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社会福祉法人の公益事業|収益事業との違いを条文の構造から読み解く

理事会の前の打合せで、こんな会話になったことはないでしょうか。

「来年度、法人の空きスペースを使って、新しい事業を始めたいという提案が出ています。これは公益事業ですか、収益事業ですか」

「税理士の先生は、前に『収益事業にあたるので届出が要る』と言っていたけれど、あれは社会福祉法の話だったかな」

「いや、あれは税金の話だったと思います。そもそも、社会福祉法の収益事業と税金の収益事業は、同じものなんですか」

この会話の中に、社会福祉法人の公益事業と収益事業が分かりにくい理由が、ほとんど詰まっています。「収益事業」という言葉が、社会福祉法と法人税法の両方に出てくるのです。しかも、それぞれが別の目的で、別の基準で、別の効果をもたらす区分として定められています。法人本部の会話の中で、2つの意味が混ざったまま「収益事業」という言葉が飛び交うことは、珍しくありません。

もうひとつ、よく起きるのが「公益事業の具体例を教えてほしい」という質問です。インターネットで調べると、公益事業の例を並べたページがたくさん見つかります。ただ、例を知っても、自法人の事業が当たるかどうかは判断できません。判断に必要なのは、例の暗記ではなく、条文がどんな縛りを組み込んでいるかを知ることです。

この記事では、社会福祉法の第26条を中心に、第2条・第31条・第57条の原文を読みながら、次の3点を整理します。

  • 第26条第1項が、たった一文の中に「入口」「公益事業」「収益事業」の3つの縛りを同時に書き込んでいること。とくに収益事業は、「儲ける事業」ではなく「収益の使い道で定義された事業」であること
  • 収益の充当先になる公益事業は、すべての公益事業ではなく、括弧書きで絞られていること
  • 会計の区分(第26条第2項)、定款への記載(第31条)、停止命令(第57条)が、第26条第1項の縛りと一対一に対応していること

法人税法の収益事業(34業種)や課税・申告の話は、この記事では扱いません。そちらは社会福祉法人の法人税と収益事業の記事で整理しています。この記事は、社会福祉法の収益事業の話です。 同じ言葉で別のものを指している、という点を最初に押さえてから読み進めてください。

目次

まず結論:条文の構造から言える8つのこと

最初に全体像を示します。以降の章で、1つずつ原文を確認していきます。

  • 社会福祉法人は、その経営する社会福祉事業に支障がない限り、公益事業または収益事業を行うことが「できる」。これは第26条第1項の書き出しにある条件で、いわば入口の縛りである
  • 公益事業は、「公益を目的とする事業」と定義されている。条文は、公益の中身をこれ以上説明していない
  • 収益事業は、「その収益を社会福祉事業若しくは公益事業の経営に充てることを目的とする事業」と定義されている。事業の種類ではなく、収益をどこへ使うつもりかで決まる区分である
  • 収益の充当先になる公益事業は、第2条第4項第4号に掲げる事業その他の政令で定めるものに限られる。すべての公益事業が充当先になるわけではない
  • 公益事業・収益事業の会計は、社会福祉事業の会計から区分して、特別の会計として経理しなければならない(第26条第2項)
  • 公益事業を行う場合の「その種類」、収益事業を行う場合の「その種類」は、定款の記載事項として第31条第1項に挙がっている
  • 所轄庁は、定款で定められた事業以外の事業を行うこと、収益を社会福祉事業・公益事業以外の目的に使うこと、継続が社会福祉事業に支障があること、のいずれかがあると認めるとき、その事業の停止を命ずることができる(第57条)
  • 停止命令の文言上の対象は、公益事業または収益事業である。社会福祉事業そのものは、第57条の柱書には出てこない

同じ「収益事業」という言葉が、2つの法律に出てくる

条文を読む前に、混乱の元になっている点を整理します。

2つの「収益事業」は、別の法律が、別の目的で定めた区分

社会福祉法人が行う事業を、「収益事業」という言葉で分けている法律が2つあります。

1つは、この記事で読む社会福祉法です。第26条第1項が、公益事業と並べて収益事業を定義しています。その定義は、後で見るように「収益の使い道」に着目したものです。

もう1つは法人税法です。こちらは、法人税の課税の対象になる事業の範囲を決めるための区分で、34の業種を列挙する形で組み立てられています。判定の順序や除外規定など、社会福祉法人に関わる読み方は、社会福祉法人の法人税と収益事業の記事で条文ごとに整理しました。

2つの区分は、名前が同じだけで、定めている法律も、目的も、判定の切り口も違います。 社会福祉法の収益事業に当たるかどうかと、法人税法の収益事業に当たるかどうかは、それぞれの条文で別々に判定する必要があります。

なお、この記事では、2つの区分がどう対応するのか(一方に当たる事業が、もう一方にも当たるのか、当たらないのか)を言い切ることはしません。この記事の一次情報は社会福祉法の条文であり、法人税法の条文を読んでいないためです。「別の法律が別の目的で定めた区分なので、それぞれの条文で判定する」。この整理で十分に実務は回ります。

