「運営規程に拠点等の機能を担うことを書いたので、加算を算定してよいですか」——このご質問は、答えが通知にはっきり書かれています。書いただけでは算定できません。
地域生活支援拠点等は、令和6年度の報酬改定で加算が整理され、事業所にとって身近な話になりました。一方で、ネット上の解説は平成30年ごろの資料をもとにしたものが多く、機能の数も届出の順番も、今の通知とずれているものが目につきます。
この記事では、地域生活支援拠点等を事業所が加算を算定するまでの手順として整理します。
まず「誰の制度か」を条文で確認する
地域生活支援拠点等の定義は、障害者総合支援法第77条第4項に置かれています。
市町村は、前項各号に掲げる事業を実施する場合には、これらの事業を効果的に実施するために、地域生活支援拠点等(これらの事業を実施するために必要な機能を有する拠点又は複数の関係機関が相互の有機的な連携の下でこれらの事業を実施する体制をいう。)を整備するものとする。
主語は「市町村」です。 事業所に義務が課された規定ではありません。
括弧書きに、よく語られる2つの整備の型が両方入っています。「必要な機能を有する拠点」が多機能拠点の形、「複数の関係機関が相互の有機的な連携の下で……実施する体制」が面的整備の形です。条文上はどちらも等しく「地域生活支援拠点等」であり、単独の建物を用意しなければならない制度ではありません。
なお、前項=第77条第3項が、市町村が「行うよう努めるものとする」とされている事業(緊急時の相談・体制確保、体験の機会の提供、専門的人材の育成等)を列挙しています。努力義務は第3項、拠点等の定義は第4項という切り分けになっているので、条文を引くときは混ぜないようご注意ください。
機能は「5つ」ではなく「4つ」に整理し直されている
事業所向けの説明で最も更新が遅れているのがここです。
長らく、地域生活支援拠点等の機能は「①相談 ②緊急時の受け入れ・対応 ③体験の機会・場 ④専門的人材の確保・養成 ⑤地域の体制づくり」の5つとして説明されてきました。平成30年3月の厚生労働省の資料がその出典です。
ところが、令和6年3月29日付の課長通知「地域生活支援拠点等の整備の推進及び機能強化について」(障障発第0329第1号)では、4つの区分に整理し直されています。
具体的には、法第 77 条第3項各号に掲げる事業を適切に実施するため、以下の(1)から(4)までの機能について、地域の実情において、複数の拠点関係機関が分担して担うこととなる(共同生活援助事業所や障害者支援施設等に付加する「多機能拠点」を整備することも可能)。
続く4区分はこうです。
| 区分 | 機能 |
|---|---|
| (1) | 相談 |
| (2) | 緊急時の受け入れ・対応 |
| (3) | 体験の機会・場 |
| (4) | 専門的人材の確保・養成等 |
旧①〜④はそのまま残り、⑤の「地域の体制づくり」が独立した項目として立っていません。 (4)の末尾が「専門的人材の確保・養成等」となり、通知の本文では「その他地域の実情に応じて、創意工夫により付加する機能」と結ばれています。
実際、自治体の登録要件が「4つの機能のいずれかを担うこと」に切り替わっているところがあります。登録の申出をする前に、所在市町村の要領がどちらの整理を採っているかを確認してください。
加算の前に必要なのは、市町村の位置づけ
冒頭の質問への答えが、同じ通知の「6 障害福祉サービス事業所等を地域生活支援拠点等に位置付ける際の手順」に書かれています。
市町村が障害福祉サービス事業所等を地域生活支援拠点等に位置付けるに当たっては、以下の手順を経ることを基本とし、単に事業所から地域生活支援拠点等であることを運営規程に規定する旨の届出があったことのみをもって加算を算定することは認められないものであること。
「運営規程に書いた旨の届出だけでは加算を算定できない」と、名指しで否定されています。
通知が示す手順は3段階です。
(1)事前協議
市町村と、事業所の管理者等を含む関係者とで、整備状況の確認と課題、実際に支援を行う場合の連携方法、整備状況の公表に係る周知方法などを協議します。加算の届出に際しては、拠点関係機関との連携担当者についても事前協議を行うこととされています。
(2)市町村への届出
事前協議により市町村との合意形成が図られた障害福祉サービス事業者等については、都道府県知事に対する加算の届出に先立ち、市町村に対して、地域生活支援拠点等の機能を担うこと及びそれに係る加算を算定するために必要な届出を行う。
(3)市町村からの通知
市町村は提出された届出書を確認し、内容に不備等がない場合には、当該事業所を地域生活支援拠点等に位置付けた旨の通知を行う。
順番を間違えると、算定開始が1か月ずれる
(2)に「都道府県知事に対する加算の届出に先立ち」と明記されているとおり、市町村への届出が先、都道府県(指定都市・中核市は市)への体制届が後です。
ここを逆にすると、体制届が受理されずに差し戻されます。体制届は提出時期によって算定開始月が変わる仕組みなので、1回差し戻されると算定開始が丸1か月ずれることになります。届出の期限の考え方は障害福祉サービスの体制届で整理していますので、あわせてご覧ください。
加えて、市町村側の登録申出にも独自の締切(「毎月15日までの申請で翌月から」など)が設けられていることがあります。市町村の締切と都道府県の体制届の締切、2つのカレンダーを見る必要があります。
手続きの名称は自治体ごとにばらばら
同じ手続きが、市町村によって「登録」「認定」「届出」「協議書」と呼ばれています。様式番号も締切も統一されていません。「地域生活支援拠点等 登録」で自法人の所在市町村のページを探すところから始めるのが確実です。
連携担当者は「増員」ではなく「明確化」
令和6年度の改定で、地域生活支援拠点等の既存の加算にも要件が追加されました。ここで身構える事業所が多いのですが、通知は負担の程度をはっきり限定しています。
なお、連携担当者は事業所に置くべき人員に加えて配置する必要はなく、市町村や拠点関係機関等との情報連携を担う担当者を明確化しておくことで足りるものである。
