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福祉避難所の指定|協定との違いと受入対象者を特定する公示のしくみ

市町村から「施設を福祉避難所としてお願いできないか」と打診を受けたとき、最初に確かめたいのは、その話が「指定」なのか「協定」なのかです。「福祉避難所 指定 協定 違い」と検索する方が多いのは、この2つの違いが、現場の感覚ではつかみにくいからだと思います。

自治体の案内や解説の多くは、避難所を確保する市町村の側に向けて書かれています。この記事は、受け入れる施設を運営する社会福祉法人の側から、法令とガイドラインの原文を順にたどります。根拠にしたのは、次の資料だけです。

  • 災害対策基本法(第49条の4から第49条の7)
  • 災害対策基本法施行令(第20条の6、第20条の7)
  • 災害対策基本法施行規則(第1条の7の2、第1条の9)
  • 内閣府(防災担当)「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」(平成28年4月、令和3年5月改定。以下「ガイドライン」)

この記事で答えるのは、次の問いです。

  • 福祉避難所は、法令のどこに、どう書かれているのか
  • 「指定福祉避難所」と「協定等による福祉避難所」は、何が違うのか
  • 指定されると、施設の側には条文上、何が関わってくるのか
  • 令和3年の改正で可能になった「受入対象者を特定して公示する」とは、どういうことか
  • 引き受ける前に、施設の側で何を決めておけばよいのか

なお、費用負担の金額、国の負担割合、自治体ごとの運用・様式・締切は、この記事の根拠にした条文とガイドラインに書かれていないため、扱いません。

まず結論:「指定か協定か」の二択ではなく、公示と個別避難計画がつながるかどうかが違い

先に答えを示します。

  • 今回確認した災害対策基本法と施行令の条文に、「福祉避難所」という語は出てきません。指定避難所の基準を定めた施行令第20条の6の第五号が、要配慮者を滞在させることが想定される避難所に追加の基準を求め、その中身を施行規則第1条の9が定めています
  • 「指定福祉避難所」という語が定義されているのは、施行規則第1条の7の2第2項(公示の規定)です
  • 指定を行うのは市町村長です。条文上、指定には施設の管理者の同意が必要とされ、指定後に廃止や重要な変更をするときは届出が必要とされています(いずれも準用)
  • 「協定等による福祉避難所」は、ガイドラインでは指定していないが、事前の協定等により福祉避難所として確保している施設とされています
  • ガイドラインは、基準に適合する協定施設は、指定して公示することが望ましいとしています。理由は、公示が義務となっていること、個別避難計画で避難先にできることです
  • 令和3年の施行規則改正で、指定福祉避難所について受入対象者を特定して公示できるようになりました
  • ガイドラインは、指定する施設との間でも協定を締結しておくとしています。つまり、「指定か協定か」を二者択一で考えると、実態とずれます

ここからは、この結論を条文とガイドラインの原文で確かめます。

「福祉避難所」は条文に出てこない:4段の構造

福祉避難所という言葉から、法律に「福祉避難所を設置する」という条文があるように思えますが、今回確認した範囲では、そうなっていません。次の4段で組み立てられています。

段根拠書かれていること
1災害対策基本法 第49条の7第1項市町村長は、政令で定める基準に適合する公共施設その他の施設を指定避難所として指定しなければならない
2施行令 第20条の6指定避難所の基準を第一号から第五号まで列挙。第五号が、主として要配慮者を滞在させることが想定されるものについて、内閣府令で定める基準への適合を求める
3施行規則 第1条の9その内閣府令の基準が3つ
4施行規則 第1条の7の2指定したときの公示。第1項が「指定一般避難所」、第2項が「指定福祉避難所」

災害対策基本法第49条の7第1項と施行令第20条の6には、「福祉避難所」の語はありません。この語が現れるのは、施行規則第1条の7の2です。つまり、「指定福祉避難所」という語の定義は、法律ではなく施行規則の公示の規定の中にあります。

ガイドラインも同じ構造を説明しています。福祉避難所は、施行令に、避難所の指定基準の一つとして規定されている。そして施行規則で、施行令第20条の6の第一号から第四号までにのみ適合する施設を「指定一般避難所」、第一号から第五号までに適合する施設を「指定福祉避難所」として公示することとした(令和3年の施行規則改正)、という説明です。

