「介護福祉士ではない職員に、たんの吸引や経管栄養をお願いしてもよいのか」「認定特定行為業務従事者という言葉は聞くが、事業所として何を整えればよいのか」。特養や障がい者支援施設、グループホームの管理者の方から、こうした相談をいただくことがあります。
結論から言うと、喀痰吸引等を業として行える人は、法律で2つに分かれています。介護福祉士は本則(第48条の2)で、介護福祉士以外の介護職員は、原始附則第10条の認定特定行為業務従事者として、「当分の間」の特例で行います。さらに、事業所の側にも都道府県知事への登録が必要です。
この記事では、社会福祉士及び介護福祉士法と同法施行規則を、令和8年11月2日にe-Gov法令検索から取得した原文で読みます。法律には本則と原始附則があり、認定特定行為業務従事者に関する条文は附則にあります。そのため、条番号は「附則第10条」のように、附則であることを付けて書きます。研修の時間数や費用など、取得した条文に書かれていないことは断定しません。
先に結論
- 喀痰吸引等とは、法第2条第2項と施行規則第1条で決まる、口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部の喀痰吸引と、胃ろう・腸ろうおよび経鼻による経管栄養の5つの行為です。
- 介護福祉士は、法第48条の2により、診療の補助として喀痰吸引等を行うことを業とできます。事業所は、法第48条の3の登録が要ります。
- 介護福祉士以外の介護職員は、法附則第10条の認定特定行為業務従事者として、「当分の間」、医師の指示の下に特定行為を行えます。
- 認定証は都道府県知事が交付し、喀痰吸引等研修の課程を修了したと都道府県知事が認定した者だけが受けられます(法附則第11条)。
- 「特定行為」の範囲は、修了した研修の課程(第一号研修・第二号研修・第三号研修)に応じて、施行規則附則第4条の表が決めます。
- 認定特定行為業務従事者に特定行為をさせる事業所は、法附則第27条の登録(登録特定行為事業者)が要ります。
- 研修の時間数、費用、受講できる人数は、取得した条文には書かれていません。
喀痰吸引等とは何か:法第2条第2項と施行規則第1条
法律は、介護福祉士の定義の中で、喀痰吸引等を次のように定めています。
喀痰吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であつて、医師の指示の下に行われるもの(厚生労働省令で定めるものに限る。以下「喀痰吸引等」という。)
つまり、喀痰吸引等は、医師の指示の下に行われることが前提で、行為の範囲は厚生労働省令が決めます。その省令が、施行規則第1条です。
社会福祉士及び介護福祉士法(昭和六十二年法律第三十号。以下「法」という。)第二条第二項の厚生労働省令で定める医師の指示の下に行われる行為は、次のとおりとする。
この柱書に続いて、5つの行為が並びます。
| 号 | 行為 | 条文の位置 |
|---|---|---|
| 第1号 | 口腔内の喀痰吸引 | 施行規則第1条第1項 |
| 第2号 | 鼻腔内の喀痰吸引 | 同項 |
| 第3号 | 気管カニューレ内部の喀痰吸引 | 同項 |
| 第4号 | 胃ろう又は腸ろうによる経管栄養 | 同項 |
| 第5号 | 経鼻経管栄養 | 同項 |
この5つの行為が、条文でいう喀痰吸引等です。服薬の介助のように、医行為ではないとされる行為の整理は、この記事の対象外です。そちらは服薬介助の記事をご覧ください。
介護福祉士は本則:第48条の2と第48条の3
介護福祉士については、法第48条の2第1項が、次のように定めています。
介護福祉士は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として喀痰吸引等を行うことを業とすることができる。
保健師助産師看護師法の規定にかかわらず、介護福祉士は診療の補助として喀痰吸引等を業にできる、という書き方です。ただし、事業所の側には登録が要ります。法第48条の3第1項は次のとおりです。
自らの事業又はその一環として、喀痰吸引等(介護福祉士が行うものに限る。)の業務(以下「喀痰吸引等業務」という。)を行おうとする者は、その事業所ごとに、その所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない。
