生活困窮者自立支援法について調べると、自治体や厚生労働省、社会福祉協議会の案内ページが並びます。多くは、事業を「必須事業」と「任意事業」に分けて、それぞれにどんな事業があるかを並べる整理です。自立相談支援事業の委託を受けている、あるいは受けようとしている法人の事務局にとっては、見慣れた分け方だと思います。
ところが、法律の条文を開いて、その分け方の根拠を探すと、この記事で読む条文には「必須事業」も「任意事業」も出てきません。条文が書いているのは、もう少し細かい書き分けです。事業や給付ごとに、「行うものとする」「行うように努めるものとする」「行うことができる」と、語尾が使い分けられています。
この記事は、e-Gov 法令検索から取得した生活困窮者自立支援法(平成25年法律第105号)の原文のうち、次の条文を根拠に整理します。
- 第1条〜第4条(目的・基本理念・定義・責務)
- 第5条〜第7条(自立相談支援事業・住居確保給付金・就労準備支援事業等)
- 第8条・第9条(状況の把握・支援会議)
- 第10条・第11条(都道府県の研修等事業・福祉事務所を設置していない町村による相談等)
- 第16条(認定生活困窮者就労訓練事業)、第21条(報告等)
- 第27条〜第30条(罰則)
あわせて、社会福祉法第2条(定義)も、第二種社会福祉事業との接点を確かめるために読みます。
この記事が答えようとする問いは、次の4つです。
- 条文は、事業や給付をどう書き分けているのか(「必須・任意」で足りるのか)
- 法律上の事業の名前は何か
- 事業の事務を委託されたとき、委託と秘密保持の規定は何を求めているのか
- 支援会議は、委託を受けた法人にどう関わるのか
なお、住居確保給付金の額・支給期間・収入の要件、委託先になれる者の範囲、就労準備支援事業や居住支援事業の期間などは、条文の中で「厚生労働省令で定める」とされており、その省令の中身は今回の根拠に含まれません。そのため、この記事では扱いません。補助率・国庫負担の割合、実施している自治体の数、利用者数、生活保護制度との比較も扱いません。
まず結論:条文は「ものとする/努めるものとする/できる」の3段階で書いている
先に答えを示します。
- 事業の主体として条文が書いているのは「都道府県等」。都道府県と、市(特別区を含む)・福祉事務所を設置する町村(第4条)
- 自立相談支援事業は第5条第1項が「行うものとする」、住居確保給付金は第6条第1項が「支給するものとする」と書く
- 就労準備支援事業・家計改善支援事業・居住支援事業は、第7条第1項が「のうち必要があると認めるものを行うように努めるものとする」と書く。3つを全部行うことを求める書き方ではない
- 子どもの学習・生活支援事業とその他の必要な事業は、第7条第2項が「行うことができる」と書く
- 事業の事務は、都道府県等以外の「厚生労働省令で定める者」に委託できる(第5条第2項)。委託を受けた者・その役員・職員・これらの者であった者には、秘密を漏らしてはならない義務がある(同条第3項)
- この委託と秘密保持の規定は、第7条第1項・第2項の事業にも準用される(第7条第3項)
- 支援会議(第9条)の構成員として、委託を受けた者が条文に名指しで入っている
- 「認定生活困窮者就労訓練事業」は、社会福祉法第2条第3項第一号の二で第二種社会福祉事業に挙げられている
条文ごとに並べると、次のとおりです。
| 条文 | 書かれていること |
|---|---|
| 第3条 | 生活困窮者の定義と、各事業・給付金の定義 |
| 第4条 | 市等・都道府県・国の責務 |
| 第5条第1項 | 自立相談支援事業を行うものとする |
| 第5条第2項・第3項 | 事務の委託と、委託を受けた者の秘密保持 |
| 第6条第1項 | 住居確保給付金を支給するものとする |
| 第7条第1項 | 就労準備支援事業等のうち必要があると認めるものを行うように努めるものとする |
| 第7条第2項 | 子どもの学習・生活支援事業等を行うことができる |
| 第7条第3項 | 委託と秘密保持の規定を準用 |
| 第7条第4項 | 自立相談支援事業と一体的に行う体制の確保 |
