「従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表」。指定申請でも、変更届でも、運営指導でも出てくる、あの表です。
Excelのひな形に前月分をコピーして、日付と時間を書き換えて、常勤換算の欄が基準を満たしているかを確認する。多くの事業所でこの作業が毎月、あるいは提出のたびに発生しています。
やっかいなのは、この表の作り方を全部まとめて書いた「国の記入要領」が存在しないことです。様式そのものは指定権者(都道府県・市)が配布しており、常勤換算の考え方は厚生労働省の解釈通知に、実際の記入方法は各自治体の記入要領に、それぞれ分かれて書かれています。だから「うちのやり方が合っているのか」が確認しにくい。
この記事では、まず国の通知が定めている部分(ここは全国共通)を原文で押さえ、そのうえで自治体ごとに違う部分を切り分けます。介護保険と障害福祉サービスの両方を扱います。
常勤換算の分母と分子を、まず言葉で固める
常勤換算方法の定義は、省令そのものに置かれています。介護保険の指定居宅サービス等基準(平成11年厚生省令第37号)第2条第8号はこうです。
常勤換算方法 当該事業所の従業者の勤務延時間数を当該事業所において常勤の従業者が勤務すべき時間数で除することにより、当該事業所の従業者の員数を常勤の従業者の員数に換算する方法をいう。
障害福祉サービスの側も、ほぼ同じ文言です。指定障害福祉サービス基準(平成18年厚生労働省令第171号)第2条第16号は次のとおりです。
常勤換算方法 事業所の従業者の勤務延べ時間数を当該事業所において常勤の従業者が勤務すべき時間数で除することにより、当該事業所の従業者の員数を常勤の従業者の員数に換算する方法をいう。
式にすると、
常勤換算後の人数 = 従業者の勤務延(べ)時間数 ÷ 常勤の従業者が勤務すべき時間数
分子と分母、それぞれに解釈通知の縛りがあります。ここを知らないと、計算そのものは正しいのに数値が間違うことになります。
分母:32時間を下回る場合は32時間を基本とする
介護保険の解釈通知「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について」(平成11年9月17日老企第25号)第二の2(1)は、分母についてこう補足しています。
当該事業所の従業者の勤務延時間数を当該事業所において常勤の従業者が勤務すべき時間数(三二時間を下回る場合は三二時間を基本とする。)で除することにより、当該事業所の従業者の員数を常勤の従業者の員数に換算する方法をいうものである。
障害福祉サービスの解釈通知(平成18年12月6日障発第1206001号)第二の2(1)も、「1週間に勤務すべき時間数が32時間を下回る場合は32時間を基本とする」と同じ扱いです。
つまり、就業規則で週30時間を常勤としている事業所でも、常勤換算の分母は32時間を基本にすることになります。分母を小さくして常勤換算数を大きく見せることはできない、という趣旨です。ここは自法人の就業規則をそのまま使ってしまいやすいポイントです。
分子:1人あたりの上限がある(最大の落とし穴)
分子の「勤務延時間数」については、老企第25号 第二の2(2)がこう定めています。
勤務表上、当該事業に係るサービスの提供に従事する時間又は当該事業に係るサービスの提供のための準備等を行う時間(待機の時間を含む。)として明確に位置付けられている時間の合計数とする。なお、従業者一人につき、勤務延時間数に算入することができる時間数は、当該事業所において常勤の従業者が勤務すべき勤務時間数を上限とすること。
障害福祉サービスの解釈通知 第二の2(2)も同じで、「従業者1人につき、勤務延べ時間数に算入することができる時間数は、当該指定障害福祉サービス事業所等において常勤の従業者が勤務すべき勤務時間数を上限とすること」と書かれています。
ここが実務でいちばん間違えるところです。残業して常勤の所定時間を超えて働いた職員がいても、超えた分は常勤換算の分子に入れられません。 1人の職員が常勤換算で1.0を超えることはない、という意味です。
給与計算用の勤務実績をそのまま常勤換算に流し込むと、この上限処理が抜けます。残業の多い月に常勤換算数が実態より大きく出ていたら、まずここを疑ってください。
もうひとつ、分子に入れられるのは「勤務表上、明確に位置付けられている時間」です。準備の時間や待機の時間は入りますが、勤務表に何も書いていない時間は入りません。逆に言えば、実際にサービス提供の準備をしている時間があるなら、勤務表にその位置づけを書いておかないと算入できません。