2つの区分を並べる

見る点社会福祉法の収益事業法人税法の収益事業
根拠社会福祉法第26条第1項法人税法とその施行令(記事75で整理)
区分の目的社会福祉法人が社会福祉事業以外の事業を行うときの枠組みを決める法人税の課税の対象になる事業の範囲を決める
判定の切り口その収益を何に充てることを目的とする事業か(収益の使い道)条文に列挙された業種などの基準(記事75で整理)
区分に当たると生じること会計の区分、定款への記載、所轄庁の停止命令の対象になる、といった社会福祉法上の義務や効果法人税の問題として扱われる(記事75で整理)
この記事での扱い本文で条文を読む扱わない(記事75へ)

この表の一番大事な行は、3行目です。社会福祉法の収益事業は、「どんな業種か」ではなく「収益をどこへ使う事業か」で定義されています。 法人税法のほうは業種を列挙する作りだとされていて、判定の切り口がそもそも違います。「税理士に収益事業と言われた事業」を、そのまま社会福祉法の収益事業だと受け取らない、あるいはその逆をしない。これが、2つの法律を行き来するときの基本です。

実務では、判定が2回要る

新しい事業を検討するとき、法人本部で必要になる判定は、少なくとも次の2つに分かれます。

  1. 社会福祉法の上で、その事業は社会福祉事業・公益事業・収益事業のどれとして整理するのか(この記事の範囲)
  2. 税の上で、その事業は法人税法の収益事業に当たるのか(記事75の範囲)

どちらか一方の答えが、もう一方の答えを自動的に決めるとは、ここでは言いません。判定は2回、別々の条文で行う。 会議の議事録に「収益事業」とだけ書くと、どちらの話か分からなくなります。「社会福祉法上の収益事業」「法人税法上の収益事業」と、法律名を付けて書き分けるだけでも、後の混乱はかなり減ります。

第26条第1項は、一文に3つの縛りが入っている

ここから本題です。第26条第1項の全文を引用します。

社会福祉法人は、その経営する社会福祉事業に支障がない限り、公益を目的とする事業(以下「公益事業」という。)又はその収益を社会福祉事業若しくは公益事業(第二条第四項第四号に掲げる事業その他の政令で定めるものに限る。第五十七条第二号において同じ。)の経営に充てることを目的とする事業(以下「収益事業」という。)を行うことができる。

句点が1つしかない長い文です。この一文の中に、次の3つの縛りが同時に書き込まれています。

縛り条文の文言何を決めているか
入口の縛り「その経営する社会福祉事業に支障がない限り」公益事業・収益事業を行ってよい条件
公益事業の定義「公益を目的とする事業」公益事業とは何か
収益事業の定義「その収益を社会福祉事業若しくは公益事業…の経営に充てることを目的とする事業」収益事業とは何か(収益の使い道で決まる)

1つずつ読みます。

縛り1:入口の縛り「社会福祉事業に支障がない限り」

文の書き出しは、「社会福祉法人は、その経営する社会福祉事業に支障がない限り」です。

ここで確認したいのは、公益事業も収益事業も、「行うことができる」と書かれている点です。社会福祉法人に義務づけられた事業ではなく、法人が選んで行える事業として書かれています。そして、その選択には条件が付いています。社会福祉事業に支障がないこと。この条件が、文の先頭に置かれています。

つまり、社会福祉法人にとって、公益事業と収益事業は、社会福祉事業という本来の事業の外側にあるものとして位置づけられています。外側の事業が、内側の事業を圧迫してはならない。条文はそう読めます。

この縛りは、後で見る第57条の第3号に、そのまま形を変えて出てきます。「当該公益事業又は収益事業の継続が当該社会福祉法人の行う社会福祉事業に支障があること」。入口に置かれた縛りが、出口(停止命令)でも使われているのです。

また、「支障がない限り」の判断基準が条文のどこにも書かれていない点も、実務では意識しておく必要があります。何が「支障」に当たるのかは、この記事で使った条文の抜粋からは分かりません。個別の事業計画で迷う場合は、所轄庁に確認することになります。

縛り2:公益事業の定義「公益を目的とする事業」

公益事業は、「公益を目的とする事業」と定義されています(以下「公益事業」という、と括弧書きで名前が付けられています)。

この定義の特徴は、とても短いことです。公益の中身を説明する言葉が、第26条第1項の中にありません。 具体的な事業の種類を列挙する形にもなっていません。事業の「目的」が公益であるかどうか、という一点で定義されています。

「社会福祉法人 公益事業 具体例」と検索しても、これだと言い切れる一覧が見つかりにくいのは、この定義の作りが理由のひとつです。条文自体が具体例を挙げていない以上、事業の一覧を暗記しても、条文に基づいた判定にはなりません。

実務で考えるべきことは、一覧との照合ではなく、「その事業の目的は公益か」「社会福祉事業に支障がないか」「定款に書いてあるか」という、条文の縛りへの当てはめです。当てはめの結果、判断に迷う事業は、所轄庁に相談する。これが条文に沿った進め方です。

縛り3:収益事業の定義は「収益の使い道」

3つ目が、この記事でいちばん強調したい点です。収益事業の定義を、括弧書きを外して読んでみます。

  • 収益事業とは、その収益を社会福祉事業または公益事業の経営に充てることを目的とする事業である

注目してほしいのは、「儲かる事業」「営利を目的とする事業」といった書き方になっていない点です。条文は、収益事業を次のように定義しています。

  • 事業そのものの内容(飲食・販売・貸付など)には触れていない
  • 収益が出ているかどうか、どれだけ出ているかにも触れていない
  • 収益を何に充てることを目的とするかだけで決めている