人を増やす必要はなく、「誰が担当か」を決めておけばよいという趣旨です。ただし、(1)の事前協議の対象に連携担当者が挙がっているため、市町村との協議の場で名前を出せる状態にしておく必要はあります。
なお、この要件追加の対象からは計画相談支援・障害児相談支援に係るものが除かれています。
拠点コーディネーターは常勤専従が原則
相談系のサービスで新設された地域生活支援拠点等機能強化加算については、要件がかなり具体的です。通知は3点を挙げています。
- 計画相談支援・障害児相談支援(機能強化型基本報酬(Ⅰ)又は(Ⅱ)を算定する場合に限る)と、自立生活援助・地域移行支援・地域定着支援の全てのサービスを、同一の事業所で一体的に運営しているか、拠点等のネットワークにおいて相互に連携して運営していること
- 当該事業所または基幹相談支援センター等の拠点関係機関に、拠点コーディネーターを常勤専従で1人以上配置していること
- 当該事業所を市町村が地域生活支援拠点等として位置づけていること
専従の強さについても、通知は但し書きまで含めて書いています。
拠点コーディネーターは、4の(1)に掲げる効果的な支援の連携体制を構築するための業務に専ら従事する必要があることから、原則として、拠点機能強化事業所等における他の職務に従事してはならないこと。ただし、緊急事態における支援や地域移行等に係る支援など、拠点コーディネーターが自ら支援を提供することについて市町村が特に必要と認めた場合には、拠点機能強化事業所の他の職務に従事することができる。
「相談支援専門員との兼務でよい」とは読めません。 例外は「市町村が特に必要と認めた場合」に限られます。配置を検討するなら、兼務の可否を事前協議の議題に入れておくべきところです。
連携会議は「年1回」ではなく「月1回以上」
ここも取り違えが起きやすい数字です。
拠点機能強化事業所は、1月に1回以上の頻度で、拠点コーディネーター及び拠点機能強化事業所の従業者が参加する連携会議を開催し、当該加算の算定状況の共有に加え、地域生活支援拠点等における機能の整備状況、支援において明らかになった地域課題の抽出及び共有その他地域生活支援拠点等の機能強化を推進するために必要な事項を協議すること。また、その協議内容については、市町村の職員出席や書面の提出等の方法により、市町村と共有すること。
月1回以上の開催と、市町村との協議内容の共有まで求められています。ただし通知は続けて、新たな会議の設置に代えて市町村で実施している協議会等の場を活用する方法でも差し支えない、としています。
「年1回以上」という数字を見かけたら、それは市町村側が障害福祉計画で求められている運用状況の検証の話で、事業所の加算要件とは別物です。
なお、機能強化加算には拠点コーディネーター1人当たり1月につき100回という算定上限があり、この上限は拠点機能強化事業所の単位における全ての拠点機能強化サービスの算定回数の合計とされています。複数の事業所が相互に連携して運営する場合は、連携会議で事前に毎月の算定回数の目安を共有しておくことが通知に明記されています。会議の議題に「今月の算定回数の割り振り」が入る、ということです。
事業所として押さえておきたいこと
- 地域生活支援拠点等は市町村が整備する体制(法第77条第4項)。事業所は参画する側で、義務を負う立場ではない
- 条文上、多機能の拠点でも複数機関の連携による体制でも「拠点等」。単独の建物は必須ではない
- 機能は令和6年の通知で4区分に整理されている。「5つの機能」で書かれた資料は平成30年当時のもの
- 運営規程に書いて届け出るだけでは加算を算定できない(障障発第0329第1号 6)
- 順番は事前協議 → 市町村への届出 → 市町村からの位置づけ通知 → 都道府県への体制届。逆にすると算定開始が1か月ずれる
- 手続きの名称・様式・締切は市町村ごとに異なる
- 連携担当者は増員不要。「誰が担当か」を明確にすればよい
- 拠点コーディネーターは常勤専従が原則。兼務は市町村が特に必要と認めた場合に限られる
- 連携会議は月1回以上+市町村との共有。「年1回」は市町村側の検証の話
- 機能強化加算の算定上限はコーディネーター1人当たり月100回(拠点機能強化サービスの合計)
位置づけと加算の届出を取りこぼさずに回したい法人様へ
地域生活支援拠点等は、市町村の登録と都道府県の体制届という2つの届出、連携担当者と拠点コーディネーターという2つの配置、月1回の連携会議を、複数のサービスにまたがって管理する必要があります。事業所の数が増えるほど、どこが位置づけを受けていてどの加算を算定しているのかが見えにくくなります。
パレットテクノロジーズでは、社会福祉法人・障がい福祉サービス事業所向けに、事業所ごとの届出状況・加算の算定状況・会議の開催記録をkintoneで一元化するご支援をしています。「どの事業所が、いつ市町村の位置づけを受け、どの加算を届け出ているか」を法人本部から一覧で見られるようにするところから始められます。
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参考にした一次情報
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第77条第3項・第4項(e-Gov法令検索)
- 「地域生活支援拠点等の整備の推進及び機能強化について」(令和6年3月29日 障障発第0329第1号)厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長通知
- 「地域生活支援拠点等について【初版】」(平成30年3月 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課)
※加算の名称・算定要件・届出様式・締切は、サービス種別と自治体によって異なります。実際の届出にあたっては、所在市町村の要領と指定権者(都道府県・指定都市・中核市)の手引で必ずご確認ください。