兼務職員:「常勤換算」では分け、「常勤かどうか」では合算できる
兼務の扱いは、2つの場面で結論が逆になります。ここが混乱の元です。
常勤換算の計算では、事業ごとに分ける
老企第25号 第二の2(1)は、こう例示しています。
この場合の勤務延時間数は、当該事業所の指定に係る事業のサービスに従事する勤務時間の延べ数であり、例えば、当該事業所が訪問介護と訪問看護の指定を重複して受ける場合であって、ある従業者が訪問介護員等と看護婦等を兼務する場合、訪問介護員等の勤務延時間数には、訪問介護員等としての勤務時間だけを算入することとなるものであること。
兼務している職員は、職種・事業ごとに勤務時間を分けて数えるということです。訪問介護に3時間、訪問看護に4時間なら、訪問介護の常勤換算に入れられるのは3時間分だけです。
だから勤務形態一覧表では、兼務職員は職種ごとに行を分けて記載することになります(行の分け方の具体は指定権者の様式に従います)。
「常勤」の要件を満たすかの判定では、合算できる
一方、その職員が「常勤」に当たるかどうかの判定は別です。老企第25号 第二の2(3)はこう定めています。
当該事業所における勤務時間が、当該事業所において定められている常勤の従業者が勤務すべき時間数(三二時間を下回る場合は三二時間を基本とする。)に達していることをいうものである。同一の事業者によって当該事業所に併設される事業所の職務であって、当該事業所の職務と同時並行的に行われることが差し支えないと考えられるものについては、それぞれに係る勤務時間の合計が常勤の従業者が勤務すべき時間数に達していれば、常勤の要件を満たすものであることとする。
障害福祉サービスの解釈通知 第二の2(3)も同様で、こう例示しています。
例えば、一の指定障害福祉サービス事業者によって行われる指定生活介護事業所と指定就労継続支援B型事業所が併設されている場合、当該指定生活介護事業所の管理者と当該指定就労継続支援B型事業所の管理者とを兼務している者は、これらの勤務時間の合計が所定の時間に達していれば、常勤要件を満たすこととなる。
整理すると次のようになります。
| 場面 | 兼務職員の勤務時間の扱い |
|---|---|
| 常勤換算数(人員配置数)の算定 | 事業・職種ごとに分ける。その事業に従事した時間だけを算入 |
| その職員が「常勤」か否かの判定 | 併設事業所の職務で同時並行が差し支えないものは合計できる |
「常勤専従の職員を1人置くこと」といった基準に対して、併設事業所と兼務している職員を充てられるかどうかは、この2つを踏み分けて考える必要があります。なお「専ら従事する」(専従)は、老企第25号 第二の2(4)で「原則として、サービス提供時間帯を通じて当該サービス以外の職務に従事しないこと」と定義されており、常勤・非常勤の別を問いません。
端数処理は「国の通知に定めがない」
実務でよく言われるのが「常勤換算は小数点第2位以下を切り捨てる」というルールです。
しかし、老企第25号と障害福祉サービスの解釈通知を確認すると、常勤換算数そのものの端数処理を定めた記述は見つかりません。 両通知で小数点の扱いが明記されているのは、次のような別の数値についてです。
- 前年度の平均利用者数等:小数点第2位以下を切り上げ(老企第25号 第二の2(5)①、障害福祉サービスの解釈通知 第二の2(5)①)
- 配置すべきサービス提供責任者の員数:小数点第一位に切り上げ
- 平均障害程度区分:小数点第2位以下を四捨五入
つまり、「小数点第2位以下切り捨て」は国の解釈通知に由来するものではなく、各指定権者が配布する勤務形態一覧表の様式・記入要領で指定されているルールです(実際に多くの自治体の記入要領がこの扱いを示しています)。
ここから導かれる実務上の結論は単純です。端数処理と行の分け方は、自法人の指定権者の記入要領を確認して、その通りにする。 ネットで見た他県の解説をそのまま採用しないでください。同じ様式名でも、自治体によって記載欄の並びや注記が違います。
予定と実績、有給、そして「複数事業所をまたぐ勤務」
制度の話はここまでです。ここから先は、私たちが社会福祉法人様のご支援で実際に詰まってきたところです。
予定で出すのか、実績で出すのか
勤務形態一覧表には、指定申請・変更届のときは予定、運営指導のときは実績を求められるのが一般的です。同じ様式に見えて、根拠にするデータが違います。予定で作った表をそのまま実績として出すと、勤務表と一覧表が食い違います。
ここでよく起きるのが、「予定で作った表しか残っていない」という状態です。実績側の表を作り直そうとしても、その月のシフト変更が反映された記録が残っていない。結果として、タイムカードを1枚ずつ見ながら組み直すことになります。
