お問合せ
note

社福

介護予防支援の委託|指定は二種類あるが委託できる側は条文で限られる

「介護予防支援 委託」と調べると、委託の流れや委託契約書の書き方を案内するページが並びます。実務の手順としては役に立ちます。ただ、手順を読んでも分からないことが残ります。

  • 居宅介護支援事業所が介護予防支援に関わる道は、委託を受けるだけなのか
  • 「委託」は、誰が誰に対してできるものなのか
  • 市町村によって運用が違うのは、なぜなのか

先に結論を書きます。介護予防支援には「指定を受ける」と「委託を受ける」という、立て付けの違う2つの入口があります。 条文の上では、次のとおりです。

  • 指定の申請ができるのは2種類。「地域包括支援センターの設置者」と「指定居宅介護支援事業者」(介護保険法第115条の22第1項)
  • 一方、指定介護予防支援の一部を「委託することができる」のは、「地域包括支援センターの設置者である」指定介護予防支援事業者だけ(同法第115条の23第3項)
  • 委託できるのは指定介護予防支援の「一部」。委託先は「厚生労働省令で定める者」とされ、法律の条文そのものは委託先を決めていない

この記事は、現行の条文でこの構造を確かめていきます。読んだのは次の2つです。

  • 介護保険法(平成9年法律第123号。以下「法」)の第58条、第115条の22・第115条の23・第115条の24・第115条の46
  • 指定介護予防支援等の事業の人員及び運営並びに指定介護予防支援等に係る介護予防のための効果的な支援の方法に関する基準(平成18年厚生労働省令第37号。以下「省令37号」)の第1条・第2条・第3条・第12条・第30条

委託契約書の様式や委託料の決め方など、実務の細部は条文に書かれていないので扱いません。

法第115条の22第1項:指定を申請できるのは誰か

まず「指定」の側から見ます。法第115条の22第1項は、介護予防支援事業者の指定について、次のように書いています。第1項の前半の一部です。

第百十五条の四十六第一項に規定する地域包括支援センターの設置者又は指定居宅介護支援事業者の申請により

ここで見ていただきたいのは、申請できる者が2種類並んでいることです。

申請できる者条文の言い方
地域包括支援センターの設置者第百十五条の四十六第一項に規定する地域包括支援センターの設置者
居宅介護支援事業者指定居宅介護支援事業者

つまり、居宅介護支援事業者は、自分で指定介護予防支援事業者になる道が条文の上で開かれています。同じ項は、指定は「介護予防支援事業を行う事業所」ごとに行う、とも書いています。指定は事業所単位の話です。

ただし、申請すれば指定されるとは書かれていません。同条第2項は、市町村長が指定をしてはならない場合を、各号で挙げています。その第一号は次のとおりです。

申請者が市町村の条例で定める者でないとき。

誰が申請者になれるかは、法が2種類を挙げたうえで、さらに市町村の条例で定める者であることが求められる形です。条例の中身は市町村ごとに異なりうるので、この記事では書きません。

法第115条の23第3項:委託の主語には限定がかかっている

次に「委託」の側です。法第115条の23第3項の全文を引用します。

第百十五条の四十六第一項に規定する地域包括支援センターの設置者である指定介護予防支援事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、指定介護予防支援の一部を、厚生労働省令で定める者に委託することができる。

この1文には、見落としやすい点が3つあります。

  1. 主語が限られている。 「地域包括支援センターの設置者である指定介護予防支援事業者」と書かれています。指定介護予防支援事業者なら誰でも委託できる、とは書かれていません
  2. 委託できるのは「一部」。 全部を委託できるとは書かれていません
  3. 委託先は「厚生労働省令で定める者」。 法律の条文は委託先を具体的に決めておらず、省令に委任しています。手続も「厚生労働省令で定めるところにより」とされています

1つ目が、この記事のいちばん大事なところです。第115条の22第1項では、申請できる者が「地域包括支援センターの設置者」と「指定居宅介護支援事業者」の2種類でした。ところが第115条の23第3項で委託の主語になっているのは、そのうちの片方の立場である、地域包括支援センターの設置者です。