一方、「協定等による福祉避難所」を定める条文は、この記事の根拠にした法令の範囲には含まれていません。協定等による福祉避難所は、ガイドラインの第3章に書かれています。指定は法令の仕組みで、協定はガイドラインが示す運用、と整理すると、全体が見通しやすくなります。

指定避難所の基準:施行令第20条の6と施行規則第1条の9

施行令第20条の6:第五号が分かれ目

施行令第20条の6は、指定避難所の基準を次のように定めています。

号基準の内容(要旨)
第一号被災者等を滞在させるために必要かつ適切な規模のものであること
第二号速やかに被災者等を受け入れ、又は生活関連物資を配布することが可能な構造又は設備を有すること
第三号想定される災害による影響が比較的少ない場所にあること
第四号車両その他の運搬手段による輸送が比較的容易な場所にあること
第五号主として要配慮者を滞在させることが想定されるものは、内閣府令で定める基準に適合すること

第一号から第四号は、避難所一般の基準です。福祉避難所に関わるのは第五号です。

主として高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者(以下この号において「要配慮者」という。)を滞在させることが想定されるものにあつては、要配慮者の円滑な利用の確保、要配慮者が相談し、又は助言その他の支援を受けることができる体制の整備その他の要配慮者の良好な生活環境の確保に資する事項について内閣府令で定める基準に適合するものであること。

読み方のポイントは、「主として要配慮者を滞在させることが想定されるものにあつては」という限定です。特別養護老人ホームや障害者支援施設のように、日ごろから高齢者や障がいのある方の支援を行う施設は、この第五号の想定に重なると考えられます(ガイドラインも、指定福祉避難所として想定される施設に、老人福祉施設や障害者支援施設等を挙げています)。第五号は具体的な数値や設備を書かず、「内閣府令で定める基準」に委ねています。

施行規則第1条の9:内閣府令の基準は3つ

その内閣府令の基準が、施行規則第1条の9です。第一号から第三号までの3つが書かれています。

第一号は、円滑な利用の確保です。

高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者(以下この条において「要配慮者」という。)の円滑な利用を確保するための措置が講じられていること。

第二号は、相談・支援を受けられる体制です。

災害が発生した場合において要配慮者が相談し、又は助言その他の支援を受けることができる体制が整備されること。

第三号は、居室の確保です。

災害が発生した場合において主として要配慮者を滞在させるために必要な居室が可能な限り確保されること。

語尾に注目すると、第一号は「措置が講じられていること」、第二号は「体制が整備されること」、第三号は「可能な限り確保されること」です。第三号は、「必ず確保せよ」ではなく「可能な限り」と書かれています。

3つの基準は、具体的な面積・人数・設備の数値までは書いていません。ガイドラインは、市町村が指定福祉避難所の指定要件を設定するとしたうえで、その要件は各地方公共団体で定めるもので、例として耐震性の確保、土砂災害特別警戒区域外であること、原則としてバリアフリー化されていることなどが考えられる、としています。つまり、3つの基準を自施設に当てはめた具体的な要件は、市町村ごとに違いうるということです。

あわせて、ガイドラインは、福祉的な支援を受けることができる施設やスペース等で、主として要配慮者が滞在することが想定され、生活相談員等を配置するなど、施行令第20条の6第一号から第五号と施行規則第1条の9の基準に適合するものは、小規模な施設や施設内の一部のスペース等であっても、指定福祉避難所として指定することが適当としています。また、生活相談員や福祉関係職員等の専門的人材は、必ずしも常駐の必要はなく、要配慮者の状態に応じて確保するとしています。

指定一般避難所と指定福祉避難所:施行規則第1条の7の2

指定避難所を指定したときの公示は、施行規則第1条の7の2が定めています。第1項は、第五号に適合しないほうの指定避難所です。

法第四十九条の七第二項の規定により準用する法第四十九条の四第三項の規定により令第二十条の六第一号から第四号までに定める基準に適合する指定避難所(同条第一号から第五号までに定める基準に適合するものを除く。以下この項において「指定一般避難所」という。)を指定したときは、当該指定一般避難所の名称及び所在地その他市町村長が必要と認める事項を公示するものとする。