有給休暇の日をどう扱うか
有給休暇の日を勤務延時間数に入れるかどうかは、指定権者の記入要領で扱いが示されているのが通例です。ここも自治体差が出るところなので、自法人の記入要領を確認するのが確実です。ただ実務でより問題になるのは、「有給を取った日が勤務表に反映されていない」ことのほうです。紙のシフト表を掲示していて、変更は口頭とホワイトボードで済ませている事業所では、月末に何が起きたのか復元できません。
職員が事業所をまたいで働く場合
ある社会福祉法人様では、グループホームに勤務する職員が、日によって居宅介護の業務に入ることがありました。時給は同じでも、サービスの種別が変わるため、事業所ごとの人件費の按分が必要になります。そして常勤換算も、前述のとおり事業ごとに分けて数えなければなりません。
このとき、紙で集めた出勤簿を後から入力して集計する運用だと、「その日、どちらの業務に何時間入ったのか」が記録に残りません。結果として、按分も常勤換算も、記憶と推測で組み立てることになります。
毎月の作成を軽くする、記録側の3つの工夫
勤務形態一覧表の負担は、表を作る作業そのものではなく、表に入れる材料が散らばっていることから生まれます。順番に手を入れると、以下のようになります。
1. 打刻の時点で「どの事業に何時間」を持たせる
出退勤の記録を取るときに、サービス種別(または事業所・職種)を一緒に記録します。タブレットや共有端末での打刻にすれば、後から按分する作業が消えます。紙の出勤簿を入力し直す工程がなくなるので、事務の時間そのものが減ります。
2. 勤務予定の変更をその場で残す
シフト変更を口頭で済ませず、予定を修正した記録が残る形にします。運営指導で実績を求められたときに、予定と実績の両方を出せる状態になります。
3. 常勤換算の計算に上限処理を入れておく
計算シートを使うなら、1人あたりの勤務延時間数に「常勤者の勤務すべき時間数」を上限とする処理を必ず入れます。給与計算用の実績時間をそのまま使うと、この処理が抜けて数値が過大になります。
これらは大きなシステムの話ではありません。まず「打刻のときに種別を選ぶ」だけでも、按分と常勤換算の材料は揃います。
なお、法人単位で受ける指導監査は、事業所単位の運営指導とは見られる観点が違います。あわせて整理しておくと、年間の書類準備の見通しが立てやすくなります。
▶ 関連記事:社会福祉法人の指導監査とは|周期・指摘基準・準備の進め方
まとめ
- 常勤換算方法の定義は省令に置かれている(指定居宅サービス等基準第2条第8号、指定障害福祉サービス基準第2条第16号)。式は「勤務延時間数 ÷ 常勤者が勤務すべき時間数」
- 分母は、常勤者が勤務すべき時間数が32時間を下回る場合は32時間を基本とする
- 分子は、勤務表上サービス提供・その準備(待機を含む)として明確に位置付けられている時間。1人あたりの上限は常勤者の勤務すべき時間数。残業分は入れられない
- 兼務は、常勤換算では事業・職種ごとに分けて数える。一方、その職員が「常勤」かの判定では、併設事業所の職務で同時並行が差し支えないものは合計できる
- 常勤換算数の端数処理は、国の解釈通知には定めがない。 指定権者の記入要領に従う(小数点第2位以下切り捨てとしている自治体が多い)
- 指定申請・変更届は予定、運営指導は実績。同じ様式でも根拠データが違う
- 負担の原因は表づくりではなく材料の散らばり。打刻の時点で「どの事業に何時間」を残すだけで、按分と常勤換算の作業は大幅に減る
参考(一次情報)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第2条|e-Gov法令検索
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について(平成11年9月17日老企第25号)|厚生労働省
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第2条|e-Gov法令検索
- 指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(平成18年12月6日障発第1206001号)|厚生労働省
※様式および記入要領(端数処理・行の分け方・有給休暇の扱いなど)は指定権者ごとに定められています。提出前に、自法人の指定権者が公表している最新の記入要領をご確認ください。
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