「介護事業所の掲示」と調べると、自治体の集団指導の資料が並びます。そして、どれも「重要事項のウェブサイトへの掲載が義務化されました」とだけ書いています。
けれども、管理者や事務担当者が本当に知りたいのは、次のことではないでしょうか。
- 事業所に貼っている掲示は、ウェブサイトに載せれば要らなくなるのか
- 書面を備え付ければ、ウェブサイトへの掲載も省けるのか
- 利用開始時に渡す重要事項説明書と、掲示する重要事項は同じものなのか
先に結論を書きます。訪問介護の掲示の条(省令第32条)は3つの項でできていて、第2項と第3項の役割がまったく違います。
- 第2項は、書面の備え付けで掲示に「代えることができる」と書いている
- 第3項は、ウェブサイトに「掲載しなければならない」と書いている。第2項の代替の対象には挙がっていない、独立した義務である
今回読んだ条文のうち、「代えることができる」と書かれているのは第2項だけです。この記事では、その条文の構造を整理します。
先にお断りします。この記事が読んだのは次の省令の条文で、訪問介護の章の条(第8条・第29条・第32条)と、福祉用具貸与の条(第204条)です。
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号。以下「省令37号」)
「介護の運営基準では」と一般化はしません。他のサービスには、同じ内容が別の条番号で置かれています(その実例として、後で第204条を見ます)。
第32条の3つの項を並べる
まず、第32条の3つの項を、そのまま並べます。
第1項は、掲示の義務を定めています。
指定訪問介護事業者は、指定訪問介護事業所の見やすい場所に、運営規程の概要、訪問介護員等の勤務の体制その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項(以下この条において単に「重要事項」という。)を掲示しなければならない。
第2項は、掲示の代わりになる方法を定めています。
指定訪問介護事業者は、重要事項を記載した書面を当該指定訪問介護事業所に備え付け、かつ、これをいつでも関係者に自由に閲覧させることにより、前項の規定による掲示に代えることができる。
第3項は、ウェブサイトへの掲載を定めています。
指定訪問介護事業者は、原則として、重要事項をウェブサイトに掲載しなければならない。
3つの項の役割を表にします。
| 項 | 求めていること | 条文の言い方 |
|---|---|---|
| 第1項 | 事業所の見やすい場所への掲示 | 「掲示しなければならない」 |
| 第2項 | 書面の備え付けと自由な閲覧による、掲示の代替 | 「前項の規定による掲示に代えることができる」 |
| 第3項 | ウェブサイトへの掲載 | 「原則として、…ウェブサイトに掲載しなければならない」 |
ここで見ていただきたいのは、第2項の「代えることができる」の対象です。条文は「前項の規定による掲示」に代えられる、と書いています。第3項の掲載に代えられる、とは書かれていません。第3項は第2項と別の文として置かれ、「掲載しなければならない」という言い方になっています。
つまり、今回読んだ条文からは、次のように整理できます。
- 掲示は、書面の備え付けで代えることができる(第2項)
- ウェブサイトへの掲載は、第2項の「代えることができる」の対象に挙がっていない別の項に置かれている(第3項)
「ウェブサイトに載せたから掲示は不要」「書面を備え付けたからウェブ掲載は不要」といった読み方が条文から出てくるかどうかは、この構造を確認してから判断してください。
第3項の「原則として」は、条文では中身が分からない
第3項には「原則として」とあります。では、例外はどこまで認められるのか。
この点は、条文に書かれていません。 「原則として」の内側にどんな場合が含まれるのかは、条文の文言からは言えないのです。そのため、この記事でも例外の範囲は書きません。
あわせて、今回読んだ条文からは、次のことも分かりません。
- 施行日や経過措置の有無
- 「ウェブサイト」にどんなものが含まれるのか
- 掲載の対象になる事業者の範囲
- 掲載するファイルの形式
- 運営指導でどう扱われるのか
施行日や経過措置、ウェブサイトの範囲は条文に書かれていないので、所管の都道府県・市町村の案内と最新の通知で確認してください。
何を掲示するのか:「運営規程の概要」であって、規程本体ではない
次に、掲示や掲載の対象である「重要事項」の中身です。第32条第1項は、重要事項を次のように定めています。
- 運営規程の概要
- 訪問介護員等の勤務の体制
- その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項
書かれているのは「運営規程の概要」で、運営規程そのものではありません。運営規程は、第29条が定めています。
指定訪問介護事業者は、指定訪問介護事業所ごとに、次に掲げる事業の運営についての重要事項に関する規程(以下この章において「運営規程」という。)を定めておかなければならない。
第29条は、運営規程に定める事項を8つの号で挙げています。
| 号 | 運営規程に定める事項(原文の語のまま) |
|---|---|
| 一 | 事業の目的及び運営の方針 |
| 二 | 従業者の職種、員数及び職務の内容 |
| 三 | 営業日及び営業時間 |
| 四 | 指定訪問介護の内容及び利用料その他の費用の額 |
| 五 | 通常の事業の実施地域 |
