市町村から「自立支援協議会の会議に出てください」「事例の資料を出してください」と声がかかる。けれども、そもそも法律はこの会議を何と呼び、誰に何を求めているのか。出席や資料提供は、断ってもよいものなのか。法人本部で地域連携の窓口を担当していると、そんな疑問に突き当たる方は少なくないのではないでしょうか。
検索すると、自治体の案内ページや、個人のブログが見つかります。多くは「うちの地域の協議会は、こう運営されています」という紹介です。一方で、法律そのものが何を書いているかを、条文の原文から整理したものは、あまり多くありません。
この記事は、e-Gov 法令検索から2026年10月7日に取得した、次の条文の原文だけを根拠に整理します。
- 障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)第89条の3
- 同法第109条第2項
- 同法第77条の2第1項第四号
この記事が答えようとする問いは次の4つです。
- 「自立支援協議会」という名前は、法律のどこに書かれているのか
- 協議会を置くのは誰で、誰が構成員になるのか
- 協議会から協力を求められたとき、事業者側に義務はあるのか
- 協議会で知った秘密を漏らすと、何が起きるのか
なお、開催の回数、部会の構成、委員の任期や報酬、個別の自治体の運用、解説でよく見る「6つの機能」の中身は、この記事の根拠にした条文には書かれていないため扱いません。具体的な運用は、設置している自治体の案内で確認してください。
まず結論:法律の名前は「協議会」。事業者側にも協力の努力義務がある
先に答えを示します。
- 障害者総合支援法の本則に「自立支援協議会」「地域自立支援協議会」という語は1回も出てこない。条文の見出しも条文中の語も、単に「協議会」である(本則での確認は2026年10月7日。対照として「協議会」は13回出てくる)
- 協議会を置くのは地方公共団体で、市町村に限られない。単独でも共同でも置け、置くことは努力義務である(第89条の3第1項)
- 構成員は、関係機関、関係団体、障害者等及びその家族、障害者等の福祉・医療・教育・雇用に関連する職務に従事する者その他の関係者。条文はこれらをまとめて「関係機関等」と呼ぶ
- 協議会は関係機関等に、資料又は情報の提供、意見の表明その他必要な協力を求めることができ(第3項)、関係機関等は協力するよう努める(第4項)
- 協議会の事務に従事する者・従事していた者の守秘義務は第5項にあり、違反には一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金が定められている(第109条第2項)
- 組織や運営の細目は、法律ではなく協議会が定める(第6項)。地域ごとに形が違うのは、このためである
順に、条文で確かめます。
「自立支援協議会」は通称。法律の語は「協議会」
障害者総合支援法の第89条の3は、見出しが「(協議会)」で、条文の中でも「協議会」と書かれています。「自立支援協議会」「地域自立支援協議会」は、実務で広く使われている呼び名ですが、本則の条文には出てきません。
ここで確かめた範囲を、正直に書いておきます。
- 本則での出現回数は、「自立支援協議会」が0回、「地域自立支援協議会」が0回、「協議会」が13回
- 本則に「六つの機能」という語は0回、「部会」という語も0回
解説記事でよく見る「6つの機能」や「部会」は、法律の語ではありません。実務の整理として使われているもので、この記事の根拠にした条文には書かれていません。
協議会を置くのは地方公共団体。市町村に限らず、共同でも置ける
第89条の3第1項は、設置の主体と、構成員の範囲を書いています。
地方公共団体は、単独で又は共同して、障害者等への支援の体制の整備を図るため、関係機関、関係団体並びに障害者等及びその家族並びに障害者等の福祉、医療、教育又は雇用に関連する職務に従事する者その他の関係者(以下この条において「関係機関等」という。)により構成される協議会(以下この条において単に「協議会」という。)を置くように努めなければならない。
ここから読み取れることは、次の4点です。
- 置くのは「地方公共団体」。市町村と書かれているわけではない
- 「単独で又は共同して」とあり、複数の地方公共団体が共同で置くことも条文上できる
- 語尾は「努めなければならない」で、設置は努力義務