| 第9条 | 支援会議 |
| 第16条 | 認定生活困窮者就労訓練事業 |
| 第28条 | 秘密を漏らした者への罰則 |
ここからは、この結論を条文で確かめます。
条文に「必須事業」「任意事業」は出てこない
条文が使っているのは、事業ごとの名前と語尾
今回読んだ条文(第1条〜第11条・第16条・第21条・第27条〜第30条)のどこにも、「必須事業」「任意事業」という語はありません。自治体の案内で見かける分け方は、条文の語尾を整理するための通称と考えるのが自然です。
通称が悪いわけではありません。ただ、「必須」と「任意」の2つに分けると、条文が書き分けている段階の1つが見えなくなります。次の節で、それを見ます。
3段階を条文で確かめる
第5条第1項は、自立相談支援事業について次のように書いています。
都道府県等は、生活困窮者自立相談支援事業を行うものとする。
第6条第1項は、住居確保給付金について、対象を絞る長い書き出しのあと、次のように結びます。
生活困窮者住居確保給付金を支給するものとする。
ここまでが「ものとする」です。そして第7条第1項が、段階を変えます。
都道府県等は、生活困窮者自立相談支援事業及び生活困窮者住居確保給付金の支給のほか、生活困窮者就労準備支援事業及び生活困窮者家計改善支援事業並びに生活困窮者居住支援事業のうち必要があると認めるものを行うように努めるものとする。
続く第7条第2項は、さらに1段階、書き方が変わります。
都道府県等は、前項に規定するもののほか、子どもの学習・生活支援事業及びその他の生活困窮者の自立の促進を図るために必要な事業を行うことができる。
整理すると、次の表になります。
| 条文 | 事業・給付 | 条文の語尾 |
|---|---|---|
| 第5条第1項 | 生活困窮者自立相談支援事業 | 行うものとする |
| 第6条第1項 | 生活困窮者住居確保給付金の支給 | 支給するものとする |
| 第7条第1項 | 生活困窮者就労準備支援事業・生活困窮者家計改善支援事業・生活困窮者居住支援事業のうち必要があると認めるもの | 行うように努めるものとする |
| 第7条第2項 | 子どもの学習・生活支援事業、その他の生活困窮者の自立の促進を図るために必要な事業 | 行うことができる |
「必須/任意」の2分類で整理すると、第7条第1項の「努めるものとする」が、どちらかに丸められてしまいます。たとえば「任意」の側に入れると、条文が努力義務の形で書いている部分が見えなくなります。条文は、行うと言い切る形、行うよう努める形、行うかどうかを委ねる形の3段階で書かれています。
第7条第1項は「3つを全部」とは書いていない
もう1点、見落とされやすいところがあります。第7条第1項の「努めるものとする」の対象は、就労準備支援事業・家計改善支援事業・居住支援事業の「うち必要があると認めるもの」です。3つを全部行うことを求める書き方ではありません。どれを行うかを、都道府県等が必要性を見て選ぶ形になっています。
この3段階は、受託する法人の義務ではなく、都道府県等への書き方
ここで確認しておきたいのは、この3段階の主語です。第5条から第7条の主語は、すべて「都道府県等」です。つまり、「行うものとする」「努めるものとする」と書かれているのは、事業の主体である都道府県等に対する書き方で、委託を受けた法人がその事業を行う義務を条文から直接負う、という書き方ではありません。
委託を受けた法人が、実際にどの事業のどの範囲を担うのかは、条文には書かれていません。委託を受けた事務の範囲は、委託の契約や仕様書で確かめる必要があります。
事業の名前:法律では、1つを除いて頭に「生活困窮者」が付く
第3条の定義を並べる
実務では、「就労準備支援事業」「家計改善支援事業」と略して呼ぶことが多いと思います。条文が定めている名前は、第3条の第2項から第7項に並んでいます。
| 条文 | 法律上の名前 |
|---|---|
| 第3条第2項 | 生活困窮者自立相談支援事業 |
| 第3条第3項 | 生活困窮者住居確保給付金(事業ではなく給付金) |
| 第3条第4項 | 生活困窮者就労準備支援事業 |
| 第3条第5項 | 生活困窮者家計改善支援事業 |
