「相談支援専門員の実務経験は5年と聞いていたのですが、3年でよいという話も出てきました」
相談支援事業所を運営されている法人様から、この種のご質問を伺うことがあります。答えは「どの業務に従事していたかによって、3年・5年・10年のいずれかが適用される」です。年数が一つに決まっていないため、混乱が起きやすい領域です。
もう一つ、実務でつまずきやすいのが現任研修の期限です。「5年ごと」と理解されていることが多いのですが、条文が定めているのは「5年度ごとの各年度の末日まで」であり、数え方が違います。ここを取り違えると、気づいたときには要件を満たさない状態になっていた、ということが起こり得ます。
この記事では、告示の条文を根拠に、実務経験の3つの区分/研修の要件/現任研修の期限の数え方を整理します。
要件は「実務経験」と「研修」の2つ
相談支援専門員の要件を定めているのは、「指定計画相談支援の提供に当たる者としてこども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定めるもの」(平成24年3月30日厚生労働省告示第227号)です。
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準(平成二十四年厚生労働省令第二十八号)第三条第一項の規定に基づき、指定計画相談支援の提供に当たる者としてこども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定めるものは、第一号及び第二号に掲げる要件を満たす者とする。
第一号(実務経験)と第二号(研修)の両方を満たす必要があります。 どちらか一方では足りません。
なお、地域相談支援については告示第226号、障害児相談支援については告示第225号に同趣旨の定めがあります。この記事では計画相談支援(告示第227号)を軸に説明します。
第一号:実務経験は3年・5年・10年に分かれる
第一号の柱書が、年数の組み合わせを定めています。
イの期間が通算して三年以上である者、ロ、ハ、ホ及びヘの期間が通算して五年以上である者、ニの期間が通算して十年以上である者又はロからヘまでの期間が通算して三年以上かつトの期間が通算して五年以上である者(以下「実務経験者」という。)のいずれかに該当するものであること。
イからトまでが、それぞれ「どんな業務に従事した期間か」を定めています。整理すると次のようになります。
| 区分 | 従事していた業務 | 必要年数 |
|---|---|---|
| イ | 平成18年10月1日時点の旧相談支援事業等の従事者が、同年9月30日までに相談支援の業務等に従事した期間 | 3年 |
| ロ | 相談支援事業・児童相談所・障害者支援施設・病院等での相談支援の業務 | 5年 |
| ハ | 社会福祉主事任用資格者等が、障害者支援施設・障害福祉サービス事業等で介護等の業務に従事した期間 | 5年 |
| ニ | ハと同じ場で、社会福祉主事任用資格者等でない者が介護等の業務に従事した期間 | 10年 |
| ホ | 障害者職業センター・障害者就業・生活支援センターでの相談支援の業務等 | 5年 |
| ヘ | 特別支援学校等での就学相談・教育相談・進路相談の業務 | 5年 |
| ト | 国家資格等に基づく業務 | ロ〜ヘが通算3年以上+トが通算5年以上 |
押さえどころ1:介護等の業務は「資格の有無」で5年と10年に分かれる
ハとニの違いがここです。同じ施設で同じ介護等の業務に従事していても、社会福祉主事任用資格者等に該当するかどうかで、必要年数が5年と10年に分かれます。
ハには社会福祉主事任用資格のほか、保育士、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第43条各号のいずれかに該当する者などが含まれます。ニはこれに該当しない者です。採用時に資格を確認していないと、後から年数の判定ができなくなります。
なお、ハの対象になる「介護等の業務」は次のように定義されています。
身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき、入浴、排せつ、食事その他の介護を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行う業務
押さえどころ2:国家資格ルート(ト)は「3年+5年」の組み合わせ