「指定を受けられる者」と「委託ができる者」は、同じではありません。条文の主語の書き方が違うからです。

「一部」は、どの部分なのか

第3項は「一部」と書いているだけで、どの業務を委託できるのか、どこまでが一部なのかは書いていません。

省令37号の第12条は、委託をするときに守る事項を挙げています。第2号は、委託の範囲と業務量について、次のように書いています。

委託に当たっては、適切かつ効率的に指定介護予防支援の業務が実施できるよう委託する業務の範囲や業務量について配慮すること。

書かれているのは、範囲や業務量に「配慮すること」です。範囲の上限や、具体的な線引きは、今回読んだ条文に書かれていません。「一部」の具体的な中身は、条文だけでは確定できません。

委託先は条文が決めていない:厚生労働省令への委任

法の条文は、委託先を「厚生労働省令で定める者」に委ねています。では、省令には何が書かれているのか。省令37号の第12条を見ます。第12条は、地域包括支援センターの設置者である指定介護予防支援事業者が、法第115条の23第3項の規定により指定介護予防支援の一部を委託する場合の、遵守事項を各号で挙げています。第1号と第3号を引用します。

委託に当たっては、中立性及び公正性の確保を図るため地域包括支援センター運営協議会(介護保険法施行規則第百四十条の六十六第一号イに規定する地域包括支援センター運営協議会をいう。)の議を経なければならないこと。

委託する指定居宅介護支援事業者は、指定介護予防支援の業務に関する知識及び能力を有する介護支援専門員が従事する指定居宅介護支援事業者でなければならないこと。

第3号は「委託する指定居宅介護支援事業者」と書いており、委託の相手として指定居宅介護支援事業者を想定した書きぶりです。第4号も、委託する指定居宅介護支援事業者の介護支援専門員が、省令の一定の規定を遵守するよう措置させることを求めています。

ただし、ここで注意が必要です。第12条は、委託をするときの遵守事項を並べた条です。法が「厚生労働省令で定める者」と委任した委託先の範囲を、第12条が漏れなく定義しているとまでは、今回読んだ条文からは言えません。委託先として他にどんな者が含まれるかは、条文だけでは確定できないので、所管の市町村や地域包括支援センターに確認してください。

居宅介護支援事業所から見た入口の2つ

ここまでを、居宅介護支援事業所の側から整理します。入口は2つあります。

比べる点(a) 委託を受ける(b) 自ら指定を受ける
根拠の条文法第115条の23第3項法第115条の22第1項
条文上の相手委託をする側は、地域包括支援センターの設置者である指定介護予防支援事業者指定をするのは、市町村長(法第58条第1項、第115条の22第1項)
事業所に求められる職員省令第12条第3号:指定介護予防支援の業務に関する知識及び能力を有する介護支援専門員が従事していること省令第2条第2項:指定介護予防支援の提供に当たる必要な数の介護支援専門員を置く
地域包括支援センター運営協議会省令第12条第1号:委託に当たって、運営協議会の議を経る(義務を負うのは委託をする側)この表の範囲では、運営協議会の議を経ることは書かれていない
条例との関係今回読んだ条文からは、委託先に対する条例の定めは分からない法第115条の22第2項第1号により、申請者が市町村の条例で定める者であることが求められる

(b) の「自ら指定を受ける」場合、省令の人員の定めも書き分けられています。省令37号第2条は、第1項と第2項で、事業者の立場ごとに置く職員を分けています。第1項は次のとおりです。

地域包括支援センターの設置者である指定介護予防支援事業者は、当該指定に係る事業所ごとに一以上の員数の指定介護予防支援の提供に当たる必要な数の保健師その他の指定介護予防支援に関する知識を有する職員(以下「担当職員」という。)を置かなければならない。

第2項は、居宅介護支援事業者の側の規定です。

指定居宅介護支援事業者である指定介護予防支援事業者は、当該指定に係る事業所ごとに一以上の員数の指定介護予防支援の提供に当たる必要な数の介護支援専門員を置かなければならない。

省令の側の語である「担当職員」は、第1項の括弧書きで定義されたもので、地域包括支援センターの設置者である指定介護予防支援事業者が置く職員の呼び方です。第2項は同じ「担当職員」ではなく「介護支援専門員」と書いています。同じ省令の第30条(指定介護予防支援の具体的取扱方針)は、介護予防サービス計画の作成などの主語を「担当職員」として書いており、立場ごとの職員の書き分けは、取扱いの定めにも関わってきます。この点は、実務で読むときに引っかかりやすいところです。