| 第3条第6項 | 生活困窮者居住支援事業 |
| 第3条第7項 | 子どもの学習・生活支援事業 |
ここで気づくのは、第7項の「子どもの学習・生活支援事業」だけ、頭に「生活困窮者」が付かないことです。第5条第1項の「自立相談支援事業」も、法律上の名前は「生活困窮者自立相談支援事業」です。規程や委託契約書、届出の書類で名前を書くときは、略称ではなく条文の名前で書いておくと、根拠条文を引くときに迷いません。
また、第3条第3項の住居確保給付金は「事業」ではなく給付金として定義されています。第6条第1項も「支給するものとする」で、事業を「行う」形ではありません。
自立相談支援事業の中身
第3条第2項は、自立相談支援事業を次の3つの事業として定義しています。
- 第一号:就労及び居住の支援その他の自立に関する問題につき、生活困窮者及び生活困窮者の家族その他の関係者からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言をし、並びに関係機関との連絡調整を行う事業
- 第二号:生活困窮者に対し、認定生活困窮者就労訓練事業の利用についてのあっせんを行う事業
- 第三号:生活困窮者に対し、生活困窮者に対する支援の種類及び内容その他の厚生労働省令で定める事項を記載した計画の作成その他の生活困窮者の自立の促進を図るための支援が包括的かつ計画的に行われるための援助として厚生労働省令で定めるものを行う事業
第二号に、認定生活困窮者就労訓練事業の利用のあっせんが入っています。この事業については、後の節で触れます。
「生活困窮者」は、生活保護に至る前の段階を指している
対象者である「生活困窮者」の定義は、第3条第1項にあります。
この法律において「生活困窮者」とは、就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情により、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者をいう。
要点は、「最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者」という書き方です。すでに最低限度の生活を維持できなくなった者に限らず、「おそれのある者」まで含めています。また、原因を所得だけに置かず、「就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情」と並べています。
この書き方は、第2条の基本理念とつながっています。
生活困窮者に対する自立の支援は、生活困窮者の尊厳の保持を図りつつ、生活困窮者の就労の状況、心身の状況、地域社会からの孤立の状況その他の状況に応じて、包括的かつ早期に行われなければならない。
「包括的かつ早期に」と書かれているのは、定義が「おそれのある者」まで広げている理由と読み合わせると、分かりやすい部分です。
実施主体は「都道府県等」。委託を受ける法人はその外側にいる
第4条と第5条第1項で、主体が決まる
事業の主体は、第4条第1項が市等について、次のように書いています。
この法律の実施に関し、関係機関との緊密な連携を図りつつ、適切に生活困窮者自立相談支援事業及び生活困窮者住居確保給付金の支給を行う責務を有する。
ここでいう「市等」は、第4条第1項の括弧書きで、市(特別区を含む)と、福祉事務所を設置する町村を指します。そして第4条第3項の括弧書きが、「都道府県及び市等」を「都道府県等」と定義しています。第5条以下の「都道府県等」は、この範囲です。
この条文には、実施主体と、実施を委ねられる者の関係が現れています。実施主体は都道府県等で、法人は、その事務の「全部又は一部」を委託される側です。
福祉事務所を設置していない町村も、委託と秘密保持が準用される
第11条第1項は、福祉事務所を設置していない町村が、相談や情報提供、都道府県との連絡調整、自立相談支援事業の利用の勧奨その他の援助を行う事業を「行うことができる」と定めています。そして第11条第2項は、次のように、委託と秘密保持の規定を準用しています。
第五条第二項及び第三項の規定は、福祉事務所未設置町村が前項の規定により事業を行う場合について準用する。