- 構成員は、関係機関・関係団体・障害者等及びその家族・福祉、医療、教育又は雇用に関連する職務に従事する者その他の関係者で、まとめて「関係機関等」と定義されている
構成員に、障がいのある方とそのご家族が条文で明記されている点は、見落とされやすいところです。協議会は、事業者や行政だけの会議として条文が作られているわけではありません。
どの地方公共団体が、どの単位で、いつ置いているかは、条文には書かれていません。お住まいの地域の協議会が、市町村単位か、複数の市町村での共同かは、自治体の案内で確認する必要があります。
協議会がすること:情報の共有と、地域の実情に応じた体制整備の協議
協議会の役割は、第2項に書かれています。
協議会は、関係機関等が相互の連絡を図ることにより、地域における障害者等への適切な支援に関する情報及び支援体制に関する課題についての情報を共有し、関係機関等の連携の緊密化を図るとともに、地域の実情に応じた体制の整備について協議を行うものとする。
条文が挙げている役割は、次の3つです。
- 地域における障害者等への適切な支援に関する情報と、支援体制の課題についての情報を共有する
- 関係機関等の連携の緊密化を図る
- 地域の実情に応じた体制の整備について協議を行う
語尾は「行うものとする」です。個別の相談への対応や、サービスの指定・報酬の判断といった事項は、この条文の中には出てきません。協議会が条文上担っているのは、あくまで情報の共有、連携、体制整備の協議です。
なお、基幹相談支援センターとの関係も、条文の上でつながっています。第77条の2第1項は、基幹相談支援センターが総合的に行う事業及び業務を挙げており、その第四号は次のとおりです。
第八十九条の三第一項に規定する関係機関等の連携の緊密化を促進する業務
つまり、協議会が連携を図る相手である「関係機関等」の連携の緊密化を促進する業務が、基幹相談支援センターの業務の1つとして条文に置かれています。センターの業務の全体像と、条文上の位置づけは、基幹相談支援センターの記事で整理しています。
協力を求められたら:求める側の権限と、求められる側の努力義務
事業者や、法人本部の窓口担当にとっていちばん実務に近いのが、第3項と第4項です。まず第3項です。
協議会は、前項の規定による情報の共有及び協議を行うために必要があると認めるときは、関係機関等に対し、資料又は情報の提供、意見の表明その他必要な協力を求めることができる。
求める側の権限は、「必要があると認めるとき」に、「資料又は情報の提供、意見の表明その他必要な協力」を求められる、というものです。求められる範囲は、前項の情報の共有と協議のために必要な限りです。
次に、求められた側です。第4項は、こう書いています。
関係機関等は、前項の規定による求めがあった場合には、これに協力するよう努めるものとする。
語尾は「努めるものとする」で、努力義務です。「協力しなければならない」とは書かれていません。同時に、「協力しなくてよい」とも書かれていません。この2つの条文から、次のように整理できます。
| 点 | 条文の書き方 |
|---|---|
| 求める側 | 協議会。必要があると認めるときに、求めることができる(第3項) |
| 求める内容 | 資料又は情報の提供、意見の表明その他必要な協力 |
| 求められる側 | 関係機関等 |
| 求められる側の義務の強さ | 協力するよう努めるものとする(努力義務。第4項) |
| 協力しなかったときの定め | この2項には書かれていない |
事業者側が気にするのは、「自法人の事業所が、関係機関等に当たるのか」でしょう。条文は、関係機関等を「関係機関、関係団体並びに障害者等及びその家族並びに障害者等の福祉、医療、教育又は雇用に関連する職務に従事する者その他の関係者」と定義しています。障がい福祉サービスを運営する法人や、そこで働く職員が、この定義の中に入りうることは、定義の文言から読み取れます。ただし、個別の事業所が具体的に関係機関等に当たるかどうか、どの範囲まで求められるかは、条文には書かれていません。協議会から依頼が来たときは、依頼の根拠と範囲を、設置している自治体に確認するのが確実です。
なお、第3項の求めに協力しなかったことへの罰則や不利益は、第89条の3にも、次に見る第109条第2項にも書かれていません。罰則が定められているのは、次の守秘義務の違反です。
