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社会福祉法人の決算スケジュール|3か月以内の締切根拠を条文で確認

「決算は6月末までに終わらせておけばいいですよね」

法人本部で決算まわりの実務を担当していると、この一言を何度も耳にします。半分は正しく、半分は危ういお答えです。正しいのは、多くの法人が計算書類の理事会承認から定時評議員会での承認までを、会計年度末から3か月以内に収めているという実態。危ういのは、「決算」と一括りに呼んでいる作業の中に、根拠となる条文が別々の、複数の締切が同居していることです。

計算書類等の作成にも、財産目録等の作成・備置きにも、所轄庁への届出にも、「毎会計年度終了後三月以内」という同じ言葉が出てきます。ところが資産の総額の変更登記だけは、社会福祉法ではなく組合等登記令という別の政令が根拠で、しかも同じ登記令の中でも変更登記の原則は「2週間以内」、資産の総額だけが例外的に「3月以内」です。公表にいたっては期限そのものがなく、「届出をしたとき遅滞なく」という定め方をされています。

この記事では、「決算」という一語でまとめられがちな作業を、根拠条文ごとに切り分けて整理します。とくに、計算書類の理事会承認から定時評議員会まで、なぜ最低でも2週間空けなければならないのかは、登記や届出の期限からではなく、計算書類等の備置きの規定から出てくるという、見落とされがちな順序を丁寧に見ていきます。

「決算」は一つの締切ではなく、根拠の違う締切の束

まず、会計年度終了後に発生する主な締切を、根拠条文とあわせて並べてみます。

締切期限根拠
計算書類・事業報告・附属明細書の作成毎会計年度終了後3月以内法第45条の27第2項
財産目録等の作成・備置き毎会計年度終了後3月以内法第45条の34第1項
所轄庁への届出毎会計年度終了後3月以内法第59条
資産の総額の変更登記毎事業年度末日から3月以内組合等登記令第3条第3項
公表届出をしたとき遅滞なく(期限日数の定めなし)法第59条の2第1項第3号

条文を確認します。計算書類等の作成は第45条の27第2項です。

社会福祉法人は、毎会計年度終了後三月以内に、厚生労働省令で定めるところにより、各会計年度に係る計算書類(貸借対照表及び収支計算書をいう。以下この款において同じ。)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。

計算書類の作成・保存についてはこちらの記事でも詳しく整理していますが、ここで押さえておきたいのは「毎会計年度終了後三月以内」という起算点は、会計年度が終わった日から数えるということです。

財産目録等は第45条の34第1項です。

社会福祉法人は、毎会計年度終了後三月以内に(社会福祉法人が成立した日の属する会計年度にあつては、当該成立した日以後遅滞なく)、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる書類を作成し、当該書類を五年間その主たる事務所に、その写しを三年間その従たる事務所に備え置かなければならない。

ここでいう「次に掲げる書類」とは、①財産目録、②役員等名簿(理事、監事及び評議員の氏名及び住所を記載した名簿)、③報酬等の支給の基準を記載した書類、④事業の概要その他の厚生労働省令で定める事項を記載した書類、の4点です。財産目録の中身については別記事で扱っていますが、この記事で押さえておきたいのは期限が計算書類等とまったく同じ「毎会計年度終了後三月以内」だという点です。

所轄庁への届出は第59条です。

社会福祉法人は、毎会計年度終了後三月以内に、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる書類を所轄庁に届け出なければならない。

届け出る書類は、第45条の32第1項に規定する計算書類等と、第45条の34第2項に規定する財産目録等の2種類です。「作成する期限」と「届け出る期限」が、どちらも同じ会計年度終了後3月以内に設定されているため、実務上はほぼ同じタイミングで動くことになります。

登記だけは根拠となる法令が違い、期限も原則と例外に分かれる

資産の総額の変更登記だけは、社会福祉法ではなく組合等登記令が根拠です。この政令は社会福祉法人に限らず「組合等」と呼ばれる各種法人に共通して適用されるため、条文の書きぶりも社会福祉法とは違います。原則は第3条第1項です。

組合等において前条第二項各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その主たる事務所の所在地において、変更の登記をしなければならない。

変更登記の原則は「2週間以内」。ところが資産の総額の変更登記だけは、第3項で例外扱いになっています。

第一項の規定にかかわらず、資産の総額の変更の登記は、毎事業年度末日現在により、当該末日から三月以内にすれば足りる。

同じ登記令の中に、2週間以内が原則、資産の総額だけ3月以内という2つの期限が同居しているわけです。理事や監事の交代など多くの変更登記は2週間以内に迫られるのに対し、資産の総額の変更登記だけは決算の締切と歩調を合わせて3月以内でよいことになっています。起算点も「変更が生じたとき」ではなく「毎事業年度末日現在」である点に注意してください。