法人から見ると、委託と秘密保持の規定がかかる場面は、第5条の自立相談支援事業だけではないことになります。
委託と秘密保持:委託先の範囲は省令、秘密保持は役員・職員まで
第5条第2項:委託できるが、「誰に」は省令が決める
第5条第2項は、委託について次のように書いています。
都道府県等は、生活困窮者自立相談支援事業の事務の全部又は一部を当該都道府県等以外の厚生労働省令で定める者に委託することができる。
読み取れるのは、次の3点です。
- 委託するのは「事務の全部又は一部」。全部も一部もありうる書き方
- 委託先は「当該都道府県等以外の厚生労働省令で定める者」。どんな法人が対象になるかは、法律ではなく省令が決めている
- 「委託することができる」であって、委託を求める書き方ではない
省令の中身は今回の根拠に含まれないため、どんな法人が委託先になれるかは、この記事では書きません。
第5条第3項:役員・職員・退職した者まで
委託を受けた側の秘密保持は、第5条第3項に書かれています。
前項の規定による委託を受けた者若しくはその役員若しくは職員又はこれらの者であった者は、その委託を受けた事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
法人が委託を受けた場合、秘密を漏らしてはならないのは、法人だけではありません。役員、職員、そして「これらの者であった者」まで、条文に名指しされています。つまり、退職した職員や、任期の終わった役員にも、同じ規定がかかります。
第7条第3項:第7条第1項・第2項の事業にも準用される
第五条第二項及び第三項の規定は、前二項の規定により都道府県等が行う事業について準用する。
「前二項」は、第7条第1項と第2項です。つまり、就労準備支援事業・家計改善支援事業・居住支援事業や、子どもの学習・生活支援事業を受託した場合にも、委託と秘密保持の規定は同じようにかかります。「努めるものとする」や「できる」の事業だから秘密保持の規定は緩い、ということはありません。
なお、準用の範囲は条ごとに違います。第10条第2項は、都道府県が研修等の事業を行う場合について、第5条第2項だけを準用しています(第3項は挙がっていません)。第10条の事業の委託を受けた場合に、秘密保持がどう扱われるかは、この条文だけでは言えないため、ここでは書きません。
第5条第3項と第9条第6項は、書きぶりが違う
もう1つ、秘密保持の規定を並べて読むと、気づくことがあります。第9条第6項(支援会議)は、次のとおりです。
支援会議の事務に従事する者又は従事していた者は、正当な理由がなく、支援会議の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
2つを並べると、次のようになります。
| 第5条第3項(委託先) | 第9条第6項(支援会議) | |
|---|---|---|
| 対象 | 委託を受けた者、その役員・職員、これらの者であった者 | 支援会議の事務に従事する者、従事していた者 |
| 秘密の範囲 | その委託を受けた事務に関して知り得た秘密 | 支援会議の事務に関して知り得た秘密 |
| 「正当な理由がなく」 | 書かれていない | 書かれている |
第9条第6項には「正当な理由がなく」という限定が書かれ、第5条第3項にはそれが書かれていません。この違いが実際の運用でどう扱われるのかは、今回の根拠からは言えません。ただ、委託先の秘密保持は、条文の書きぶりの上では限定の言葉が付いていないことは、押さえておく価値があります。
罰則は第28条
秘密を漏らした場合の罰則は、第28条です。
第五条第三項(第七条第三項及び第十一条第二項において準用する場合を含む。)又は第九条第六項の規定に違反して秘密を漏らした者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