守秘義務には罰則がある:第89条の3第5項と第109条第2項
協議会の場では、事例検討などで、支援を受けている方の個別の事情を扱うことがあります。そこで知った情報について、第89条の3第5項は次のように書いています。
協議会の事務に従事する者又は従事していた者は、正当な理由なしに、協議会の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
対象は「協議会の事務に従事する者又は従事していた者」で、従事を終えた後も守秘義務は続きます。禁止されているのは、「正当な理由なしに」、「協議会の事務に関して知り得た秘密」を漏らすことです。
この義務に違反したときの定めは、第109条第2項にあります。条文は、複数の条項を並べた長い文なので、後半部分を引用します。
第八十九条の三第五項の規定に違反した者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
整理すると、次のとおりです。
- 守秘義務の根拠は、第89条の3第5項
- 違反した者への罰則は、第109条第2項で、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金
- 「拘禁刑」は、条文の語である
ここで、書けることと書けないことを分けます。
- 書けること:協議会の事務に従事する者・従事していた者が、正当な理由なしに秘密を漏らしたときの罰則は、条文に書かれている
- 書けないこと:協議会に出席する事業所の職員の全員が「協議会の事務に従事する者」に当たるかどうか。この点を定義した条文は、この記事の根拠には含まれていない
そのため、出席する職員が守秘義務の対象かどうかは、条文だけでは断定できません。実務では、対象に当たるかどうかにかかわらず、協議会で知った個人の情報は、事業所に持ち帰って共有してよい範囲を事前に確認しておくのが無難です。どんな場合が「正当な理由」に当たるかも、条文には書かれていません。
事例検討で個人の情報を扱う場面に、ご自身の法人の職員が出席する場合は、出席前に、守秘義務の扱いを設置している自治体に確認しておくことをおすすめします。個人の情報の取扱いという意味では、障がい者虐待の通報など、情報の取扱いが問われる別の場面もありますので、あわせて整理しておくと混乱しません。
事業所のITや記録の運用を、法人全体で見渡したい法人様へ
地域の協議会への参加や、関係機関への情報提供の窓口は、事業所ごとの担当者に任されていることが少なくありません。パレットテクノロジーズは、社会福祉法人様のデジタル化を「現地現物」で伴走支援しています。ご相談の中でも、情報の持ち出し範囲や記録の置き場所を、法人全体で整理したいというお声をいただきます。
組織と運営は「協議会が定める」:形が地域で違う理由
第89条の3の最後、第6項は次のとおりです。
前各項に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、協議会が定める。
ここが、解説で「地域によって形がバラバラ」と言われる理由です。法律は、協議会の設置主体、構成員の範囲、役割、協力の求め、守秘義務までを書いたうえで、組織と運営の細目は協議会自身に委ねています。
したがって、次の事項は、法律の条文では決まっていません。
- 会議の開催回数・頻度
- 部会など、内部の組織の作り方
- 委員の任期や、報酬の有無
- 事務局をどこが担うか
これらは、協議会が自ら定めるものであり、地域ごとに異なります。「うちの地域では○○が決まりだ」という説明があっても、それは法律ではなく、その協議会が定めたルールとして読む必要があります。他の地域の運用を、そのまま自分の地域に当てはめないようにしてください。
法人本部の備え方:窓口と持ち帰り方を決めておく
ここまでが条文から言えることです。ここから先は、条文が求めていることではなく、実務上の提案です。
協議会から協力を求められる場面は、事業所ごとに別々に起きがちです。法人本部が、どの事業所が、どの協議会に、何を提供したのかを把握していないと、守秘義務や情報の取扱いの確認が事業所任せになります。次の項目を、1つの台帳か共有メモにまとめておくと整理しやすくなります。
| 項目 | 何のために使うか |
|---|---|