一般に「収益事業」という言葉からは、物販や賃貸のような、利益を出す事業を想像しがちです。しかし第26条第1項の定義は、事業の外見ではなく、収益の行き先に着目しています。収益を社会福祉事業や公益事業の経営に充てることを目的としている。それが、社会福祉法でいう収益事業です。

この読み方が重要になる理由は、2つあります。

1つ目は、収益の使い道が、事業の定義の一部になっていることです。収益を法人の別の目的に使うなら、それはもう第26条第1項の収益事業の定義から外れる、という構造になっています。この点は、第57条第2号で再び出てきます。

2つ目は、前の章で見た税法上の収益事業との違いです。法人税法の収益事業は、業種を列挙する形で組み立てられています。一方、社会福祉法の収益事業は、収益の使い道で定義されています。同じ名前でも、定義の骨組みがまったく違うことが、ここで分かります。

「目的とする事業」という言葉の読み方

もう少しだけ、文言に注意を向けます。条文は「収益を…充てることを目的とする事業」と書いています。つまり、判定の軸は事業を行う法人の目的です。

この「目的」が、事業を始める前の計画の段階で問われるのか、始めた後の実績で問われるのかは、第26条第1項の文言だけでは分かりません。ただ、後で見る第57条第2号は、「収益事業から生じた収益を…社会福祉事業及び公益事業以外の目的に使用すること」という、実際に収益をどう使ったかを停止命令の事由にしています。目的として掲げた使い道と、実際の使い道が食い違うことは、条文の上で問題にされうる、と読めます。

実務上は、次の2点を最初から記録に残しておくと、後の説明が楽になります。

  • 事業を始めるとき、その収益を何に充てる計画なのかを、理事会の資料などに書いておく
  • 収益が生じたとき、実際に何に充てたのかを、会計の記録とひも付けておく

この2点は、第26条第2項の会計の区分とも関わってきます。次章以降で順に見ます。

収益の充当先になる公益事業は、括弧書きで絞られている

第26条第1項の中で、読み飛ばされやすいのが、収益事業の定義の中にある括弧書きです。もう一度、該当部分だけを取り出します。

社会福祉事業若しくは公益事業(第二条第四項第四号に掲げる事業その他の政令で定めるものに限る。第五十七条第二号において同じ。)の経営に充てることを目的とする事業

収益の充当先は、「社会福祉事業」と「公益事業」の2つですが、公益事業のほうにだけ括弧書きが付いています。

括弧書きの読み方

括弧書きは、次の3つの内容を含んでいます。

  1. 充当先の公益事業は、「第二条第四項第四号に掲げる事業その他の政令で定めるもの」に限られる
  2. 政令で定めるものの中身は、第26条の条文には書かれていない(政令に委任されている)
  3. 「第五十七条第二号において同じ」。第57条第2号の「公益事業」も、同じ限定された意味で使われる

つまり、公益事業全体と、収益の充当先になれる公益事業とは、同じではありません。 前者は「公益を目的とする事業」という広い定義、後者は括弧書きで絞られた範囲です。同じ「公益事業」という言葉が、第26条の中でも、2つの範囲で使われていることになります。

第2条第4項第4号は何を指しているのか

では、括弧書きの最初に出てくる「第二条第四項第四号に掲げる事業」とは何でしょうか。第2条第4項の柱書から読みます。

この法律における「社会福祉事業」には、次に掲げる事業は、含まれないものとする。

第4項は、社会福祉事業に含まれない事業を列挙する項です。その第4号は、次のとおりです。

第二項各号及び前項第一号から第九号までに掲げる事業であつて、常時保護を受ける者が、入所させて保護を行うものにあつては五人、その他のものにあつては二十人(政令で定めるものにあつては、十人)に満たないもの

少し長いので、分解して読みます。

  • 「第二項各号」は、第一種社会福祉事業の列挙です
  • 「前項第一号から第九号まで」は、第3項(第二種社会福祉事業の列挙)の第1号から第9号までです
  • それらに掲げる事業であっても、常時保護を受ける者が、入所させて保護を行うものなら5人、その他のものなら20人(政令で定めるものは10人)に満たないものは、社会福祉事業に含まれない

要するに、第2条第4項第4号は、社会福祉事業の一覧に載っている種類の事業であっても、規模が小さい(保護を受ける者の人数が条文の基準に満たない)ために、社会福祉事業に含まれないものとされた事業を指しています。

括弧書きを、つなげて読む

ここまでを第26条第1項の括弧書きとつなげると、次のような構造が見えてきます。

  • 収益事業の収益は、社会福祉事業の経営に充てることを目的にできる
  • また、公益事業の経営に充てることを目的にもできる。ただし、その公益事業は、第2条第4項第4号の事業(社会福祉事業の種類に当たるが、規模が小さくて社会福祉事業に含まれないもの)か、政令で定めるものに限られる
  • 公益を目的とする事業なら何でも充当先になる、という書き方にはなっていない

この構造は、「収益事業の収益を、法人が自由に使える」わけではないことを示しています。収益の行き先は、社会福祉事業と、限定された範囲の公益事業です。

この限定がどういう意味を持つかは、第57条第2号とあわせて読むと、はっきりします。第57条第2号は、収益事業の収益を「社会福祉事業及び公益事業以外の目的に使用すること」を停止命令の事由にしています。そして第26条第1項の括弧書きが「第五十七条第二号において同じ」と書いているため、第57条第2号の「公益事業」も、括弧書きで限定された範囲で読むことになります。収益の使い道として認められる範囲は、条文の上では、広い意味での公益事業ではなく、絞られた範囲だということです。