ここで押さえたいのは、登録が「その事業所ごと」で、所在地を管轄する都道府県知事に対して行うことです。法人として1回登録すれば全事業所に及ぶ書き方ではありません。
介護福祉士以外は附則第10条:認定特定行為業務従事者
介護福祉士でない介護職員については、法の原始附則第10条第1項が特例を置いています。
介護の業務に従事する者(介護福祉士を除く。次条第二項において同じ。)のうち、同条第一項の認定特定行為業務従事者認定証の交付を受けている者(以下「認定特定行為業務従事者」という。)は、当分の間、保健師助産師看護師法第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として、医師の指示の下に、特定行為(喀痰吸引等のうち当該認定特定行為業務従事者が修了した次条第二項に規定する喀痰吸引等研修の課程に応じて厚生労働省令で定める行為をいう。以下同じ。)を行うことを業とすることができる。
読み取れる点は3つあります。
- 対象は「介護の業務に従事する者(介護福祉士を除く)」で、認定証の交付を受けている人です。
- 「当分の間」の特例です。期限の日付は、この条文には書かれていません。
- 行えるのは喀痰吸引等のすべてではなく、「特定行為」です。特定行為は、修了した研修の課程に応じて決まります。
同条第2項は、認定特定行為業務従事者に連携を義務づけています。
認定特定行為業務従事者は、特定行為の業務を行うに当たつては、医師、看護師その他の医療関係者との連携を保たなければならない。
この条文は、認定特定行為業務従事者が一人で完結して行うものではなく、医療関係者との連携の中で行うことを前提にしています。なお、附則第11条第4項は、不正の行為などがあった場合に、都道府県知事が期間を定めて特定行為の業務を停止し、または認定証の返納を命ずることができると定めています。
認定証の交付と研修:附則第11条
認定証を交付するのは都道府県知事です。法附則第11条第1項は次のとおりです。
認定特定行為業務従事者認定証は、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県知事が交付する。
ただし、誰でも受けられるわけではありません。同条第2項は、交付の条件を次のように書いています。
認定特定行為業務従事者認定証は、介護の業務に従事する者に対して認定特定行為業務従事者となるのに必要な知識及び技能を修得させるため、都道府県知事又はその登録を受けた者(以下「登録研修機関」という。)が行う研修(以下「喀痰吸引等研修」という。)の課程を修了したと都道府県知事が認定した者でなければ、その交付を受けることができない。
整理すると、次の流れです。
| 段階 | 条文で決まっていること | 条文の位置 |
|---|---|---|
| 研修 | 都道府県知事または登録研修機関が行う喀痰吸引等研修 | 法附則第11条第2項 |
| 認定 | 課程の修了を都道府県知事が認定 | 法附則第11条第2項 |
| 交付 | 認定証を都道府県知事が交付 | 法附則第11条第1項 |
交付されない場合も定められています。法附則第11条第3項は、心身の故障により特定行為を適正に行えない者や、一定の刑に処せられて2年を経過しない者などに対し、都道府県知事が交付を行わないことができるとしています。
なお、法附則第12条は、都道府県知事が認定証の交付事務の全部または一部を登録研修機関に委託できると定めています。実際に研修を受ける窓口や手続きの流れは、都道府県ごとに異なる可能性があるため、この記事では書きません。
特定行為の範囲は、研修の課程で決まる
法附則第10条第1項は、特定行為を「修了した研修の課程に応じて厚生労働省令で定める行為」としていました。その省令が、施行規則附則第4条です。
法附則第十条第一項に規定する特定行為(以下「特定行為」という。)は、次の表の上欄に掲げる喀痰吸引等研修(法附則第十一条第二項に規定する喀痰吸引等研修をいう。以下同じ。)の課程に応じ、それぞれ同表の下欄に定めるものとする。