条文が罰する対象として書いているのは、「秘密を漏らした者」です。なお、法人に罰金を科す両罰規定(第30条)が挙げている違反行為は、第27条(住居確保給付金の不正受給)と第29条第2号(認定生活困窮者就労訓練事業に関する報告の違反)で、第28条は挙がっていません。だからといって、法人として秘密保持の管理が要らない、という意味ではありません。罰則の対象は個々の「漏らした者」であり、役員・職員・退職者のすべてが対象になりうる条文だということです。
支援会議:委託を受けた者が、構成員として条文に入っている
第9条の構成:7項
第9条(支援会議)は、全7項です。
| 項 | 内容 |
|---|---|
| 第1項 | 都道府県等が、関係機関、委託を受けた者などで構成される支援会議を組織するように努めるものとする |
| 第2項 | 情報の交換と、支援体制に関する検討を行う |
| 第3項 | 必要があると認めるとき、関係機関等に資料・情報の提供、意見の開陳その他の協力を求めることができる |
| 第4項 | 関係機関等は、求めがあった場合、協力するように努めるものとする |
| 第5項 | 他の会議と相互に連携を図るように努めるものとする |
| 第6項 | 支援会議の事務に従事する者の秘密保持 |
| 第7項 | 組織・運営に必要な事項は、支援会議が定める |
会議を条文で整理する書き方は、自立支援協議会についても同じ視点で整理しています。障害者総合支援法の会議の条文を読みたい方は、障害者総合支援法の自立支援協議会の記事も参考にしてください。
第1項:構成員に「委託を受けた者」が名指しで入っている
第1項は、次のように構成員を書いています。
関係機関、第五条第二項(第七条第三項において準用する場合を含む。)の規定による委託を受けた者、生活困窮者に対する支援に関係する団体、当該支援に関係する職務に従事する者その他の関係者(第三項及び第四項において「関係機関等」という。)により構成される会議(以下この条において「支援会議」という。)を組織するように努めるものとする。
「第五条第二項(第七条第三項において準用する場合を含む。)の規定による委託を受けた者」が、構成員として条文に名指しで入っています。 第5条第2項の委託を受けた法人も、第7条第3項で準用される事業の委託を受けた法人も、含まれる書き方です。
そして、この列挙全体が、括弧書きで「関係機関等」と定義されています。委託を受けた者は、「関係機関等」の一員です。
第3項・第4項:資料・情報の提供を求められることがある
第3項は、支援会議が「必要があると認めるときは、関係機関等に対し、生活困窮者に関する資料又は情報の提供、意見の開陳その他必要な協力を求めることができる」と書いています。第4項は、求められた関係機関等に、「これに協力するように努めるものとする」と書いています。
委託を受けた法人にとっての実務上の意味は、次のとおりです。
- 支援会議から、生活困窮者に関する資料や情報の提供を求められることがある
- 関係機関等には、協力するように努める規定がかかる
- 一方で、第5条第3項の秘密保持は、受託した事務で知り得た秘密にかかる
情報の提供を求められたときに、第5条第3項の秘密保持との関係をどう扱うのかは、条文だけでは決まりません。この点は、委託元の都道府県等・自治体に確認しておくべきところです。今回の根拠には、その扱いを定めた条文は含まれていません。
第5項:3つの会議が別に存在することが、条文に現れている
第5項は、他の会議との連携を書いています。
支援会議は、当該支援会議を組織している都道府県等に生活保護法第二十七条の三第一項に規定する調整会議又は社会福祉法第百六条の六第一項に規定する支援会議が組織されているときは、生活困窮者に対する支援の円滑な実施のため、これらの会議と相互に連携を図るように努めるものとする。
この条文には、生活困窮者自立支援法の支援会議のほかに、生活保護法の「調整会議」と、社会福祉法の「支援会議」が別に存在することが現れています。ただし、生活保護法と社会福祉法の該当条の中身は今回の根拠に含まれないため、それぞれが何の会議なのかは、この記事では書きません。
なお、第8条第1項は、都道府県等が生活困窮者の状況を把握する方法として、「次条第一項に規定する支援会議の開催」を挙げ、「把握するように努めるものとする」と書いています。支援会議は、状況把握の方法の1つとして位置づけられています。
