村民税を免除された者の扱いと、住所に関する除外が続きます。さらに「又は」でつながって、六十五歳に達する日の前日の属する月において被保護者若しくは要保護者であって厚生労働省令で定めるものに該当していたこと、というもう1つの選択肢が書かれています。

利用者に65歳が近づいたとき、条文の側から確かめておけることを整理します。

  • 第一号:「六十五歳に達する日前五年間」という数え方です。起点は65歳に達する日です。入院などで支給決定を受けていなかった期間を除く、という括弧書きがあります。
  • 第二号:判定の基準になるのは65歳に達する日の前日の属する年度(その月が4月から6月なら前年度)で、本人だけでなく同一世帯の配偶者も条文に出てきます。
  • 第三号:「障害の程度」は厚生労働省令で定められており、令の中には区分が書かれていません。
  • 第四号:65歳に達するまでに介護保険法による保険給付を受けていなかったこと、という過去の事実を問うています。

1つでも欠けると、条文の上では第46条第5項の要件を満たしません。 事業所が「どの号の話をしているか」を分けて話せるだけで、ご本人やご家族との会話がかみ合いやすくなります。

対象サービスも政令が限定している:令第46条第3項・第4項

もう1つ、サービスの範囲も政令で絞られています。障害福祉サービスの側は第3項です。

法第七十六条の二第一項第二号に規定する介護給付等対象サービスに相当する障害福祉サービスとして政令で定めるものは、居宅介護、重度訪問介護、生活介護及び短期入所(第五項第一号において「介護保険相当障害福祉サービス」という。)とする。

介護保険の側は第4項で、条文の語は「障害福祉相当介護保険サービス」です。

法第七十六条の二第一項第二号に規定する障害福祉サービスに相当する介護給付費等対象サービスとして政令で定めるものは、介護保険法第八条第二項に規定する訪問介護、同条第七項に規定する通所介護、同条第九項に規定する短期入所生活介護、同条第十七項に規定する地域密着型通所介護及び同条第十九項に規定する小規模多機能型居宅介護並びにこれらに相当するサービス(次条第六項において「障害福祉相当介護保険サービス」という。)とする。

整理すると、次のようになります。

側条文の語名指しされているサービス
障害福祉サービス介護保険相当障害福祉サービス(令第46条第3項)居宅介護、重度訪問介護、生活介護、短期入所
介護保険障害福祉相当介護保険サービス(令第46条第4項)訪問介護、通所介護、短期入所生活介護、地域密着型通所介護、小規模多機能型居宅介護(並びにこれらに相当するサービス)

条文は2つの一覧を並べて書いているだけで、どのサービスがどのサービスに当たるかの対応表は置いていません。 上の表も、左右の行を対応づけた表ではない点にご注意ください。

額と支給の条件:令第47条は2本立て

支給額の計算は令第47条です。非常に長い条文なので、第1項は前半部分だけを引用します。

高額障害福祉サービス等給付費は、支給決定障害者等(前条第五項各号に掲げる要件のいずれにも該当する者を除く。以下この条において同じ。)については、次に掲げる額を合算した額(以下この条において「利用者負担世帯合算額」という。)が高額障害福祉サービス等給付費算定基準額を超える場合に支給するものとし、

ここで目を引くのは、括弧書きの「前条第五項各号に掲げる要件のいずれにも該当する者を除く」です。第1項は第一号の「高額」を扱い、第46条第5項の4要件に該当する人は外れます。該当する人の側は、第6項に別に書かれています。第6項も前半部分を引用します。

高額障害福祉サービス等給付費は、支給決定障害者(前条第五項各号に掲げる要件のいずれにも該当する者に限る。)及び法第七十六条の二第一項第二号に掲げる障害者(以下この項及び次項において「特定給付対象者」という。)については、

第6項の対象(特定給付対象者)には、法第76条の2第1項第二号に掲げる障害者に加えて、第46条第5項の要件に該当する支給決定障害者も並んで書かれています。

第6項の続きを、引用せずに構造だけ書きます。

  • 支給の条件:特定給付対象者と同一世帯の配偶者が、障害福祉相当介護保険サービスのあった月の属する年度(その月が4月から6月なら前年度)分の市町村民税を課されない者であるとき、またはそのサービスのあった月に被保護者若しくは要保護者であって厚生労働省令で定めるものに該当するとき。
  • 支給額:第一号の額から第二号の額を控除した額。第一号は、障害福祉相当介護保険サービスに係る居宅介護サービス費等の合計額に九十分の百などの割合を乗じた額。第二号は、すでに支給された居宅介護サービス費等と、高額介護サービス費などに障害福祉相当按分率を乗じた額の合計です。

判定の年度が、第46条第5項第二号では「65歳に達する日の前日の属する年度」、第47条第6項では「サービスのあった月の属する年度」と異なります。 同じ「市町村民税を課されない」という言い方でも、基準にする時点が違うことに注意が必要です。