第2項が、「指定福祉避難所」の定義にあたる部分です。

前項に定めるもののほか、法第四十九条の七第二項の規定により準用する法第四十九条の四第三項の規定により令第二十条の六第一号から第五号までに定める基準に適合する指定避難所(以下この項において「指定福祉避難所」という。)を指定したときは、当該指定福祉避難所の名称、所在地及び当該指定福祉避難所に受け入れる被災者等を特定する場合にはその旨その他市町村長が必要と認める事項を公示するものとする。

2つの項を並べると、次のとおりです。

 指定一般避難所(第1項)指定福祉避難所(第2項)
適合する基準施行令第20条の6の第一号から第四号まで(第五号に適合するものを除く)施行令第20条の6の第一号から第五号まで
公示する事項名称、所在地、その他市町村長が必要と認める事項名称、所在地、受け入れる被災者等を特定する場合にはその旨、その他市町村長が必要と認める事項

違いは、適合する基準に第五号が入るかどうかと、公示事項に「受け入れる被災者等を特定する場合にはその旨」が入るかどうかの2点です。この2つ目が、次の章で扱う令和3年改正のポイントです。

なお、ガイドラインは、同一の敷地内で指定一般避難所と指定福祉避難所の機能がある場合には、指定福祉避難所の機能があることを要支援者に周知する観点等からも、それぞれを指定して公示するとしています。

指定を受けると、施設の側に何が関わるのか

法人の側から見て気になるのは、「指定されたら何をしなければならないのか」です。ここは、条文から言えることと言えないことを分けて確認します。

災害対策基本法第49条の7第2項は、指定避難所について、次の規定を準用するとしています。

第四十九条の四第二項及び第三項並びに前二条の規定は、指定避難所について準用する。

準用されるのは、第49条の4第2項・第3項と、前2条(第49条の5、第49条の6)です。もともとは指定緊急避難場所についての規定ですが、指定避難所に当てはめて読むことになります。そこから、施設の側に関わる点が3つ読み取れます。

同意:指定には管理者の同意が必要

第49条の4第2項は、指定の前に管理者の同意を得ることを求めています。

市町村長は、前項の規定により指定緊急避難場所を指定しようとするときは、当該指定緊急避難場所の管理者(当該市町村を除く。次条において同じ。)の同意を得なければならない。

「当該市町村を除く」とあるため、市町村が管理する施設は別として、法人が管理する施設を指定するには、条文上、管理者の同意が必要です。「管理者」が法人本部なのか施設長なのかは、この記事の根拠にした条文からは決まりません。同意を求められたときに誰が応じるのかは、法人内であらかじめ決めておく必要があります。

届出:廃止や重要な変更の前に

第49条の5は、指定後の廃止や変更についての規定です。

指定緊急避難場所の管理者は、当該指定緊急避難場所を廃止し、又は改築その他の事由により当該指定緊急避難場所の現状に政令で定める重要な変更を加えようとするときは、内閣府令で定めるところにより市町村長に届け出なければならない。

この記事で確認した条文のうち、施設の管理者を名宛人にして義務を課しているのは、この届出です。「重要な変更」の中身は政令に委ねられており、施行令第20条の7が定めています。

法第四十九条の七第二項において準用する法第四十九条の五の政令で定める重要な変更は、指定避難所の被災者等の滞在の用に供すべき部分の総面積の十分の一以上の面積の増減を伴う変更とする。

指定避難所の場合、被災者等の滞在の用に供すべき部分の総面積の十分の一以上の面積の増減を伴う変更が、重要な変更です。居室の使い方を変える改修や増築を検討するときは、この面積の基準に当たらないかを確かめることになります。届出の様式や期限は、この記事の根拠にした条文には含まれていません。

取消し:基準に適合しなくなったと認めるとき

第49条の6は、指定の取消しの規定です。

市町村長は、当該指定緊急避難場所が廃止され、又は第四十九条の四第一項の政令で定める基準に適合しなくなつたと認めるときは、同項の規定による指定を取り消すものとする。