一体的に行う体制の確保:第7条第4項
第7条第4項は、事業をまとめて行う体制について、次のように書いています。
都道府県等は、生活困窮者就労準備支援事業又は生活困窮者家計改善支援事業を行うに当たっては、政令で定める方法により、これらの事業及び生活困窮者自立相談支援事業を一体的に行う体制を確保し、効果的かつ効率的に行うものとする。
読み取れるのは、次の点です。
- 対象は、就労準備支援事業と家計改善支援事業(居住支援事業は、この項の書き方には出てこない)
- これらの事業と、自立相談支援事業を「一体的に行う体制」を確保する
- 確保する方法は「政令で定める方法」
政令の中身は今回の根拠に含まれないため、具体的にどんな方法が定められているのかは、この記事では書きません。ただ、就労準備支援事業や家計改善支援事業を受託する場合は、自立相談支援事業との関係を委託元とよく確認しておく必要がある、とは言えます。
第二種社会福祉事業との接点:認定生活困窮者就労訓練事業
社会福祉法第2条第3項に、法律名つきで挙がっている
法人にとって見落としやすいのが、この法律と社会福祉法の接点です。社会福祉法第2条第3項は、次の柱書で始まります。
次に掲げる事業を第二種社会福祉事業とする。
この下に並ぶ号のうち、第一号の二が次のように書いています。
生活困窮者自立支援法(平成二十五年法律第百五号)に規定する認定生活困窮者就労訓練事業
つまり、認定生活困窮者就労訓練事業は、第二種社会福祉事業です。第二種社会福祉事業の届出などの全体像は、第二種社会福祉事業の届出の記事で整理しています。
なお、条文が第二種社会福祉事業として挙げているのは「認定生活困窮者就労訓練事業」です。この記事が根拠にした条文は、認定を受けていない就労訓練事業の扱いを書いていないため、そこは言えません。
認定の条文:第16条
「認定生活困窮者就労訓練事業」の認定は、第16条です。第1項は、事業を行う者が、基準に適合していることについて、都道府県知事の認定を「受けることができる」と書いています。
第2項は、知事の側の書き方です。
都道府県知事は、生活困窮者就労訓練事業が前項の基準に適合していると認めるときは、同項の認定をするものとする。
第3項は、認定を取り消すことができる場合を定めています。基準に適合しないものとなったと認めるときです。具体的な基準や認定の手続は、厚生労働省令で定めるとされており、今回の根拠に含まれないため書きません。
第16条第4項には、認定を受けた事業を行う者への書き方もあります。「国及び地方公共団体は、認定生活困窮者就労訓練事業を行う者の受注の機会の増大を図るように努めるものとする。」と、国・地方公共団体に向けて、努力する旨が書かれています。
認定後の報告:第21条第2項
認定を受けたあと、都道府県知事は、必要な限度で、認定生活困窮者就労訓練事業を行う者などに対して、報告を求めることができます(第21条第2項)。報告をしなかったり、虚偽の報告をしたりした者は、第29条第2号により、三十万円以下の罰金です。
ここまで、認定生活困窮者就労訓練事業を行う場合に条文が書いている範囲です。
法人の事務局で確かめておきたいこと:条文の語で台帳に持つ
ここまでが条文から言えることです。ここから先は、条文が求めていることではなく、実務上の提案です。
| 確かめること | なぜ確かめるか |
|---|---|
| 受託している事業の名前を、条文の語で持っているか | 略称のままだと、根拠条文(第5条・第7条など)を引くときに迷うため |
| その事業が、条文のどの段階か(第5条第1項/第7条第1項/第7条第2項) | 都道府県等への書き方が違い、委託元の方針と照らして確認するため |
| 委託の範囲(事務の全部か一部か)と、委託元の仕様書 | 条文は「全部又は一部」。範囲は条文からは決まらないため |
| 役員・職員の秘密保持の管理(在籍者と退職者の両方) | 第5条第3項は「これらの者であった者」まで対象にするため |
| 支援会議への参加状況と、情報提供を求められたときの扱い | 委託を受けた者は第9条第1項の構成員で、第3項・第4項の協力の規定があるため |