もう1つ、管理者についても書き分けがあります。省令第3条第3項は、指定居宅介護支援事業者である指定介護予防支援事業者の管理者を、介護保険法施行規則に定める主任介護支援専門員とし、ただし書きで、確保が著しく困難である等やむを得ない理由がある場合の扱いを置いています。ただし書きの範囲や運用は、条文だけでは確定できません。

さらに、省令第12条第4号は、委託を受けた事業者の介護支援専門員が、省令の「第一条の二、この章及び第四章の規定(第三十条第二十九号の規定を除く。)」を遵守するよう措置させることを求めています。除かれた第30条第29号の主語は、「指定居宅介護支援事業者である指定介護予防支援事業者」です。自ら指定を受けた側が主語になる号が、委託を受けた側に遵守させる範囲から外れている、という書きぶりです。2つの入口で、省令の適用のされ方が同じではないことの一例です。

なお、第一号介護予防支援事業と指定介護予防支援は別のものです。介護予防・日常生活支援総合事業の側の整理は、介護予防・日常生活支援総合事業の記事で扱っています。法第115条の46第1項は、地域包括支援センターの事業として「第一号介護予防支援事業(居宅要支援被保険者に係るものを除く。)」を挙げています。一方、法第58条の指定介護予防支援は、居宅要支援被保険者が受けるものとして書かれています。条文の上で、居宅要支援被保険者かどうかが、2つを分ける語として使われています。

基準は市町村の条例:「従い」と「参酌」の書き分け

指定介護予防支援の基準は、法律や省令だけで決まりません。法第115条の24は、第1項で従業者の員数を、第2項で運営に関する基準を、それぞれ市町村の条例で定めるとしています。そのうえで第3項が、条例を定めるときの省令との関係を、次のように書いています。

市町村が前二項の条例を定めるに当たっては、次に掲げる事項については厚生労働省令で定める基準に従い定めるものとし、その他の事項については厚生労働省令で定める基準を参酌するものとする。

ここに「従い」と「参酌」の書き分けがあります。「次に掲げる事項」は2つです。第一号は次のとおりです。

指定介護予防支援に従事する従業者に係る基準及び当該従業者の員数

第二号は次のとおりです。

指定介護予防支援の事業の運営に関する事項であって、利用する要支援者のサービスの適切な利用、適切な処遇及び安全の確保並びに秘密の保持等に密接に関連するものとして厚生労働省令で定めるもの

整理すると、次のようになります。

事項省令との関係条文の言い方
従業者に係る基準と員数(第一号)省令の基準に従う「厚生労働省令で定める基準に従い定める」
運営に関する事項のうち、省令が定めるもの(第二号)省令の基準に従う同上
その他の事項省令の基準を参酌する「厚生労働省令で定める基準を参酌する」

どの規定が「従うべき基準」になるのかは、省令37号の第1条に書かれています。第三号は従業者の員数の基準について、「第二条及び第三条の規定による基準」を従うべき基準としています。第四号は運営に関する基準について、第4条第1項及び第2項、第5条、第18条の2、第20条の2、第22条、第26条、第26条の2、並びに第30条第2号の2及び第2号の3の規定による基準を従うべき基準としています。そして第五号は、それ以外を参酌すべき基準としています。

先に見た第12条(委託の遵守事項)は、第三号・第四号に挙がっている条に入っていません。第五号が「前各号に定める規定による基準以外のもの」を参酌すべき基準としていることから、条文の並びの上では、第12条は参酌すべき基準の側に入ると読めます。ただ、市町村の条例が実際にどう定めているかは、条例の条文そのものを見ないと分かりません。

「従う」と「参酌」の線引きが、自治体ごとに条例を確認する必要がある理由です。条例の定め方は市町村が決めるため、同じ法律と省令の下でも、条例の細部は市町村ごとに確かめる必要があります。「参酌」の幅の具体的な広さは、今回読んだ条文には書かれていません。

地域包括支援センターの側から見る:法第115条の46

委託をする側である、地域包括支援センターの条にも触れておきます。社会福祉法人の法人本部で、受託の可否を検討する場面に関わる条です。

まず、設置者です。法第115条の46第2項は、市町村は地域包括支援センターを設置することができる、と書いています。続く第3項は、市町村以外の者にも道を開いています。