指定避難所に準用する場合は、「第四十九条の四第一項」が指定避難所の指定の規定(第49条の7第1項)に読み替えられます。基準に適合しなくなったと市町村長が認めたときは、取り消すとされています。体制の変更や改修で、第五号の基準に当たる状態が保てなくなる場合は、指定にも影響しうる、ということです。

条文に書かれていないこと

指定を受けた施設が、災害時にどのような手順で受け入れるのか、費用を誰がどう負担するのか。こうした中身は、この記事で確認した条文には書かれていません。ガイドラインは、これらを協定で明確にするとしています。次の章以降で見ていきます。

受入対象者を特定して公示できる:令和3年の改正

令和3年の施行規則改正で、指定福祉避難所の公示事項に「受け入れる被災者等を特定する場合にはその旨」が加わりました(前の章で引用した第1条の7の2第2項)。ガイドラインは、この改正の背景を次のように書いています。

福祉避難所が指定避難所として公示されると、受入れを想定していない被災者等が避難してくることを懸念するとの意見を踏まえ、市町村は、指定福祉避難所ごとに受入対象者を特定し、指定の際に公示することができることとしたものである。

公示されると、誰でも来られる避難所だと受け取られかねない。そのため、受入対象者を特定して公示できるようにした、という経緯です。

誰を受入対象者にするのか

施設の側にとって重要なのは、誰が受入対象者になるのかです。ガイドラインは、次のように書いています。

指定福祉避難所の受入対象者は、当該指定福祉避難所の通常業務におけるサービス対象者や平素から利用している者、当該福祉避難所の体制などの実情等を踏まえて特定する。例えば、高齢者介護施設が高齢者、障害者福祉施設が障害者、特別支援学校が障害児及びその家族を受入対象者として特定することなどが考えられる。

つまり、特定の基準は、施設の通常業務のサービス対象者、平素からの利用者、施設の体制です。日ごろの事業と無関係に決めるのではなく、施設の実情から決めることになります。

ガイドラインは、特定にあたっての調整先も明記しています。

指定福祉避難所の指定に当たっては、その受入対象者について当該指定福祉避難所の施設管理者等と調整すること。

受入対象者は、市町村が一方的に決めるのではなく、施設管理者等との調整事項です。誰を受け入れられる体制なのか、法人の側が自分で説明できる状態にしておく必要があります。

特定しない場合と、特定に時間がかかる場合

ガイドラインには、次の整理も書かれています。

  • 受入対象者を要配慮者の一部と特定せず、要配慮者全体とする場合でも、受入れを想定していない被災者等が避難してくることのないよう、受入対象者は要配慮者とその家族である旨を公示することが適切
  • 受入対象者の特定に時間を要する場合は、まず受入対象者を「要配慮者」として公示したうえで、追って特定して公示する対応も考えられる
  • 受入対象者を変更した場合は、適切に周知する観点から、改めて公示する

公示した対象者以外の方が来たとき

受入対象者を特定して公示しても、対象者以外の方が来る可能性はあります。ガイドラインは、この場面について次のように書いています。

公示した受入対象者以外の者が避難してきた場合には、災害の状況等を踏まえて、他の避難所を案内する等、適切に対応することとする。

ガイドラインには、あわせて「災害の状況によっては、被災者の生命を災害から保護するため、緊急措置として本来の受入対象者の避難支援に支障が生じない形で一時的な受入れを行うことは考えられる」という趣旨の注記もあります。対象外の方への対応は、受付の担当者が迷わないよう、事前に決めておきたい場面です。

協定という選び方:ガイドライン第3章

ここまでが、法令に書かれている「指定」の仕組みです。もう1つの選び方が、ガイドライン第3章の「協定等による福祉避難所」です。

老人福祉施設、障害者支援施設等の施設、保健センター等であって、指定避難所として指定していないが、市町村が一定の施設、設備、体制等の整った施設として、事前の協定等により福祉避難所として確保している施設。