| 事業所が関わっている協議会の設置主体(どの地方公共団体か) | 依頼の出どころと、確認先の把握 |
| 出席者・担当者 | 異動時の引継ぎと、守秘義務の扱いの確認先の特定 |
| 求められた協力の内容(資料・情報の提供、意見の表明など) | 第3項の「必要な協力」の範囲の記録 |
| 提供した資料や情報の控え | 何を外に出したかの確認 |
| 協議会で知った情報の持ち帰り範囲 | 事業所内で共有してよい範囲の線引き |
| 自治体に確認した内容と日付 | 「正当な理由」や出席者の位置づけなど、条文では決まらない点の根拠 |
運用のポイントは3つです。
- 窓口を法人本部に一本化するか、少なくとも一覧にする。事業所ごとの対応でも、法人として何を出したかは把握できる状態にする
- 提供する情報は、個人が特定されない形に整える運用を事前に決める。協議会の目的は、個人の支援ではなく、情報の共有と体制整備の協議である(第2項)
- 条文で決まらない点は、自治体に確認して記録に残す。確認先と日付があれば、担当者が代わっても説明がつく
この記事で書いていないこと
この記事は、抜粋した条文の原文として確認できた範囲だけを書いています。次の点は、根拠にした条文に含まれていないため、扱っていません。
- 開催の回数・頻度、部会の構成、委員の任期、報酬、事務局の担い手
- 個別の自治体の協議会の運用や、設置状況
- 「6つの機能」など、実務上の整理の中身
- 協議会に出席する個々の職員が「協議会の事務に従事する者」に当たるか
- 「正当な理由」に当たる具体的な場合
- 協力の求めに応じなかった場合の扱い(第89条の3第3項・第4項には、応じなかった場合の定めは書かれていない)
- 基幹相談支援センターの設置・業務の詳細
判断に迷うときは、協議会を設置している自治体の窓口に確認してください。
まとめ
- 障害者総合支援法の本則に「自立支援協議会」の語はなく、条文の語は単に「協議会」(第89条の3)。「6つの機能」「部会」も条文の語ではない
- 協議会を置くのは地方公共団体で、市町村に限られない。単独でも共同でも置け、置くことは努力義務
- 構成員は関係機関等。関係機関、関係団体、障害者等及びその家族、福祉・医療・教育・雇用に関連する職務に従事する者その他の関係者が含まれる
- 協議会は関係機関等に協力を求めることができ(第3項)、関係機関等は協力するよう努める(第4項)。努力義務であり、応じなかったときの定めはこの2項に書かれていない
- 協議会の事務に従事する者・従事していた者には守秘義務があり(第5項)、違反には一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金(第109条第2項)
- 組織と運営の細目は協議会が定める(第6項)。形が地域で違うのは、このため
- 基幹相談支援センターの業務の1つに、関係機関等の連携の緊密化を促進する業務がある(第77条の2第1項第四号)
「自立支援協議会」という名前で呼ばれていても、法律が求めているのは、情報の共有、連携、体制整備の協議と、求められた側の協力の努力、そして秘密の保持です。自法人の事業所が、どの協議会に、何を求められ、何を出しているのかを把握しておくことが、守秘義務の面でも、地域との連携の面でも、安心して参加できる土台になります。
地域との連携の窓口を、法人全体で見渡せるようにしたい法人様へ
事業所ごとに別々の担当者が地域の会議に出席し、法人として何を出したのかが残っていない、というご相談をいただくことがあります。パレットテクノロジーズは、社会福祉法人様のデジタル化を「現地現物」で伴走支援しています。事業所の台帳や、関係機関とのやり取りの記録を、法人全体で見渡せる形にして、確認や引継ぎの負担をシステム側で軽くするお手伝いをしています。ITに詳しい職員がいらっしゃらなくても大丈夫です。
地域生活支援拠点等については、地域生活支援拠点等の記事で整理しています。
本記事は法律の条文を整理したものです。個別の協議会の運営は、設置している自治体の案内でご確認ください。
参考にした一次情報
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第89条の3(協議会)・第109条(罰則)第2項・第77条の2(基幹相談支援センター)第1項第四号|e-Gov法令検索(2026年10月7日取得。本則のみ)