条文は、研修の課程ごとに、できる行為を表で決めています。現場で「1号・2号・3号」と呼ばれる区分は、この表で条文自体が「第一号研修」「第二号研修」「第三号研修」と名付けた課程のことです。表の内容を整理すると、次のとおりです。
| 研修の課程 | 修了した研修 | 特定行為 |
|---|---|---|
| 第一号研修 | 別表第一の基本研修と実地研修 | 施行規則第1条各号に掲げる行為 |
| 第二号研修 | 別表第二の基本研修と実地研修 | 第1条各号の行為のうち、別表第二第二号の実地研修を修了したもの |
| 第三号研修 | 別表第三の基本研修と実地研修 | 第1条各号の行為のうち、別表第三第二号の実地研修を修了したもの |
第一号研修を修了すると、第1条各号の行為(5つの行為)が特定行為になります。第二号研修と第三号研修は、第1条各号の行為のうち、それぞれの別表第二第二号・別表第三第二号の実地研修を修了した行為に限られます。どの行為の実地研修を修了したかは、認定証に書かれる特定行為(後述)で確かめます。
研修の基準は、施行規則附則第13条第1項第1号が、課程ごとに定めています。
研修の内容は、イからハまでに掲げる喀痰吸引等研修の課程に応じ、それぞれ次に定めるものであること。
イが第一号研修、ロが第二号研修、ハが第三号研修です。講義の時間数、演習の回数、実地研修の回数は、いずれも該当する別表の下欄に定める数以上であることとされています。ただし、この記事では別表の中身を確かめていません。そのため、時間数や回数、第二号研修と第三号研修がどのような人や場面を対象にするかは、断定しません。都道府県の案内や登録研修機関で確認してください。
誰がどの行為をできるのかを決める場面では、職員の認定証に書かれた特定行為を見るのが確実です。施行規則附則第6条第1項は、認定証の記載事項を次のように定めています。
認定特定行為業務従事者が行う特定行為
認定証には、本人が行える特定行為が書かれます。職員が持つ認定証の特定行為が、利用者の必要とする行為と合っているかを、管理者が確かめる材料になります。
事業所は登録特定行為事業者の登録が要る:附則第27条
認定特定行為業務従事者に特定行為をさせる事業所は、法附則第27条第1項の登録が要ります。
自らの事業又はその一環として、特定行為(認定特定行為業務従事者が行うものに限る。)の業務(以下「特定行為業務」という。)を行おうとする者は、その事業所ごとに、その所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない。
介護福祉士の場合の第48条の3と同じ作りで、「その事業所ごと」に、所在地の都道府県知事の登録を受けます。登録を受けた者は、同条第2項で「登録特定行為事業者」と呼ばれます。
第2項は、本則の登録の規定(第48条の3第2項、第48条の4から第48条の8まで、第48条の10)を、読み替えて準用しています。登録の基準は、本則の第48条の5第1項に書かれており、その第1号と第2号は次のとおりです。
医師、看護師その他の医療関係者との連携が確保されているものとして厚生労働省令で定める基準に適合していること。
喀痰吸引等の実施に関する記録が整備されていることその他喀痰吸引等を安全かつ適正に実施するために必要な措置として厚生労働省令で定める措置が講じられていること。
附則第27条の準用では、このうち第2号の「喀痰吸引等」が「特定行為」に読み替えられます。つまり、登録特定行為事業者の側にも、医療関係者との連携の確保と、特定行為の実施に関する記録の整備が求められる作りです。具体的な基準は厚生労働省令で決まり、施行規則附則第16条が、施行規則の第26条の2と第26条の3を準用しています。その中身はこの記事では確かめていません。
条文の整理:介護福祉士と介護福祉士以外
ここまでの内容を、並べて整理します。
| 論点 | 介護福祉士 | 介護福祉士以外 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 本則(第48条の2) | 原始附則第10条(当分の間) |
| 行える範囲 | 喀痰吸引等 | 修了した課程に応じた特定行為 |
| 必要なもの | 介護福祉士の登録 | 認定証(知事が交付) |
| 事業所の登録 | 第48条の3(登録喀痰吸引等事業者) | 附則第27条(登録特定行為事業者) |