ガイドラインは、「広義の福祉避難所」には、指定福祉避難所のほか、協定等により福祉避難所として確保しているものも含まれる、と整理しています。要配慮者の状態に応じて適切に対応できるよう、協定等による福祉避難所を設定することも考えられる、という位置づけです。協定等による福祉避難所の運用等にあたっては、指定福祉避難所を参考にするとされています。

ここで、似た言葉を3つ整理しておきます。

呼び方市町村による指定位置づけ
指定福祉避難所指定している。指定したときに公示施行規則第1条の7の2第2項
協定等による福祉避難所指定していないガイドライン第3章。事前の協定等により福祉避難所として確保している施設
一般の避難所内の要配慮者スペース指定福祉避難所や協定等による福祉避難所ではないガイドライン第3章。生活相談員等を配置しないなど、指定福祉避難所の基準等は満たしていないが、要配慮者のために何らかの配慮がされているスペース

公示は、前に見たとおり、市町村長が指定をしたときに行うものです。協定等による福祉避難所は指定していない施設ですから、その施設としての公示は、この仕組みの対象にならない、という範囲で整理できます。

ガイドラインが「指定が望ましい」とする理由

指定と協定は、どちらが上、という書き方ではありません。ただし、ガイドラインは、基準に適合する協定施設については、次のように書いています。

指定福祉避難所は、市町村が災害対策基本法等で定める基準に適合すると判断した避難所であり、要配慮者の円滑な避難につながるよう、公示が義務となっていること、個別避難計画で避難先とすることにより必要な支援の準備をできることから、協定等による福祉避難所のうち指定福祉避難所の基準に適合するものは、指定福祉避難所として指定し、公示することが望ましい。

理由は2つです。

  1. 公示が義務となっていること。 公示されることで、要配慮者や家族、支援者が、どの施設が福祉避難所なのかを知ることができる
  2. 個別避難計画で避難先とすることにより、必要な支援の準備をできること。 避難先として事前に結びついているため、受入れの準備を進めやすい

つまり、実務上の違いは、「公示されるか」と「個別避難計画の避難先として事前に結びつけられるか」にあります。指定福祉避難所の基準に適合する施設であれば、協定のままにしておくより、指定して公示するほうが望ましい、というのがガイドラインの考え方です。

指定する施設とも協定を結ぶ

もう1点、見落としやすい記述があります。ガイドラインは、指定福祉避難所の設置・運営について、次のように書いています。

指定福祉避難所の設置・運営に関して、指定福祉避難所として指定する施設との間で協定を締結しておく。協定には、設置手続き、指定福祉避難所での支援の内容・方法、費用負担等について明確にし、必要な支援を行う。

指定される施設とも、協定を締結しておくとされています。指定は市町村長が行う行為で、受入れの手順や費用などの中身は、協定で決める、という整理です。「指定か協定か」ではなく、指定のうえで協定も結ぶという形があります。協定に入れるものとして挙がっているのは、設置手続き、支援の内容・方法、費用負担などです。費用負担の具体的な金額や割合は、この記事の根拠にした資料には書かれていません。

指定でも協定でも、施設の側で決めておくこと

ここまでの内容から、打診を受けたときに法人の側で確かめておきたい項目を表にまとめます。条文が義務として求めている一覧ではなく、ガイドラインが市町村に求めている取り組みから、施設の側が準備しておくと話が進めやすい項目を抜き出したものです。

項目決めておくこと根拠
指定か協定か打診が、指定(公示される)なのか、協定のみなのか、指定と協定の両方なのか施行規則第1条の7の2、ガイドライン第3章
受入対象者通常業務のサービス対象者、平素の利用者、施設の体制を踏まえて、誰を受け入れる想定か。施設管理者等との調整に法人として応じられるかガイドライン2.2.3
基準への当てはめ要配慮者の円滑な利用の措置、相談・支援を受けられる体制、要配慮者のための居室を、自施設でどこまで確保できるか施行規則第1条の9
入所者への影響特別養護老人ホーム等の入所居住型施設では、受け入れたときに入所者の処遇に甚大な支障が生じないかガイドライン2.2.3
協定の中身設置手続き、支援の内容・方法、費用負担の定め方ガイドライン2.2.3
物資・人材・移送手段要配慮者の支援に必要な物資・器材、専門的な技術を有する人材、移送手段について、関係団体・事業者との間で協議が必要とされていることガイドライン2.2.3
対象外の方への対応公示した受入対象者以外の方が来たときの案内の考え方ガイドライン2.2.4
指定後の変更廃止や重要な変更(滞在の用に供すべき部分の総面積の十分の一以上の増減を伴う変更)のときの届出法第49条の5、施行令第20条の7