| 六 | 緊急時等における対応方法 |
| 七 | 虐待の防止のための措置に関する事項 |
| 八 | その他運営に関する重要事項 |
運営規程には、第七号の「虐待の防止のための措置に関する事項」まで含めて8つの事項が定められます。掲示や掲載の対象は、このうちのどこまでを載せるかも含めた「概要」です。第32条は、規程本体を掲示する形では書かれていません。概要にどこまでを含めるかは条文に書かれていないので、所管の自治体の案内で確認してください。
第8条と第32条:重要事項の書きぶりは同じで、義務は別
ここまでの「重要事項」は、実は利用開始のときに渡す文書の中身と、書きぶりが同じです。第8条第1項を見てください。
指定訪問介護事業者は、指定訪問介護の提供の開始に際し、あらかじめ、利用申込者又はその家族に対し、第二十九条に規定する運営規程の概要、訪問介護員等の勤務の体制その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を記した文書を交付して説明を行い、当該提供の開始について利用申込者の同意を得なければならない。
第8条と第32条を並べます。
| 比べる点 | 第8条第1項(内容及び手続の説明及び同意) | 第32条第1項(掲示) |
|---|---|---|
| 重要事項の書きぶり | 運営規程の概要、訪問介護員等の勤務の体制その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項 | 運営規程の概要、訪問介護員等の勤務の体制その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項 |
| 義務の中身 | 文書を交付して説明を行い、同意を得る | 事業所の見やすい場所に掲示する |
| 時点 | 提供の開始に際し、あらかじめ | 時点の定めは条文に書かれていない |
| 相手 | 利用申込者又はその家族 | 条文は相手を特定していない(第2項は「関係者」に閲覧させる) |
重要事項の書きぶりは同じでも、義務そのものは別です。
- 第8条は、利用の申込みを受けた相手に、文書を渡して説明し、同意を得る義務
- 第32条は、事業所に掲示し(または書面を備え付け)、ウェブサイトに掲載する義務
説明を行って同意を得ても、掲示やウェブ掲載の義務を果たしたことにはなりません。逆も同じです。なお、第32条の「重要事項」は「この条において単に」と断った略称で、第8条の文書と同じ内容だと条文が書いているわけではありません。書きぶりが同じ、という点までが条文から言えることです。
障がい福祉サービスの重要事項説明書の記載事項や掲示については、障害福祉サービスの重要事項説明書の記事で整理しています。あちらは障がい福祉の基準省令の話で、介護側の省令37号とは根拠の省令が違います。 並べて読むときは、条文の出どころを分けて考えてください。
電磁的方法で説明を提供することと、ウェブサイトに載せることは別の話
「ウェブ」と「電磁的」という語が出てくるので、混ざりやすい論点です。第8条は第2項以下で、重要事項を電磁的方法で提供できることも定めています。第2項の前半を引用します(長い項のため、前半の第一文だけです)。
指定訪問介護事業者は、利用申込者又はその家族からの申出があった場合には、前項の規定による文書の交付に代えて、第五項で定めるところにより、当該利用申込者又はその家族の承諾を得て、当該文書に記すべき重要事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって次に掲げるもの(以下この条において「電磁的方法」という。)により提供することができる。
第3項は、その方法に条件を付けています。
前項に掲げる方法は、利用申込者又はその家族がファイルへの記録を出力することによる文書を作成することができるものでなければならない。
第8条の電磁的方法には、次の条件が付いています。
- 利用申込者又はその家族からの申出があった場合であること
- その承諾を得て行うこと(第5項は、あらかじめ方法の種類と内容を示して、文書又は電磁的方法による承諾を得ることを求めています)
- 第3項のとおり、ファイルへの記録を出力して文書を作成できる方法であること
そして、第6項は、承諾を得たあとで利用申込者又はその家族から電磁的方法による提供を受けない旨の申出があったときは、電磁的方法で提供してはならない、と定めています(再び承諾をした場合は別です)。
このように、第8条第2項の電磁的方法は「文書の交付に代えて」、特定の利用申込者又はその家族に提供する方法として書かれています。一方、第32条第3項は、事業者がウェブサイトに掲載する義務です。
| 比べる点 | 第8条第2項(電磁的方法による提供) | 第32条第3項(ウェブサイトへの掲載) |
|---|---|---|
| 位置づけ | 文書の交付に代えて提供できる方法 | 掲載しなければならない義務 |
| 条件 | 申出があった場合、承諾を得て | 「原則として」(中身は条文に書かれていない) |
| 相手 | 利用申込者又はその家族 | 条文は相手を特定していない |
ウェブサイトに掲載したからといって、第8条の文書交付や説明、承諾を省けるとは、条文に書かれていません。反対に、電磁的方法で提供したことが、第32条第3項の掲載にあたるとも書かれていません。2つの規定は、別々に満たす必要があるものとして読んでおくのが安全です。
条番号はサービス種別で違う:福祉用具貸与の第204条