政令の中身は、この記事では断定しない

ここで大切な注意があります。括弧書きは「その他の政令で定めるもの」と書いています。政令、つまり社会福祉法施行令の規定の中身は、この記事で使った一次情報に入っていません。

したがって、この記事では次のことを言いません。

  • 政令で定められている事業の具体的な範囲
  • 自法人が行っている(行おうとしている)特定の事業が、収益の充当先として認められる公益事業に当たるかどうか

言えるのは、「充当先の公益事業の範囲は、第2条第4項第4号と政令で決まっていて、公益を目的とする事業全般ではない」というところまでです。具体的な事業が当たるかどうかは、社会福祉法施行令の規定と、所轄庁の解釈を確認する必要があります。

実務への影響

この絞り込みは、収益事業を検討するときの設計に影響します。たとえば、収益事業で得た収益を何に充てる計画なのかを説明する場面では、次の順序で考えることになります。

  1. 収益の充当先は、社会福祉事業か、公益事業か
  2. 公益事業なら、それは括弧書きの範囲(第2条第4項第4号の事業、または政令で定めるもの)に入るか
  3. 入るかどうか判断できないときは、所轄庁に確認する

社会福祉事業に充てる計画なら、2番目の確認は不要です。収益事業の収益の行き先を、社会福祉事業にするのか、公益事業にするのか。その選び方によって、確認すべきことが変わる、という整理になります。

第26条第2項:会計を区分して、特別の会計として経理する

第26条の第2項は、1行の条文です。

公益事業又は収益事業に関する会計は、それぞれ当該社会福祉法人の行う社会福祉事業に関する会計から区分し、特別の会計として経理しなければならない。

「できる」ではなく「しなければならない」と書かれています。公益事業や収益事業を行う以上、会計の区分は選択ではなく義務です。

3つの読みどころ

この条文には、見落としやすい点が3つあります。

  1. 「それぞれ」:公益事業の会計と収益事業の会計は、それぞれ社会福祉事業の会計から区分されます。公益事業と収益事業を一緒にして1つの別会計にする、という書き方にはなっていません。社会福祉事業の会計に対して、公益事業の会計、収益事業の会計が、それぞれ分かれるという読み方になります
  2. 「特別の会計として」:社会福祉事業の会計の中の一項目として処理するのではなく、独立した会計として経理することを求めています
  3. 「経理しなければならない」:区分は帳簿の上での工夫ではなく、経理の義務です

会計の区分が、条文のほかの縛りを支えている

会計の区分は、第26条第1項の縛りを実際に確認する土台になります。

  • 「社会福祉事業に支障がない」かどうかを説明するには、公益事業・収益事業が社会福祉事業とは別に、どれだけの収入と支出を生んでいるかが見えている必要があります
  • 「収益を社会福祉事業・公益事業に充てる」ことを示すには、収益がいくら生じて、どこへ使われたかが追える必要があります(第57条第2号の事由の有無を説明する場面でも同じです)

会計が区分されていなければ、これらの説明はできません。第26条第2項は、第1項の縛りを実際に運用するための、実務上の土台だと位置づけられます。

拠点区分・サービス区分との関係

社会福祉法人の会計には、社会福祉事業の中でも、拠点区分やサービス区分という区分の考え方があります。この区分の考え方は、拠点区分とサービス区分の記事で整理しています。

ここで注意したいのは、この記事で使った条文の抜粋には、第26条第2項の「特別の会計」を、具体的にどの会計単位(拠点区分など)で経理するのかは書かれていないことです。会計基準上の具体的な単位や勘定科目の扱いは、この記事では断定しません。公益事業や収益事業を始める際の会計の設計は、会計基準の規定と、顧問の税理士・会計士の助言、所轄庁の指導を確認しながら進めてください。

実務の感覚としては、「社会福祉事業の会計に、公益事業や収益事業の取引が紛れ込まない」状態を、日々の仕訳の段階から作っておくことが、後の説明を軽くします。

第31条:定款に「その種類」を書く

次は、定款との関係です。第31条は、社会福祉法人を設立するときの定款の記載事項を定めています。柱書を引用します。

社会福祉法人を設立しようとする者は、定款をもつて少なくとも次に掲げる事項を定め、厚生労働省令で定める手続に従い、当該定款について所轄庁の認可を受けなければならない。

この条文は、設立のときの定款について書かれたものです。「少なくとも次に掲げる事項を定め」とある、その必要的記載事項の中に、公益事業と収益事業が出てきます。

公益事業を行う場合には、その種類

収益事業を行う場合には、その種類

(第31条第1項の第11号と第12号です。)

「行う場合には」という書き方

この2つの号には、共通点があります。どちらも「行う場合には、その種類」という書き方です。

  • 公益事業や収益事業を行わない法人は、この2つの号に書くことは求められていない
  • 公益事業や収益事業を行う法人は、その種類を定款に書く

つまり、公益事業や収益事業は、法人が行うかどうかを選べる事業であり、行うと決めたら、その種類が定款の記載事項に加わる構造です。これは、第26条第1項が「行うことができる」と書いていることと整合しています。