公表には期限日数がない。「届出をしたとき遅滞なく」

計算書類等・財産目録等・届出の3つが「3月以内」で足並みを揃えているのに対し、公表だけは違う定め方をされています。第59条の2第1項の柱書です。

社会福祉法人は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、遅滞なく、厚生労働省令で定めるところにより、当該各号に定める事項を公表しなければならない。

決算に関わる公表は、この条文の第1項第3号にあたります。同号は「前条(第59条)の規定による届出をしたとき」に、届け出た書類のうち厚生労働省令で定めるものの内容を公表する、と定めています。「何日以内に」という日数の期限がなく、届出という別の行為の後に「遅滞なく」続くように設計されているのがポイントです。届出を後回しにすれば、公表もその分だけ後ろにずれます。

理事会と定時評議員会を2週間空けるのは、登記でも届出でもなく「備置き」の規定から

ここまでの4つの締切(作成・届出・登記・公表)は、いずれも会計年度終了後どれくらいの期間で「何かを終わらせるか」という話でした。もう一つ、実務でよく質問されるのが「なぜ計算書類の承認理事会から定時評議員会まで、最低でも2週間は空けなければならないのか」です。

答えは、登記や届出の期限にはありません。計算書類等の備置きに関する第45条の32第1項です。長い条文なので、後半部分を引用します。

定時評議員会の日の二週間前の日(第四十五条の九第十項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百九十四条第一項の場合にあつては、同項の提案があつた日)から五年間、その主たる事務所に備え置かなければならない。

計算書類等は、定時評議員会の日の2週間前から主たる事務所に備え置かなければなりません。ところが備え置く計算書類等は、まだ理事会の承認を受けていないものを置くわけにはいきません。承認理事会の根拠は第45条の28第3項です。

第一項又は前項の監査を受けた計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、理事会の承認を受けなければならない。

「承認理事会 → 備置き開始(定時評議員会の2週間前)→ 定時評議員会」という順序は、この2つの条文を組み合わせて初めて出てくるものです。「2週間空ける」という運用ルールだけを覚えていても、根拠を知らなければ「なぜ理事会だけ早めに開かなければならないのか」という質問に答えられません。理事会と評議員会それぞれの役割や運営の詳細は理事会と評議員会の記事で整理していますが、この記事では日程を決める根拠として押さえておいてください。

監査→承認→提供→評議員会、書類が受け渡される順序

計算書類・事業報告が定時評議員会にたどり着くまでには、決まった受け渡しの順序があります。まず監査です。第45条の28第1項です。

前条第二項の計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、厚生労働省令で定めるところにより、監事の監査を受けなければならない。

ただし、会計監査人設置社会福祉法人では取扱いが分かれます。同条第2項により、計算書類とその附属明細書は監事及び会計監査人の監査、事業報告とその附属明細書はこれまでどおり監事の監査を受けます。

監査を終えると、前章で確認した第45条の28第3項により理事会の承認を受けます。承認された計算書類・事業報告は、招集通知にあわせて評議員へ提供されます。第45条の29です。

理事は、定時評議員会の招集の通知に際して、厚生労働省令で定めるところにより、評議員に対し、前条第三項の承認を受けた計算書類及び事業報告並びに監査報告(同条第二項の規定の適用がある場合にあつては、会計監査報告を含む。)を提供しなければならない。

そして定時評議員会本番です。第45条の30は、計算書類と事業報告を分けて書いています。

理事は、第四十五条の二十八第三項の承認を受けた計算書類及び事業報告を定時評議員会に提出し、又は提供しなければならない。

前項の規定により提出され、又は提供された計算書類は、定時評議員会の承認を受けなければならない。

理事は、第一項の規定により提出され、又は提供された事業報告の内容を定時評議員会に報告しなければならない。

「監事(・会計監査人)の監査 → 理事会の承認 → 招集通知にあわせて評議員へ提供 → 定時評議員会へ提出 → 承認(計算書類)・報告(事業報告)」、条文はこの順序どおりに書かれています。途中の1つでも抜けると、次の行為の前提が崩れる作りになっています。

計算書類は「承認」、事業報告は「報告」。会計監査人設置法人はさらに例外がある

前章の引用で気づかれたかもしれませんが、計算書類は定時評議員会の「承認」を受ける一方、事業報告はもとから「報告」で足ります。第45条の30第3項が「報告しなければならない」と書いているとおりで、これは会計監査人の有無にかかわらず共通です。