登録喀痰吸引等事業者の名称は、法第48条の6第1項で定義されており、附則第27条第2項がこれを「登録特定行為事業者」に読み替えています。
条文で決まっていないこと
実務で質問が多い点のうち、取得した条文に書かれていないものを整理します。
| 論点 | 条文での扱い | 決め方 |
|---|---|---|
| 研修の時間数・内容 | 取得した原文に無い | 都道府県・登録研修機関 |
| 研修の費用 | 条文に書かれていない | 登録研修機関に確認 |
| 別表の時間数・回数 | 附則第13条は別表の下欄による | 登録研修機関に確認 |
| 「当分の間」の終期 | 条文に日付なし | 国の通知を確認 |
| 登録の申請書類・様式 | 取得した原文の範囲外 | 都道府県に確認 |
| 医師の指示書の様式 | 条文に書かれていない | 医師・医療機関と協議 |
「当分の間」がいつまでかは、条文には書かれていません。現行の運用は、国や都道府県の最新の通知で確かめてください。
事業所で管理しておきたいこと
認定証と研修、事業所の登録、医師の指示は、いずれも条文で求められている事項です。条文から導いた弊社の整理として、法人本部や管理者が把握しておきたい点を挙げます。実際の判断は、所在地の都道府県に確認してください。
- 特定行為を担う職員ごとに、認定証の交付を受けているか、その認定証に書かれた特定行為は何かを一覧にする。
- 認定証の記載事項に変更があったときは、交付した都道府県知事に届出が必要です(施行規則附則第7条)。氏名などの変更が起きたときの担当を決めておく。
- 認定証を汚損したり失ったときは、遅滞なく再交付の申請が必要です(施行規則附則第8条)。
- 事業所ごとに、登録特定行為事業者の登録を受けているかを確かめる。法人として1回では足りない。
- 医師の指示の下に行う行為なので、指示が誰からいつ出ているかを、記録として残す。
- 医師・看護師などとの連携が確保されている状態を、記録で示せるようにしておく。
- 認定特定行為業務従事者が退職・異動したときに、事業所の行える特定行為の体制が足りなくならないか、事前に見ておく。
職員が人事異動で動く法人では、認定証、研修の課程、事業所の登録が事業所ごとに散らばりやすくなります。
この記事で書いていないこと
条文の原文で確かめていない論点は、断定しません。
| 論点 | 書かなかった理由 |
|---|---|
| 研修の時間数・実地研修の回数 | 取得した原文に無い |
| 別表の中身と第二号・第三号研修の対象 | 別表を確かめていない |
| 報酬上の加算 | この記事の条文の対象外 |
| 都道府県ごとの申請手続き | 条文の対象外 |
| 特別支援学校などの教員の扱い | この記事の条文の対象外 |
制度の細部は、条文の原文や、都道府県の案内で確かめてください。
まとめ
- 喀痰吸引等は、施行規則第1条の5つの行為で、医師の指示の下に行われます。
- 介護福祉士は本則(第48条の2)で、介護福祉士以外の介護職員は原始附則第10条の認定特定行為業務従事者として、「当分の間」の特例で行います。
- 認定証は都道府県知事が交付し、喀痰吸引等研修の課程の修了の認定が条件です(附則第11条)。
- 行える特定行為は、修了した研修の課程に応じて決まります(施行規則附則第4条)。
- 特定行為をさせる事業所は、事業所ごとに登録特定行為事業者の登録が要ります(附則第27条)。
- 研修の時間数や費用など、条文に書かれていないことは都道府県に確認します。
参考にした一次情報
- 社会福祉士及び介護福祉士法|e-Gov法令検索:第2条、第48条の2、第48条の3、第48条の5、原始附則第10条、第11条、第12条、第27条、第36条
- 社会福祉士及び介護福祉士法施行規則|e-Gov法令検索:第1条、原始附則第4条から第16条
認定証・研修の課程・事業所の登録を、法人本部で確かめられる形になっていますか?
パレットテクノロジーズは、社会福祉法人様のデジタル化を「現地現物」で伴走支援しています。特定行為を担う職員の認定証と研修の課程、事業所ごとの登録状況、医師の指示や連携の記録を、法人本部で一覧できる形に整えるところからご一緒します。ITに詳しい職員がいらっしゃらなくても大丈夫です。