「その種類」をどの程度の細かさで書くのかは、第31条の文言からは分かりません。定款の記載の仕方は、所轄庁が示すひな形や、定款変更の手続の中で確認することになります。

定款に書いていない事業を行うと、どうなるか

定款の記載が、事業の開始に先行する条件になっていることは、第57条から読み取れます。第57条第1号は、停止命令の事由として次のように書いています。

当該社会福祉法人が定款で定められた事業以外の事業を行うこと。

つまり、定款で定められた事業以外の事業を行うこと自体が、停止命令の事由に挙がっています。 公益事業や収益事業を始めたいときは、その種類が定款に書かれていることが前提になる、という順序が条文から読めます。

この順序を実務に落とすと、次のようになります。

  1. 新しい事業の検討を始める
  2. その事業が、社会福祉法上、公益事業・収益事業のどれにあたるのかを整理する
  3. 定款に、その種類が書かれているかを確認する
  4. 書かれていなければ、事業を始める前に、定款を変更する手続を進める
  5. 手続が済んでから、事業を始める

設立時の規定と、設立後の定款変更

ここで、正確さのために断っておくことがあります。第31条が定めているのは、法人を設立するときの定款です。すでに設立されている法人が、あとから公益事業や収益事業を加えるときは、定款の変更という手続になります。

定款の変更の手続(認可が要るのか、届出で足りるのか、どの場合にどちらなのか、など)を定めた条文は、この記事で使った一次情報に含まれていません。したがって、この記事では、変更手続の中身を言い切りません。定款変更の手続の流れと必要書類は、社会福祉法人の定款変更手続きの記事で整理しています。

この記事で言えるのは、次の2点です。

  • 公益事業や収益事業の種類は、定款の記載事項である(第31条第1項第11号・第12号)
  • 定款で定められた事業以外の事業を行うと、停止命令の事由になる(第57条第1号)

したがって、事業を始める前に、定款の記載を確認し、必要なら変更の手続を踏む。この順序は、条文の構造から導けます。

第57条:守らないと「事業の停止を命ずる」

ここまで見てきた縛りが、実際に効いてくるのが第57条です。柱書を引用します。

所轄庁は、第二十六条第一項の規定により公益事業又は収益事業を行う社会福祉法人につき、次の各号のいずれかに該当する事由があると認めるときは、当該社会福祉法人に対して、その事業の停止を命ずることができる。

読みどころは、次の3つです。

  1. 「所轄庁は…命ずることができる」:命令するかどうかは所轄庁の判断です。「命ずる」と決まっているわけではなく、「命ずることができる」という書き方です
  2. 「次の各号のいずれかに該当する事由があると認めるとき」:3つの事由のうち、1つでも該当すれば足ります。そして、該当するかどうかは所轄庁が「認める」ことで判断されます
  3. 「その事業の停止」:停止の対象は、「その事業」です。柱書の主語は、第26条第1項の規定により公益事業または収益事業を行う社会福祉法人であり、停止されるのは公益事業または収益事業です

停止されるのは、公益事業・収益事業

3つ目の点は、法人本部の方が気にされるところです。第57条の柱書には、社会福祉事業は出てきません。 停止命令の対象として読めるのは、公益事業または収益事業のほうです。

法人が行う社会福祉事業(特別養護老人ホームや障がい福祉サービスなどの本来事業)の停止を、第57条が定めているわけではありません。この点を整理すると、公益事業・収益事業の「外側の事業」という位置づけが、出口でも一貫していることが分かります。外側の事業が基準を外れたら、外側の事業だけが止められる。内側の本来事業を守るための仕組みとして、読むことができます。

ただし、これは第57条の読みであり、法人に対する所轄庁の監督権限は、第56条にも別に書かれています。第56条との関係は、次章で整理します。

3つの事由

3つの号を1つずつ見ます。

当該社会福祉法人が定款で定められた事業以外の事業を行うこと。

第1号:定款外の事業。 先に見たとおり、定款に書かれていない事業を行うことが事由です。第31条の記載事項と、直接対応しています。

当該社会福祉法人が当該収益事業から生じた収益を当該社会福祉法人の行う社会福祉事業及び公益事業以外の目的に使用すること。

第2号:収益の目的外使用。 収益事業から生じた収益を、社会福祉事業と公益事業以外の目的に使うことが事由です。この号の「公益事業」は、第26条第1項の括弧書きにより、第2条第4項第4号の事業その他の政令で定めるものに限られる意味で読みます。収益事業を「収益の使い道で定義された事業」としている第26条第1項の定義と、直接対応しています。

当該公益事業又は収益事業の継続が当該社会福祉法人の行う社会福祉事業に支障があること。

第3号:社会福祉事業への支障。 公益事業や収益事業の継続が社会福祉事業に支障を与えることが事由です。第26条第1項の入口の縛り「社会福祉事業に支障がない限り」と、直接対応しています。

第26条・第31条と、第57条の対応

3つの事由と、これまで見てきた条文の縛りを並べると、きれいに対応していることが分かります。

第57条の事由対応する条文の縛り何を問われるか
第1号:定款で定められた事業以外の事業を行う第31条第1項第11号・第12号(定款の記載事項)事業の種類が定款に書かれているか
第2号:収益を社会福祉事業・公益事業以外の目的に使用する第26条第1項の収益事業の定義(収益の使い道)と、その括弧書き収益を実際に何に使ったか
第3号:継続が社会福祉事業に支障がある第26条第1項の入口の縛り(社会福祉事業に支障がない限り)外側の事業が本来事業を圧迫していないか