一方、計算書類のほうにも「報告」で足りる例外があります。会計監査人設置社会福祉法人に関する第45条の31です。

会計監査人設置社会福祉法人については、第四十五条の二十八第三項の承認を受けた計算書類が法令及び定款に従い社会福祉法人の財産及び収支の状況を正しく表示しているものとして厚生労働省令で定める要件に該当する場合には、前条第二項の規定は、適用しない。この場合においては、理事は、当該計算書類の内容を定時評議員会に報告しなければならない。

厚生労働省令で定める要件に該当する場合に限り、計算書類も「承認」ではなく「報告」で足ります。会計監査人設置法人であっても、この要件を満たさない限りは通常どおり計算書類の承認が必要になる点にご注意ください。「会計監査人を置いているから自動的に報告でよい」という理解は正確ではありません。

事業報告(常に報告)と計算書類(原則承認・要件を満たせば報告)を混同している法人様は少なくありません。定時評議員会の議案書を作るときは、この2つを同じ扱いで書かないよう注意してください。

日程の一例(3月末決算・6月に定時評議員会を開く場合)

ここまでは条文から導かれる順序と期限の話でした。ここからは、その順序に沿って組んだ日程の一例です。実際の開催日は法人ごとに違いますので、あくまで一例として読んでください。

時期内容
3月31日会計年度末(事業年度末日)
4月〜5月中旬監事(・会計監査人)の監査
5月中旬承認理事会(計算書類・事業報告・附属明細書の承認)
定時評議員会の2週間前計算書類等を主たる事務所に備置き開始。招集通知にあわせて評議員へ計算書類等を提供
6月中旬定時評議員会(計算書類の承認・事業報告の報告)
6月末(会計年度終了後3月以内)財産目録等の作成・備置き、所轄庁への届出、資産の総額の変更登記
届出後、遅滞なく公表

表の中で法令上の期限そのものにあたるのは「定時評議員会の2週間前」と「会計年度終了後3月以内」の2か所だけです。理事会や監査の具体的な日付は、その期限から逆算して各法人が決める日程であり、条文が直接指定しているわけではありません。

実務が詰まるのは「計算」ではなく「同じ数字の書き写し」

ここまで見てきたとおり、決算に関わる期限はどれも突拍子もない日数ではありません。3か月、2週間、遅滞なく、いずれも条文をたどれば理由がはっきりしています。実務でつまずくのは、期限そのものより同じ資産の数字・同じ職員数・同じ事業の概要を、計算書類、財産目録、届出書類、登記申請書、公表資料と、書類をまたいで何度も書き写すところです。

ある社会福祉法人様では、決算のたびに経理担当者が表計算ソフトの数値を、理事会資料、評議員会資料、届出用の様式、登記申請書へと手作業で転記していました。数字は同じでも様式が違うため、転記のたびに桁がずれたり、前期の数値のまま更新し忘れたりすることが起きていました。決算業務が重く感じられる原因は、計算そのものよりも、この転記の手間と、転記ミスを見つけるための二重チェックの手間にあるケースがほとんどです。

まとめ

  • 「決算」は一つの締切ではなく、根拠条文の違う複数の締切の束。 計算書類等の作成(法第45条の27第2項)・財産目録等の作成(法第45条の34第1項)・所轄庁への届出(法第59条)はいずれも毎会計年度終了後3月以内
  • 資産の総額の変更登記だけは組合等登記令が根拠で、変更登記の原則(2週間以内、第3条第1項)の例外として毎事業年度末日から3月以内(第3条第3項)
  • 公表には日数の期限がなく、「届出をしたとき遅滞なく」(法第59条の2第1項第3号)
  • 承認理事会から定時評議員会まで最低2週間空けなければならないのは、登記や届出の期限からではなく、計算書類等の備置きの規定(法第45条の32第1項)から出てくる
  • 計算書類・事業報告が定時評議員会に届くまでの順序は、監事(・会計監査人)の監査(第45条の28第1項・第2項)→ 理事会の承認(同条第3項)→ 招集通知にあわせて評議員へ提供(第45条の29)→ 定時評議員会へ提出(第45条の30第1項)
  • 事業報告は常に「報告」(第45条の30第3項)。計算書類は原則「承認」だが、会計監査人設置法人で厚生労働省令の要件を満たせば「報告」で足りる(第45条の31)
  • 決算実務が重くなる原因は計算そのものより、同じ数字を複数の書類へ書き写す転記の手間にあることが多い

参考(一次情報)

※引用はすべて原文のまま記載しています(条文の歴史的仮名遣いもそのままです)。決算スケジュールの具体的な日付は法人ごとに異なりますので、本記事の「日程の一例」はあくまで参考としてご覧いただき、最終的な判断は自法人の定款・会計年度・所轄庁の指導をご確認ください。


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