次条第一項の規定による委託を受けた者(第百十五条の四十五第二項第四号から第六号までに掲げる事業のみの委託を受けたものを除く。)は、包括的支援事業その他第一項の厚生労働省令で定める事業を実施するため、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、厚生労働省令で定める事項を市町村長に届け出て、地域包括支援センターを設置することができる。

この第3項の「委託」は、地域包括支援センターを設置するための委託で、条文は「次条第一項の規定による委託」と書いています。第115条の23第3項の、指定介護予防支援の一部の委託とは別の委託です(次条の中身は今回読んでいません)。条文は、受託者について法人の種別を限定する書き方をしていません。

次に、守秘義務です。法第115条の46第8項は、次のとおりです。

地域包括支援センターの設置者(設置者が法人である場合にあっては、その役員)若しくはその職員又はこれらの職にあった者は、正当な理由なしに、その業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

設置者が法人の場合は、その役員も対象に入ります。法人本部にとっては、現場の職員だけでなく、役員も対象に含まれていることが条文に書かれている点が、実務上の重みになります。同条第7項は、設置者に、介護サービス事業者、医療機関、民生委員などの関係者との連携に努めることを求め、第4項は、実施する事業の質の評価を行うことなどを求めています。

条文に書かれていないこと

ここまで読んだ条文には、次のことが書かれていません。

  • 法が「厚生労働省令で定める者」と委任した委託先の範囲の全体(省令第12条は委託の遵守事項を定めたもので、委託先の範囲を漏れなく定義しているとまでは言えない)
  • 「一部」にどの業務が入り、どこまでを委託できるのか、委託の上限
  • 委託料、契約書の様式
  • 施行日や改正の時期、経過措置
  • 市町村の条例の具体的な内容(誰が申請者になれるか、員数や運営基準をどう定めているか)
  • 地域包括支援センター運営協議会の議を経る運用の具体的な進め方
  • 委託を受けた場合の、介護予防サービス計画費の扱い(法第58条は、指定介護予防支援事業者への支給や支払を定めていますが、委託の場合にどうなるかは書いていません)

これらは、所管の市町村や地域包括支援センター、最新の通知で確認してください。

まとめ

  • 介護予防支援には、「指定を受ける」と「委託を受ける」という立て付けの違う2つの入口がある
  • 指定の申請ができるのは、「地域包括支援センターの設置者」と「指定居宅介護支援事業者」の2種類(法第115条の22第1項)。ただし、申請者が市町村の条例で定める者であることも求められる(同条第2項第一号)
  • 指定介護予防支援の一部を委託できるのは、「地域包括支援センターの設置者である」指定介護予防支援事業者(法第115条の23第3項)。委託できるのは「一部」で、委託先は「厚生労働省令で定める者」
  • 法の条文は委託先を決めていない。省令第12条は、委託する指定居宅介護支援事業者を想定した遵守事項を置くが、委託先の範囲を漏れなく定義しているとまでは言えない
  • 省令第2条は、地域包括支援センターの設置者には「担当職員」、居宅介護支援事業者には「介護支援専門員」と、置く職員を書き分けている
  • 基準は市町村の条例で定める(法第115条の24)。従業者に係る基準と員数、運営の一部は省令に「従い」、その他は「参酌」する。条例は市町村ごとに確認が要る
  • 地域包括支援センターの設置者には、市町村のほか委託を受けた者が届け出て設置する道がある(法第115条の46第3項)。守秘義務は、設置者が法人の場合その役員にも及ぶ(同条第8項)
  • 「一部」の範囲、委託料、契約書の様式、施行日や経過措置は、条文に書かれていない

参考(一次情報)

本記事は法律と省令の条文の構造を整理したもので、個別の事業所の運営判断を示すものではありません。委託先の範囲、「一部」の中身、市町村の条例の内容、施行日・経過措置、費用の扱いは、所管の市町村の最新の案内と通知をご確認ください。


指定も委託も、書類と連絡が属人化している法人様へ

パレットテクノロジーズは、社会福祉法人様のデジタル化を「現地現物」で伴走支援しています。介護予防支援を含む記録・書類・関係先との連絡を、誰が担当しても同じ手順で回せる形に整えるところからご一緒します。ITに詳しい職員がいらっしゃらなくても大丈夫です。

▶ 社会福祉専門IT|社会福祉法人様向けのDX伴走支援

▶ ご相談・お問い合わせはこちら

関連記事

お問い合わせ