| 認定生活困窮者就労訓練事業の認定の有無と、知事への報告 | 第二種社会福祉事業であり、第21条第2項の報告の規定があるため |
運用のポイントは2つです。
- 事業名は、条文の語と通称を並べて書いておく。 書類によって「就労準備支援事業」と「生活困窮者就労準備支援事業」が混在していても、同じ事業を指していることが分かるようにする
- 秘密保持の対象者を、在籍者だけでなく退職者まで見据えて管理する。 条文が「これらの者であった者」まで挙げているため、誓約書や研修の記録は、在職中だけでなく退職時の手続とセットで台帳に持っておく
複数の事業を受託していたり、拠点が複数あったりする法人では、委託元・事業・根拠条文・担当者・秘密保持の誓約の状況が、拠点ごとの紙やファイルに散らばりがちです。法人本部から全体が見えるように、1つの台帳(kintone などのクラウドツールでも、まずは表計算でも構いません)にまとめておくと、監査や引継ぎのときに探す時間が減ります。
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この記事で書いていないこと
この記事は、抜粋した条文の原文として確認できた範囲だけを書いています。次の点は、根拠にした条文に含まれていないため、扱っていません。
- 委託先になれる者の範囲(第5条第2項が「厚生労働省令で定める者」としており、省令の中身は含まれない)
- 住居確保給付金の額・支給期間・収入の要件(第6条第2項などが省令に委ねている)
- 就労準備支援事業・居住支援事業の実施期間(第3条の定義が省令に委ねている)
- 自立相談支援事業・就労準備支援事業・家計改善支援事業を一体的に行う体制の具体的な方法(第7条第4項が政令に委ねている)
- 認定生活困窮者就労訓練事業の認定の基準と手続(第16条第1項が省令に委ねている)
- 生活保護法の調整会議、社会福祉法の支援会議の中身
- 補助率・国庫負担の割合、実施している自治体の数、利用者数などの統計
- 生活保護制度との比較
- 支援会議で情報の提供を求められたときの、秘密保持との具体的な関係
判断に迷うときは、委託元の都道府県・市町村の窓口に確認してください。
まとめ
- 条文は、事業や給付を「必須/任意」ではなく、「ものとする」「努めるものとする」「できる」の3段階で書き分けている(第5条第1項・第6条第1項/第7条第1項/第7条第2項)
- 第7条第1項の対象は、就労準備支援事業・家計改善支援事業・居住支援事業の「うち必要があると認めるもの」で、3つを全部行うことを求める書き方ではない
- 事業の名前は、法律では「生活困窮者」が付く5つと、付かない「子どもの学習・生活支援事業」がある。住居確保給付金は事業ではなく給付金
- 実施主体は都道府県等で、法人は事務の「全部又は一部」の委託を受ける側。委託先は「厚生労働省令で定める者」で、法律では決まらない
- 委託を受けた者は、その役員・職員・これらの者であった者まで秘密保持の対象になる(第5条第3項)。第7条第3項により、第7条第1項・第2項の事業にも準用される。違反は一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金(第28条)
- 第9条の支援会議では、委託を受けた者が構成員として名指しで入っており、資料・情報の提供を求められうる。第5条第3項と第9条第6項では、「正当な理由がなく」の書き方が違う
- 認定生活困窮者就労訓練事業は第二種社会福祉事業(社会福祉法第2条第3項第一号の二)
生活困窮者自立支援法は、「必須」「任意」という通称で語られることが多く、条文の語尾を意識する機会は多くありません。けれども、受託する事業の根拠や、秘密保持、会議への参加といった場面では、条文の語と語尾で確かめることが、迷いを減らす近道です。
本記事は法律の条文を整理したものです。実際の委託の範囲や手続は、委託元の都道府県・市町村の案内でご確認ください。
参考(一次情報)
受託事業と秘密保持の管理に、お悩みの法人様へ
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