トに該当する資格は、条文に列挙されています。
医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、管理栄養士、栄養士、精神保健福祉士又は公認心理師が、その資格に基づき当該資格に係る業務に従事した期間
このルートは「トが5年あればよい」ではありません。柱書のとおり、ロからヘまでの期間が通算3年以上あり、かつトの期間が通算5年以上である必要があります。2つの条件を両方満たす必要がある点にご注意ください。
押さえどころ3:「1年」の数え方
告示本体には期間の日数要件は書かれていませんが、実務上は「業務に従事した期間が1年以上、かつ実際に業務に従事した日数が1年あたり180日以上」という考え方で運用されています。各都道府県が公表している実務経験の確認資料に、この考え方と対象施設の一覧が示されています。 実際の申請では、必ず指定権者の資料で確認してください。
第二号:研修の要件(初任者研修+現任研修)
第二号は研修の要件です。まず入口になるのが相談支援従事者初任者研修です。
相談支援従事者初任者研修(都道府県知事又は都道府県知事が指定する事業者が障害者等(法第二条第一項第一号に規定する障害者等をいう。以下同じ。)の意向を踏まえ、必要な保健、医療、福祉、就労支援、教育等のサービスを総合的かつ適切に利用するための援助に関する知識及び技術を習得させることを目的として行う研修であって、別表第二に定める内容以上のものをいう。以下同じ。)を修了し、当該研修を修了した旨の証明書の交付を受けた者
そして第二号の柱書が、その後の更新にあたる部分を定めています。初任者研修を修了しただけでは、要件を満たし続けることはできません。
【最重要】現任研修の期限は「修了日から5年後の同じ日」ではない
ここが実務で最もつまずくところです。
第二号は、初任者研修等を修了した者が、「イからホまでに規定する研修を修了した日の属する年度の翌年度を初年度とする同年度以降の五年度ごとの各年度の末日までに」現任研修または主任相談支援専門員研修を修了していることを求めています。
そして、みなしの取扱いとして次のただし書きがあります。
ただし、イからホまでに規定する研修を修了した日から五年を経過する日の属する年度の末日までの間は、イからホまでに掲げる要件に該当する者であって、現任研修等修了者でないものを現任研修等修了者とみなす。
期限は「年度の末日」に揃う
条文が定めているのは年度単位です。実務では、「期限=修了日から5年を経過する日が属する年度の末日」と覚えると間違えません。
柱書の「修了した日の属する年度の翌年度を初年度とする5年度目の末日」と、ただし書きの「修了した日から5年を経過する日の属する年度の末日」は、同じ日を指します。
具体例で確認します。
| 初任者研修の修了時期 | 5年を経過する日 | その日が属する年度 | 期限 | 修了日からの実質の猶予 |
|---|---|---|---|---|
| 令和4年4月 | 令和9年4月 | 令和9年度 | 令和10年3月31日 | 約5年11か月 |
| 令和4年6月 | 令和9年6月 | 令和9年度 | 令和10年3月31日 | 約5年9か月 |
| 令和5年3月 | 令和10年3月 | 令和9年度 | 令和10年3月31日 | 5年0か月 |
同じ年度に修了した人は、修了月にかかわらず期限が同じ日に揃います。 そして、年度の後半に修了した人ほど実質的な猶予が短くなります。
なぜここが実務で効くのか
理由は2つあります。
- 一人ずつ「修了日+5年」で手帳に入れると、期限がばらばらになる。 実際は年度末に揃うので、年度単位の一覧で管理するほうが正確で、かつ楽です
- 現任研修は、多くの都道府県で年に1回程度しか開催されません。 期限の年度に入ってから動くと、受講枠が取れずに要件を満たせなくなる恐れがあります。期限の1〜2年前に受講計画を立てる必要があります
2つ目が実質的なリスクです。「令和10年3月31日が期限だから令和9年度に受ければよい」と考えると、その年度の研修に申し込めなかった時点で打つ手がなくなります。
現任研修を受けるにも要件がある
現任研修は誰でも受けられるわけではありません。受講対象者は次のように定義されています。