ここまでは訪問介護の章の条でした。サービスが違えば、条番号が変わります。実例として、福祉用具貸与の第204条を見てみます。条の見出しは「掲示及び目録の備え付け」です。第1項は、次のとおりです。
指定福祉用具貸与事業者は、事業所の見やすい場所に、運営規程の概要その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項(以下この条において単に「重要事項」という。)を掲示しなければならない。
第2項は第32条第2項とほぼ同じ構造で、書面の備え付けにより掲示に代えることができるとしています。第3項は、次のとおりです。
指定福祉用具貸与事業者は、原則として、重要事項をウェブサイトに掲載しなければならない。
第1項から第3項までは、第32条と同じ構造です。ただし、細かな違いが2点あります。
- 第204条第1項の重要事項の書きぶりには、第32条第1項にあった「訪問介護員等の勤務の体制」の語がありません
- 第204条には第4項があり、福祉用具の品名と品名ごとの利用料その他の必要事項が記載された目録等の備え付けを定めています
指定福祉用具貸与事業者は、利用者の福祉用具の選択に資するため、指定福祉用具貸与事業所に、その取り扱う福祉用具の品名及び品名ごとの利用料その他の必要事項が記載された目録等を備え付けなければならない。
同じ「掲示」でも、サービスごとに条番号も、重要事項の書きぶりも、足されている義務も違います。第32条の内容を、他のサービスにそのまま当てはめないでください。自分の事業所の種別の条番号は、必ず条文で確かめてください。
実務の打ち手:「掲示」「書面の備え付け」「ウェブ掲載」を別々に管理する
条文の構造から、実務で押さえておきたいことが見えてきます。掲示とウェブ掲載を1つの「掲示物チェック」にまとめず、別の項目として管理することです。
| 確認する項目 | 見るポイント | 根拠となる条 |
|---|---|---|
| 事業所の種別と条番号 | 自分の事業所のサービスの掲示の条はどれか | 訪問介護は第32条、福祉用具貸与は第204条など |
| 掲示 | 見やすい場所に重要事項を掲示しているか | 第32条第1項 |
| 書面の備え付け | 掲示に代える場合、書面の備え付けと自由な閲覧ができているか | 第32条第2項 |
| ウェブ掲載 | 重要事項をウェブサイトに載せているか。例外の扱いは自治体に確認した日と内容を残す | 第32条第3項 |
| 利用開始時の文書 | 文書を交付して説明し、同意を得ているか | 第8条第1項 |
| 電磁的方法での提供 | 申出と承諾の記録があるか | 第8条第2項・第5項・第6項 |
| 運営規程との整合 | 運営規程が変わったとき、上の各項目の内容が揃っているか | 第29条 |
運営規程や勤務体制が変わったときに、掲示物・備え付けの書面・ウェブサイト・利用開始時に渡す文書のうち、どれかだけ古いまま残る、という事態が起きがちです。1つの元データから4つを作る形にしておくと、更新の漏れを防ぎやすくなります。これは条文が求めている手順ではなく、整合を保ちやすくするための運用上の工夫です。
そして、条文に書かれていないこと(例外の範囲・施行日や経過措置・ウェブサイトの範囲)は、「確認した日」と「確認先」をセットで記録しておくことをおすすめします。担当者が変わっても、同じ判断を繰り返せます。
まとめ
- 今回読んだのは省令37号の訪問介護の章の条(第8条・第29条・第32条)と、福祉用具貸与の第204条。他のサービスには、同じ内容が別の条番号で置かれている
- 第32条は3つの項でできている。第1項は掲示、第2項は書面の備え付けによる掲示の代替、第3項はウェブサイトへの掲載
- 条文に「代えることができる」と書かれているのは第2項だけで、代えられるのは「前項の規定による掲示」。第3項の掲載は、別の項に置かれた独立の義務として読める
- 第3項の「原則として」の中身、施行日や経過措置、ウェブサイトの範囲は条文に書かれていないので、自治体の案内と最新の通知で確認する
- 掲示するのは運営規程そのものではなく「運営規程の概要」。運営規程の記載事項は第29条の各号にある
- 第8条(利用開始時に文書を交付して説明し、同意を得る)と第32条(掲示とウェブ掲載)は、重要事項の書きぶりが同じでも別の義務
- 第8条第2項の電磁的方法は、申出と承諾を前提に文書の交付に代えて提供する方法。第32条第3項のウェブ掲載とは別の話
- 福祉用具貸与の第204条は、第1項から第3項が第32条と同じ構造で、第4項に目録の備え付けが足されている
参考(一次情報)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)|e-Gov法令検索(2026年10月10日に取得した条文による)
本記事は省令の条文の構造を整理したもので、個別の事業所の運営判断を示すものではありません。施行日・経過措置、ウェブサイトの範囲、「原則として」の例外、掲載の対象や形式、運営指導での扱いは、所管の都道府県・市町村の最新の案内と通知をご確認ください。
掲示も、書面も、ウェブサイトも、更新が追いつかない法人様へ
パレットテクノロジーズは、社会福祉法人様のデジタル化を「現地現物」で伴走支援しています。運営規程や勤務体制を1つの元データで持ち、掲示物・備え付けの書面・ウェブサイト・利用開始時の文書を揃えて更新できる状態に整えるところからご一緒します。ITに詳しい職員がいらっしゃらなくても大丈夫です。