特に、入所居住型の施設では、入所者への影響の確認が欠かせません。ガイドラインは次のように書いています。

特別養護老人ホーム等の入所居住型施設については、災害時において指定福祉避難所として利用した場合に、入所者の処遇に甚大な支障が生じないかどうか確認する。

あわせて、ガイドラインは、特別養護老人ホームなどの入所者は、入所先の施設で適切に対応されるべきものとして、原則として指定福祉避難所の受入対象とはしないが、緊急かつ一時的に避難することを妨げるものではない、としています。

法人が自施設の入所者や利用者を守るための計画と、福祉避難所として他の方を受け入れる計画は、別の枠組みです。ただ、どちらも同じ職員、同じ備蓄、同じ電源を使うことになります。自施設分の整理は、介護と障がい福祉のBCPの記事にまとめていますので、先に固めておくと、協定に何を入れるかを考える土台になります。

個別避難計画とのつながり

ガイドラインは、指定福祉避難所と個別避難計画の関係を、次のように書いています。

個別避難計画により、指定福祉避難所へ避難することになっている場合は、最寄りの一般の避難所等ではなく、指定福祉避難所へ直接に避難することとなる。

また、ガイドラインは、市町村が、指定福祉避難所へ直接に避難する者について、地区防災計画や個別避難計画等の作成プロセスを通じて、事前に指定福祉避難所ごとに受入対象者の調整等を行うとしています。受入対象者を特定して公示する場合は、個別避難計画の作成過程を通じて、受入対象者とその家族に十分に周知するとも書かれています。

つまり、受入対象者の特定は、公示だけで完結せず、個別避難計画の作成とつながっています。 前の章で見たとおり、ガイドラインが指定を望ましいとする理由の1つも、個別避難計画で避難先にできることでした。

なお、個別避難計画の作成の仕組みそのものを定めた条文は、この記事の根拠にした範囲には含まれていません。作成の進め方や担当は、この記事では扱いません。法人としては、日ごろ支援している方の避難先がどう検討されているのかを、市町村や関係機関に確かめるところから始めるのがよいと思います。

まとめ

  • 今回確認した災害対策基本法と施行令に「福祉避難所」の語は出てこない。施行令第20条の6の第五号と、施行規則第1条の9の3つの基準が、福祉避難所の基準にあたる
  • 「指定福祉避難所」の定義は、法律ではなく施行規則第1条の7の2第2項にある。公示事項に、受け入れる被災者等を特定する場合はその旨が入る
  • 指定は市町村長が行い、条文上、法人が管理する施設の指定には管理者の同意が必要。指定後の廃止・重要な変更は届出(総面積の十分の一以上の増減を伴う変更が重要な変更)
  • 「協定等による福祉避難所」は、指定していないが、事前の協定等により確保している施設。ガイドラインは、基準に適合するなら指定して公示することが望ましいとする。理由は、公示が義務であることと、個別避難計画で避難先にできること
  • 令和3年の改正で、受入対象者を特定して公示できるようになった。特定は、通常業務のサービス対象者、平素の利用者、施設の体制を踏まえて行い、施設管理者等と調整する
  • ガイドラインは、指定する施設とも協定を締結しておくとしている。協定には、設置手続き、支援の内容・方法、費用負担等を明確にする
  • 打診を受けたら、指定か協定か、受入対象者、基準への当てはめ、入所者への影響、協定の中身、対象外の方への対応、指定後の届出を確かめる

福祉避難所は、法令では「指定避難所の基準の一部」として組み立てられ、実際の受入れの中身は協定で決める、という二層になっています。市町村から打診があったときに、どの条文のどの部分の話をしているのかを自分で確かめられるようにしておくと、法人の側から必要な確認や調整を申し出やすくなります。

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