第26条第1項と第31条で、事業を始める前に守るべき縛りが定められ、第57条が、始めた後にその縛りが守られているかを事後の確認として定めている。そのように読むことができます。

この対応関係を知っておくと、法人本部の点検の観点が整理できます。公益事業・収益事業を行う法人は、少なくとも次の3つを、定期的に点検する必要があります。

  • 行っている事業の種類は、すべて定款に書かれているか(第1号)
  • 収益事業の収益は、社会福祉事業か、限定された範囲の公益事業にしか使っていないか(第2号)
  • 外側の事業の負担が、社会福祉事業の運営を圧迫していないか(第3号)

第2号は、「収益事業」にだけかかる

第57条の3つの号のうち、第2号だけは、「当該収益事業から生じた収益」と書かれており、収益事業に限った事由です。第1号と第3号は、公益事業も収益事業も対象になりえます(第3号は「当該公益事業又は収益事業」と書かれています)。

この違いも、第26条第1項の構造と整合しています。収益事業は「収益の使い道」で定義されているので、使い道が問題にされるのは収益事業のほうです。公益事業は「公益を目的とする事業」と定義されていて、収益の使い道という要素を含んでいません。

「できる」規定であることの意味

第57条は「命ずることができる」という規定で、停止命令を出すかどうかは所轄庁の判断に委ねられています。ただ、これは「事由があっても停止されない」という意味ではありません。事由がある法人は、所轄庁が命令を出しうる立場に置かれている、という意味です。

また、事由があるかどうかは、所轄庁が「認める」ことで判断されます。どの程度の事実があれば事由に当たるのか(たとえば、収益の一部を他の目的に使った場合はどうか、など)は、この記事で使った条文の抜粋からは分かりません。個別の判断は、所轄庁に確認が必要です。

第56条との違い:事業の停止と、法人への監督

第57条の停止命令は、公益事業・収益事業に特化した規定です。これに対して、第56条は、社会福祉法人全体に対する所轄庁の監督の規定です。記事の文脈に合う範囲で、両者の違いを整理しておきます。

第56条は、段階的な構造になっています。

  • 第1項:業務や財産の状況について、報告をさせ、または職員に立入検査をさせることができる
  • 第4項:法令、行政庁の処分、定款に違反し、またはその運営が著しく適正を欠くと認めるときは、期限を定めて、改善のために必要な措置をとるべき旨を勧告することができる
  • 第6項:勧告を受けた法人が、正当な理由がないのに措置をとらなかったときは、期限を定めて、その措置をとるべき旨を命ずることができる
  • 第7項:命令に従わないときは、期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命じ、または役員の解職を勧告することができる

第7項を引用します。

社会福祉法人が前項の命令に従わないときは、所轄庁は、当該社会福祉法人に対し、期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命じ、又は役員の解職を勧告することができる。

2つの停止命令の違い

第56条第7項の停止命令と、第57条の停止命令は、次の点で違います。

比べる点第57条の停止命令第56条第7項の業務停止命令
対象になる法人第26条第1項により公益事業・収益事業を行う社会福祉法人社会福祉法人全般
停止の対象その事業(公益事業または収益事業)業務の全部若しくは一部
事由定款外の事業、収益の目的外使用、社会福祉事業への支障(3つのいずれか)勧告、命令の順を経て、命令に従わないこと
段階事由があると認めるときに、直接命ずることができる勧告、命令、停止の順に進む

第57条は、勧告や命令を経ずに、事由があると認めるときに、停止を命ずることができる書き方になっています。公益事業・収益事業については、手前の段階を挟まずに、停止命令の対象になりうる構造です。この点は、第26条第1項の縛りを守ることの重みを示しています。

なお、第56条にはこのほか、解散の命令(第8項)なども書かれています。ただ、それらは公益事業・収益事業に固有の規定ではないため、この記事では詳しく扱いません。

判断の分かれ目を、1つの表にまとめる

ここまでの条文の読みを、新しい事業を検討するときの順序で整理します。事業案が出たときに、法人本部が確認する観点です。

確認する観点根拠の条文確認の中身判断がつかないとき
社会福祉事業に支障がないか第26条第1項(入口の縛り)、第57条第3号外側の事業の負担が、本来事業の運営を圧迫しないか所轄庁に相談する
公益事業か収益事業か第26条第1項(定義)公益を目的とするのか、収益を社会福祉事業・公益事業に充てることを目的とするのか目的を文章にして、理事会で確認する
収益の行き先は認められる範囲か第26条第1項の括弧書き、第2条第4項第4号、政令公益事業に充てるなら、括弧書きの範囲に入るか施行令と所轄庁の解釈を確認する
会計を区分できるか第26条第2項社会福祉事業の会計から区分した、特別の会計を用意できるか会計の設計を顧問の専門家と詰める
定款に種類が書かれているか第31条第1項第11号・第12号、第57条第1号事業の種類が定款に書かれているか書かれていなければ、始める前に定款変更の手続を進める
税の判定は済んでいるか法人税法(記事75)法人税法の収益事業に当たるかどうか(別途判定)記事75で確認する