なお、第6項の文中に「高額障害福祉サービス等給付費算定基準額」という語は出てきません。算定基準額は第48条が第17条の区分に応じて定めており、第47条第1項の側(第一号の「高額」)が使う額です。金額そのものはここでは取り上げません。

「介護保険優先」と書かれているのは、法第7条

65歳の話になると出てくる「介護保険優先」。条文で根拠になるのは、見出し付きの法第7条です。

自立支援給付は、当該障害の状態につき、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)の規定による介護給付、健康保険法(大正十一年法律第七十号)の規定による療養の給付その他の法令に基づく給付又は事業であって政令で定めるもののうち自立支援給付に相当するものを受け、又は利用することができるときは政令で定める限度において、当該政令で定める給付又は事業以外の給付であって国又は地方公共団体の負担において自立支援給付に相当するものが行われたときはその限度において、行わない。

条文には「介護保険優先」とは書かれていません。 書かれているのは、介護保険法の介護給付などを「受け、又は利用することができるとき」は、「政令で定める限度において」自立支援給付を行わない、という言い方です。限度の中身は政令の側にあり、今回読んだ範囲には含めていません。

法第7条と法第76条の2は別の条で、2つの条の関係を説明する文言は、今回読んだ範囲にはありません。介護保険の側の給付を法第76条の2が費用から控除する構造になっている(柱書の「介護給付等のうち政令で定めるもの」)点は、条文のとおりです。

事業所・法人本部が、条文で確かめておくこと

申請や請求の判断をするのはご本人と市町村です。事業所としては、ご案内する前に条文の語で状況を整理しておくところまでが現実的です。

  1. 支給決定の履歴:65歳に達する日前5年間に、居宅介護・重度訪問介護・生活介護・短期入所(令第46条第3項)の支給決定があったか。
  2. 65歳に達する日:5年間と所得判定の年度は、この日が起点です(令第46条第5項第一号・第二号)。
  3. 65歳に達するまでの介護保険の保険給付:受けていなかったか(同項第四号)。
  4. これから使う介護保険のサービス:5つのサービス(令第46条第4項)のどれに当たるか。
  5. 手続:条文では、第二号に掲げる者の手続に関して必要な事項は厚生労働省令で定めるとされています。窓口や様式は条文にないので、市町村の案内でご確認ください。

高額障害福祉サービス等給付費の支給に関する手続に関して必要な事項は、法第七十六条の二第一項第一号に掲げる者に係るものについては内閣府令・厚生労働省令で、同項第二号に掲げる者に係るものについては厚生労働省令で定める。

なお、高額障害福祉サービス等給付費の支給に要する費用は、法第92条第五号により市町村の支弁とされています。事業所ごとの利用者負担の管理は上限額管理の記事で扱っているので、あわせてご覧ください。

この記事で書いていないこと

条文を読んだ範囲では、次のことは書かれていません。この記事でも書きません。

  • 具体的な金額:算定基準額の額、自己負担の上限額、支給額の試算
  • 申請の様式・窓口・期限:厚生労働省令に委ねられている手続の中身
  • 障害の程度の区分:令第46条第5項第三号の「厚生労働省令で定めるもの」の中身
  • 被保護者・要保護者の範囲:同項第二号の「厚生労働省令で定めるもの」の中身
  • 施行の時期や改正の経過:今回読んだのは本則のみで、附則は含めていません
  • 自治体ごとの運用・案内の違い、償還までの期間
  • 個別の方が対象になるかどうかの判断:本記事は条文の構造の整理です

まとめ

  • 「新高額障害福祉サービス等給付費」は、法・令・施行規則の本則に0回しか出てこない通称。「介護保険優先」も同様
  • 根拠は法第76条の2の1本だけで、この条には条見出しが付いていない。「高額」は第一号、「新高額」は第二号で、同じ第1項の中にある
  • 第二号の要件は条文に書かれず、政令へ委ねられている。中身は令第46条第5項の4つの号で、すべてに該当する必要がある(第47条ではない)
  • 対象サービスは令第46条第3項(障害福祉サービス4つ)と第4項(「障害福祉相当介護保険サービス」5つ)で限定されている
  • 令第47条の第1項は「高額」、第6項は「新高額」の側を書く2本立て。判定の年度の基準が第46条第5項第二号と第47条第6項で異なる
  • 介護保険との関係は法第7条に「政令で定める限度において」と書かれ、「介護保険優先」という語は条文にない

参考にした一次情報

いずれも2026年10月16日に取得した本則の条文によります。本記事は条文の構造を整理したもので、個別の支給の可否を示すものではありません。厚生労働省令の内容や手続の実際は、所管の市町村の最新の案内をご確認ください。


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