相談支援従事者現任研修の受講を開始する日前五年間において児童福祉法第六条の二の二第六項に規定する障害児相談支援若しくは法第五条第十九項に規定する相談支援の業務その他これらに準ずる業務(以下「相談支援等の業務」という。)に通算して二年以上従事していた者
受講開始日の前5年間に、相談支援等の業務に通算2年以上従事している必要があります。または、現任研修を修了して証明書の交付を受けた者であって、現に相談支援等の業務に従事している者です。
ここが期限管理の落とし穴になります。相談支援の業務から離れていた期間が長いと、期限が来たときに現任研修を受講できないことがあり得ます。期限だけでなく、従事日数も併せて管理する必要があるということです。
法人として管理すべき3つの情報
以上を踏まえると、相談支援専門員の要件を維持するために法人が持っておくべき情報は3つです。
| 管理する情報 | なぜ必要か | 更新のタイミング |
|---|---|---|
| 初任者研修・現任研修の修了年月日と証明書 | 期限の起点になる。証明書の交付を受けていることが条文上の要件 | 研修修了時 |
| 次回の現任研修の期限(年度末の日付) | 「修了日+5年」ではなく年度で計算した日付を持つ | 研修修了時に計算して記録 |
| 相談支援等の業務への従事期間・日数 | 現任研修の受講要件(前5年間に通算2年以上)の判定に必要 | 異動・配置変更のたび |
3つ目が抜けている法人様が多い、というのが私たちの実感です。研修の修了証は保管されていても、「その人がいつからいつまで相談支援の業務に就いていたか」が人事情報の中に散らばっているため、いざ受講要件を確認しようとすると各所に問い合わせることになります。
サビ管・児発管と同じ構造で管理できる
相談支援専門員のこの構造は、サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者と共通です。いずれも「実務経験+研修修了+期限のある更新」という3層で要件が組まれています。
3職種で管理項目の様式を分けないことをおすすめします。項目は「氏名/職種/実務経験の区分と起算日/研修の種類と修了年月日/証明書の保管場所/次回期限(年度末)/現在の従事業務」で共通化できます。様式を分けると、期限の一覧が3つに分かれ、誰も全体を見なくなります。
なお、相談支援専門員が作成するサービス等利用計画と、事業所が作成する個別支援計画は別の書類です。個別支援計画のモニタリングについては個別支援計画のモニタリングの記事で整理しています。
まとめ
- 相談支援専門員の要件は、告示第227号の第一号(実務経験)と第二号(研修)の両方を満たす必要がある
- 実務経験は業務の種類により3年・5年・10年に分かれる。介護等の業務は社会福祉主事任用資格者等かどうかで5年と10年に分かれる
- 国家資格ルート(ト)は「トが5年」だけでは足りず、ロ〜ヘが通算3年以上かつトが通算5年以上の組み合わせ
- 現任研修の期限は「修了日から5年後の同じ日」ではなく、「修了日から5年を経過する日が属する年度の末日」。同じ年度に修了した人は期限が同じ日に揃い、年度の後半に修了した人ほど実質の猶予が短い
- 現任研修の受講には、受講開始日の前5年間に相談支援等の業務に通算2年以上従事していることが必要
- 法人としては、修了年月日/年度で計算した次回期限/相談支援等の業務への従事期間の3つを1つの様式で管理する
参考にした一次情報
- 指定計画相談支援の提供に当たる者としてこども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定めるもの(平成24年厚生労働省告示第227号)|厚生労働省法令等データベース
- 指定地域相談支援の提供に当たる者として厚生労働大臣が定めるもの(平成24年厚生労働省告示第226号)|厚生労働省法令等データベース
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第28号)|厚生労働省法令等データベース
※実務経験として認められる施設・事業の範囲、日数の数え方、証明書の様式、研修の受講申込の手続は、都道府県によって運用が異なります。実際の申請にあたっては、必ず指定権者(都道府県・政令市等)が公表している最新の資料をご確認ください。
資格と研修の期限管理を1か所にまとめたい法人様へ
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