この表の最後の行が、「2回の判定」の2回目に当たります。表の上5行が社会福祉法の話、最後の1行が税の話であり、それぞれ別の判定です。

迷いやすい点を、先に潰しておく

条文の構造から、次のような質問に対して、どう考えればよいかを整理しておきます。

「収益事業だから、収益は法人の自由に使えるのでは」
収益事業は、収益を社会福祉事業・公益事業に充てることを目的とする事業として定義されています(第26条第1項)。そして、収益事業から生じた収益を社会福祉事業・公益事業以外の目的に使うと、停止命令の事由になります(第57条第2号)。条文の上では、自由に使える構造にはなっていません。

「公益事業なら、何をしても収益の使い道に認められるのでは」
充当先の公益事業は、括弧書きで、第2条第4項第4号の事業その他の政令で定めるものに限られています。公益を目的とする事業全般ではありません。

「定款は、事業を始めてから直せばよいのでは」
第57条第1号は、定款で定められた事業以外の事業を行うことを、停止命令の事由にしています。定款に書かれていない状態で事業を行うこと自体が問題になりうるため、定款の確認は事業の開始より前に行います。

「公益事業・収益事業が止められたら、法人全体が止まるのでは」
第57条の柱書が停止の対象にしているのは、「その事業」、つまり公益事業または収益事業です。社会福祉事業そのものは、第57条の停止の対象として書かれていません。ただし、第56条には法人全体に対する別の監督の規定があるため、「第57条に注意すれば、他に注意することはない」というわけではありません。

事業案を、条文の順に当てはめてみる

ここで、判断の順序を具体的に確かめておきます。以下は、特定の事業を想定したものではなく、「事業案が1つ上がってきた」という場面を、条文の順に追う手順の例です。どの事業が公益事業・収益事業に当たるかを断定する例ではありません。 あくまで、問いを立てる順番を示すものです。

手順1:その事業の目的を、1文で書く

最初にやることは、事業の内容の説明ではなく、目的を1文で書くことです。

  • 「地域の住民のために、〇〇を提供する」のように、公益を目的としている文になるか
  • 「この事業の収益を、〇〇に充てる」のように、収益の使い道を言い切れる文になるか

前者の文になるなら公益事業の定義(公益を目的とする事業)に、後者の文になるなら収益事業の定義(収益を充てることを目的とする事業)に、それぞれ近づきます。どちらの文も書けない事業案は、第26条第1項の枠組みに載せる前に、目的を整理し直す必要があります。目的が1文にならない事業案は、後の判断がすべて曖昧になります。

手順2:収益の使い道に「充当先」を書く

収益事業として整理する場合は、収益の使い道を、次の2つのどちらに当たるかで書き分けます。

  • 社会福祉事業の経営に充てる
  • 公益事業の経営に充てる(この場合は、その公益事業が括弧書きの範囲に入るかの確認が加わる)

「法人の運営全般に充てる」「将来のために積み立てる」のような書き方は、条文の定義の言葉とは一致しません。そう書かざるをえない事業案は、収益の使い道が第26条第1項の定義に収まるのか、所轄庁に確認する必要があります。

手順3:社会福祉事業への影響を、先に洗い出す

入口の縛り(社会福祉事業に支障がない限り)を確認するために、次の点を書き出しておきます。

  • その事業のために、本来事業の職員の時間を使うか
  • その事業のために、本来事業で使っている場所や設備を使うか
  • その事業が止まったり、規模が変わったりしたとき、本来事業に影響が出るか

「支障」の基準は条文に書かれていないので、これらは判断の材料を揃える作業です。材料があれば、所轄庁に相談するときの話が早くなります。

手順4:定款と会計を確認する

最後に、定款と会計を確認します。

  • 定款のどこに、その事業の種類が書かれているか(書かれていなければ、事業の開始前に変更手続を検討する)
  • 特別の会計をどこに作るか(社会福祉事業の会計と、取引が混ざらないか)

議事録には、書き分けて残す

この4つの手順の結果は、理事会などの議事録や資料に、書き分けて残しておくと役に立ちます。たとえば、次のように項目を分けます。

項目記載例の考え方
社会福祉法上の整理公益事業か収益事業か、その理由(目的を1文で)
収益の充当先社会福祉事業か公益事業か
社会福祉事業への影響洗い出した点と、その見立て
定款との関係該当する条項、または変更の予定
会計の区分特別の会計の場所
税の整理法人税法上の整理は別途記載(記事75の領域)

議事録に「収益事業」とだけ書かれていると、数年後に読み返したとき、社会福祉法の話なのか税の話なのかが分からなくなります。上の表のように項目を分けておけば、2つの判定が別々に行われたことが、記録としても残ります。

準備を軽くする打ち手

条文の縛りは、どれも「記録がそろっていれば説明できる」性質のものです。事業を始めるときも、始めた後も、法人本部の記録の持ち方を整えておくと、点検の負担がかなり軽くなります。

事業ごとに「一枚の台帳」を作る

公益事業・収益事業を行う(または検討する)ごとに、次の項目を1つの台帳にまとめておきます。

項目記録する内容対応する条文
事業の名称・内容何を行う事業か第26条第1項
区分公益事業か、収益事業か(社会福祉法上の整理)第26条第1項
区分の理由公益を目的とする、または、収益を何に充てることを目的とするか第26条第1項
収益の充当先社会福祉事業か、公益事業か(公益事業なら、括弧書きの範囲に入る根拠)第26条第1項の括弧書き
社会福祉事業への影響人員・場所・時間などの面で、本来事業に支障が出ていないかの確認記録第26条第1項、第57条第3号
定款上の記載定款のどの条項に、その種類が書かれているか第31条第1項、第57条第1号
会計の区分特別の会計として経理している帳簿の場所第26条第2項
税の判定法人税法上の整理(別途判定)記事75
理事会などの決議事業の開始や変更を決めた会議の記録運営上の記録

最後の「理事会などの決議」の行は、条文に直接書かれた項目ではなく、運営上の記録として挙げたものです。ただ、事業の目的と収益の使い道を会議の資料に残しておけば、第57条の各号を後から説明するときの根拠として役立ちます。

年に一度、3つの観点で点検する

第57条の3つの事由に対応して、年度の区切りに次の点検を行います。

  • [ ] 行っている公益事業・収益事業の種類が、すべて定款に書かれているか
  • [ ] 収益事業から生じた収益が、社会福祉事業または限定された範囲の公益事業にだけ使われているか
  • [ ] 公益事業・収益事業の継続が、社会福祉事業の運営に支障を与えていないか
  • [ ] 公益事業・収益事業の会計が、社会福祉事業の会計から区分され、特別の会計として経理されているか
  • [ ] 社会福祉法上の整理と、法人税法上の整理が、別々に記録されているか

会計の区分を、日々の記録の段階で作っておく

条文の縛りの多くは、会計の区分が前提です。決算の時点で慌てて区分するのではなく、日々の入力の段階で、取引がどの事業に属するのかを記録できる状態にしておくと、年に一度の点検が軽くなります。

  • 取引を入力するときに、事業の区分を選べるようにしておく
  • 収益事業の収益が生じたとき、充当先がひも付けられるようにしておく
  • 台帳の項目と、会計の記録とが、相互に参照できるようにしておく

こうした記録の持ち方は、拠点区分やサービス区分の整理とも同じ発想です。考え方は、拠点区分とサービス区分の記事も参考にしてください。

この記事で書いていないこと

一次情報の範囲を守るために、この記事では次の点を扱っていません。この記事で使った条文の抜粋(社会福祉法の第2条・第26条・第31条・第56条から第59条)に含まれていない、または別の記事の領域だからです。

  • 法人税法の34業種、課税・非課税の判定、申告の方法(記事75の領域)
  • 社会福祉法の収益事業と、法人税法の収益事業との対応関係
  • 社会福祉法施行令が定める、収益の充当先になる公益事業の具体的な範囲
  • 公益事業・収益事業の具体的な事業の一覧や、個別の事業(飲食・販売・貸付など)が当たるかどうかの判断
  • 「社会福祉事業に支障がない」と判断される具体的な基準
  • 定款変更の手続(認可か届出かの区別、必要書類、期限)
  • 「特別の会計」を、具体的にどの会計単位・勘定科目で経理するかの規定
  • 消費税の扱い
  • 第58条(国・地方公共団体による助成)、第59条(所轄庁への届出)の詳細

これらは、所轄庁の案内、社会福祉法施行令の規定、会計基準、顧問の専門家の助言で確認してください。

まとめ

  • 「収益事業」という言葉は、社会福祉法と法人税法の両方にあるが、別の法律が別の目的で定めた区分である。それぞれの条文で、別々に判定する
  • 第26条第1項は、一文に3つの縛り(社会福祉事業に支障がないこと、公益事業は公益を目的とすること、収益事業は収益の使い道で定義されること)を書き込んでいる
  • 社会福祉法の収益事業は、「儲ける事業」ではなく、「その収益を社会福祉事業若しくは公益事業の経営に充てることを目的とする事業」である
  • 収益の充当先になる公益事業は、第2条第4項第4号の事業その他の政令で定めるものに限られる。政令の具体的な中身は、条文を確認する必要がある
  • 公益事業・収益事業の会計は、社会福祉事業の会計から区分し、特別の会計として経理しなければならない(第26条第2項)
  • 公益事業・収益事業を行う場合のその種類は、定款の記載事項(第31条第1項第11号・第12号)。定款外の事業を行うことは、停止命令の事由になる
  • 所轄庁は、定款外の事業、収益の目的外使用、社会福祉事業への支障のいずれかがあると認めるとき、その事業の停止を命ずることができる(第57条)。第57条の3つの事由は、第26条第1項・第31条の縛りと対応している

公益事業と収益事業の実務は、突き詰めると「その事業の目的は何か、収益はどこへ使ったか、定款と会計に記録があるか」を、いつでも説明できる状態にしておくことに行き着きます。税の側の整理は社会福祉法人の法人税と収益事業、定款の側の手続は社会福祉法人の定款変更手続き、会計の区分の考え方は拠点区分とサービス区分の記事で、あわせてお読みください。

参考にした一次情報

  • 社会福祉法 第二条(定義。第四項第四号)
  • 社会福祉法 第二十六条(公益事業及び収益事業)
  • 社会福祉法 第三十一条(申請。第一項第十一号・第十二号)
  • 社会福祉法 第五十六条(監督)
  • 社会福祉法 第五十七条(公益事業又は収益事業の停止)
  • 社会福祉法 第五十八条(助成等)、第五十九条(所轄庁への届出)は、本文では詳しく扱っていない
  • 社会福祉法|e-Gov法令検索

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